マイクロマネジメントとは?在宅勤務でのマネジメントの悪影響と対策

更新:2023/07/28

作成:2021/11/01

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

マイクロマネジメントとは?テレワークで増えるマイクロマネジメントの悪影響と対策

マイクロマネジメント」とは、上司から部下に対する過干渉(細かすぎる管理)を指す言葉です。昔からある問題ですが、在宅勤務(リモートワーク)の普及にともなって、あらためてマイクロマネジメントの弊害が注目されています。

 

日本では、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、在宅勤務を取り入れる企業が一気に増えました。在宅勤務の環境では、上司はメンバーの行動を直接見ることができません。結果として、マイクロマネジメントが増加して問題になっています。

 

マイクロマネジメントはメンバーのモチベーションやメンタルに悪影響を与え、組織のパフォーマンスを低下させます。組織はマイクロマネジメントの弊害が生じないように、有効な対策を打つ必要があります。
記事では、マイクロマネジメントの弊害と、マイクロマネジメントを防ぐための対策を解説します。

<目次>

マイクロマネジメントとは?

Web会議の様子

 

マイクロマネジメントとは、上司から部下に対する過干渉、つまり、上司が部下の業務をあまりにも細かく管理することを指します。

 

チームや組織をマネジメントするうえで、メンバーの仕事ぶりを知ることは、部下をサポートしたり、承認したり、評価したりするうえでは不可欠です。しかし、マネジメントしたい気持ちが行き過ぎて、過度に細かく、すべてをコントロールしようとするとマイクロマネジメントになってしまいます。

 

ほとんどの部下は上司によるマイクロマネジメントを嫌います。マイクロマネジメントは、部下の働く意欲を奪うのです。結果として組織のパフォーマンスが下がることは必至であり、マイクロマネジメントは基本的に「やってはいけないマネジメント手法」です。

 

新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、在宅勤務(リモートワーク)が増えたことで、多くの上司にとって、メンバーの仕事ぶりは対面時と比べて「見えない」ものになっています。いつもはすぐに確認できていた部下の様子が簡単には確認できなくなった状態は、上司にとっては不安をもたらすものです。

 

上司の心理的不安を原因として、在宅勤務(リモートマネジメント)におけるマイクロマネジメントが増加しており、社会問題の一つとなっています。

 

 

マイクロマネジメントの具体例

仕事の進め方を細かく指示したり、自分のやり方を強制したり、過剰な頻度の報告を求めたり、ミスを執拗に追及したりする行為などが、マイクロマネジメントに含まれます。

 

下記のような行動がマイクロマネジメントの具体的な事例です。

 

<マネジメントの具体例>

  • 数時間おきにチャットで業務進捗を報告させる
  • 取引先に送るメールやチャットの文面を細かくチェックする
  • チャットの返信は5分以内といったルールを強制する
  • すべての仕事で進め方を事細かに指示する
  • 電話に聞き耳を立て、内容や言い回しについて口を出す
  • あらゆる業務に自分のやり方を強制する
  • 社内の提案書や企画書などで重箱の隅をつつくようにチェックする
  • 小さなミスでも執拗に追及する
  • 部下の状況を常に把握しようとする

 

上記の行動は、部下の主体性を奪い、モチベーションを下げることにつながります。

マイクロマネジメントの弊害と悪影響

マイクロマネジメントには、具体的にどのような弊害や悪影響があるのでしょうか。代表的な5つの弊害と悪影響を解説します。

 

 

上司と部下の信頼関係を壊す

チームの生産性を支えるのは、チーム内に築かれた信頼関係です。信頼関係がなければ、どれほど能力があるメンバーがそろっていても、チーム全体でのパフォーマンスは低下します。

マイクロマネジメントの問題点は、こうした重要な信頼関係を壊してしまうことにあります。

 

過剰な干渉・管理は「お前を信頼していない」というメッセージになり、上司とメンバー間の信頼関係が壊れていきます。結果として、チーム内での上司の求心力、上司への信頼が低下して、チームとしてうまく機能しなくなります。

 

 

部下の主体性を奪う

チームの生産性を高め、相乗効果を発揮するには、メンバーからの主体的な意見や提案は欠かせません。しかしマイクロマネジメントは、メンバーの「自ら考えて動く」スペースを奪ってしまいます。

 

上司が事細かに仕事を管理することで、メンバー自身のアイデアや思考が仕事に活かされる機会がなくなると、メンバーはどんどん受動的になっていきます。上司自身が、受け身のメンバーを作り上げてしまうのです。

 

先ほど解説した、信頼関係を壊すというマイクロマネジメントの弊害も、「組織のために主体的に貢献しよう」という意欲を奪うことにつながりますので、主体性の低下が急激に生じます。

 

 

組織全体のパフォーマンスを低下させる

マイクロマネジメントは、部下の可能性や自由な発想を阻害します。

たとえ豊かな創造力を持っている部下でも、マイクロマネジメントのもとではただの「作業要員」として働くしか選択肢がなくなってしまいます。

 

こうした状況下では、上司の指示以上のアウトプットは期待できません。また、信頼関係が壊れている環境下では、指示を実行する際のパフォーマンス自体も落ちます。こうした要因が重なり、マイクロマネジメントは組織全体のパフォーマンスを確実に下げていきます。

 

 

上司の生産性が低下する

マイクロマネジメントの悪影響が生じるのは、メンバーだけではありません。上司自身も「管理する」ことに時間を取られてしまいます。自分のマイクロマネジメントが原因でメンバーが指示待ち状態になってしまっていることに気付かず、サポートが不足していると考えて、さらに細かく管理してしまうことさえあります。

