会社説明会は、新卒採用においてほとんどの場合に行なわれるイベントです。会社説明会のアンケートをうまく活用すれば、採用選考の進め方や自社の採用力向上につながるヒントを手に入れることが可能です。
本記事では、まず、会社説明会でアンケートを採る目的を整理します。整理したうえで、会社説明会アンケートに入れるとよい質問事項、会社説明会アンケートの回収率を上げるためのポイント、オンラインの会社説明会で使えるアンケートフォームなどを紹介します。
<目次>
会社説明会でアンケートを採る目的は?
会社説明会のアンケートには、以下5つの目的があります。
参加者の氏名や大学名、メールアドレスなどの個人情報収集
参加者の個人情報を収集することは、会社説明会アンケートにおける従来の大切な目的でした。
ただし、いまの時代、応募時点で個人情報を取っていることが大半であり、アンケートで個人情報を書かせる意味は、“誰が書いたか?”の照合という程度の意味しかないことが大半になっています。
大きな意味もなく個人情報を書かせることは、求職者の負荷になります。そのため、個人情報の項目はなるべく少なくすることがおすすめです。
採用活動の振り返り
たとえば、「説明会⇒選考」のステップ率が悪い場合、アンケート結果が1つのヒントになります。
どういう方針で「説明会⇒選考」を設計するか、また、説明会の実施形式などにもよりますが、説明会でフィルターをかけたい意図がなければ、説明会参加から選考応募で85%~95%程度のステップ率は確保したいところです。
選考での参考材料
説明会の参加者が選考に進んだ場合、アンケート内容を、見極めや魅了付け時の参考材料にすることも可能です。たとえば、就活の軸や、自社のどこに魅力を感じたかなどは、面接選考をしていくうえでの参考材料になります。
また、上記は、カルチャーフィットなどを図る軸にもなってきます。就活の軸が変わっていけないわけではありませんが、「選考の過程内で一貫性があるか?」や、変わった場合「どのようにして変わったのか?」などを聞いていくと、求職者の価値観を見極めやすくなるでしょう。
他社の選考状況の把握
新卒採用では、複数社の選考を同時並行で受けることが当たり前となっています。こうしたなかで、筆記や入力型の会社説明会アンケートは、顔を合わせて実施する面接よりも、選考状況をヒアリングしやすい利点があります。
たとえば、優秀な人材が「5社にエントリー済み、1社から内定獲得」と回答した場合、面接時の魅了付けや、内定辞退を防ぐフォローに力を入れる必要があるでしょう。また、他社の選考状況に応じて、選考のスケジュールを調整していくことも有効となります。
どういった企業に応募しているかは就活の軸を推測する際の参考になりますし、説明会のアンケート、一次面接、二次面接と他社の選考状況を同じように聞いていくことで、就活状況の変化もとらえられるでしょう。
自社への志望の熱意を知る
選考ステップに進めていくには、自社への志望度や熱意を知ることも大切です。
ただし、自社への志望度に関して「社会的に望ましい回答」は明らかに“第1希望”であり、志望度は非常に高いと回答することが至極当然になります。
したがって、質問の仕方にもよりますが、志望度に関するアンケートは、作文力や思考力を見る、選考の材料にするという程度の位置づけになると思ったほうがいいでしょう。
会社説明会アンケートに入れるとよい質問事項
具体的な質問事項は企業によって異なりますが、先述の目的も踏まえて、会社説明会アンケートに入れる質問事例を紹介します。
参加者の個人情報
想定される個人情報としては、下記のようなものがあります。
- 【想定される個人情報の項目例】
- ・氏名
- ・生年月日
- ・性別
- ・住所
- ・大学名
- ・学部学科
- ・携帯電話番号
- ・メールアドレス など
ただし、前述のとおりエントリーフォームなどからの申し込み時点で、求職者の個人情報は把握していることが多いです。そのため、本人照合に必要な最低限の個人情報以外は、なるべく項目を減らすことがおすすめです。
会社を知ったきっかけ
こちらも採用管理システムなどを導入していれば、どのルートから応募があったかはすぐに把握できるため、重要度は低いでしょう。
ただし、SNS採用やリファラル採用に力を入れていたり、以下のようなケースに該当したりする場合は、会社を知ったきっかけの質問が有効となります。
- “応募チャネル”と“会社を知ったきっかけ”が異なるケースが多い場合
- SNSやリファラルの効果検証をしたい場合
- 電子ベースでは、説明会への応募チャネルを把握できていない など
参加者が「どこで自社を知ったのか?」を把握することは、今後の利用媒体や利用イベントの選定に役立ちます。選定の際に、費用対効果が合わない媒体やサービスは、次年度以降の利用を再検討していくことになるでしょう。
また、参加者の手間にならないように、以下のように選択式にしておくことがおすすめとなります(項目は自社の採用チャネルに応じて変更してください)。
- 【会社を知ったきっかけの項目例】
- ・求人サイト(マイナビ/リクナビ/LabBase/……)
- ・合同企業説明会(マイナビ就職EXPO/キャリタス就活フォーラム/Premium Matching Event/……)
- ・学校企業説明会
- ・友人・知人からの紹介
- ・弊社の社員からの紹介(社員名: )
- ・検索エンジン
- ・SNS(Twitter/Facebook/Instagram/YouTube/TikTok)
- ・弊社のコーポレートサイト
- ・弊社のブログ
- ・弊社の採用サイト
- ・書籍(〇〇〇/×××/△△△)
- ・ニュースサイト(サイト名: )
- ・新聞(新聞名: )
- ・口コミサイト(サイト名: )
- ・その他( ) など
説明会の感想
説明会の各コンテンツやプログラム内容を以下のように並べ、「印象に残ったこと(良かったこと)」をチェックしてもらいましょう。一つに絞らず「3つまで回答可」にするのもおすすめです。
- 〇〇〇とはどういう企業?
