本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.1は下記よりどうぞ。
<目次>
人が変わらない理由を解除して行動変容を促す方法
相手を変えるためには、変わることを強制するのではなく、変わらない理由を解除することが大切です。
ネガティブなアプローチをされても人は変わりません。必須条件のように伝えて強制されると、「変わりたくない」という気持ちが働いてしまいます。瞬間的には、行動を強制することは出来るかもしれませんが、気持ちがついてきていませんので、じきに戻ってしまいます。
「どうすればいい状態になるかを一緒に考えていこう」というスタンスで相手に接していくことが大事です。
たとえば、弱点を克服するのは難しいものです。「自分の居心地がいい場所をもう少し広げてみよう」「一歩足を踏み出してみよう」というアプローチをすると、変わっていきやすいです。
「メンバーのパフォーマンスを上げたい、成果が出るようにしてあげたい」と思っている上司の方は多いでしょう。それを実現するには、自分たちの関わり方を変えていく必要があります。では具体的に、何を変えていけばいいのでしょうか。
これからのリーダーに求められる役割
リーダーに求められる役割の変化、マネジメントのやり方が変わってきたことは、感じられるでしょうか。ラーニングエージェンシーさんが、組織・チームのあり方を5,000人の方々に調査した結果、79.8%の人が「この10年間で管理職に求められることが変わった」と回答しています。
求められることが変わっているということは、自分が体感・体験してきたことだけでは、いま通用しなくなってきているということです。
ではどういうことが管理職に期待されているのかというと、「スピード」と「対話力」そして「個人力の更なる向上」です。
いまは「俺の背中を見て育て」というマネジメントは、期待されていません。対話して育てていくことが大切です。
また、個人力の更なる向上というのは、リーダー自身の更なる向上が求められているということです。
調査の中では「個人力」≠「専門スキルやテクニカルなスキル」だと伝えられています。個人力とはどんなものなのかというと、以下のようなリスキリングしたリーダーシップです。
例えば10年前には、「説得を重んじる」リーダーが求められていましたが、ここ数年では減少してきています。これに対して大きく数字を伸ばしているのが「対話を重んじる」というリーダーシップです。
「トップダウンで物事を進める」リーダーもポイントを大きく下げ、今は「ボトムアップで物事を進めていく」リーダーシップが求められています。
「部下に自分の模倣を求める」リーダーも、55ポイントも落としていて、逆に「部下の強みを生かす」リーダーシップが大きくポイントを伸ばしています。
左側の従来型リーダーが面談をすると、部下に求められてないフィードバックになってしまっている可能性は高いでしょう。つまり、「私はこうやって成果をあげてきた。こうやれば上手くいく。だから、あなたもこうしなさい」といった指示・命令だけのフィードバックです。
つまり、現在は経験を積んだ管理職ほど、リーダーシップに対する価値観やマネジメントのリスキリングをしていかないといけない時代になってきているのです。
フィードバックを効果的に進めるスキルの身につけ方
賞与面談、フィードバックを効果的に進めるためのスキルの身につけ方を見ていきましょう。リーダーシップのスキルをただ学んでも、フィードバックの対話力が向上していきません。
なぜなら、人間関係は下図のような構造になっているからです。
フィードバックというのは、相手を指導していく、スライドの三角形の頂点、「リーダーシップを発揮する」部分にあたります。
フィードバック力を高めたいと思うと、「フィードバック力強化セミナー」といったスキルを伸ばすセミナーに派遣しようと思ってしまうかもしれません。
効果的なフィードバックをするためのスキルは大切です。しかし、そもそも相手との人間関係・協力関係ができていないのに、フィードバックするスキルだけを学んでも上手くいきません。
