新卒の離職率は?新卒社員の離職理由と離職を防ぐための手法を解説

更新:2024/02/29

作成:2022/08/24

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

新卒の離職率は?新卒社員の離職理由と離職を防ぐための手法を解説

新卒の離職率は、入社3年以内で全体の約30%、つまり約3人に1人が離職する厚生労働省のデータは有名です。

 

就職活動の中で多くの会社から選び、期待に胸を膨らませて入社したはずの新卒たちが、なぜ3年以内という短い期間で会社に見切りをつけて離職してしまうのでしょうか。記事では、新卒社員の主な離職理由を解説すると共に、早期離職を防ぐ手法を紹介します。

<目次>

新卒離職率の定義

新卒離職率は、入社した新卒社員の人数を母数として、入社から一定期間以内に退職した新卒社員の割合を示す指標です。

 

厚生労働省では、「新規学卒就職者の離職状況」として、入社3年以内の学卒者離職率を毎年公表しています。

新卒離職率の現状

まずは新卒社員の離職状況を確認しておきましょう。

新卒就職者の就職後3年以内離職率

2023年10月20日発表のデータによると、新規学卒就職者(2020年3月卒業者)の就職後3年以内の離職率は、大卒で32.3%、短大等卒で42.6%、高卒で37.0%、中卒で52.9%となっています。

 

大卒や高卒であれば採用した約1/3、短大等卒であれば10人に4人、中卒では2人に1人が入社3年以内に退職していることになります。大卒の3年以内離職率は約30%程度で、数十年あまり変わらない数値です。昔は入社3年以内離職は「7:5:3」とも言われ、中卒は7割、高卒は5割、大卒が3割という数字でしたが、高卒と中卒に関しては、上述の通り昔よりも低下してきています。

 

事業所規模別の新卒離職率

事業規模別に新規就職者の入社3年以内の離職率を見ると、中小企業における状況の厳しさが浮き彫りとなってきます。

 

厚生労働省のデータをみると、新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率は、以下のようになっています。

 

事業所規模高校大学
5人未満60.7%54.1%
5~29人51.3%49.6%
30~99人43.6%40.6%
100~499人36.7%32.9%
500~999人31.8%30.7%
1,000人以上26.6%26.1%

 

1000人以上の大規模事業者の場合、新規大卒者の3年以内離職率は高卒で26.6%、大卒で26.1%となっています。つまり4人に1人程度の割合です。これに対して、30〜99人規模の事業者では3年以内離職率は、高卒で43.6%、大卒で40.6%ですし、5〜29人規模の事業者では高卒で51.3%、大卒で49.6%に達します。

 

つまり、小規模な企業ほど、新卒の離職率は高く、30人以下の企業になるとせっかく採用した新卒人材の約半分が3年で退職してしまっている形になります。

 

業界別の新卒離職率

3年以内離職率は業界(業種)によっても違いがあります。「新規学卒就職者の産業別就職後3年以内離職率のうち離職率の高い上位5産業」は以下のようになっています。

 

高校大学
宿泊業,飲食サービス業62.6%宿泊業,飲食サービス業51.4%
生活関連サービス業,娯楽業57.0%生活関連サービス業,娯楽業48.0%
小売業48.3%教育,学習支援業46.0%
教育,学習支援業48.1%医療,福祉38.8%
医療,福祉46.4%小売業38.5%

 

高卒、大卒ともに「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」の割合が高くなっています。大卒と高卒では順位が変わりますが、3位以下は「教育,学習支援業」「医療,福祉」「小売業」で共通しています。

 

逆に、「電気・ガス・熱供給・水道業」と「鉱業・採石業・砂利採取業」は、いずれも離職率が低くなっています。このように働き方や待遇面の傾向などにより、離職率は業界によっても大きく異なります

新卒離職率の推移

新卒離職率はどのように変化してきたのでしょうか。以下は、学歴別就職後3年以内離職率の推移をもとにした、2000年以降の大卒の3年以内離職率の推移です。

 

2000年36.5
2001年35.4
2002年34.7
2003年35.8
2004年36.6
2005年35.9
2006年34.2
2007年31.1
2008年30.0
2009年28.8
2010年31.0
2011年32.4
2012年32.3
2013年31.9
2014年32.2
2015年31.8
2016年32.0
2017年32.8
2018年31.2
2019年31.5
2020年32.3

