イノベーションとは?意味や種類・企業での成功事例を紹介

更新:2023/07/28

作成:2022/08/25

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

イ ノベーションとは?意味や種類、企業での成功事例を紹介

近年、多くのビジネスシーンでイノベーションの必要性が説かれるようになりました。一方で、「そもそもイノベーションとは?」「自社でどのように起こすのか?」と思う人も多いのではないでしょうか。

 

記事では、イノベーションの意味や種類、必要とされる背景などを解説します。イノベーションに成功した企業の事例をあわせて紹介します。

<目次>

ビジネスにおけるイノベーションとは?

ビジネスにおけるイノベーションとは?

 

ビジネスでよく使われるイノベーションとは、商品やサービス、組織、ビジネスモデルなどに変革を起こし、新たな価値を創出することを指します。

 

イノベーションを起こすことで、市場で有利なポジションを築いたり、企業を持続的に成長させたり、社会全体に影響をもたらせます。

イノベーションの種類や理論

  • シュンペーターによる5種類のイノベーション
  • チェスブロウによる2種類のイノベーション
  • クリステンセンによる2種類のイノベーションとイノベーションのジレンマ理論

イノベーションについてはこれまでさまざまな理論が提唱されてきました。ここでは、特に有名なイノベーションの種類や理論を紹介します。

 

シュンペーターによる5種類のイノベーション

オーストリア出身の経済学者シュンペーターは、イノベーションの父とも呼ばれる存在です。シュンペーターは、イノベーションとは“これまで組み合わせたことのない要素を組み合わせることによって新たな価値を創造すること”であるとして、“新結合”という概念でイノベーションを説明しました。

 

シュンペーターが分類した下記の5種類のイノベーションは、今でもイノベーションの基本的な概念として用いられています。

  • 1.プロダクト・イノベーション(新しい商品やサービスの創出)
  • 2.プロセス・イノベーション(新しい生産方法の導入)
  • 3.マーケット・イノベーション(新しい販売先・消費者の開拓)
  • 4. サプライチェーン・イノベーション(新しい供給源の獲得)
  • 5. オーガニゼーション・イノベーション(組織の変革)

 

チェスブロウによる2種類のイノベーション

アメリカの経営学者でハーバード大学経営学院教授、チェスブロウはハーバード大学での講義を通じて、オープンイノベーションの概念と可能性を発見して、2003年に“オープンイノベーション”の概念を提唱しました。

 

オープンイノベーションとは、既存のネットワーク外の資源を積極的に活用する開放的なイノベーションです。自社と外部の知識やリソースを組み合わせることでイノベーションを生み出すという概念で、現代の新たなイノベーションの形として、国内外ですっかり浸透した概念です。

 

オープンイノベーションに対比される概念がクローズドイノベーションです。1990年代以前は、企業は研究から開発まで自社の内部資源のみでイノベーションを生み出すことが主流であり、閉鎖的なイノベーション、すなわちクローズドイノベーションが主流でした。

 

しかし、チェスブロウは従来までのビジネスで一般的だったクローズドイノベーションについて、時代の変化にともなって自前主義でイノベーションを進める企業よりも、むしろオープンイノベーションを進める企業のほうがより早くイノベーションや製品開発を実現して結果を出しているとして、オープンイノベーションを提唱しました。

 

クリステンセンによる2種類のイノベーションとイノベーションのジレンマ理論

ハーバードビジネススクールの教授クリステンセンは、初の著作である『イノベーションのジレンマ』によって破壊的イノベーションの理論を提唱して有名となりました。現在ではビジネスのイノベーション研究の第一人者とされています。

 

クリステンセンはイノベーションを、「創造的イノベーション」と「破壊的イノベーション」に大別しました。

 

創造的イノベーションとは、持続的イノベーションともいわれ、既存の市場で顧客の意見や要望を反映しながら改革を進めるイノベーションを指します。

 

