<目次>
- 「人的資本」の背後にある時代変化と考え方
- 「部長・課長」から「組織のNo.2」へ|管理職の定義を再考する
- 1.なぜ今、現場で「気合いと根性」が通用しないのか?
- 2.促すべきは「管理」から「共創」へのシフト
- 3.No.2に身に付けてもらいたい「3つのスキル」
- 4.人事の役割は、組織のNo.2を育てること
- 5.【ACTION!人事が明日からできること】
「人的資本」の背後にある時代変化と考え方
「最近の若手は、何を考えているのかわからない」
「数字も出さなければいけないのに、部下のケアばかりで疲弊している」
人事部長や部門責任者のもとには、こうした管理職の声が日常的に届いているのではないでしょうか。
ジェイックでは管理職向けの研修を提供していますが、実際に研修に参加される管理職からは、「上からの期待と、下からの要望や不満の板挟みになり、これまでのマネジメント方法では通用しなくなっている」といった声が多く寄せられています。
もし、管理職自身が「マネジメントがつらい」「手応えがない」と感じているのであれば、それは決して能力不足ではありません。マネジメントの前提そのものが変化したことに、適応が追いついていないだけでしょう。
本記事では、人事・営業などのセクション責任者を担う管理職が、「管理者」から「組織のNo.2」へと役割を再定義し、共創型マネジメントへ移行するための視点と実践ポイントを整理します。
「部長・課長」から「組織のNo.2」へ|管理職の定義を再考する
まず、『マネジメント』を変革するためには、人事・経営サイドから現場の管理職へ提示する「役割」をアップデートする必要があります。彼らは単なる「部長」や「課長」という役職者ではありません。
組織として彼らに期待すべき役割は、そのセクションにおける「経営者」の右腕、つまり「組織のNo.2」です。
- トップ(経営層・事業部長):中長期の戦略や市場環境に向き合う
- 現場メンバー:目の前の業務や顧客、日々の成果に向き合う
両者の視点と各役割は、組織運営や顧客への価値提供を考えると、どちらも欠けてはいけないものでしょう。一方でトップと現場の関連性は、管理職であるNo.2が放っておけば必ず乖離します。
各セクションのNo.2の役割は、トップと現場の乖離を埋め、経営戦略を現場が具体的に動ける戦術に落とし込み、現場の熱量と実態を経営の推進力に変えることです。人事部門は、管理職に対し「マネジメント」だけではなく、この「結節点(コネクター)」としてのNo.2の自覚を促す必要があります。
1.なぜ今、現場で「気合いと根性」が通用しないのか?
昭和・平成の時代は、「管理統制型」のマネジメントが機能していました。「俺の背中についてこい」という強力なリーダーシップと、多少の理不尽も部下がカバーする「気合い・根性」で成果を生んでいた時代があったことは事実です。
しかし、ビジネスの前提条件が変わり、現場では常に「変化」が起きています。人事は、この変化のメカニズムを理解し、管理職へ「なぜ変わる必要があるのか」を丁寧に紐解くことが必要です。
はじめに、管理職に変化が必要な背景を見ていきましょう。
変化が必要な3つの背景
背景①:正解のない「VUCA」とAIの台頭
経験則に基づく指示が通用しにくい時代です。管理職が指示して成果に繋がることは、以前よりも少なくなりました。加えて、AIが答えを出せる領域において、上司の「知識量」は以前よりも権威を持ちません。特に、ベテラン管理職が陥りがちな「過去の正解の押し付け」は、部下の成長を阻害する要因となります。
背景②:コンプライアンスと「個」の尊重
「厳しさ」と「ハラスメント」の境界線は年々シビアになっています。昭和・平成初期のような「愛のある鉄拳制裁」は即レッドカードです。「ハラスメント」に該当するケースが増えたことで、マネジメントに苦しむ管理職は増加しています。
背景③:人材の流動化
「黙って働けば報われる」という価値観は崩壊しました。キャリアの多様性が浸透している現代では、画一的な統制で縛ろうとすれば、優秀な人材から順に流出していきます。
2.促すべきは「管理」から「共創」へのシフト
では、具体的にどのようなマネジメントスタイルへ誘導すべきでしょうか。
理想的なマネジメントは、「管理して部下を動かす」スタイルではなく、「共に仕事を創り上げ、部下が自ら動く環境を作る」スタイルでしょう。すなわち「共創型のマネジメント」です。
管理職の仕事は、部下の行動を監視することではありません。
「No.2」(部長・課長)の役割は、トップが描いた抽象度の高いビジョンや戦略を、現場が咀嚼できる言葉に翻訳し、腹落ちさせて浸透させること。そして、メンバー一人ひとりの強みを引き出し、パズルのように組み合わせて、チームとしての成果を最大化することにあります。
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【マネジメントのポイント】数字はトップダウン、施策はボトムアップ
人事としては、以下の「硬軟の使い分け」ができるよう、管理職を指導・評価していくことが重要です。
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たとえば、50代の管理職は経験豊富なので、部下に対して目標だけでなく”やり方”まで事細かに指示したくなる傾向があります。しかし、業務で扱うツールや顧客心理は、若手の方が詳しく知っていることもあります。
そのため、50代の管理職には、「やり方の部分で現場に余白を残す勇気を持ってください」といったフィードバックが効果的です。
また、30代・40代の管理職は「物分かりの良い上司」になろうとして、目標設定の段階からメンバーの顔色を伺う傾向があります。「目標」までボトムアップにしてしまうと、経営層との乖離が埋まらず、組織のベクトルが弱まります。
30・40代への管理職には、「ゴールは厳しく示し、プロセスで寄り添うメリハリが部下との信頼を生みます。」と伝えることで、部下への関わり方が変わるでしょう。
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3.No.2に身に付けてもらいたい「3つのスキル」