 

これを見ると、2004年の36.6%が最も高く、2009年の28.8%が最も低くなっています。経済状況などによって約30%を基準に数ポイントの変動はありますが、新卒の早期離職率は基本的に30%付近を推移する傾向にあります。

 

全般的な傾向としては、景況感が上向いて転職しやすい状況になると3年以内離職率が高まる、逆に、不況で転職が難しくなると3年以内離職率は減少する形になります。

 

新卒社員が離職する10の理由

大卒の場合、3割近い新卒社員が3年以内に離職をすることになります。離職の理由は何でしょうか。離職理由を知ることで、離職を防ぐ対策もしやすくなります。

厚生労働省の「平成30年若年者雇用実態調査の概況」の「初めて勤務した会社をやめた主な理由」を見ると以下のようになっています。

 

初めて勤務した会社をやめた主な理由(複数回答3つまで)
労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった30.3
人間関係がよくなかった26.9
賃金の条件がよくなかった23.4
仕事が自分に合わない20.1
その他15.3
ノルマや責任が重すぎた13.9
会社に将来性がない12.0
結婚、子育てのため10.8
健康上の理由9.2
自分の技能・能力が活かせられなかった7.7
不安定な雇用状態が嫌だった7.0
雇用期間の満了・雇止め5.4
1つの会社に長く勤務する気がなかったため3.6
倒産、整理解雇又は希望退職に応じたため2.5
責任のある仕事を任せられたかった1.4
介護、看護のため1.3
家業をつぐ又は手伝うため1.0
独立して事業を始めるため0.5

 

理由として多く挙げられたものから解説していきます。

 

1.労働時間・休日・休暇に関する不満や負荷

労働時間・休日・休暇に関する不満や負荷は離職の大きな要因になります。

 

労働時間が長い、休日が少ない、有給休暇が取れない等が生じると、疲労もたまり仕事に対するモチベーションが下がるだけでなく、会社への不信感が募ります。その結果として新卒社員は条件のよい他社を探して転職します。

 

とくに最近の若手はワークライフバランスを重視する人が増えており、「仕事とプライベートのバランスがとりづらい」「労働時間が長過ぎる」などの点に強く不満を感じる人は増える傾向にあります。

 

また、給与や勤務時間に関して、事前の説明や雇用契約と異なっていると離職につながりやすくなります。これは企業側に問題がある事案であり、改善が必須です。前述の通り、若手の価値観が変わっている現状を踏まえて、残業状況や休日出勤の必要性、繁忙期の状況などもきちんと説明しておきましょう。

 

2.人間関係

職場での人間関係は、昔も今も新卒社員の離職に大きな影響を与える要因です。

 

上司や先輩社員とうまくコミュニケーションが取れないと、孤立感を抱いてしまい、仕事に対するモチベーションの低下をまねきます。入社前にイメージしていた職場の雰囲気と現実が異なり、思うようになじめないといった場合も強いストレスを感じるでしょう。とくに中小企業は従業員数や部署が少ないため、人間関係の幅が狭く、一度関係性が崩れると離職の引き金になりがちです。

 

だからこそ、「職場に自分の居場所がある」と感じられる状況を整えてあげることが必要です。新卒社員に対して、積極的にコミュニケーションを働きかける、ランチなどコミュニケーションが取りやすいような場を作るなど、新卒社員がなじめるように機会を提供しましょう。

 

また、入社1年目はとくに学生時代から環境が大きく変化する中で、仕事や人間関係に関する悩みを抱えがちです。その中で、相談できる上司や同僚がいないと精神的に思い詰められやすくなり、早期離職につながる恐れがあります。ブラザーシスター制度などで、気軽に相談できる相手をつくることなどが有効です。

 

3.賃金の低さや上昇率の見込み

賃金が低い場合や賃金の上昇が見込めない場合も新卒社員は離職しやすいといえます。

 

