オープンマインドとは?必要性とメリット、組織開発におけるポイントも紹介

更新:2024/01/17

作成:2024/01/17

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

オープンマインドとは?必要性とメリット、組織開発におけるポイントも紹介

オープンマインドとは、ありのままの自分を相手に見せることができる、同時に自分と異なる意見にも耳を傾けて意見や価値観の違いを認められるマインドセット、心の姿勢を指します。

 

オープンマインド自体は目新しい概念ではありません。しかし、最近オープンマインドが組織開発や人材育成の分野で注目を集めるようになったのは、時代の変化に伴う組織形態やマネジメントの変化の影響があります。

 

記事では、オープンマインド概要に加えて、オープンマインドが必要とされている背景やメリット、また組織内にオープンマインドの文化を浸透させる方法を紹介します。

<目次>

オープンマインドとは?

まずは、オープンマインドの概要の理解を深めておきましょう。

オープンマインドとは何か?

オープンマインドとは、ありのままの自分を相手に見せることができ、また、自分の考えが正しいと決めつけずに異なる意見にも耳を傾けて意見や価値観の違いを認められるマインドを指します。

 

オープンマインドと聞くと、明るく社交的で積極的に自己開示する人を思い浮かべる方も多いかと思います。自己開示への積極性といったものは、オープンマインドの半面であり、異なる常識や価値観に対する柔軟性や寛容さもオープンマインドの重要な要素です。

オープンマインドが必要とされる背景

現在は、単純労働は機械化やIT化が進み、知識労働が労働の多くを占めるようになってきました。

 

知識労働の普及に伴って、仕事はより細分化・専門化し、また、組織形態もピラミッド型の指揮統制型組織からボトムアップの価値共創型組織へと移り変わりつつあります。

 

このように仕事のあり方や組織形態が変化する中で、新しい組織形態に適応して成果を生み出すためのマインドセットやスキルが求められています。

 

そして、価値共創型組織の中で、異なる専門性を持ったメンバーと協働したり、部下と信頼関係を築いたり、イノベーションを生み出したりするために大切なのがオープンマインドです。

 

自ら積極的に自己開示し、また異なる価値観を受け入れることで周囲と信頼関係を築く。そして、異なる意見や価値観を結びつけることでイノベーションを生み出すことができます。

オープンマインドが生み出すメリット

オープンマインドは、ビジネスを円滑に進めていく上で大きな効果をもたらしてくれます。具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

信頼関係の構築

ビジネスの成果は、社内外を問わず、信頼関係の上で生み出されるものです。信頼関係の構築は、円滑なやり取りをするためにも重要になってきます。

 

オープンマインドを持つことは、個人としての自分を隠さず自己開示できることにつながり、相手からの信頼を得やすくなります。また、こちらが自己開示をすることで、相手の側も自己開示をしやすくなります。

 

このように、オープンマインドには、自己開示を促して信頼関係の構築をスムーズにする効果があります。

相互理解の促進

お互いに自己開示できれば、それだけ相互理解が進むようになります。

 

相互理解が深まり、お互いの共通点、そして相違点を知ることで信頼関係は強いものとなっていきます。

 

また、信頼関係の強化に加え、お互いの価値観やバックグラウンドを知ることでコミュニケーションもスムーズになりすし、役割分担や議論等も円滑になるでしょう。

自己成長

オープンマインドを持つことは、自分と異なる価値観・考え方を持った他者、異なる考えの意見、やり方等に関する受容の柔軟性につながります。自分と異なるもの、未知のものを受け入れることで知見は増し、視野が広がっていきます。

 

オープンマインドは「自分のスキルや能力は、努力・経験で向上できる」というグロースマインドセット(成長マインドセット)につながっていきます。

オープンマインドを妨げる要因

オープンマインドが得意な人もいれば苦手な人もいます。しかし、ある程度のオープンマインドは意識して鍛えることで、誰もが持つことができます。

 

オープンマインドを鍛えるためには、まずオープンマインドを妨げる要因を知っておくとよいでしょう。誰の心の中にもオープンマインドを妨げる要因は潜んでいます。妨げる要因を知っておくことで、理性的に心の動きをコントロールすることが容易になるでしょう。