- 企業理念
- 業務内容
- 市場内での位置づけと今後のビジョン
- キャリアアップ
- 福利厚生
- 働きやすい環境づくり
- 質疑応答
- 説明会のスライド
- 採用動画
- その他( ) など
チェックをしてもらったあとに、回答の理由を書くフリースペースを設けると、コンテンツへの意見を聞きやすくなるでしょう。
説明会の感想は、求職者ニーズや、自社の説明のわかりやすさ・わかりづらさを客観視するうえでも非常に役立ちます。
たとえば、多くの求職者が「働きやすい環境と福利厚生」に高評価をしていた場合、次回以降は、「働きやすい環境と福利厚生」のコンテンツに少し厚みを持たせてもよいでしょう。また、アンケートで把握した求職者ニーズは、選考時の魅了付けにも役立つ内容です。
なお、大前提として求職者の視点からすると、「不満」や「わかりづらい」と思ったとしても回答しないことが当たり前となります。不満などを回答しない点は、顧客向けのセミナーでのアンケートやウェビナーでのアンケートとは大きく異なるため、確認時には注意が必要です。
アンケートを見るうえでは、説明会のなかで「採用ターゲットに向けてどこを刺したいか?」という事前の意図とアンケートが一致しているかというのも、重要な視点になるでしょう。
企業を選ぶときに重要視するポイント
自社の採用ターゲットのニーズを知る質問です。
- 企業理念
- 事業内容
- 事業規模
- 沿革
- 仕事内容
- 社内の雰囲気
- 社内の風通しの良さ
- 給与・賞与
- 休みのとりやすさ
- 勤務地
- キャリアアップ
- 教育制度
- 在宅勤務制度
- 女性活躍
- 産休育休制度
- その他( ) など
上記の質問でのポイントは、なるべく具体的に項目を並べることです。たとえば、一言で「働きやすさ」とまとめてしまうと、以下のようにさまざまな意味があるなかで、どこを本当に重視しているのかわからなくなります。
- 若手でも働きやすい(⇒職場の心理的安全性が高い)
- 休みをとりやすくて働きやすい(⇒家庭生活との両立や健康維持がしやすい)
- 好きな場所で勤務できて働きやすい(⇒テレワーク制度がある)
- 女性でも働きやすい(⇒女性社員が多い、女性も尊重される雰囲気がある))
上記のアンケート項目は、求職者ニーズの把握につながるため、「働きやすさ」などの漠然とした表現ではなく、なるべく具体的な言葉で質問を並べたほうがよいでしょう。もしくは、選択式のアンケート+自由記述の形式にすることも有効となります。
ただし、こちらも社会的に望ましくない回答が明らかです。たとえば、「給与・賞与、休みのとりやすさ、勤務地」という3点セットで選ぶと企業への印象が悪そうなのは想像に難くありません。したがって、回答がどこまで本音か?という点はやや疑問符がつきます。
就職活動の状況
選考時の魅了付けや内定者フォローに使える大事な項目です。
- エントリー社数
- 選考社数
- 内定社数
- 選考中や内定済み企業の社名や状況
- 仕事内容
なお、選考中や内定獲得している企業名などを記載してもらうときには、「就活状況に応じて可能な限り選考スケジュールを調整します」といった理由を記載したり、「差し支えなければ教えてください」などのスタンスにしたりするとよいでしょう。
意見、感想、その他
いわゆるフリースペースです。熱意のある学生は、意見、感想の場所で自己アピールをしてくることもあります。
フリースペースがあれば、大勢の前では質問できなかった疑問や不安を書いてもらうこともできるでしょう。学生との接点を持つうえで、フリースペースの内容は有効活用できる場合があります。
会社説明会アンケートの回収率を上げるには?