賃金は日々の生活に直結しますし、将来への不安にも関わります。自身の仕事への対価として納得いかないと感じる人もいるでしょう。また、いまの給与も大切ですが、将来の上がり幅も重要です。昇給率や昇給額の見込みが低かったりすると、企業に残って働き続けることに対する意欲が損なわれ離職してしまう可能性が高まります。

 

新卒の場合、これまで正社員として給与をもらったことがありませんので、思ったより手取りの給与が低いと感じることもあるでしょう。また、大学の同級生などから他社の賃金などを聞いて、自社の給与水準の低さを知る可能性もあります。

 

4.仕事との適性、やりがい

仕事内容が自分に合わないと感じてしまった場合や仕事にやりがいが感じられない場合も、離職につながります。

 

仕事の内容が自分の苦手なことであったり、関心が持てないようなことであったりした場合には、仕事に対して合わないと感じてしまうでしょう。1日の多くを費やす仕事に適性がないと感じてしまうと、大きなストレスを感じ離職につながってしまいます。

 

入社前にイメージしていた仕事内容と実際の業務に大きなギャップがある場合も、やりがいを見出しづらくなります。新人だからといって簡単な仕事ばかりを任されても、モチベーションの低下を招く原因となるでしょう。こういった不満は、仕事に慣れてきたタイミングで生じる傾向にあるので、早めに対応するのがよいでしょう。また、外から見た時に華やかなイメージがあるような業界や職種も注意が必要です。

 

5.ノルマや責任に関する負担

過度なノルマや責任も、新卒社員が離職する理由になります。
 

新卒社員は社会人経験がありませんし、成果を出すための知識や経験を持ち合わせていません。成果を出すまでに経験と学習が必要で時間がかかるので、短期間でのノルマを与えられるとプレッシャーに感じてしまうでしょう。また、責任を与えられても、抱えられるだけのストレス耐性や処理力が育っていないので、大きなストレスを感じてしまいます。

 

新卒社員は、自分一人で完結できる仕事が少ないので、与えられたノルマや成果が過剰な場合は特にプレッシャーを感じやすくなります。営業会社などでは、常にノルマに追いかけられる状態に気持ちが折れてしまい、転職するケースが多々あります。

 

適切な目標とストレスは、成長やモチベーションにつながる大切なことです。ただし、本人が過度に感じると、相手を潰してしまうものにもなりかねません。バランス感が重要です。

 

6.会社や事業の将来性・成長性

会社や事業の将来性や成長性への懸念も離職につながります。

 

近年の新卒社員は、日本経済が右肩上がりの時代のように楽観的に将来をとらえていません。よりシビアに会社や事業の将来性を見定めており、見込みがない会社であると判断した場合には、より成長性や将来性が見込める企業に転職する傾向にあります。

 

終身雇用の感覚がなく、また、会社が一生継続するとは思っていないからこそ、転職しやすい若いうちに転職した方が後のリスクを防げると考えており、若年のうちに転職をする傾向にもあります。このまま会社にいて昇進できるか、後の転職で有利になる経験ができるかなど、自身のキャリア形成に対する影響は優秀層ほどしっかりと思案しています。

 

ここまでは厚生労働省のデータのなかで割合の高いものをもとに考えてきましたが、ここからはそれ以外に考えられる新卒が離職する理由を説明していきます。

7.キャリアアップ

キャリアアップやスキルアップを意図しての転職も近年は増加しています。

 

終身雇用が崩壊した中で、最近の新卒社員は昔以上に「自分の成長」「市場価値」などに対して敏感です。会社が自分を守ってくれないと思っているからこそ、成長して市場価値を高めて、職に困らないスキルを身に付けたいと考えています。転職が当たり前となったからこそ、早期のキャリア形成志向が強まっているのです。

 

そのため自社では得られないスキルや経験など、自身のキャリアアップにつながる企業にあると、容易に転職を決める傾向にあります。自社の労働条件の不満や待遇、仕事内容などに大きな不満がなくとも、キャリアアップを目指して転職をするのです。

 

8.ロールモデルの不在

手本となる人物、つまりロールモデルの不在も離職につながります。

 

新卒社員はロールモデルを持つことで、会社での中長期的なキャリアプランや成長像を具体的にイメージすることができます。

 

