退職者が戻りたくなる組織作り 〜一度退職し、戻ってきた管理職が本音を激白〜 Vol.1

退職者が戻りたくなる組織作り 〜一度退職し、戻ってきた管理職が本音を激白〜

少子化や働き方の多様化が進む中で、新卒採用・中途採用の難易度が高まり続ける今、一度退職した元社員を再雇用する「アルムナイ採用」と呼ばれる手法に注目が集まっていることをご存知でしょうか。

 

多くの企業にとっては「退職者の再雇用」はなかなかイメージできないものかも知れません。しかし、自社で活躍していた社員が他社で新たな経験を積み、高めたスキルを活かして働いてくれる、さらに採用コストが殆どかからないと考えるとアルムナイ採用のメリットは大きいと言えます。

 

自社の仕事や良い点も課題も良く知っていますので、採用後の教育費用も最小限で済みますし、理念や風土のアンマッチも起こりにくいでしょう。

 

さまざまなメリットのあるアルムナイ採用を実現するためには、どんな組織作りを意識しておけばいいのか。また社員が出戻りしたくなる会社の特徴とは?何か。

 

実際に出戻りを経験した管理職スタッフのインタビューを交えながらアルムナイ採用を実現させる秘訣を解説します。
*本レポートは2023年10月11日に開催したセミナーを基に作成したものです。予めご了承ください。

 

本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。

<目次>

出戻り社員の採用は会社にとってメリットがあるのか?

そもそも出戻り社員の採用は、会社にとってメリットがあるのでしょうか。「会社が嫌で辞めた人が、うまくいかないことがあって戻ってくるというのはどうなのか・・・」と思われる方もいるかも知れません。

 

ジェイックには“出戻り”で働いてくれている社員が何名かいます。その実体験を通じて、企業にとって大きなメリットがあると思っています。

 

ジェイックは、社員200名強の組織ですが、“出戻り”社員が5人おります。また、お陰さまで、ジェイックは「退職者が選ぶ 辞めたけど良い会社ランキング」調査では7位に選ばれています。

 

良い会社ランキング

 

ジェイックを退職して起業したり、フリーランスになったりする社員も数名います。そうした社員とも、継続して業務委託やパートナーとして仕事をしたり、いろいろな相談に乗らせてもらったり、多くの退職メンバーとは良好な関係を築けています。

 

そして、退職者と良好な関係性を継続できていることが、人不足となった際に、非常に有効に働いていると思っております。

 

人材獲得で企業が抱える課題

 

上記はHR NOTEの「人材獲得において企業が抱えている課題」という調査データです。時価代のトップは、圧倒的に「求めるスキルの人材が見つけられない」であり80%となっています。

 

即戦力の人材確保に苦労している企業が非常に多いということです。新卒採用や未経験採用ではない即戦力の中途採用は、採用の中でも難易度が高い領域です。

 

マネージャークラスで合流してもらっても即戦力として活躍してくれるという話はあまり聞きません。馴染むまでに一定の期間が必要ですし、上手く馴染み・定着してくれるかは分かりません。上位層の経験者ほど、自分なりのスタイルが確立されていますので、“合わない”リスクもあります。

 

また、経験者層の能力、成果の再現性というのは本当に判断が難しく、履歴書や職務経歴書だけでは到底判断できません。相手を理解できるように何度も面接をし、候補者の中から探し当てるのは苦労します。

 

労働人口が減っている中で、優秀層を経験者採用することは本当に難しくなっています。そういった意味でも再雇用して働いてもらうのは有効かと思います。

再雇用をしてよかった点とは?

再雇用をして良かった点

 

最近は、再雇用、“出戻り”の採用をアルムナイ採用と言います。「アルムナイ」とは英語で「卒業生」という意味です。

 

プロフェッショナルバンクが実施した再雇用に関する調査によると、再雇用をして良かった点としてまず挙げられるのが「即戦力として活躍してくれる」ということです。

 

次に「採用コストや教育コストを抑えられた」という点です。

 

再雇用の場合、実務におけるその人の良いところや弱点もよくわかっています。良く分かっているからこそ、選考において確認すべき点も明確ですし、人脈によるつながりですので、採用コストや教育コストも必要最低限に抑えることができます。

 

前述の通り、本人も業務内容、仕事のやりがい・大変な点、組織の長所と課題を良く分かって、そのうえで入社を希望してきます。従って、入社後のミスマッチは少なく、即戦力としてパフォーマンスしてくれます。

従業員が転職する理由とは?

