ナレッジマネジメントで職場の生産性をアップする!導入メリットと成功のポイント

ナレッジマネジメントで職場の生産性をアップする!導入メリットと成功のポイント

人口減少による労働力不足や働き方改革が推進される流れの中で、生産性の向上は多くの企業にとって急務となっています。その中で生産性を上げる効果があるとして注目されているのが、「ナレッジマネジメント」という手法です。

 

記事では、ナレッジマネジメントとは何か、なぜ注目されているのかという基本的な部分から、ナレッジマネジメントを導入するメリットや導入時に気をつけたいポイント、ナレッジマネジメントツールまで解説していますので、ぜひ参考にしてください。

<目次>

ナレッジマネジメントとは?

ナレッジマネジメントは、個人が持っている経験や知識、独自のノウハウ等の「暗黙知」を、組織内で共有して多くの人がアクセスできる「形式知」にすることで、生産性を向上させる手法です。

 

最近、ナレッジマネジメントが注目を集めているのはいくつかの理由があります。まず、終身雇用制度が崩壊し、転職が当たり前となり、フリーランス等の雇用形態も一般化する等、人材の流動化が激しくなったため、暗黙知の継承では組織内で知識やノウハウを保つことが難しくなっています。

 

一方で、技術の進化やニーズの多様化により、質の高いサービスを提供するために必要な情報量は増える一方です。IT技術の進化に伴って、顧客は「自分向けにカスタマイズされた情報提供」をされることに慣れつつあります。

 

また、サービス自体もどんどん多機能化しています。そのため、顧客に最適な事例や機能を紹介するために必要な知識を一人ひとりの社員が記憶しておくことが難しくなっています。

 

上記2つの掛け合わせにより、雇用の流動化に伴って中途社員が増える、一方で、成果を上げるために覚えないといけない知識が膨大になる中で、成長企業を中心に「新人に必要十分な知識をどう早く身に付けてもらうか」いうことは重要なテーマとになっています。

 

これらの背景に加えて、IT技術の進化によって、ナレッジマネジメントに取り組むハードルが下がった結果、ナレッジマネジメントを推進する企業が増えています。

ナレッジマネジメント 4つの種類

個人が持っている様々な経験や知識、独自のノウハウ

 

ナレッジマネジメントは、特徴に応じて4つのタイプに分けられます。

 

分析・戦略型ナレッジマネジメント

分析や戦略策定に役立つ知識を共有するタイプのナレッジマネジメントです。

 

分析や戦略と聞くと大げさに聞こえるかもしれませんが、新規事業や施策の成功例や失敗例、競合他社の事例や業界の動向等の情報共有が「分析・戦略型ナレッジマネジメント」にあたります。

社員教育型ナレッジマネジメント

優秀な社員の経験・知識・ノウハウを形式知化して社員教育に活用するのはナレッジマネジメントの典型です。

 

例えば、営業部門において、成功した提案事例を共有したり、提案書を共有したりすることが「社員教育型ナレッジマネジメント」にあたります。

 

最近では、オンライン商談が増えたり、動画共有が簡単になったりしたことを受けて、功した商談の動画を閲覧できるようにしたり、ノウハウの解説動画を作成して共有成すること等も増えています。

 

ヘルプデスク型ナレッジマネジメント

ユーザーや社員から寄せられる質問と答えをデータベース化することで、サポートの属人化を防ぎ、問題解決を容易にするタイプのナレッジマネジメントです。

 

従来は、大手企業において、法務部や財務部、情報システム部等、バックヤード部門の生産性向上に向けて「ヘルプデスク型ナレッジマネジメント」が導入されることが多かったのですが、最近では、ナレッジマネジメント自体のハードルが下がったことで、中小やベンチャー企業でも取り入れられることが増えています。

業務改善型ナレッジマネジメント

顧客満足度を上げるため、顧客ニーズの伝達と応答のプロセスを改善するためのナレッジマネジメントです。
ヘルプデスク型のナレッジマネジメントと似たところがありますが、顧客向けに展開されることが特徴です。

 

コールセンターやカスタマーサポート等で、問い合わせ内容と回答をデータベース化して生産性を高めながら、顧客の声を、開発やマーケティング、営業部門等にフィードバックするようなイメージが「業務改善型ナレッジマネジメント」です。

