通年採用とは?|経団連の宣言で注目された通年採用の概要や実態、メリット・デメリットを解説

更新:2022/08/30

作成:2022/08/30

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

通年採用とは?|経団連の宣言で注目された通年採用の概要や実態、メリット・デメリットを解説

 経団連が、2018年10月に就活ルールの廃止を発表し、また2019年4月に経団連と大学側で「新卒学生の通年採用を拡大する」という合意を発表したことで、“通年採用”という言葉が注目されるようになりました。

 本記事では、通年採用の基礎知識と経団連発表の実態や背景、また通年採用のメリット・デメリットを確認します。通年採用を本気で取り入れている企業の事例と通年採用を成功させるためのポイントを紹介しますので参考にしてください。

<目次>

通年採用の基礎知識

 まずは、通年採用とはどういうものかを、背景や一括採用との違いなどから確認します。

通年採用とは?

 通年採用とは、その名のとおり、一年を通して採用活動を行なうことです。新卒採用の分野では、一括採用との対比的な意味合いで使われることが多くなります。

通年採用と一括採用の違い

 通年採用の特徴は、対比される考え方である新卒の一括採用と比べるとよくわかります。

 まず、日本における新卒一括採用は、最も堅い定義としては、就活ルールにしたがって以下のようなスケジュールで新卒学生を採用することを指します。

  • 3月:大手ナビサイトのスタートと採用広報の解禁、企業説明会のスタート
  • 6月:採用選考の解禁、実質的には内定出しの解禁
  • 10月:内定式開催

 これまでの日本では、経団連が主導して上記の就活ルールを定めて運用されてきました。上記の就活ルールは、経団連に加盟していない企業や外資系、ベンチャー企業などを中心にルール破りの早期化や青田刈りが進み、さらに経団連の加盟企業もルールを破り始め…それが限度を超えたところで、制定され直されるという歴史を繰り返してきました。結果的に、長い歴史のなかでは、就職(採用)協定、倫理憲章、採用選考指針など名前も変わってきました。

 インターンシップ経由の採用が完全に定着している実態などもあり、就活ルールの形骸化は年々進んではいますが、それでも大枠として採用シーズンが決まっており、企業と学生がある時期から一斉に就職/採用活動を始めるというのは変わりません。

 そして、ある時期から一斉に採用活動を始める結果、6月1日の内々定出しや10月1日の内定式なども一斉に行われています。

 これに対して、本来の通年採用は各社が一年を通して自由に採用活動を行なうことです。現状では、たとえば、殆どの大手企業は6月上旬の内々定出しでその年度の採用活動を終えることになりますが、通年採用ではそういった考え方をしません。

通年採用が注目される背景と経団連の宣言

 近年、通年採用というキーワードが注目されるようになったきっかけは、2018年10月に経団連の中西会長が発した「2021年度以降に入社する学生を対象とした採用選考に関する指針は策定しない」という宣言が大きく影響しています。

 経団連の宣言は、「経団連主導で就活ルールを定めることを止める」という意味です。経団連が就活ルールの廃止に踏み切った背景には、近年の採用市場に生じている以下のような現象への危機感があると考えられます。

  • 経団連企業は、新卒市場における不動の人気企業ではなくなった
  • 就活ルールに従わないメガベンチャーや外資系企業に、高度IT人材や次世代リーダー候補を奪われるようになっている

 こうした背景から、経団連は「このままでは新卒採用の生存競争を勝ち残れない」と考えた末に、自らを就活ルールで縛ることをやめるために、2018年10月の宣言をする流れになったと考えられます。

 その後、経団連と大学が採用活動に関する協議を実施するなかで、2019年4月、経団連と大学側が以下内容で合意したと発表されました。

  • メンバーシップ型採用(就社)に加えて、ジョブ型採用(職種別採用)も含めて、複線的で多様な採用形態に秩序を持って移行すべき
  • 外国人留学生や日本人海外留学経験者を積極的に採用する
  • ジョブ型採用を念頭に、大学院生を積極的に採用する
  • 1dayインターンシップは、教育的意義を持つインターンシップとは区分して、別のものとする
  • インターンシップで得た学生情報の広報・採用選考活動への活用は、継続的に検討する

 “通年採用”への注目は、2019年4月の発表が契機となっています。但し、発表内における通年採用の趣旨は、“外国人留学生、日本人の海外留学経験者、既卒者、大学院生などを主な対象として、大学3年生の3月〜4年生6月以外に新卒採用の時期・対象を広げる”というものです。

 大学と経団連が新卒採用の早期化などに合意したわけではまったくありませんが、マスコミの報道などにより、「通年採用=早期採用」といった誤解がかなり広がり、本来とは違う意味合いで“通年採用”という言葉が使われるようになっている実態があります。

 ただし、経団連の「採用選考指針の策定を廃棄する」という発表を受けて、新卒採用の早期化がもう一段進んだことも事実であり、その点が本来の“通年採用”という言葉の理解を妨げるものになっています。