現場のメンバーから「仕事なので言われたことはやります」といった声を聞くことはあるでしょう。この状況でメンバーから協力を得られていると言えるでしょうか。
「フィードバックをしてくれる上司の役に立とう」「上司のことは信頼している」といった関係性が出来上がってない中で指導しても、うまく機能しません。
そして、協力関係が得られる状態になる手前には、最も大切な段階があります。
「この人苦手だ」「この人はいつも自分の都合ばかりだ」といった形で、相手に好かれていない状態では、「この人に協力しよう」とは思ってもらえないでしょう。
では、私たちはどんな相手に協力したいと思うでしょうか。「自分に関心を持ってくれている」「自分を大切な存在だと思ってくれている」という人とは、一緒に頑張りたいと思うでしょう。
当たり前の話なのですが、人間関係⇒協力関係⇒リーダーシップの発揮という順番で、しっかりと下から積み上げることが大切です。
信頼関係が醸成されてないのに、「みんな仲が良さそうだから大丈夫と捉えて任せていたら、育成がうまくいっていない」といったケースも意外と多いです。
次に、人間関係⇒協力関係⇒リーダーシップの発揮という階段はどのように上がっていけるかを解説します。
組織におけるリーダーの対話力の必要性
上記は、デール・カーネギー『人を動かす』を基に、人間関係⇒協力関係⇒リーダーシップの発揮という階段をどうやって上っていけばいいかを具体的に解説したものです。
まず人間関係を強化するためには、図の1〜9の考え方を大事にしていくことが大切です。
そして、相手からの協力を得るためには、その上の21の原則を実践していくと良い協力関係を得ることができるでしょう。さらに指導や教育などリーダーシップを発揮していくためには22〜30の原則を活用していくと良いでしょう。
こういった行動を取る対応力を身につけていくと、賞与面談でのフィードバック力は、おのずと上がってきます。この30のやり方は、『人を動かす』で提唱されている30の原則です。
なぜ、『人を動かす』の30原則を実行すると、フィードバック力が上がるか。それは歴史が証明しています。
が選ばれる3つの理由
『人を動かす』は100年以上前に書かれた書籍ですが、日本国内でも1,000万部以上買われている書籍です。今でもビジネス書ランキングでは1ページ目に入ることも多いですし、経営者のおススメ書籍などではかなりの確率で名前があがる1冊です。
また、アメリカの売上トップ500企業のうち90%以上の企業が「賞与面談のフィードバックをするような立場にある管理職、リーダーは必ずプログラムとして受けてください」と導入しているものです。
賞与面談では対話力が大事です。ただ、コミュニケーションというのは誰もが物心ついた頃から実施して、自分なりのスタイルを作ってきているものです。
話し方や話すのが得意・苦手といった心理は、これまでのコミュニケーションの体験から知らず知らずのうちに自分の中で形成されているものです。
しかし、自分の好きな人、合う人だけがメンバーに配置することは不可能です。従って、管理職やリーダーは、どんな相手にも効果性の高い面談、フィードバックができるように、自分が取れるコミュニケーションの幅を広げる必要があります。
賞与面談のフィードバックで対話力を高めるために、どんなことを身につければいいのか。1つだけ、事例をお伝えします。相手に行動を促す伝え方をする際のフレームワーク「マジックフォーミュラ」です。
相手に行動を促したいときは、出来事から伝えることが有効です。
自分が体験、体感してきたストーリーです。「私はこの経験から、こういう行動をあなたも取った方がいいんじゃないかと思った」と伝えていく流れです。
そして次に、聞き手に促したい行動を次に簡潔に伝えます。加えて、その行動をとることで聞き手が得られる利益を一緒に伝えましょう。
相手に何か行動を促したいときは2分間程度で伝えるのが有効と言われています。30秒では伝わりません。しかし、5分ぐらい話されると、結局何が言いたかったのかわかりません。情報を盛り込めて、相手の集中力を維持させられるのが約2分間です。
そして、2分間の中でも、1分50秒。90%は出来事を伝えます。相手に出来事を伝えるというのは、疑似体験をしてもらうということです。