ナレッジマネジメントを組織に導入するメリット

組織がナレッジマネジメントに取り組むメリットはたくさんありますが、代表的なメリットは下記の3つが挙げられます。

 

ノウハウや情報共有による生産性UP

経験知として個人が持っているノウハウや情報をほかのメンバーに共有する手法が、ナレッジマネジメントです。とりわけ営業や販売部門等においては、各個人が持っている優れたノウハウや知恵を、他の社員に共有することで組織全体の生産性を底上げすることができるでしょう。

 

また、社内に散らばる多くの情報を集約することによって、日々の業務がスムーズになります。とくに社内で「ヘルプデスク」的な役割を務めることが多い情報システムや総務、法務や会計等の部門では、定型的な問い合わせ対応の工数を省き、本来の業務に集中することができます。

新人の戦力化スピードUP

ナレッジマネジメントのもたらす2つ目のメリットは新人の戦力化スピードUPです。とくに営業や販売部門においては、近年、顧客に合わせた事例の紹介や多機能なサービスの把握等、顧客対応に必要とされる知識が増えています。

 

また、サービスのコモディティ化も進む中で、商品プレゼン型の営業から、ソリューション提案型の営業へと、営業職に求められるレベルも高まっています。

 

その中で、ナレッジマネジメントを適切に使うことで、新人の自習を促進したり、知識がそろわない中でも顧客対応を始められたり、戦力化スピードを高めることができます。

 

例えば、あるクラウドサービスの企業では、営業部に配属された新人には「成功した商談の動画を100本視聴させる」ことで、一気にヒアリングや商品提案のノウハウを吸収させ、早期の戦力化を成功させています。

顧客満足度UP

ナレッジマネジメントは、生産性UPや戦力化スピードUPという内向きな効果に加えて、顧客満足度を高める効果もあります。

 

まず短期的には、よくある質問のベストプラクティス、顧客対応のノウハウや優れた対応事例等が共有されることで、組織全体の顧客対応レベルが高まって顧客満足度が高まります。

 

また、中長期的には業務改善型ナレッジマネジメントを導入して、顧客の声がカスタマーサポート以外の部門に伝わることで、顧客のニーズを汲んだ商品開発や事業展開も可能になるでしょう。

ナレッジマネジメント導入を成功させるポイント

1冊の本と3つのクエスチョンマーク

 

ナレッジマネジメントの導入は「暗黙知であったものを形式知に変換する」という手間に加えて、短期的には「直接電話して聞いたほうが早い」ために浸透が進まないというハードルがあります。
社内でナレッジマネジメントを導入して成功させるには、以下のようなポイントを押さえることが大切です。

 

導入目的を明確にする

ナレッジマネジメントを導入する際には、情報を共有することで解決したい課題や、達成したい目的を明確に絞り込むことが重要です。

 

前述のようにナレッジマネジメントを立ち上げるためには手間がかかりますので、「生産性を上げたい」「競争力を高めたい」という抽象的な理由でナレッジマネジメントを導入しても、なかなか成果が上がりません。

 

ナレッジマネジメントは手段の一つなのに、ナレッジマネジメントの導入自体が目的になってしまっては本末転倒です。具体的にどの課題を解決したいのか、どんな効果を得たいのか、目的を絞り込んだうえで導入を行いましょう。

共有範囲を決めておく

企業にはさまざまな情報があふれていますので、一概に「暗黙知やノウハウを共有する」といっても対象範囲が絞れません。

 

繰り返しになりますが、ナレッジを形式知として見える形にするためには、一時的に手間もコストもかかります。優先順位が高いものから順番に実施することがおすすめです。

 

共有環境を整える

ナレッジマネジメントの導入目的と情報の共有範囲が決まったら、共有したい情報を可視化する方法を考えます。基本的にはオンライン上で共有することになると思いますが、どんな方法やプロセスで、ノウハウを可視化するのかを決めましょう。

 

情報共有の方法を一度に刷新すると現場の負担が大きくなりすぎるため、段階的に新しい方法を組み込むのがおすすめです。やり方の変更には一時的に負荷が発生しますので、何を共有するのかを明確に絞り込んだうえで、その範囲内に関しては、強いリーダーシップを発揮してナレッジマネジメントの活用を進めることが重要です。

