デザイン思考の有効性が注目されていますが、実践するには、今までの手法との違いが大きく、進め方がわからないという声もあります。そうした場合には、フォーマットに当てはめて考えるフレームワークを活用すると、デザイン思考の理解が進み、実践しやすくなるでしょう。
本章ではデザイン思考のプロセスごとに有効なフレームワークを紹介し、どのように使うのかを説明します。
ユーザー視点を知るためのフレームワーク
デザイン思考の肝は、徹底したユーザー視点で考えることです。ユーザー視点を知るためのフレームワークを2つご紹介します。
・ジョブマップ
ここでの「ジョブ」はマーケティング用語であり、「ユーザーが商品を通じて成し遂げたいと考える目的」のことを指します。
ジョブに関する有名な具体例として「顧客はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しいのだ」というドラッカーの言葉があります。ユーザーは「ドリル」という商品を求めているわけではなく、「○○するための穴をあける」というジョブの実現を求めているということです。
ジョブマップを使って分析すると、ユーザーが望むこと、満たされていないこと、過剰に満たされていることを把握することができます。そこから、表面には出ていないユーザーの隠れたニーズを明らかにしていきましょう。
・共感マップ
商品やサービスに対してユーザーは何を見て、何を聞いて、何を感じ、どのような行動をとるのか、をマップに落とし込み、ユーザーの置かれている状況や心理状態を分析するツールです。結果からユーザーを深く理解し、ユーザーの視点に近づくことができます。
アイデアを出してまとめるフレームワーク
アイデア出しのプロセスでは、制限を設けず、できるだけたくさんのアイデアを出します。アイデア出しのプロセスに活用できるフレームワークをいくつか紹介します。
・ブレインストーミング
思いついたアイデアをどんどん出し合うのが「ブレインストーミング」です。その際のルールは「アイデアの評価をしない」「ありえないアイデアも歓迎する」「とにかく量を重視する」「アイデア同士を結び付けるなどして発展させる」といったことです。
始めに「評価と意思決定はしない」という目的をすり合わせることがブレインストーミングを成功させるためのポイントです。参加したメンバーが気兼ねなく発言できる雰囲気を作って、どんどん意見を膨らませていきます。
・SCAMPER法
アイデアを考えるためのフレームワークで、「7つの視点」でアイデアを考えます。
<SCAMPER法でアイデアを考える7つの視点>
●Substitute(代用)
何かで代用できないか?
●Combine(統合)
何かと何かを統合できないか?
●Adapt(応用)
他に何か使えないか? 過去に似たことがなかったか?
●Modify(変更)・Magnify(拡大化)・Minify(縮小化)
目的やサイズを変更できないか?
●Put to other uses(他用途)
他の用途に使えないか?
●Eliminate(削減)
何か省略できないか?
●Rearrange(再構成)・Reverse(逆転)
再構成して使えないか、逆にしてみてはどうか?
これらの頭文字をとって「SCAMPER法」と呼ばれています。
・Dot Voting
ブレインストーミング等で出てきた、多数のアイデアを絞り込むのに用いる手法です。やり方としては、候補になるアイデアを書き出し、参加者には一人3票から5票程度の投票権を持たせ、丸い(ドット)シールを候補のアイデアの下に貼っていき、一番多く票が入った候補を採用とします。
多数のアイデアをまずは絞りこむという時に、時間をかけずにまとめることができるやり方です。Dot Votingを使って一気に絞り込んでから、投票した理由や評価して意思決定につなげていくと効率的に進められます。
・2×2マトリックス
アイデアの評価をするための手法です。縦軸と横軸にそれぞれ評価項目を設定し、評価項目の高いか低いかを、2×2のマトリックスにして落とし込んでいきます。例えば、「ユーザーにとっての価値」と「提供の可能性」という2つの観点で見て、付箋に書き込んだアイデアをマトリックス表に貼り付けていくと、それぞれのアイデアを客観的に評価しやすくなります。
・NABCフレームワーク
NABCフレームワークもアイデアを評価するのに役立つ手法です。それぞれのアイデアを「Need(顧客ニーズ)」「Approach(解決方法)」「Benefits(価値)」「Competition(競争相手)」という4つの項目で評価していきます。
試作に役立つフレームワーク
試作のプロセスでは、時間やコストをかけず、短時間で作成することがポイントです。試作に必要な、最小限の価値を探るフレームワークを紹介します。
・MVPキャンパス
MVPキャンパスとは、試作品を作る際に必要最小限の価値は何かを明確にするフレームワークです。MVPは「Minimum Viable Product」の略で、直訳すると「必要最小限の機能を有する製品」ということです。
試作の段階では、限られた時間と予算で試作品を作る必要があります。MVPキャンパスを用いることで、ユーザーのニーズを検証するにはどこまでのものを作ればいいのか、の目安が得られます。
事業化を進めるためのフレームワーク
デザイン思考を使って開発する商品やサービスの、事業化するためのモデルや、開発すべき方向性を考えるのに有効なフレームワークを2つ紹介します。
・事業環境マップ
事業環境マップは、自社商品やサービスを取り巻く外部環境を、「トレンド」「市場」「産業」「マクロ経済」という4つの領域にまとめ、それぞれの状況と変化を見るフレームワークです。開発する商品やサービスが、外部環境からどのような影響を受けるのかを評価し、開発の方向性を見極めるのに役立ちます。
・ビジネスモデルキャンパス
ビジネスモデルキャンバスでは、次の9つの要素を評価していくやり方です。
- ‐顧客セグメント(誰に提供するのか?)
- ‐価値提案(どんな価値を提供するのか?)
- ‐チャネル(どのチャネルを通じて提供するか?)
- ‐顧客との関係(どのような関係を構築するか?)
- ‐収益の流れ(どのように収益化するのか?)
- ‐リソース(必要なリソースは何か?)
- ‐主要活動(必要な活動は何か?)
- ‐パートナー(パートナーは誰か?)
- ‐コスト構造(運営するために発生するコストはどれだけか?)
9つの要素を調査・分析・評価すると、アイデアが整理されて、ビジネスとしての可能性が一目でわかります。ビジネスモデルキャンパスは事業計画書を作るフレームワークといってもいいでしょう。