本章ではインナーブランディングの成功事例を5つ紹介します。
スターバックス
スターバックスは何よりもメンバーの満足度を重要視している企業で、以下の行動指針を定めています。
- お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる
- 事業運営上での不可欠な要素として多様性を受け入れる
- コーヒーの調達や焙煎、新鮮なコーヒーの販売で常に最高級のレベルを目指す
- 顧客が心から満足するサービスを常に提供する
- 地域社会や環境保護に積極的に貢献する
- 将来の繁栄には利益性が不可欠であることを認識する
インナーブランディングの一環として人材育成にも力を入れており、年間の研修は約80時間にもおよびます。また、業務マニュアルは存在せず、一人ひとりのメンバーが顧客満足のために自主的に行動することが求められています。
結果としてメンバーの主体性が育まれ、満足度の高いサービスの提供につながっています。週20時間以上勤務するパートタイマーも含めた全社員に対して健康保険とストックオプションを付与するなど、働きやすい環境づくりに対する決意を示す福利厚生の充実もスターバックスの特徴です。
サントリー
サントリーは、「水と生きる」というコーポレートメッセージを、国内外共通のブランドプロミス「私たちの約束」として新たに制定しました。37,000名を超える国内外の社員に企業理念に込められた思いや考え方の本質的な理解と共感を得るため、ムービーと冊子を開発し配布したりセミナーを開催したりしています。
また、全社員必須の研修として国内社員には「天然水の森」での森林整備体験を実施しています。さらに海外社員を日本に招き山崎蒸溜所の訪問など研修活動を多数開催したり、コーポレートブランド戦略部を新設したりして、インナーブランディングの強化に取り組んでいます。
ホンダ
ホンダは1948年の創業以来、「人や社会の役に立ちたい」「人々の生活の可能性を拡げたい」という想いを原点に移動と暮らしの進化に貢献する価値提供を続けています。
ホンダの想いをメンバー一人ひとりに共有するための取り組みが、基本理念・社是・運営方針を軸にするHondaフィロソフィーです。ホンダはこのHondaフィロソフィーを全メンバーに共有しています。
2021年11月からはじまった企業広告プロジェクト”Hondaハート”では「きょうだれかをうれしくできた?」という語り掛けの形式で、メンバーが日々意識するよう取り組んでいます。
この取り組みは、広告という形でのアウターブランディングと、広告をきっかけとしたインナーブランディングを連動させた形です。社長やブランドを体現するメンバーが登壇し、有志のメンバーと語り合うようなイベントも定期的に開催しています。
株式会社リクルート
株式会社リクルートは、就職、転職、結婚式場、不動産、飲食店…などの各種マッチングやソリューション事業の他、数々のライフイベント関連サービスを提供する企業です。同社では、社員のモチベーション向上や企業文化の共有を目的とした「VISION MISSION DAY」を通じて、インナーブランディングに取り組んでいます。
このイベントでは、経営陣のメッセージや戦略共有を通じて、ビジョン・ミッション・バリュの意味や重要性を再認識したり、ミッションを体現した仕事をアワードで表彰したり、事業本部の枠を超えたパーティーをしたり・・・など、全社員が一堂に会して盛大に盛り上がります。
こうした取り組みにより、リクルートグループは従業員のエンゲージメント向上に成功しており、Open Workが実施している「働きがいのある会社」ランキングでは、2022年にグーグル、中外製薬に続く第3位にランクインするという結果になりました。
https://www.vorkers.com/award/2022/
(参考:openwork AWARDS 働きがいのある会社-2022-)
株式会社ニチレイフーズ
株式会社ニチレイフーズは、独自の商品開発力や冷凍技術を活かした冷凍食品やレトルト食品の製造を手がける企業です。ニチレイフーズは「ほんの少しの、その差にこだわる」という、素材本来の味とできたての美味しさに徹底してこだわる同社の姿勢を表すブランドメッセージを掲げています。
自社のブランドメッセージを社員に共有し浸透を図るために、同社が取り組んでいるのが「ハミダス活動」と呼ばれるインナーブランディングです。“ハミダス”について、ニチレイフーズのホームページを見ると、このように書かれています。
「今の立ち位置から一歩ハミダシて、手を携える。
つまり、周囲との連携をすることです。
自分の仕事の範囲を決めずに、勇気を持って仕事をカブってみましょう。」
https://www.nichireifoods.co.jp/corporate/hamidasu/about.html
社員が自分の考えや意見を積極的に発信するよう、「はみ出す」ことを推奨する思いが込められたメッセージと言えます。具体的な「ハミダス活動」としては、工場ごとにオリジナルのロゴを用意したり、公共交通機関のラッピング広告で従業員からデザイン案を募集したり、といったことの他、社員が自分の仕事に関するアイデアや提案を出すことを奨励しています。活動を通じて、同社ではブランド理念を浸透させると同時に、社員のコミュニケーションや創造性の向上の他、商品開発、生産管理といった業務の生産性にも磨きをかけています。