通年採用の基礎知識
まずは、通年採用とはどういうものかを、背景や一括採用との違いなどから確認します。
通年採用とは?
通年採用とは、その名のとおり、一年を通して採用活動を行なうことです。新卒採用の分野では、一括採用との対比的な意味合いで使われることが多くなります。
通年採用と一括採用の違い
通年採用の特徴は、対比される考え方である新卒の一括採用と比べるとよくわかります。
まず、日本における新卒一括採用は、最も堅い定義としては、就活ルールにしたがって以下のようなスケジュールで新卒学生を採用することを指します。
- 3月:大手ナビサイトのスタートと採用広報の解禁、企業説明会のスタート
- 6月:採用選考の解禁、実質的には内定出しの解禁
- 10月:内定式開催
これまでの日本では、経団連が主導して上記の就活ルールを定めて運用されてきました。上記の就活ルールは、経団連に加盟していない企業や外資系、ベンチャー企業などを中心にルール破りの早期化や青田刈りが進み、さらに経団連の加盟企業もルールを破り始め…それが限度を超えたところで、制定され直されるという歴史を繰り返してきました。
結果的に、長い歴史のなかでは、就職(採用)協定、倫理憲章、採用選考指針など名前も変わってきました。
インターンシップ経由の採用が完全に定着している実態などもあり、就活ルールの形骸化は年々進んではいますが、それでも大枠として採用シーズンが決まっており、企業と学生がある時期から一斉に就職/採用活動を始めるというのは変わりません。
そして、ある時期から一斉に採用活動を始める結果、6月1日の内々定出しや10月1日の内定式なども一斉に行われています。
これに対して、本来の通年採用は各社が一年を通して自由に採用活動を行なうことです。現状では、たとえば、殆どの大手企業は6月上旬の内々定出しでその年度の採用活動を終えることになりますが、通年採用ではそういった考え方をしません。
通年採用が注目される背景と経団連の宣言
近年、通年採用というキーワードが注目されるようになったきっかけは、2018年10月に経団連の中西会長が発した「2021年度以降に入社する学生を対象とした採用選考に関する指針は策定しない」という宣言が大きく影響しています。
経団連の宣言は、「経団連主導で就活ルールを定めることを止める」という意味です。経団連が就活ルールの廃止に踏み切った背景には、近年の採用市場に生じている以下のような現象への危機感があると考えられます。
- 経団連企業は、新卒市場における不動の人気企業ではなくなった
- 就活ルールに従わないメガベンチャーや外資系企業に、高度IT人材や次世代リーダー候補を奪われるようになっている
こうした背景から、経団連は「このままでは新卒採用の生存競争を勝ち残れない」と考えた末に、自らを就活ルールで縛ることをやめるために、2018年10月の宣言をする流れになったと考えられます。
その後、経団連と大学が採用活動に関する協議を実施するなかで、2019年4月、経団連と大学側が以下内容で合意したと発表されました。
- メンバーシップ型採用(就社)に加えて、ジョブ型採用(職種別採用)も含めて、複線的で多様な採用形態に秩序を持って移行すべき
- 外国人留学生や日本人海外留学経験者を積極的に採用する
- ジョブ型採用を念頭に、大学院生を積極的に採用する
- 1dayインターンシップは、教育的意義を持つインターンシップとは区分して、別のものとする
- インターンシップで得た学生情報の広報・採用選考活動への活用は、継続的に検討する
“通年採用”への注目は、2019年4月の発表が契機となっています。但し、発表内における通年採用の趣旨は、“外国人留学生、日本人の海外留学経験者、既卒者、大学院生などを主な対象として、大学3年生の3月〜4年生6月以外に新卒採用の時期・対象を広げる”というものです。
大学と経団連が新卒採用の早期化などに合意したわけではまったくありませんが、マスコミの報道などにより、「通年採用=早期採用」といった誤解がかなり広がり、本来とは違う意味合いで“通年採用”という言葉が使われるようになっている実態があります。
ただし、経団連の「採用選考指針の策定を廃棄する」という発表を受けて、新卒採用の早期化がもう一段進んだことも事実であり、その点が本来の“通年採用”という言葉の理解を妨げるものになっています。






