社員にとっては働くうえでモチベーションの1つになりうる「賞与」。しかし、「賞与面談」は離職や転職活動のきっかけにもなりうる諸刃の剣であることをご存知でしょうか。
面談を通じて適切なフィードバックができればモチベーションやエンゲージメントの向上につながりますし、主体性も増していきます。一方で、賞与面談を通じてモチベーションを落としてしまうこともあります。モチベーションを上げるフィードバックと下げるフィードバックは何が違うのでしょか。
実際のアンケートデータから見る考察、賞与面談フィードバック力を高めていくトレーニング方法を解説します。
*本レポートは2023年6月8日に開催したセミナーを基に作成したものです。予めご了承ください。
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社員にとっては働くうえでモチベーションの1つになりうる「賞与」。しかし、「賞与面談」は離職や転職活動のきっかけにもなりうる諸刃の剣であることをご存知でしょうか。 面談を通じて適切なフィードバックができればモチベーシ...
<目次>
賞与通知時に面談を実施すべき理由とは?
現在ご覧になられている皆様は、賞与通知のときに面談フィードバックを実施していますでしょうか。
実際に賞与面談の有無に関する調査結果を見てみると、このようなデータになります。
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じつは賞与面談している企業より、面談を実施していない企業のほうが多くなっています。では面談を実施すべき理由を改めて考えてみましょう。
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賞与面談の目的、ゴールは大きく3つあると感じます。
- 1つ目は社員メンバーのモチベーションを高めること。
- 2つ目に組織への帰属意識、エンゲージメントを向上させること。
- 最後に、その後のパフォーマンスを向上させること。
現在の人事制度において、賞与は評価連動になっている会社が大半で、月次の給与と違って、賞与は「評価期間の成果・パフォーマンスに見合ったもの」を提示するケースがほとんどだと思います。
従って社員にとって、賞与は自分自身のパフォーマンスがどう評価されているのかを知る機会ということになります。社員メンバーの功績を評価し、努力を認めてあげることで「会社に貢献できている」という実感を得ることができます。その結果、モチベーションやエンゲージメントが高まるということです。
また、賞与面談がメンバーと上司のコミュニケーションが活性化する機会になっていくと良いでしょう。面談を通じて、メンバーの希望や課題を聞くための機会にしていくことが大切ですし、メンバーに上司の期待や評価を伝える機会にしていく必要があります。
更に聞く機会や伝える機会だけでなく、面談を通じて、エンゲージメントやパフォーマンスの向上に繋げていくことが重要です。
適切に賞与面談を実施することで、このような効果が得られますので、まだ賞与面談を実施されていない企業さんは、ぜひ実施してみてください。
賞与面談は満足されているのか?
賞与面談の実施目的やゴールは今までお伝えしたようなものですが、実際にお伝えした効果が得られているのかというと、現実はそうではないケースも多いようです。
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先ほどの賞与面談の有無と同じ調査で、賞与面談に対する満足度も確認されています。賞与面談に対する満足度は、「すごく満足している」「多少満足している」という満足層は約30%です。
そして、「非常に不満がある」「少々不満がある」という不満足層も同じく約30%です。
つまり、モチベーションやエンゲージメント向上を意図して賞与面談は実施しているけど、実際にはその通りになっていないというケースが多く見受けられるわけです。
そこで、賞与面談の不満をどんなところで感じられてしまうかを紐解いていきます。
賞与面談に不満が生じる理由
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賞与面談に不満が生じる理由を確認してみると、以下のような理由があげられます。
まずは賞与査定結果が不当であると感じられてしまうということ。また、十分な説明やフィードバックを受けられていないと感じる場合。説明やフィードバックが十分でないと感じていれば、査定結果への納得感も減少するでしょう。
また、賞与面談が形式的すぎて、自分の仕事ぶりが十分に評価されていないと感じる方も多くいるようです。とくに上司側から一方的に評価だけを伝えるような形だと、形式的すぎる、分かってくれていないという不満は生まれやすいでしょう。
また、賞与面談を自身のキャリアアップに繋がらないと感じさせてしまうケースも問題です。ポジティブなフィードバックにしても、ネガティブなフィードバックにしても、未来につながるフィードバックを受けられていないと感じているわけです。