他人からの評価を気にする心理

誰しも「自分を否定されたくない」「他人から良く見られたい」「他の人からどう評価されているのか気になる」といった心理があります。

 

こうした心理は、ありのままの自分の本心を隠し、相手の評価を気にした情報だけを開示することにつながります。

 

たとえば、部下が自分の評価に響いてしまうのを恐れて評価者である上司に本音を言えなくなったり、上司も「部下からバカにされてはいけない」と自分の弱い部分を隠そうとしてしまったりすることは自然な心理です。

 

何もかもオープンにしてしまうと身に危険が及ぶ、マイナスに働くのではないかという恐怖心や不安がオープンマインドになる上でブレーキになってしまいます。

村社会の影響

他人からの評価を気にするのが社会的動物である人間の自然な心理だとすれば、日本の場合、いわゆる「村社会」と呼ばれる文化がその心理に拍車をかけます。

 

村社会の中では、有力者を中心として厳しいルールが作られ、空気を読みながら献身的に働くことを強要されます。

 

ルールを守らない、あるいは知らないよそ者は排除されるという“村社会”的なコミュニティに所属してしまうと、自己開示することがリスクになってしまうこともあります。

 

村八分にされてしまうことを恐れるあまり、なるべく目立たずに“異分子”にならないように振る舞うようになってしまいます。いわゆる“同調圧力”も村社会で発生しやすい文化のひとつです。

バイアスによる影響

無意識下における思考や判断の偏りであるバイアスも、オープンマインドの妨げになります。

 

たとえば、自分とどれだけ似ているのか、共通項があるのかで敵・味方を判断してしまう「類似性バイアス」が働いてしまうと、自分と似ている部分や共通項が無いというだけで相手を無意識的に敵だと判断してしまいます。

 

こうして敵であると認識してしまった相手に対しては嫌悪感を抱きやすくなってしまい、良好な関係を構築するのが難しくなってしまいます。

 

また、自分が所属する組織やグループを他の組織やグループよりも高く評価してしまう「内集団バイアス」が働いてしまうと、身内ばかりをひいきするようになってしまいます。

 

その他にも変化を拒んでしまう「現状維持バイアス」というものも知られています。自分にとって安定した状態を維持し続けようとするあまり、変革が必要な場面においても、それを拒んで従来からのやり方を踏襲しようとしてしまうというバイアスです。

 

こうしたバイアスは、判断スピードを速め生き延びるためのフィルターとして人間に備わってきたものです。従って、バイアス=悪いというわけではありませんが、一方で、こういったバイアスは無意識下で働くため、本人も自覚していないところでオープンマインドを妨げてしまう要因ともなり得ます。

他人に対する無関心や不信感

他者のことを積極的に理解しようという姿勢が欠如すれば、他者に対して無関心になったり、不信感を抱きやすくなったり、他者に対して心を閉ざしがちになります。

 

知らない人に対して警戒すること自体は、我々が原始の時代から持つ本能であり、これもバイアスの一種です。

 

ただ、とくにビジネスにおいては多種多様な人と共に働き、素早く信頼関係を作ることが求められる中で、これがオープンマインドを妨げる要因となってしまいます。

オープンマインドが組織にもたらすメリット

オープンマインドの従業員が増えることは、組織全体にもプラスの効果をもたらします。

心理的安全性が高まる

オープンマインドが組織に浸透すれば、心理的安全性が高まります。相互理解が進み、否定される心配が無くなることで、組織内のコミュニケーションも活発化します。

 

オープンマインドは、エンゲージメントを高める上でも重要なものです。不安や不満、疑問があっても誰にも言えずに抱え込んでしまうことも少なくなり、前向きに仕事に取り組めるようになるでしょう。

組織や部門間のタコツボ化を避けられる

組織の規模が大きくなれば、事業や職種といった単位で組織を細分化して、マネジメントを委譲していくことが必要となります。組織の細分化は必要なことですし、従業員にとっても組織が細分化されることで「自分のチーム」という意識を持ちやすくなります。

 