しかし、ロールモデルがいないと、数年後・10年後・20年後などの自身の姿がイメージできず、このまま会社で働いていいのかという不安が大きくなり、組織に対するエンゲージメントが下がってしまいます。将来に対する漠然とした不安が高まり、「このまま会社にいても自分のキャリアを築けない」と考えて離職にいたってしまうのです。

9.ストレス過多

ストレス過多も新卒の離職をもたらします。
 

納期や目標達成など、社会人としての様々なプレッシャーにストレスを抱える新入社員は少なくありません。学生時代は己の実力に疑問を感じなかった人が、職場で実際に仕事をしていくうちに、自分の能力のなさに焦りとストレスを感じてしまい、退職に至ることがあるのです。

 

また、一人ひとりの業務が忙し過ぎたり、人手不足で若手をフォローする余裕がなかったりする状態も、新卒社員にストレスをため込ませてしまい離職につながる可能性を高めます。

 

会社としては、決して悪意があったりブラックな環境になっていたりしない場合でも、新入社員はこれまでとの環境の変化で、既に負荷を感じており、通常よりもストレスを感じやすい状況になっていますので注意が必要です。

10.期待と現実とのギャップ(リアリティギャップ)

期待と現実のギャップというものも、新卒の離職につながりやすいポイントです。

 

新卒社員は働いた経験がないため、仕事や会社に対して現実的な経験がありません。企業説明会で仕事の良い面だけを紹介されたり、本人の仕事に対する意識が甘かったりすることがかけ合わさると、入社前に抱く「バラ色の社会人像」の期待と入社後の現実のギャップが大きくなります。

 

入社前の期待と入社後の現実の間に生じるギャップは「リアリティショック」と呼ばれ、リアリティショックが大きい、またはリアリティショックへの心構えができていないと離職の原因になります。

 

退職理由に関しては、以下の記事でランキング形式で詳しく解説しているので参考にしてください。

新卒離職率が高いことのデメリット

新卒の離職率が高いと、企業活動にいくつものデメリットが生じます。どのような問題が生じるのか確認しておきましょう。

採用・教育にかけたコストが無駄になる

新卒が早期に離職することで、採用や教育にかけたコストは無駄になってしまいます。

 

企業は人材を採用するまでに、母集団形成に関する外部費用、適性検査などの費用、採用活動に必要な工数などのコストをかけています。新卒の場合、一人当たりの採用費用は60万円前後といわれます。

 

また、入社後も新卒が1人前になるまでには、企業は給与や保険などの直接的な費用に加えて、備品や入社後の教育研修など多くのコストを負担しています。

 

新卒が入社数年間で離職してしまうと、採用や教育するのにかかった費用や工数が無駄になるだけでなく、さらに再度新しい人材の採用・教育活動を行わねばならず、余計な費用や工数がかかることになります。

採用の難易度が高まる

新卒が多く離職してしまうと、採用の難易度も高まる傾向も強くなっています。というのも、退職時の状況がネガティブだと、SNSや口コミサイトなどで企業のマイナスな部分を書き込まれることがあるからです。

 

今日では新卒・中途に関わらず、求職者が会社への応募時や選考過程時、内定を承諾するかどうかのタイミングで口コミサイトを見ることは当たり前になっています。こういった際にネガティブな口コミを見られてしまうと、応募が減るとともに、内定を受諾してもらえなくなる可能性があります。

 

また、新卒の離職率は求人サイトでも公表が義務化されています。この離職率が高くなることで、採用の難易度が高まってしまうことになるのです。

会社のイメージダウンになる

新卒が多く離職している情報が世間に知れると、会社のイメージダウンにもつながります。

 

離職率が高い企業というイメージが定着すると、新たな人材を確保しづらくなるだけでなく、「ブラックな企業・職場なのではないか?」という印象にもつながります。

 

近年は企業の社会的責任がより重視される風潮となっており、ブラックな印象が付いてしまうと企業のイメージが下がり、人材採用のみならず事業運営全般にも悪影響が出る可能性があります。

社員のモチベーションが低下する

一緒に新卒で入社した同期、育ててきた後輩の離職は、残ったメンバーのモチベーションにも悪影響を及ぼします。前述した“会社のイメージダウン”は、じつは社外から会社に対するものよりも、社内から経営陣に対するところから始まります。