マネジメントの概念は理解できても、現場は生モノです。机上の空論で終わらせず、No.2が具体的な行動に移せるように、研修や管理職との1on1では、以下の「3つのスキル」の実践を呼びかけてみましょう。
①メンバーに合わせて関わり方を変える
マネジメントやリーダーシップに「唯一の正解」はありません。部下の成長度に合わせて、マネジメントスタイルを変える「シチュエーショナル・リーダーシップ」を身に付けてもらいましょう。
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【メンバーの4つのタイプと対処法】
1.「やる気あり・スキルなし」の新人(ルーキー)
- 必要な関わり:具体的な指示・命令(ティーチング)
- 手取り足取り教え、小さな成功体験を積ませます。放置は厳禁。
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2.「やる気低下・スキルそこそこ」の若手・中堅(壁にぶつかった状態)
- 必要な関わり:説得・コーチング
- 仕事に慣れた若手社員が主な対象層です。なぜうまくいかないのか、悩みを聞き、メンタル面をサポート。30代・40代マネージャーの共感力が活きるフェーズ。
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3.「やる気不安定・スキルあり」のベテラン・職人
- 必要な関わり:参加・相談
- マネージャーが最も苦戦するメンバーでしょう。「指示」すると反発メンバーなどが当てはまります。「〇〇さんの知恵を貸してほしい」と敬意を持って相談し、意思決定に参加してもらうことで、彼らは強力な味方に。
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4.「やる気あり・スキルあり」のエース
- 必要な関わり:委任(任せる)
- 主にスキルフルでやる気の高い社員に当てはまります。邪魔をしないことが最大のマネジメントです。ゴールだけ共有し、あとは自由にやらせる。
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相手の「強み」や「成長度」に合わせて、『時には厳しく指導するティーチャー、時には悩みを聞くカウンセラー、時には背中を押すリーダーへと役割を変える』といった、柔軟性こそが、部下のエンゲージメントを築く第一歩となります。
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②「我慢」も仕事!任せることが育成
管理職の中でも特にプレイングマネージャーにありがちなのが、「自分でやったほうが早い」と部下の仕事を巻き取ってしまうことです。特に、プレイヤーとして優秀であれば、部下の不手際やスピード感のなさにイライラすることもあるでしょう。
一方で、仕事を巻き取ってしまった瞬間、部下の成長は止まります。加えて、No.2は永遠にプレイング業務から抜け出せず、「忙しい、忙しい」と言い続けることになります。
部下の仕事を奪うことは、部下の成長機会と、管理職自身のマネジメント時間を奪うことと同義です。一方的な指示ではなく「この件、どう進めればうまくいくと思う?」と問いかけ、待つ姿勢(我慢)こそが育成であると認識してもらいましょう。
③「コーチング」と「ファシリテーション」の装備
現代のNo.2には、2種類のスキルを身に付けてもらいましょう。
「なぜ(Why)できなかった?」と過去を詰めるのではなく、「何があれば(What)できる?」と未来を問うアプローチへ転換させます。
一方通行の共有や、権限の強い人だけが発信するMTGは避けましょう。全員の知恵を引き出し、合意形成へ導くスキルが、チームの生産性を劇的に高めます。
1on1といった個別の対話では、「なぜ(Why)できなかった?」と過去を詰めるのではなく、「何があれば(What)できそう?」と問いかけ、部下の中にある答えを引き出します。
また、会議の生産性は、No.2の「引き出し、まとめる力」に左右されます。会議の場では特定の人の独壇場にせず、No.2が全員の意見をテーブルに出させる役割に徹しましょう。
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4.人事の役割は、組織のNo.2を育てること
最後に、人事が管理職に対して啓蒙すべきマインドセットについてです。
部長や課長などのセクション責任者が、「組織のNo.2」としての自覚を持つことは、「自分はNo.2だから偉いのだ」といった自己認識ではなく、誰よりも組織全体の成果に対して「当事者意識」を持つことです。
No.2は、経営層や自分の上司の「理想」と、現場の「リアル」の間に立ち続けなければなりません。経営層の想いを翻訳し伝え、現場が過度に疲弊している場合は防波堤となり、時にはパイプラインの役割を担うことが必要でしょう。その泥臭くも重要な役割を担えるのは、現場を知り、かつ経営視点を持つNo.2しかいません。
No.2のマネジメントが変われば、部下の目の色が変わり、組織の空気が変わり、必ず業績が変わります。
人事部門が担うべき管理職育成は、管理職が「管理」ではなく、メンバーと「共創」できるように背中を押すことです。
5.【ACTION!人事が明日からできること】
最後までご覧いただきありがとうございました。本記事では、『管理職=組織のNo.2』として紐解きました。記事を読み終えて、自社の管理職育成に向けて、人事としてのアクションを一つ決めてみましょう。
数字の達成度だけでなく、「部下の意見を吸い上げているか」「チームで解を導き出しているか」といったプロセス評価を見直す。
従来の研修プログラムだけでなく、「コーチング」や「ファシリテーション」の実践的なトレーニング機会をつくる。
次に管理職が参加する会議や面談で、「○○さんには、各セクションの経営者(No.2)として、現場と経営をつなぐ役割を期待しています」と言語化して伝える。
現場の管理職が変われば、会社は必ず変わります。彼らのマネジメントのOSをアップデートする一歩を踏み出してみませんか。