通年採用のメリット・デメリット

 本章では、“年間を通じて新卒採用を行なう”という正しい意味での「通年採用」に関して、メリット・デメリットを紹介します。

通年採用のメリット

 通年採用には、以下2つの効果やメリットがあります。

・多種多様な人材を採用するチャンスが増える
 従来の新卒一括採用では、以下のような学生は採用指針のスケジュールに合わせづらい傾向がありました。

  • 秋卒業の学生
  • 海外に留学している学生
  • 教職過程から民間に転向する学生
  • 公務員試験から民間に転向する学生
  • 研究で忙しい理系学生

 企業が通年採用を行なうことで、新卒一括採用では出会いにくかった上記を含めた多種多様な学生とつながりやすくなります。

・自社のタイミングで採用活動を行なえる
 従来の新卒一括採用は、経団連のスケジュールが自社の繁忙期と重なるような企業などにとっては大きな負担となっていました。通年採用に切り替えて自社のスケジュールで採用活動を進められるようになれば、上記のような繁忙時の調整もしやすくなります。

通年採用のデメリット

 現時点では、通年採用には以下のデメリットもあります。

・優秀人材を取り逃がす可能性がある
 この数年、マスコミ等が流布させてきた“通年採用”は、本来の意味とはかけ離れて、実質的には新卒採用を早期化させる流れとなっています。

 他社が採用活動を早期化させるなかで、自社が通年採用で採用活動を後ろ倒しさせるようなことをすれば、優秀層へのリーチは難しくなり、採用活動が失敗する可能性が出てくるでしょう。

・内定辞退が増える可能性がある
 従来の新卒一括採用は、企業にとって効率的である側面もあります。たとえば、全企業が一斉に採用活動をするからこそ、学生側にも一定のタイミングで、内定先を決める、内定承諾するといった流れが生まれます。

 しかし、通年採用する企業が増えて、秋冬の採用枠が増えれば、学生も一定の時期で半ば妥協も含めて内定承諾して就職活動を切り上げるのではなく、内定承諾後も就職活動を行うようなことも予測できます。とくにネームバリューなどのない中小企業の場合、学生の滑り止めになってしまい、内定辞退が増える、採用活動の負担が重くなることも考えられます。

通年採用を本気で取り入れている企業事例

 本章では、大企業を中心に、通年採用の企業事例を紹介します。デメリット部分で紹介した通り、現時点では通年採用のみで採用を実施することは困難かもしれません。しかし、通常の新卒採用に加えて、通年採用にも取り組むことで、多種多様な人材を採用するチャンスを増やすというメリットを生かそうとしている企業群が以下の企業です。

ファーストリテイリング

 ファーストリテイリングは、どの学年でも応募できる通年採用を行なっています。特徴は、不合格になっても、選考年度が変われば、再チャレンジできることです。

 また、人事面接とキャリアセッションの参加で選考を通過した学生には、「ユニクロパスポート」を発行する仕組みを導入しています。これはパスポート発行から3年以内はいつでも最終面接を受けられるシステムで、通年採用を促進する仕組みともいえるでしょう。

リクルート

 リクルートの新卒採用では、以下6つの募集コースで通年でのエントリーを受け付けています。

  • ビジネス総合職
  • IT総合職
  • エキスパート職:エンジニア
  • エキスパート職:データスペシャリスト
  • エキスパート職:デザイン
  • エキスパート職:ファイナンス

 応募条件は以下2つの条件だけで、なお、海外留学などで翌年度の4月入社が難しい場合、選考時の相談も可能という仕組みです。

  • 翌年度の4月に入社できること
  • 入社時に30歳以下であること

 通常の一括採用で取りこぼしているかも知れない多様な人材を拾い上げるための仕組みといえるでしょう。

ヤフー

 ヤフーでは、2016年10月より新卒一括採用を廃止し、ポテンシャル採用とキャリア採用を通年で行なう形を導入しています。

 ポテンシャル通年採用では、「応募時に30歳以下」かつ「入社時に18歳以上の新卒・既卒・就業者」を応募条件としています。入社時期は、選考時期によって異なりますが、基本は4月と10月です。

 通年のキャリア採用のほうは、各ポジションに求められるスキルや資質を持つ人が対象です。ポテンシャル採用とは異なり集合研修もなく、採用後、随時入社が可能になります。

パナソニック

 パナソニックでは、学生時代の学びの機会を尊重し、就職活動のためだけの大学生活を送ってほしくないという想いから、事務系・技術系・クリエイティブ系のいずれにおいても通年採用を実施しています。ファーストリテイリングと同じように不合格になっても、期が変われば再チャレンジ可能だというのが特徴です。

ユニリーバ

 ユニリーバの新卒通年採用は、「いつでも、どこでも、自分のキャリアを考えてほしい」という想いから生まれたUFLP365というものです。

 UFLP365には、エントリーシートがない一方で、ユニリーバが独自に用意したゲーム選考やデジタル面接などが行なわれます。インターンシップのあり・なしなども選択できるため、海外留学や卒業研究が忙しい学生なども使いやすい制度になっています。

まとめ

 通年採用は、2018年10月に経団連が「就活ルールの策定をしない」と宣言したことをきっかけに日本国内で注目度が高まるようになりました。通年採用は本来、年間を通して採用活動(新卒採用)をすることを指します。しかし、日本においては、通年採用=早期化という誤った理解も広がっています。

 ただし、近年では通年採用のメリットである「多種多様な人材を採用するチャンスが増える」という点を活かして、通常の新卒採用に加えて、通年採用に取り組む大手企業も増えています。

 中小企業やベンチャー企業においても、自社の新卒採用に通年採用を加えることで、取りこぼしている優秀層にリーチできる機会がないかと考えてみても良いでしょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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