 

「うちの会社大丈夫なのかな?」「このまま在籍していて大丈夫かな?」「知らなかったけど、何か待遇やマネジメントに問題があるのかもしれないな」といった心理です。きちんと対応していかないと、連鎖的な離職が生じる恐れがありますので、注意が必要です。

新卒の離職率を下げる10の方法

新卒社員の離職率を下げるためには、離職を生み出す理由を認識した上で、継続的な対策が必要となります。ここでは、新卒離職率の改善につながる10の方法を紹介します。

 

1.労働条件を整備する

新卒の離職率を下げるためには、まず基礎的な労働条件を整備しましょう。

 

労働条件に対する不満は離職に大きな影響を与えるので、きちんと解消する必要があります。採用時に話している内容と雇用条件、実情を一致させることが大前提です。

 

また、残業や勤怠管理に関する社会の感覚が、働き方改革などを通じて数十年前とはガラッと変わったことを認識する必要もあります。サービス残業の発生や休日出勤が生じているようであれば、業務改善などを通じて解消していきましょう。

2.採用のミスマッチを防ぐ

採用におけるミスマッチを防ぐことも大切です。

 

離職要因のところでも紹介した入社前後のギャップ(リアリティギャップ)が新卒の早期離職における大きな要因です。会社説明会や選考、内定時などの各プロセスで、仕事の楽しさだけでなく厳しい面もしっかりと説明することで、採用のミスマッチを防ぐことが大切です。

 

採用活動内で、入社後の厳しさなどもしっかりと共有してミスマッチを防ぐ試みをRJP:リアリスティック・ジョブ・プレビューと呼びます。

3.初期研修でのマインドセット

初期研修でマインドセットを整えることも、離職を防ぐためには重要です。

 

前述のようなRJPを行なっても、働いた経験がない新卒社員が、仕事の厳しさやぶつかる壁を正確に想像することは容易ではありません。したがって、初期研修を通してリアリティギャップに対する心構えなどを作っていくことが大切なのです。

4.離職のサインをキャッチする

新卒社員が発している離職に対する危険信号をキャッチして、手遅れにならないうちに手を打つことも大切です。早期に対処することで、離職を防げる可能性があります。

 

上司や先輩社員の方から積極的にコミュニケーションをとり、新卒社員が悩みや思いを相談しやすい雰囲気を作るよう心がけましょう。

 

上下関係が生じる部署内では相談しづらい内容も生じてきますので、定期的に人事部から面談をするようなこともおすすめです。

5.メンター制度やブラザーシスター制度を導入する

直属上司やOJT担当とは異なる、別部署で年齢が近い若手社員などをブラザーシスター・メンター、メンターなどに設定する制度もおススメです。

 

前述の人事部面談と同様で、新入社員からすると上下関係が生じるOJT担当や上司には相談しにくい悩みも生じます。

 

採用人数が多くなってくると、人事だけですべての新入社員をケアすることも難しくなってきますので、状況に応じてブラザーシスター制度やメンター制度を活用しましょう。

 

6.評価制度を見直す

評価制度を見直すことも、新卒社員の離職に対して有効な場合があります。

 

透明で公正な評価制度は、優秀な人材の流出を防ぐ効果があります。成果や能力をきちんと評価することが優秀層のエンゲージメントを高めますj。

 

近年は成果主義を徹底させ、優秀な人材は若手であっても評価し適切な報酬を設定、抜擢する企業が増えています。

 

評価制度の運用のポイントは、目標設定と進捗のケア、評価のフィードバックなどをきちんと行うこと、また、報酬を市場の相場観にきちんと見合うレベルにすることです。報酬改善は、労働生産性を改善しなければ実現できませんが、中長期的には大切な部分です。

7.社内コミュニケーションを活性化させる

社内コミュニケーションを活性化させましょう。それによって、職場の雰囲気もよくなります。

 

上司や周囲が自分の提案に耳を傾け、実際に取り入れられるようになると、新入社員でも意見を言いやすくなり、仕事が面白くなってエンゲージメント向上につながります。

 

