
在職老齢年金制度は、令和4年4月に改正されました。本章では、改正が必要となった背景、すなわち在職老齢年金制度や高齢者雇用の現状を確認したうえで、具体的な改正ポイントを紹介します。
在職老齢年金の改正が必要となった理由と背景
まず、高齢化社会が進む日本では、企業に勤める65歳までの高齢者の安定した雇用の確保が必要となっています。そのため、令和4年3月までの在職老齢年金の仕組みでは、65歳以上よりも65歳未満のほうが減額される年金の基準額が低く設定されている、つまり、働く人をより増やす形で設定されていました。
在職老齢年金の仕組みは、企業の定年年齢が60歳以上であり、65歳までの雇用義務が企業に課せられていることに関係しています。なお、65歳までの継続雇用は、高年齢者雇用確保措置という義務3つの一つです。
<高年齢者雇用確保措置で生じる企業の義務>
- 65歳までの定年引き上げ
- 65歳までの継続雇用制度の導入
- 定年制の廃止
そもそも「年金」は労働者が退職をして収入がなくなったあとの所得を保障するためにつくられた制度です。
先述のとおり、厚生年金の適用事業所で働き続ける64歳未満の高齢者は、勤務先から月給・賞与が支払われ続けるうえに、60歳から支給される特別支給の老齢厚生年金も受け取れることになります。
したがって、収入が多い働く高齢者と無職の高齢者の不公平感、所得の差を減らすために、従来は65歳以上と比べて支給停止の額が低く設定されていました。
一方で65歳以上の場合、高年齢者雇用確保措置の対象から外れるため、大半の人にとってメインの収入源が老齢厚生年金になります。
なお、令和4年3月までに65歳未満に支給されていた特別支給の老齢厚生年金の額は、段階的に引き上げられています。特別支給の老齢厚生年金の段階的引き上げは、男性が2025年度、女性は2030年度に終わります。
よって、令和4年3月までの在職老齢年金の仕組みでは、支給停止になる高齢者がどんどん減っている状態になっています。
こうした現状に合わせて年金制度の仕組みを大きく変えたのが、令和4年4月の在職老齢年金制度改正です。
令和4年4月の在職老齢年金制度改正における2つのポイント
令和4年4月の在職老齢年金制度改正におけるポイントは、以下の2つです。
<令和4年4月の改正ポイント>
- 減額もしくは支給停止になる基準額を、65歳未満と65歳以上を同額にする
- 在職定時改定を導入する
本項では、各ポイントの概要と計算式を解説しましょう。
・改正のポイント①年金額における支給停止の基準が変更になった
まず、従来の制度では、在職老齢年金の減額もしくは支給停止額が「65歳未満」と「65歳以上」で異なっていました。
- 65歳未満:月額28万円を超えた場合
- 65歳以上:月額47万円を超えた場合
一方で令和4年4月の改正では、65歳未満の人の基準額も、47万円まで緩和されることになりました。そして、在職老齢年金の支給停止(全部または一部)の判断をする計算式は、以下のとおりになります。
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2×12
上記の計算式によって、令和4年4月以降は支給停止(全部または一部)の判断と額の決定は以下のように行なわれるようになります。
【基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下の場合】
【基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円を超える場合】
- 支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)×1/2×12
・改正のポイント②在職定時改定の導入
在職定時改定とは、65歳以上の高齢者が厚生年金に加入しながら働いている場合、毎年1回決まった時期に、年金額の再計算をする新たな仕組みを指します。
毎年決まった時期がくると、厚生年金の加入の有無や年齢は関係なく、再計算までの加入実績を踏まえて年金額が増額していくというものです。実際には、9月1日時点で厚生年金に加入している場合、8月までの加入実績で増額を行ない、10月分(支払いは12月から)より増額された年金が支払われます。
従来の年金制度では、厚生年金の保険料を毎月納めても、65歳以上の高齢者の年金額はすぐ増えるわけではなく、以下のタイミングで行なわれていました。
一方で、在職定時改定が導入されると、高齢者が働き保険料を納めた結果が、毎年、年金額に反映されることになります。詳しくは、以下の記事も参照ください。