転職理由

 

ここまでアルムナイ採用のメリットを紹介してきました。ただ、そもそも退職が起こらずに活躍し続けてくれることが理想です。「辞めて欲しくない従業員、とくに優秀な中堅~管理職層の退職をどう防ぐか?」も確認したいと思います。そもそも従業員が辞める理由はどこにあるでしょうか。

 

上記はdodaさんの「転職理由ランキング2022」ですが、30代の転職理由ランキング1位は「給与が低い・昇給が見込めない」という待遇に関するネガティブ要素です。

 

転職する際に「年収が下がるけどここで働きたい」というような意思決定をする人はあまり多くありません。とくに最近は人手不足なので、前職の給与より少し高めに出すケースが多いでしょう。

 

ただし、転職して入社時給与は上がっても、次にどのくらいのスパンで昇給していくのかは見えずに転職しているケースは結構多いです。また、給与と業務成果への期待値、求められる成果のプレッシャーに関する実態は、やはり入社してみないと分かりません。

 

そういう意味では、転職してしばらく経過した後に給与や将来の待遇に関する考え方が変わるケースはよくあります。

 

従って、待遇に関するネガティブ要素は退職時点ではなかなか防げなくても、アルムナイ採用に働きかける上では意外と勝負できることは良くあります。

 

2位は「スキルアップしたい」ということで自分の力を試したいというポジティブな要素、3位は「尊敬できる人がいない」ということで上司・管理職・役員の人間性というところです。

 

ここまでのランキングを見ると、優秀なミドル層の退職を防ぐポイントが見えてきます。

 

まずはシンプルに、待遇を市場相場と同じレベルまで引き上げていくことです。これは大切ですが、待遇向上は根本的には労働生産性が上がらなければ無理が生じます。

 

また、もう1つは早めにチャレンジングな部署に異動させてスキルアップや成長実感できる機会を作ることです。

 

そして、経営・幹部層の人格をきちんと磨くことです。人格を磨くというと抽象的ですが、少なくとも「尊敬されない言動」をなくすことです。

 

また、これらだけではなく、退職を迷っている人たちの本音にフォーカスして、アプローチしていくは工夫しないといけません。本質的な課題も解決していかないと、待遇を上げる、部署異動をかけるといった対処療法的なアプローチだけになります。

 

待遇改善や部署異動はもちろん大切ですが、それが“退職カードをちらつかせた人勝ち”という見え方になると、社風や組織文化にも悪影響を与えます。

 

従って、「退職したい」「モチベーションが落ちている」人たちと面談や相談機会を作ることがすごく大事です。

退職相談における3つのポイント

「退職したい」「モチベーションが落ちている」人たちと面談する際に大切な3つのポイントがあります。

 

退職相談3つのポイント

 

まず大切なことは、1on1で話すこと。そして、会話ではなく対話することです。

 

組織開発サービスを提供していますので、「退職者が増えてきたから退職を止めたい」というご相談を経営層や人事幹部の方からいただく機会がしばしばあります。この時、退職理由を把握できているかを伺うと「聞いてはいるけど本音かどうかわからない」という返答が返ってくることが大半です。

 

大切なことは、退職時に本音を聞ける関係性を普段から作れているかです。退職相談の時だけ対話して本音を教えてもらおうと思ってもダメです。

 

その手前で、普段から本人とキャリアや成長・待遇などに関してしっかり話をする対話の関係ができていると、退職する時にも本当の理由にたどり着くことできます。

 

この対話力を役員層や管理職、上司は身につけておく必要があります。

 

ここで本音を確認したうえで、「戻ってくる道」の選択肢を提供することが大切です。転職する時、転職する側は戻ってくることは考えていません。だからこそ、「貴方なら戻ってくる選択肢もある」「その時は、ぜひ声をかけて」と選択肢を提供することが大切です。

 

また、退職した社員と繋がり続ける組織風土を作ることも大切です。必ずしも役員層や人事が直接つながっている必要はありません。ただ、メンバーたちと繋がっていて「もう1回戻ってきたいと言っていた」といった話が役員や幹部陣に入ってくる状態が大切です。

 

経営層や幹部陣は、退職者が優秀であるほど、退職時には複雑な思いが生じます。最近は減っていると思いますが、退職者を“裏切り者”のように言ったり、「退職したような奴とは親しくするな」といった雰囲気を作ったりしていては、出戻り採用は絶対に実現しません。

 

本記事は、全2部構成でお送りします。Vol.2は下記よりどうぞ。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|取締役 兼 常務執行役員

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。
IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成等についての講演を行っている。
昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
・今だからできる!若手採用と組織活性化のヒント
・withコロナ時代における新しい採用力・定着率向上の秘訣
・オンライン研修の「今と未来」、社員育成への上手な取り入れ方
・社長が知っておくべき、業績達成する目標管理と人事評価
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