 

こうして上司がメンバーの管理ばかりにリソースを割いてしまうため、より大きなレベルで方針を考えたり、計画と現状を振り返ったりするなどの、リーダー/マネージャーとしての仕事を果たせなくなり、短期だけでなく中長期的な組織の生産性低下や発展の阻害も生じます。

 

 

メンバーのメンタルへ悪影響が出る

マイクロマネジメントによってメンバーが抱く「信頼されていない」「監視されている」という感覚は、大きなストレスとなります。過剰なストレスが継続すると、最悪の場合、うつ症状などのメンタルの不調を引き起こすおそれもあります。

 

特に若手層をマネジメントする場合、マイクロマネジメントによって、メンタルに悪影響を及ぼしてしまう可能性が高いです。現代の若手社員を理解し、成長を促進するマネジメントのコツは下記記事をご覧ください。

マイクロマネジメントへの対策

オンラインミーティングの様子

 

マイクロマネジメントにはさまざまな弊害があることは確認できました。在宅勤務やリモートワークが広まるなかで、どうすればマイクロマネジメントに陥らないで済むでしょうか。効果的な対策を2つご紹介します。

 

 

部下を信頼して自主性を重んじる

なぜ上司はマイクロマネジメントをしてしまうのか、その心理を考えてみましょう。マイクロマネジメントをする上司は、部下を信頼できていません。また、支配欲を持っていることも多いでしょう。

 

また、結果を出すことへのプレッシャーや不安を感じていることが少なくありません。具体的にいえば、「自分がすべて確認したり指示したりしないと、仕事がうまく回らない」という思いが強いのです。まじめで慎重な上司ほど、マイクロマネジメントをする傾向があります。

 

ネガティブな気持ちだけではなく、「組織の目標を必ず達成させたい」「部下を失敗させたくない」などの前向きな思いも、マイクロマネジメントにつながることがあります。
たしかに、部下にすべてを丸投げすることには問題があります。チームのリーダーとして必要なコミュニケーションはしっかり取らなければなりません。

 

しかし、部下の能力を十分に活かしてチームのパフォーマンスを上げるためには、部下を信頼して、自分の仕事と部下に任せる仕事を切り分けることが必要です。

 

上司は、最終的なゴールや目的、絶対に守るべきルール・条件を提示しましょう。そして、仕事の細かな進め方は、部下の自主性に任せるのです。部下に任せるマネジメントを実行するには勇気が必要かもしれませんし、時には自分の思い通りに物事が進まなかったり、失敗したりすることもあるでしょう。

 

しかし、チーム全体のパフォーマンスを中長期的に高め、部下を育成するためには、部下に任せることが必要です。もちろん単に放置するのではなく、適切なフォローは必要です。ぜひ一度試してみてください。

 

 

成果主義の考え方を取り入れる

マイクロマネジメントに陥らないために、部下に権限を委譲することも効果的です。

 

部下に権限移譲するうえでは「Win-Winの実行協定」という考え方が参考になります。「Win-Winの実行協定」は、スティーブン・R・コヴィーによる世界的な名著『7つの習慣』で紹介されている考え方です。

 

部下に仕事を任せるときは「Win-Winの実行協定」で紹介されている項目を意識して、部下と合意することが有効です。

 

 

「Win-Winの実行協定」で定めるのは以下の項目です。

1.明確な目的と目標、従うべきルール

まずは、チームが目指すゴール、ゴールを目指す理由を明確に提示しましょう。また、目的や目標を達成するにあたって互いが従わなければならないルールや基準を設定します。

 

大切なのは「合意したルールの範囲内では、目標達成に向けて自由に行動して良い」と部下に感じてもらうことです。信頼されて権限を任せられた感覚が、部下の主体的で創造的な行動を促します。

 

2.提供できるサポート

上司や企業が、目標達成のために提供できるサポートを提示しておきます。人、お金、技術、設備など、ゴールに向かうために部下がどういったリソースを使用できるか、また相談の仕組みなどを確認しておきましょう。

 

3.進捗や報連相のルール

ミスをしたときや困ったことが生じたときにすぐ上司に相談ができるように、責任に対する報告のルールをガイドライン内で定めておきましょう。特に進捗報告の仕組みをしっかりと決めておくことで、上司として安心して仕事を任せ、適切にサポートすることができます。

 

適切なタイミングで介入できるようにしておけば、上司側も安心でき、結果を出すことへのプレッシャーや不安から過剰な干渉をしてしまうリスクも回避できます。

 

 

まとめ:部下に任せることもマネジメントのポイント

上司が部下の業務を細かく管理しすぎる「マイクロマネジメント」は、職場において昔から生じている問題ですが、在宅勤務(リモートワーク)が普及するなかで改めて問題となっています。

 

「マイクロマネジメント」は、上司と部下の信頼関係を壊して部下の主体性を奪い、上司の生産性までも低下させて、結果的に組織全体のパフォーマンスを落とすという大きな弊害があります。

 

マイクロマネジメントを行なう上司の多くは、結果を出すことへのプレッシャーや不安を抱えています。時には目標達成への責任感や部下に失敗させたくないという前向きな思いもマイクロマネジメントにつながります。

 

メンバーに仕事を任せることは長期的な人材育成にもつながり、組織の生産性を高めるために欠かせません。部下に仕事を任せる際は、成果主義の考え方に基づいて、Win-Winの実行協定を参考に、仕事の権限を委譲していくと効果的です。

 

メンバーを信頼したうえで、在宅勤務(リモートワーク)の「見えない」環境下でも、部下が主体性を発揮して活躍できる環境をつくっていきましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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