賞与面談におけるフィードバックというのは、半期単位で実施することが多いでしょう。そうなると、盛りだくさんで伝えてしまいがちです。
しかし、聞く側からすると、いっぱい伝えられても頭に入りませんし、行動を一気には変えることは困難です。
だからこそ、「絞る」ことが大事です。そして、「行動したらこんな良い事があるから、絶対に行動した方がいいよ」と相手にとってのメリットを伝えることが大事です。
このマジックフォーミュラのフレームワークを1つ知っているだけでも、フィードバックの内容は変わってきます。
私達はビジネスにおける常識として「結論から伝えましょう」と、ずっと言われてきています。報連相において、結論から伝えることは大切です。しかし、これでは人を動かすことは難しいです。
報告のときには結論から伝えるのは有効です。しかし、相手に行動を促したいときに結論から伝えると、指示命令に聞こえてしまいます。
冒頭で少し紹介した通り、強制されると人は動きません。管理職はこうした人を動かすためのリーダーシップについてリスキリングすることが大切です。
こういった対話力を高めるためのフレームワークは理論だけ習えばできるようになるかというと、非常に難しいです。なぜなら、前述のように私たちは、言葉をしゃべれるようになってから今まで積み重ねてきたコミュニケーションの「癖」、自分なりの型を持っているからです。
従って、トレーニング、つまり実践と反復練習が大切です。おすすめのトレーニング方法を紹介します。
これは先ほどのマジックフォーミュラを身に付けることを念頭に置いてトレーニング方法ですが、もちろん他のものにも応用できます。
まずは、マジックフォーミュラを使って、先ほどの2分間のフィードバック練習をやります。
一般的にロープレなどの実践トレーニングでは、している間は遮りませんが、このトレーニングでは敢えて止めます。
「話す」ということは運動に近いもので、頭で考えながらずっと喋っているわけではなく、ある程度反射的にやっているものです。そのため、話し終わってからまとめてアドバイスされても気づかない、修正できないものです。
そこで、このトレーニングでは、コーチング・イン・ザ・モーメントと言って、その場で遮ってアドバイスして修正しながら実践してもらいます。
このように途中で止めながら、マジックフォーミュラを使った2分間フィードバック、2分間スピーチをロープレします。
そして、コーチング・イン・ザ・モーメントに加えて、繰り返しやる、反復練習が大事です。先ほど伝えたように「話す」ということはある種反射的にやっていることです。スポーツにおけるフォーム練習などのように反射的にやっている行動は、繰り返し練習して、「身体で覚える」ことがとても大切です。
タイム・スペース・ラーニングといって現場での実践を加えながら、繰り返して学ぶことが非常に有効です。
面談のフィードバックでいえば、ロープレして、1人目が終わったら、もう1回ロープレ面談フィードバックをやる。これを繰り返していくといったイメージです。
相手に行動を促す伝え方やフィードバックを成功させる上で最も重要なポイントは、相手に「動こう!」と思うモチベーションを生み出すことです。
自ら動き出す組織の形成を目指していきましょう。賞与面談というのは、社員の組織エンゲージメントを高める大きな機会です。一方で、モチベーション低下や離職を促すきっかけにも繋がる諸刃の剣です。
たとえば、もらえる金額だけにフォーカスされてしまうと「もっと高くもらえる企業がありそうだな」と転職活動のきっかけになってしまうかもしれません。また「自分のことは全然見てくれていない」「正当な評価ではない」と思われても同様です。
しかし、やりがいや自分の強みが実感できれば、組織にとっての存在価値を感じられますし、エンゲージメントも高まります。「この会社をもっと強くしていきたい」「もっと頑張りたい」と思ってくれるものです。
だからこそ、リーダーのフィードバック力を高めることが大切です。自社内でリーダー育成を検討されている場合は、お気軽にご相談いただければと思います。
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