対して、破壊的イノベーションは、既存の概念にとらわれない新たな発想によって、革新的な新製品や新サービスを生み出すイノベーションのことです。

なぜ今イノベーションが注目されるのか 3つの背景

  • 製品・サービスのコモディティ化
  • ビジネスのグローバル化
  • 消費者の価値観変化

近年、多くの企業が積極的にイノベーションに取り組むようになっています。なぜ今イノベーションが注目されるのか、3つの背景を紹介します。

 

製品・サービスのコモディティ化

企業のグローバル化、また、インターネットによる急速な情報の拡散、そして技術進歩により、製品・サービスを差別化する難易度が上がりました。新製品やサービスもすぐ他社に真似され、競合商品が登場しています。

 

また、技術が進歩して商品・サービスのコモディティ化が進むなかで、企業が勝ち残るためには、常にイノベーションを生み出し、自社の既存商品・サービスを自ら陳腐化させていくことが求められています。

 

ビジネスのグローバル化

日本の国内企業はこれまで“改善”を得意として、製品・サービスを磨き上げていくような形で事業成長を実現してきました。イノベーション創出に関しても、自前主義を中心としたクローズドイノベーションが中心でした。

 

しかし、グローバル化に加えてインターネットの発展により、海外企業との競争は激化しており、国内市場でも外資系企業と競争する環境が当たり前になっています。

 

グローバル化が進むなかで外資系企業と戦っていくためには、組織内のクローズドイノベーションを促進することはもとより、外部と連携する敷居を下げてオープンイノベーションを進めることが求められています。

 

消費者の価値観変化

ミレニアル世代やZ世代を中心に、消費者の価値観が変化したことも背景として挙げられます。高度経済成長期は大量生産・大量消費の時代でしたが、現在は量よりも質が求められる時代となりました。

 

また、消費者の嗜好性は多様化しており、IT技術の発展とも連動して、サービスは細分化・個別カスタマイズして提供される方向に進んでいます。さらにインターネット等を通じて一瞬でトレンドが広まるなかで、市場が一種“飽きっぽくなっている”傾向もあります。

 

つまり前述した競合と競争するための変化対応に加えて、市場の細分化や変化スピードの向上に対応した変化も求められているわけです。企業は絶え間ないイノベーションへの取り組みが必要となっています。

イノベーションを起こすためにチェックすべき組織のポイント

 

 □メンバーの心理的安全性が担保できているか?
 □コミュニケーションが活発か?
 □ダイバーシティーを推進できているか?
 □経営層がイノベーション推進にコミットしているか?

 

組織でイノベーションを起こすために、見直すべきポイントを解説します。

 

メンバーの心理的安全性が担保できているか?

イノベーションを起こすためには、メンバーの心理的安全性が担保できている状態であることが重要です。

 

心理的安全性が担保できた状態とは、メンバーが組織のなかで他メンバーからの批判やネガティブな評価を恐れずに、安心して発言したり行動できたりする状態を指します。

 

イノベーションには、挑戦やアイデア、既存の価値観や状況に対する異論や否定が必要不可欠です。メンバーが安心して「バカげているかもしれない」意見や疑問を出せる環境が大切です。

 

コミュニケーションが活発か?

イノベーションを起こしやすい環境構築には、社内のコミュニケーションが活発かどうかも重要です。
とくにチームや部門の壁を越えたコミュニケーションを活性化させましょう。

 

シュンペーターが提唱したイノベーションの定義、「新結合」という言葉からも想像できるように、イノベーションは「知識と知識」「アイデアとアイデア」「異分野の成功事例と自社の事業」などから生まれる部分があります。
こうした“新たな結びつき”を生み出すために社内外でのコミュニケーションの活性化が大切です。

 

ダイバーシティーを推進できているか?

イノベーションを起こすうえで、多様性は重要な要素です。
さまざまな価値観や立場から意見が出ることで、同質的な組織では得られない新たなアイデアが生まれ、イノベーションが生まれる可能性が高まります。

 

ダイバーシティーに取り組む上では、単に組織のメンバー構成を多様化するというだけではなく、異なる価値観を受け入れる、異なる価値観同士をかけ合わせて新たなアイデアを生み出すといった考え方やスキルをメンバーに身に付けてもらうことが大切です。

 

経営層がイノベーション推進にコミットしているか?