ナレッジマネジメントに使えるツール紹介

最近では、ナレッジマネジメントにはITツールを活用することが基本です。この章では、ナレッジマネジメントに活用できる、おすすめのツールを6つ紹介しますので、自社のニーズに合わせて、導入を検討してみてください。

 

kintone

kintoneは、サイボウズ株式会社が提供する多機能型のナレッジマネジメントツールです。FAQ、文書管理、ファイル管理等、社内情報の共有に使えるアプリケーションを自由に作成できます。

 

FAQアプリは、よくある質問とその回答を登録するためだけでなく、業務マニュアルの作成にも使えます。質問・回答とともに資料を添付したり、関連リンクを記載したりもできるので、より詳細にわかりやすく情報共有ができるでしょう。

 

サービスURL:https://kintone.cybozu.co.jp/

QUMU

QUMUは、株式会社ブイキューブが提供する、社員教育型のナレッジマネジメントツールです。動画を簡単に作成し、オンデマンドで配信できます。

 

コメントや「いいね」機能が搭載されており、インタラクティブなコミュニケーションで教育効果を高めたい方におすすめです。動画配信の第一人者であり、セキュリティ対策が万全なので、社内ノウハウや重要情報も安心して共有することが可能です。

 

サービスURL:https://jp.vcube.com/service/qumu

 

アルファスコープ

株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供するヘルプデスク型のナレッジマネジメントツールです。

 

kintoneと同じようにFAQの検索機能が充実しており、ユーザーがすぐさま欲しい情報に到達できます。豊富な分析機能を用いて、ナレッジの陳腐化や不足を可視化できるのも魅力的なポイントです。

 

サービスURL:https://www.a-scope.com/

Knowledge Explorer

Knowledge Explorerは、株式会社図研プリサイトが提供する多機能型のナレッジマネジメントシステムです。

 

ただ検索結果を表示するだけでなく、AI(人工知能)を用いてユーザーが直接的に検索した情報の周辺にある情報から「気付き」を提供する機能が特徴です。

 

参考資料をプッシュ通知する機能や、文書から重要ワードを抽出して要点や要旨を確認できる機能等、求める情報に効率的にアクセスできる機能が多数搭載されています。

 

サービスURL:https://www.presight.co.jp/product/knowledgeExplorer.php

Qiita Team

Qiita Teamは、Increments株式会社が提供しているナレッジマネジメントツールです。エンジニアの間で広く使われている情報共有サービス「Qiita」が、そのまま社内向けツールになったようなサービスです。

 

プレーンテキストで記事を書き、簡単に共有できます。また、テンプレート機能が備わっているため、共有したい情報に応じて最適なフォーマットを作り、可視化の工数を抑えられます。

 

記事ごとにコメント欄が用意されているので、ノウハウをさらに深めたり、磨いたりするためのコミュニケーションも可能です。

 

サービスURL:https://teams.qiita.com/

 

DocBase

株式会社クレイが提供するナレッジマネジメントツールです。「書きやすさ」に徹底的にこだわったサービスで、Wordのように簡単に文書を作成できます。書きやすさだけでなく、充実した検索機能も魅力です。また、国内トップレベルの強固なセキュリティも特長の一つで、テレワークでも安心して利用できます。

 

サービスURL:https://docbase.io/

まとめ

組織内にあるノウハウや事例、経験を可視化して共有できるナレッジマネジメントは、生産性や新人の戦力化スピード、顧客満足度の向上につながります。

 

一方で、今まで属人的に管理されて口頭でやり取りされていた暗黙知を形式知にすることは、一時的には工数や負担も生じます。

  • 導入目的を明確にする
  • 共有範囲を決めておく
  • 共有環境を整える

という3つのポイントを押さえたうえで、強いリーダーシップを発揮して初期ハードルを乗り越えることが必要です。

 

最近では、ナレッジマネジメント用のITツールも増えたことで、導入コストや手間等のハードルはかなり低くなりましたので、便利なツールも活用しながらナレッジマネジメントを実践してみましょう。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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