一方で、組織が細分化されていくと、その中でどうしても「タコツボ化」、いわゆる縦割りの文化が生まれやすくなります。

 

仕事のつながりが少ない人とのコミュニケーション量は自然と減少していき、自分が所属している組織以外のことは関心を払わないようになり、所属するメンバーの心理もタコツボ化していきます。

 

立場によって利害関係も変わりますので、全体最適よりも自分の所属組織の都合を優先させてしまうといった「セクショナリズム」の問題も起こってきます。

 

組織内にオープンマインドを浸透させることで、こうしたセクショナリズムの問題が起きるのを防ぐことができます。

多様な人材を受け入れられるようになる

多様性が尊重され、組織のダイバーシティーが推進されているこれからの時代には、自分と異なる価値観を持った人材を働く人が多くなっています。日本人の中でも多様性が増していますし、日本の少子化が急激に進む中で異なる文化的背景を持つ外国人と働くことも増えるでしょう。

 

そうしたときに、価値観が大きく異なる相手と上手くコミュニケーションが取れようになっていないと、衝突やストレスが増加し、組織の生産性は低下してしまいます。多様な人材を受け入れ、人手を確保できるか、またイノベーションを生み出せるかは企業の生き残りを左右します。

 

組織にオープンマインドが浸透することで、考え方や価値観の違いによるトラブルを防ぎ、組織としても成果を上げることができるようになるでしょう。

イノベーションが促進される

オープンマインドを身につけて、今までの自分の常識とは異なる価値観や意見を受け入れられるようになることで、イノベーションが促進されることも期待できます。

 

イノベーションを阻害する要因として挙げられるのが、前例や常識にとらわれてしまうことです。

 

上司がオープンマインドになることで、部下はどんどん新しいアイデアを提案できるようになり、何かヒントにつながりそうな顧客のちょっとした一言も現場から上がってきやすくなります。

 

また、外部からの人材を受け入れられるようになることで、自分たちがこれまで常識として信じてきたことの問題点や非効率さなどに気づくきっかけができ、それがイノベーションにつながるということも考えられるでしょう。

生産性が向上する

生産性を高めるためにAIやDXにいかに対応していくのかは、多くの企業にとっての課題です。今後は自社の人材では対応しきれずに業務委託等の形態で外部の知見や工数を取り込もうとする企業も増えるでしょう。

 

そのような場合に、もし外部から来てもらった人材が周囲からよそ者扱いされて組織に馴染めない、力を発揮できないということなれば、生産性を上げることは難しくなってしまいます。

 

オープンマインドの浸透はそのようなトラブルを防ぎ、心理的安全性の向上やイノベーションの促進を通じて、組織の生産性、パフォーマンスを向上させる効果が期待できます。

組織内にオープンマインドを浸透させる方法

オープンマインドを持つこと、浸透させることが重要だなと感じても、何から手を付ければいいのか分からないということも多いでしょう。ここでは、どういった取り組みによって組織内にオープンマインドを浸透させていけばいいのかを紹介します。

共通言語を構築する

組織全体にオープンマインドを行きわたらせる上で重要になるのが、コミュニケーションの基盤となる共通言語を構築することです。

 

ミッション・ビジョン・バリューやコミュニケーション、考え方における共通言語を浸透させることで、思わぬすれ違いが生じてしまうことを防げます。

 

また、共通言語をもってコミュニケーションができるようにすることで、異なる価値観や考え方に対する受容性を高められます。

EQ研修の実施

オープンマインドを身につける上で重要になってくるのが、他人の感情を理解するスキルです。

 

心の知能指数と言われるEQを高めることで、他者の感情を理解する能力が高まります。また、自分の感情と行動をうまくマネジメントできるようになり、周囲と良好な関係を築いていけるようになります。

EQ研修を実施することで従業員のEQを高めるというのも、組織内にオープンマインドを浸透させるためには有効な手段です。

チームビルディング研修

オープンマインドの直接的な効果は、相互理解を促進することにあります。そのため、チームビルディングを通じて相互理解を促進することも、結果的にオープンマインドの浸透につながります。

 