イノベーションは新しいアイデアや施策、既存のビジネスプロセス変更、新商品・サービス、既存商品・サービスの否定などです。そのため、イノベーションを現場のメンバーだけで推進することは難しい側面があります。

 

また、イノベーションには挑戦と失敗がつきものです。したがって、組織レベルで継続的にイノベーションを起こすためには、組織構造や風土の整備なども必要になります。そのためには経営層の積極的なコミットメントが不可欠です。

イノベーションを生み出す秘訣

イノベーションを生み出す秘訣

 

経営学者であるドラッカーも企業がイノベーションに取り組む重要性を提唱するとともに、イノベーションを生み出す視点を紹介しています。

 

イノベーションは“技術革新”ではない

イノベーションというと、日本語では“技術革新”と訳すことも多いため、何か新しくて革新的な発明、というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、ドラッカーはそうではないといっています。

 

イノベーションとは、「顧客に向けて新しい価値を生み出し、提供すること」です。必ずしも新たな技術革新をともなうものではありません。

 

例えば、寒い季節になるとフリースを着るという方は多いのではないでしょうか。日本でフリースの大ブームを起こし、普及させたのはユニクロだといわれますが、フリースは新たな技術革新により生み出されたものではありません。

 

フリースはもともと登山に使う防寒着でした。あくまでも登山用品のため、色も深い緑とか、地味でバリエーションも少ないものでした。

 

しかし、フリースの防寒の機能に目を付けたユニクロが、カラーバリエーションを増やし、値段も低価格に抑えて売り出したことで、爆発的に売れて今となっては寒い時期の当たり前のファッションになっています。

 

ヒートテックを流行らせたのもユニクロです。じつはヒートテックは、もともと熟年男性がゴルフのときに着る防寒用の肌着を改良したものです。有名人を使ったCM戦略も功を奏し、こちらも誰もが知っている大ヒット商品となりました。

 

また、ブリヂストンというタイヤメーカーはご存じかと思います。ブリヂストンはもともと足袋屋さんで、足袋にゴム底を貼り付けた地下足袋を発明したのがブリジストンです。

 

創業者の石橋正二郎が地下足袋を開発した当時、労働者が作業中に履いていたのはワラジでした。ワラジは耐久性がないため1日でダメになってしまううえに踏ん張りもききません。

 

そこで、ワラジの履物を改良することが世の中のためになるはずだ、と考えて地下足袋をつくったのです。
そして、滑らないゴム底に関する研究開発は発展、そこから進化を重ねて、自動車の発展とともに、世界有数のタイヤメーカーへと成長していきます。

 

このように、イノベーションとは社会や顧客の要求、期待にこたえるために行なうものであり、決して新しい技術が必要となるわけではありません。

 

イノベーションを生み出す7つの機会

ドラッカーはイノベーションの手がかりとなる機会として以下の7つを挙げています。

  • 1.予期せぬもの
  • 2.ギャップの存在
  • 3.ニーズの存在
  • 4.産業構造の変化
  • 5.人口構造の変化
  • 6.意識の変化
  • 7.発明発見

ドラッカーはイノベーションのなかでも、最も成功しやすい機会が「予期せぬもの」だといいます。予期していなかったちょっとした変化や違和感から見えてくるものはないか、ということです。

 

ある建設企業の話です。あるとき、月に数回ほど、奇妙な電話がかかってきていました。電話は「造園はやっていないか」という問い合わせでした。自社は造園業ではなく建設業なので、「造園はやっていないんです」と断っていました。

 

しかし、あるとき、社員の一人が気付きます。「一般の人から見たら、建設業も造園業もたいした違いはないのではないか?」 そこで問い合わせ件数を集計してみると、かなりの数の問い合わせが入っていることがわかりました。