面談を終えて、「今の仕事で頑張っていてもしょうがない」と感じられてしまうような状態では、その後のパフォーマンス向上は期待できません。
では、こうした不満を生み出してしまう賞与面談はどんなもの、どんなリーダーでしょうか。
賞与面談(フィードバック)が下手なリーダーの特徴
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1つは、フィードバックのタイミングを逃してしまうケースです。
パフォーマンスに関するフィードバックは、なるべく「その場」ですることが理想です。つまり、相手の記憶があるうちです。お互い忙しくて時間が取れない。その結果メールで通知する、というようにタイミングを逃してしまうのはフィードバックが上手いとはいえません。
賞与面談は、評価期間についてまとめて事後にフィードバックする形です。従って、普段のフィードバックがきちんとされていなければ、そもそも不満が生じやすい構造になります。また、事後にすることを踏まえて、本人の記憶や認識がどうなっているかを確認しながら実施する必要もあります。
2つ目はフィードバックが抽象的すぎて相手に伝わらないケースです。
賞与面談は、フィードバックする上司側も金銭が絡んでいるので言及しにくい。また、上からダメ出しするようなこともしない方がいいだろう・・・。変に相手に気を遣った結果、抽象的すぎるフィードバックになってしまうケースです。メンバーの気持ちに配慮することは大切ですが、気の遣い方を誤ってしまっているといえるでしょう。
そして、適切なタイミング、表現でも、ネガティブなフィードバックばかりでポジティブな話が少ないケースです。人は基本的に、批判や非難を言われたくない生き物です。
「賞与面談の最後に少しだけ褒めてもらったけど、殆どはネガティブな指摘のオンパレードだった」ということだと辛いですよね。また、過去の行動に対する指摘だけに終始すると今更変えられないことだけなので、指摘される方が気持ちのやり場がなくなってしまいます。
そして4つ目が、フィードバックを受ける部下の気持ちを尊重しないです。
たとえば、「すごく頑張った」と自負しているところに何も触れてもらえなかったり、自分がやりたい分野とはかけ離れた話ばかりされたりすると、モチベーションは上がりません。
フィードバックされる側とする側の心の声
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ここでフィードバックされる側とする側、それぞれの気持ちについて考えてみます。
賞与面談というのは、当然賞与、待遇に関する話です。現場の心の声として、「収入を上げたい」という気持ちは全員にあるでしょう。「仕事は生活の糧である」というのは、それが全てかは置いておいて、厳然たる事実です。
ただ、収入アップをするためなら何でもいいというわけではありません。
「収入は大事だし上げたいけど、自分の興味関心に沿った仕事を通じて上げていきたい。また、自分の強みを活かした仕事をしたい」といったニーズがあります。
また、最近は、自分個人の評価というよりも「チームにとって貴重な存在だと認識されたい」という欲求が、最近の若手は多い傾向があります。
ワークライフバランスを重視する傾向も強くなっています。ワークライフバランスはもちろん大切です。ただし、変にとらえると、たとえば賞与があまり高くなかったとしても、「仕事に全てかけているわけじゃないから」と自分に言い訳ができてしまう側面もあります。
このような現場の気持ちを踏まえたフィードバックが必要になります。
また、フィードバックする側にも思いや言い分があります。
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フィードバックする上司からしてみると、全員がハイパフォーマンスしてくれて、全員に高い評価をできれば一番良いでしょう。しかし、現実にはそうはいきません。そして、悪い評価をした人には「何とか改善して欲しい」と思っている上司が大半です。
そこには、評価改善・収入アップをするには「自分の気持ちばかりを優先しないで、弱点を克服しなければいけない」という気持ちもあるでしょう。
しかし、ここに相互ギャップが発生します。賞与面談のフィードバックは、部下育成における絶好の機会になります。だからこそ、この相互ギャップを押さえた上で取り組んでいく必要があります。
マネジメント層の人たちも若かった頃は、先ほどの現場の声と同じようなことを思ったこともあるのではないでしょうか。
今の若者たちが思うことに共感する部分はあるでしょう。全く違うわけではなく、その傾向が強いか弱いか、その意見を強く主張するかしないかといった話です。
しかし、だからこそ、「変わっていかなければいけない」と強制したくなってしまう上司が多いのでしょう。しかし、強制では人は変わりません。大切なのは、人が変わらない理由を解除して行動変容を促していくことです。
本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。