会社説明会アンケートは、多くの学生に記入・提出してもらってこそ効果があるものです。会社説明会アンケートの回収率を上げるには、以下の点に注意をする必要があります。
説明会の場で記載してもらう
学生は、研究やアルバイトなどで日々忙しくしています。そのため、帰宅後にじっくりアンケートを書く時間はとりづらいでしょう。また、毎日のように多くの説明会に参加していれば、配布資料が他社のパンフレットに埋もれてしまう可能性も考えられます。
したがって、アンケートを確実に回収するには、対面の場合には説明会の会場内で書いてもらうことがポイントです。オンライン説明会の場合も、「終了後に……」ではなく、説明会の場で書いてもらう、アンケート記入の時間までを含めて説明会の時間を設計しておくことが有効です。
記述形式を少なくして回答しやすくする
すべての学生が自分の想いを言語化できるとは限りませんし、なかには、電車の時間などで急いでいる学生もいるでしょう。こうした学生にもアンケートを提出してもらうには、極端には「簡単な個人情報を書いて、あとはチェックするだけ」ぐらいの内容が理想となります。
より具体的な声を集めたいという想いも生じますが、自由記述の質問が増やしていくと、やはり提出率は下がってしまいます。
アンケート提出と引き換えに資料などを配布する
たとえば、アンケートを提出した人に以下の特典(ノベルティ)を配布するのも一つです。
- 説明会での投影資料
- 業界研究に使える資料
- 自社の部署紹介パンフレット
- 自社ロゴや人気キャラクターがデザインされたクリアファイル など
オンラインの会社説明会におすすめのアンケートフォーム
オンラインの会社説明会を開催する場合、以下のようなアンケートフォームを活用するのがおすすめです。
Google Forms(Googleフォーム)
Googleアカウントを持っていれば、無料ですぐに使えるアンケートサービスです。アンケート作成数・設問数が無制限になっているため、Google Formsを活用すれば、たとえば、ITエンジニア向けや中途採用向けなどの属性ごとのアンケートをつくることも可能でしょう。
また、Google Formsでは、アンケート結果の自動集計も行なえますし、自動でGoogleスプレッドシートにも反映されます。忙しい人事担当者でも、アンケート結果を今後の採用活動に活かしやすくなるでしょう。
SurveyMonkey
無料から使い始められるアンケートフォームです。無料会員の場合、設問数が10個まで、表示可能な回答数が1アンケートにつき40件までの制限がつきます。一方で有料プランは、個人・チーム・エンタープライズという3カテゴリに、全部で6つのコースが用意されています。最も安いもので1ユーザーにつき4,600円~/月の利用が可能です。
ただし、有料版の場合、プラン次第でカテゴリ別のテンプレート(合計150種類以上)、専門家が作成した1,600種類以上の質問サンプル などが使える魅力があります。
CustomForm
4つのプランが用意されており、トライアルとベーシックなら無料で利用できるサービスです。
ベーシックプランなら、フォームの作成・公開・結果閲覧などの基本機能のほかに、回答内容をメールで受信することも可能です。また、回答結果をCSV形式でダウンロードすれば、より高度な分析や活用も行なえるでしょう。
無料のベーシックプランでもフォーム数・回答データ数は無制限となりますが、利用可能なメンバー数が3人では足りないなどのときには、3,300円~/月から使える有料プランへの切り替えを検討してもよいでしょう。
まとめ
会社説明会のアンケートには、以下5つの目的があります。
- 参加者の個人情報の取得
- 採用活動の振り返り
- 選考での参考材料
- 他社の選考状況の把握
- 自社への志望の熱意を知る
会社説明会のアンケートを効果的なものにするには、アンケートの実施目的を明確にしたうえで、目的に合った質問事項を用意するとよいでしょう。
なお、会社説明会アンケートの回収率を高めるには、まず、記述する欄が少なく、求職者にとって負担の少ないアンケートにする必要があります。
また、説明会の場で記載してもらったり、提出者に資料やノベルティなどを配布したりする工夫もおすすめです。