 

「造園は思っている以上のニーズがあるのかもしれない」ということで、造園事業を手がけることを決め、その後は造園を中心とする企業に変わっていったそうです。

 

このような事例は他にもあります。たとえば、カラオケ店といえば、複数人数のグループがみんなで楽しむために訪れるところ、というイメージがありました。しかし、実際は一人で来る客が少なくないため、最近では一人カラオケ専用の店ができました。同様の理屈で“ひとり焼肉”の店も市場を確立しています。

 

また、ネスレの有名なお菓子、キットカットの事例はご存じでしょうか。今でこそ、キットカット(KitKat)=“きっと勝つ”の語呂合わせで、受験や試験の時期にキャンペーンも行われて爆発的に売れることはほとんどの方がご存じでしょう。

 

しかし、もともとはネスレ側が仕掛けたものではありません。「なぜか受験シーズンになると売上が急に伸びる」という“予期せぬこと”が起きていたのです。そして、“予期せぬこと”に注目して原因を調べてみると、キットカットというネーミングに理由があるとわかり、新たなビジネスチャンスが生まれたのです。

 

ビジネスにおける“予期せぬもの”は、ニーズの存在や顧客の変化を指し示す手がかりであることが多いのです。

 

“予期せぬもの”はたまたま発見するものではありません。日常的に見つけ出す仕組みが必要です。日常の変化や違和感に注目すること、日常を観察しておくことで、イノベーションにつながるきっかけを見出せます。

イノベーションに成功した企業の事例をご紹介

 

Google

今では誰もが知るGoogleは、利益を追求しないという画期的な経営方針によって、驚異的なスピードでの成長を遂げた企業です。
Googleが掲げる10の真実という指針には、「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。」 と宣言されています。

 

Googleのサービスは、ほとんどがユーザーに無料提供されており、収益源の多くはオンライン広告です。フリーミアムといったビジネスモデルは昔からある概念ですが、「ビジネスは利益を出す必要がある」という概念を打ち破って、成長を遂げたのがGoogleだといえます。

 

Amazon

Amazonは今や誰もが知っている世界的なEC企業であり、AWSやAmazon primeなどさまざまな分野に事業を拡げています。

 

そんなAmazonの成長するきっかけが、従来の小売業、そして、ECビジネスにおける「在庫や人材確保のリスクが生じる物流倉庫の保持は避けるべき」という常識を覆す物流倉庫への巨額投資によるものです。
画期的な仕組み化とデジタル化によって物流倉庫を管理することで、Amazonは世界一のインターネット通販企業へと成長したのです。

 

セブン-イレブン

セブン-イレブンは日本にコンビニエンスストアを普及させた企業です。日本のセブン-イレブンのビジネスモデルは、アメリカで成功していたセブン-イレブンのモデルを日本で拡げ、独自に磨き上げてきたものです。

 

1974年に創業者の鈴木敏文氏がセブン-イレブン・ジャパンを始めた際には、日本にコンビニエンスストアという概念はありませんでした。
当時、大型スーパーが主流であったため、大口配送が一般的だった物流業界で、従来の常識を変える小口配送を実現化して成長したのが今のコンビニエンスストアです。

企業の存続と成長に、イノベーションは必要不可欠です!

製品・サービスのコモディティ化、ビジネスのグローバル化、消費者の価値観変化などのさまざまな社会環境の変化を受けて、企業の存続と成長のためには今やイノベーションが欠かせないものとなっています。

 

イノベーション創出のためには、イノベーションが創出されやすい組織環境を作っていくことが重要です。本記事で紹介したイノベーションを起こすためにチェックすべき組織のポイントをぜひ参考にしてみてください。

 

イノベーションを起こすために必要なのは、画期的な技術革新ではなく、社会や顧客の要求、期待に耳を傾けることです。身近にあるかもしれないイノベーションのきっかけにアンテナを張り、企業の成長を実現していきましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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