チームとして成果を出すためには、チーム内の心理的安全性を高め、お互いのことを理解して協力し合える状態を創り出すことが重要です。そうしたチームとしての成果の出し方を学ぶ中でも、オープンマインドが身についてきます。

評価制度や職場環境の整備

人事評価制度の項目の中にオープンマインドやコミュニケーションに関する項目を入れて努力を後押しするのも、オープンマインドを浸透させるための有効な手段です。

 

また、1on1を通じて評価をフィードバックすることで、自分と周囲の認識のずれを把握することができ、うまくオープンマインドになれているかどうかや自分にとっての課題を知ることができます。

 

さらに、職場の心理的安全性を高められるように配慮するなど、制度面だけでなく環境面からもアプローチすることも有効です。

HRドクターが提供するオープンマインドをサポートする研修

HRドクターでは、組織へのオープンマインドの浸透をサポートできるように、以下のような研修サービスを提供しています。

感情のコントロールのやり方が身に付くEQ研修

オープンマインドを身につける上で有効なのが、先ほどもご紹介したEQを高めることです。EQを高めるのにお勧めなのが、「EQPI®セルフリーダーシッププログラム」です。

 

研修では、EQの生まれた背景や歴史といったEQ理論の基本的なことから学ぶことで、体系的なEQの理解をサポートします。また、EQPI®というEQを測定するための診断ツールを使い、自身の性格やEQの発揮状態を可視化することで、行動変化と成長を促すことができます。

 

EQPI®の診断結果をもとに自分に合った行動計画を策定し、開発行動を実践していくことで、誰もが確実にEQを向上させていくことができます。

オープンマインドが身に付くデール・カーネギー・トレーニング

昭和の職人気質な上司のもとで育ったという人にとっては、オープンマインドな接し方といっても自身が体験したことが無いため、どうしていいのか戸惑ってしまいやすいものです。そこでお勧めなのが、デール・カーネギーの「【人を動かす】リーダーシップ&コミュニケーション研修」です。

 

デール・カーネギー式のトレーニングを受けることで、オープンマインドを行動として実践するスキルが身につきます。また、デール・カーネギーが長年にわたって教育の現場で培ってきた「人間関係の30原則」を身につけることで、良好な信頼関係を築くことができるようになります。

 

とくに管理職層がデール・カーネギー・トレーニングを受講すると、一方的な指示・命令ではなく、相手をポジティブな感情にして動かすことができるようになるでしょう。

異なる価値観の理解と相乗効果の生み出し方を学べる「7つの習慣®」研修

異なる価値観を持った人たちと良好な関係を築きながらシナジーを生み出していくスキルを身につけることは、オープンマインドになるうえで重要なことです。そのようなスキルを身につける上でお勧めなのが、「7つの習慣®」研修です。

 

スティーブン・R・コヴィー博士がまとめた成功した人に共通する考え方が体系としてまとめられた7つの習慣®を身につけることで、オープンマインドになるために必要なスキルが身につきます。

 

7つの習慣®の基礎原則であるパラダイムの考え方に加え、

  • 第4の習慣 Win-Winを考える
  • 第5の習慣 まず理解に徹し、そして理解される

を身につけることで、異なる価値観や視点を持った他者を理解し、良好な関係を築いていくことができるようになります。

 

また、

  • 第6の習慣 シナジーを創り出す

 

を通じて、意図的に相乗効果を生み出していけるようになり、イノベーションを生み出していきやすくなるでしょう。

時代や組織が変わるなかで、能力を発揮して最大の成果を出せるように、マインドセットも最適化させていく必要があります。マインドセットを変えていくことは、すぐに簡単にできるというものではなく、それ相応のトレーニングを必要とするものです。

 

これからの時代に生き残っていくために組織内へのオープンマインドの浸透、オープンマインドを持ったリーダーの育成に取り組んでみてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

関連記事

  • HRドクターについて

    HRドクターについて 採用×教育チャンネル 【採用】と【社員教育】のお役立ち情報と情報を発信します。
  • 運営企業

  • 採用と社員教育のお役立ち資料

  • ジェイックの提供サービス

pagetop