
職種別採用にはメリットもあれば、デメリットもあります。両面を理解したうえで、うまく導入・運用することが必要です。
メリット
職種別採用の代表的なメリットを3つご紹介します。
・職種や配属先を確約することで、採用力の向上につながる
近年では、応募先企業を検討する際に、業種だけでなく職種で求人を絞り込む学生が増えている中で、配属職種を限定することは採用力の向上に繋がります。
自分の専門性を生かしたり、特定の職種に興味があったりする学生にとっては、「総合職」でどこに配属されるか分からないよりも、希望する配属先が約束されている企業のほうが魅力的に映ります。
・専門職種を採用しやすくなる
特に研究職やエンジニア職の場合、新卒であっても専門知識が必要になることが多く、採用要件で専攻が限定されているケースも少なくありません。
専門職種の新卒採用で職種別採用を取り入れ、「どのような仕事で活躍してほしいか」を明示することで、機械・電気・建築・情報などの専門性を身につけた新入社員を採用しやすくなります。
例えば、最近の建設業界では建設現場や建機がすべてネットワーク接続されてIT管理されており、ITエンジニアの採用ニーズも高まっています。しかし、一般的には建設業界といえば「設計」や「施工管理」のイメージが強いため、普通に総合職採用を実施しても、情報専攻した学生が応募してくれることは少ないのが実情です。
しかし、「エンジニア職」として職種別採用を実施することで、情報専攻の学生にも興味を持ってもらうきっかけを作れるといった効果があります。
・離職率を減らすことができる
採用ミスマッチによる早期離職は、企業としてできる限り避けたい問題です。
職種別採用では、希望する職種で働くことが叶うため、入社後のミスマッチが起こりにくくなります。加えて、職種が明示されているため、目的意識を持った人材が集まりやすいことも、職種別採用が離職率の改善につながる理由です。
デメリット
職種別採用はメリットだけではなく、デメリットも生じます。
・職種を限定して契約を結んだ場合、職種変更が難しい
雇用契約を結んだあとの職種の変更は労働契約の変更にあたり、労働者の合意が必要になります(労働契約法第8条)。
採用時の職種で定年まで活躍してもらうのが理想かもしれませんが、定年までの時間軸と現在の市場環境、また入社後に判明する業務適性等もあることを考えると、採用職種での雇用を継続的に約束することは難しいのが現実です。
日本は欧米と比べると雇用の流動性が低く、とりわけ企業から労働契約を解除できる場面はかなり限定されています。そのため、部門や職種を限定した雇用契約を結んでしまうと、部門・職種変更が難しくなり、組織運営上支障が生じるおそれがあります。
上記のような理由から日本の職種別採用は、職種を限定した雇用契約(ジョブ型雇用)ではなく、あくまで初期の配属先や職種を約束するだけで、雇用契約上は部門や職種を限定しない形態になりやすいのです。
なお、職種限定での雇用契約でない場合も職種変更には制約はあり、企業側が一方的に職種変更を命じることはできないことも知っておく必要があるでしょう。
・壁にぶつかり退職を考える人材も生じる
希望職種で働けることが定着率の向上につながるのは、メリットとして先ほど述べたとおりです。
しかしその反面、希望した仕事で壁にぶつかったときに「職種転換」を考えづらいというデメリットもあります。「違う職種でがんばろう」という考えを持ちづらい環境を作ってしまうと、退職につながるおそれもあります。
・社内の協力体制に支障が出るおそれがある
職種別採用で入社したメンバーが「自分のやりたいこと以外はやらなくて良い」という考えを持ってしまうと、社内の協力体制が崩れ、業務に支障をきたす可能性もあります。
上記は職種別採用に限定した問題ではありませんが、職種別採用の実施は、「自分は○○職」という限定的な思考をもたらしやすい側面はあります。