新入社員の立場に立った時、「何を言っても聞き入れられない雰囲気」や「相談しづらい風土」があると、何も相談等がないまま突然の「退職」が生じがちです。離職リスクを把握するためにも、コミュニケーションを活性化させましょう。

8.上司の人間性教育

上司の人間性教育も行いましょう。新卒社員の離職防止を考える上で、上司は非常に重要なファクターです。

 

とくに、新卒社員の定着や育成を考える上では、じつは上司の能力以上に「人間性」が大切になります。だからこそ、新卒社員に尊敬されるよう上司の人間性を磨くことが大切です。

 

9.学ぶ機会を作る

新卒社員が学ぶ機会を作ることも、離職防止になります。

 

前述した通り、最近の新卒社員は「自己成長」の機会を重視し、社内でキャリアを形成していけるかどうかを非常に重視する傾向にあります。

 

そのため、各種研修など定期的な学習の機会や、資格取得の支援といった自己成長を実感できる仕組みを、積極的に提供していくことが必要です。

10.キャリア支援を行う

新卒社員に対してキャリア支援を行うことも重要です。

 

自己成長を重視する新卒社員のモチベーションを高めるためには、キャリア形成をきちんと支援することが大切です。スキルマップや評価シートなどを用いて、本人と一緒に考える機会を設けるようにしましょう。

 

また、新卒社員に対するフォロー研修などに、キャリアプランを考える機会を組み込んで、社内でどのように実現していけるかを考えてもらうことも大切です。

中小企業が取り組むべき新卒離職への対策

厚生労働省のデータからもわかるとおり、新卒離職への対策が経営面で大きな課題になってくるのは、大手企業以上に中小企業です。ここでは、中小企業が取り組むべき新卒社員の離職に対する対策を紹介します。

 

中小企業ならではの対策を

中小企業は大手企業よりも採用が厳しく、「採りづらく辞めやすい」からこそ、採用した新卒社員が辞めずに定着するように対策を講じる必要があります。

 

中小企業だからこそできる取り組みを行うことが大切です。中小企業は大手と比べると対象となる新卒社員の人数が少ないからこそ、柔軟かつ丁寧に対処できます。

 

例えば、経営陣と関われる場を増やす、部門を超えた交流やコミュニケーションの機会を作る、新卒者を単発のプロジェクトに入れて新しい経験を積ませるなど、フットワークが軽い中小企業の特性を生かしたケアなどを行うのがよいでしょう。

 

第二新卒者の採用も検討すべき

中小企業では、第二新卒者の採用も検討することもおすすめです。

 

中小企業庁が行った「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」(2014年12月)によると、採用後3年間の離職率は新卒者が4割を超えているのに対し、中途採用者は約3割と少し低くなっています。中途採用をすることで、社会人経験者を採用できるとともに離職を減らすことができます。

 

社会人経験者は、人間関係の作り方や仕事の厳しい現実を知っています。そのため、リアリティギャップが起きにくいのです。中小企業が若手採用を考える際は、新卒だけにこだわらず、既卒や第二新卒を採用し育成することも積極的に検討するとよいでしょう。

まとめ

新卒社員の早期離職は、企業の将来に大きな影響を与えます。だからこそ、早めに対策を行うことが大切です。

 

新卒の主な離職要因を考えていけば、対策も見えてきます。報酬や勤務体系の改善などは労働生産性の向上も必要であり、すぐに実施できるものではないかもしれません。

 

まずは、新卒を取り巻くコミュニケーション状況を改善するためのブラザーシスター制度や上司の人間性研修、フォロー面談などがすぐに取り組める施策なので、早めに着手することがおすすめです。

 

HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、組織文化や業務に必要なスキルを教育し、円滑な職場適応ができるようする新人研修や、若手の退職を防ぎ目の前の壁を乗り越える実行力を身に付ける若手研修などを実施しています。

 

さらには、自らの力で自立的に目標を達成していくことができるようになる原田メソッド®研修や、個人の人格を高め組織の生産性を上げることができるようになる「7つの習慣®セミナー」なども提供しています。

 

こういった研修で、新卒社員の離職を防ぐお手伝いをさせていただきますので、お気軽にご相談ください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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