本来の「通年採用」とは?
本来の通年採用とは、字のごとく「1年を通して採用活動をおこなうこと」を指します。従来まで日本の新卒採用は、「3月に採用広報がスタート、6月に採用選考が解禁され、10月に内定出しが解禁される」というスケジュールが定められていました。
実態としては「3月に大手ナビサイトでの説明会募集が解禁されて、同時に選考がスタート。6月1日~上旬で、大手企業における実質の内定出し(名目上は内々定)と内定承諾へのクロージングがおこなわれ、お盆前には大手企業の採用活動はほぼ終了。10月1日に内定式を開催して、内定者教育に入る」というスケジュールです。
このスケジュールの中では、学生側は実質3月~5月に応募しないと、就職活動が不利になってしまいます。企業側から見ても、海外留学生、教職課程からの転向、公務員試験から民間転向した学生、体育会の学生、研究で忙しい理系学生等、リーチしにくい属性が発生します。
これに対する1つの改善策として、時期が偏った一括採用を緩和して、通年で新卒採用の活動をおこなうようにするのが「通年採用」です。これにより企業も応募者の属性を広げたり、自社の状況を見ながら採用活動をおこなえる一方で、採用活動が長期化、終わりも曖昧になり、内定辞退の増加や採用コストの増加等も懸念されています。
通年採用と従来型の一括採用の違い
一括採用とは、すべての企業が同じ時期に一斉に採用活動をおこなうという、従来のやり方です。限られた期間で集中的に採用活動をおこなう一括採用は、企業にとって工数や費用を必要最低限に抑えられるというメリットがあります。
しかし、採用期間が短いために、前述したように一括採用から漏れてしまう優秀な人材を見逃してしまう、社会全体でのミスマッチが生じやすいという欠点があります。
通年採用のメリット
新卒採用において通年採用を目指すメリットは主に2つです。
企業ごとのタイミングで採用できる(学生ごとのタイミングで就職活動ができる)
必要なタイミングで採用活動をできるようになるというのが通年採用の目指すところです。中途採用においては、当たり前となっている考え方ですが、新卒採用はシーズンが縛られているため、決まったシーズンに合わせて採用活動をせざるを得ません。
3月~6月は企業によっては繁忙期にあたりますし、中小企業になると、入社の1年前に採用活動をおこなうことは時期が早すぎて経営状況が読みづらい側面もあります。通年採用になれば、場合によっては未経験者・既卒者の中途採用とも融合するような形で、企業のタイミングで採用活動ができるようになります。
学生側も同様で、4年生の新学期が始まる時期に就職活動をおこなわざるを得ないことは学生にも大きな負担がかかっています。これを是正することが通年採用の大きな狙いです。
多種多様な人材を採用できるチャンスが広がる
採用活動が平準化し、通年採用になることで、海外留学している学生、年々増加傾向にある既卒者、教職課程からの転向、公務員試験からの転向、卒業論文のテーマ策定時期にあたる理系学生、リーグ戦等のシーズンにあたる体育会系等、いまの一括採用では不利になりがちな人材に機会が生まれます。
当然、企業にとっても、いままでは取り逃した層にリーチしやすくなり、社会全体としてもマッチングの機会損失がなくなることが期待できます。
通年採用のデメリット
通年採用には社会全体の機会損失を防ぎ、企業にとってもメリットがある一方で、デメリットやリスクもあります。
中小企業は内定辞退に苦しむ可能性がある
通年採用が拡大すれば、学生側も入社する企業をじっくり選べるようになります。この数年、“内定承諾に法的拘束力はない”ということがネット上でも盛んに書き込まれた結果、内定承諾後の辞退は増えている傾向にあります。
とはいえ、一括採用の中で、メインの採用シーズンが終わると、一気に求人数が減少し、とりわけ10月1日の内定式以降は、辞退が生じにくい傾向にあります。
しかし、通年採用になると、中小企業から内定をもらった学生は、その後でも大企業の入社試験を受けることができるようになります。通年採用が本格化すると、中小企業が学生にとっての「滑り止め」になり兼ねない点が懸念されます。
採用コストや工数が増大する可能性がある
通年採用の実施により、求人広告や求人媒体への掲載期間が長期化する恐れがあります。現在の一括採用は、ほとんどの企業と学生が一斉に活動をおこなう分、効率が良いともいえるのです。通年採用になると、いまほど効率的に母集団形成ができなくなるリスクがあります。その場合、採用コストの増加は避けられません。






