採用活動で当たり前に実施される「面接」ですが、あらためて面接の目的やポイントを訊かれた場合、明確に回答できるでしょうか?
採用活動を成功させるには、面接の目的を理解したうえで、効果性の高い方法で実践していく必要があります。
記事では、面接を実施する2つの目的や面接のポイントを確認したうえで、面接偏重のリスクや対策も紹介します。
<目次>
面接を実施する目的①「見極め」
面接を行なう第一の目的は、自社に合う人材かどうか、活躍できるかどうかを見極めることです。
見極めるべき項目
まず、面接で見極めるべき項目は、大きく分けて以下の3つです。
・自社で活躍するための必要スキルや特性があるか?(スキルフィット)
スキルフィットとは、自社の業務内容に合ったスキルや経験があるかどうかです。
中途の場合、職務経歴書の実績・成果が、必ずしも本人の実力ではないこともあります。
また、本人の実力だとしても、自社における成果の再現性が保証されるわけではありません。したがって、自社での活躍可能性という視点で確認が必要です。
一方でポテンシャル採用の場合には、コンピテンシーや性格特性、動機などが、自社での活躍可能性につながりますので、こういった内面部分をきちんと見極める必要があります。
・自社の価値観や文化、企業風土にマッチしているか(カルチャーフィット)
入社後の定着率を高め、既存メンバーと協働・共創してもらうためには、カルチャーフィットするかどうかの見極めも大切です。
組織を最も壊すのは、「組織の価値観や風土にマッチせず、しかし、成果を上げる人材」です。価値観の合わない人材は、周囲に悪影響をおよぼしかねません。
そして成果を上げる優秀人材になればなるほど、ネガティブな側面の影響力も大きくなります。
こうした人材を避けるには、スキルだけでなくカルチャーフィットも見極める必要があります。
なお、価値観や行動パターンは、キャリアが長くなればなるほど、これまでの経験が邪魔をして変えにくくなります。
新卒の場合は、入社後の教育を通してある程度は柔軟に対応できますが、中途の場合はそう簡単にはいきません。
・就職/転職活動の状況、企業選びの基準、志望度
優秀な人材であれば、自社以外でも内定をもらうのが当たり前です。
そのため、優秀な人材を獲得するには、就職/転職活動の状況やどのような基準で企業選びをしているか、自社への志望度などを確認し、後述する「魅了付け」につなげる必要があります。
注意が必要なハロー効果や心理バイアス
面接は「人」が実施して合否を判定するものです。面接をどれだけ注意深く実施しても、人は完璧な客観性を持つことはできません。
その理由は、さまざまな心理バイアス(判断の偏り)の存在です。
たとえば、「類似バイアス」というものがあります。
私たちは、出身が同じ大学、住まいが同じエリア、共通した職歴、近い価値観や性格など、自分と共通項がある相手に親近感を抱く傾向があり、結果として本来よりも高く評価してしまいがちです。
また、もう1つ、「確証バイアス」と呼ばれる心理バイアスもあります。
これは、一度仮説や見解を持つと、抱いた仮説や見解を補強する情報ばかりを集めてしまい、反証する情報を無視する現象です。
たとえば、「真面目で優秀」という第一印象を持つと、無意識のうちに「真面目で優秀な人」という印象を証明するための情報を集めてしまいます。
また、相手の目立つ特徴に引っ張られ、他の部分や対象全体への評価がゆがんでしまう「ハロー効果」も確証バイアスの一種です。
- 表情が明るく元気そうな人だ → コミュニケーション力も高いだろう、営業に向いているはずだ
- 清潔感が乏しくパッとしない人だ → 仕事もできないだろう、協調性も低いはずだ など
「有名企業の出身だから能力も優秀だろう」「高卒だから大卒に劣るだろう」などもハロー効果の典型です。
類似バイアスや確証バイアスがハロー効果と組み合わさると、学歴や職歴、第一印象などによる「優秀だろう」「劣っているだろう」という先入観を固める方向で面接を進めてしまい、正しい評価ができなくなります。
見極めに有効なフレームワーク「STAR」
心理バイアスによる誤判断を防ぐには、面接でどのような心理バイアスが生じるかを知っておくことが大切です。
そのうえで、構造化面接の手法である「STAR」に沿って質問をしていくのがおすすめです。
- Situation(状況):そのトラブルは、どのような状況で起こったのですか?
- Task(課題):そのトラブルによって生じた課題は何ですか?何が実現すれば課題解決と考えましたか?
- Action(行動):トラブルを解決するために、どのような意思決定や行動をしましたか?
- Result(結果):その行動や意思決定をしたことで、どのような結果が得られましたか?もしもう一度やるならどのように取り組みますか?
評価基準を言語化することも有効
たとえば、「主体性」「コミュニケーション能力」といった抽象的な評価基準を採用基準にすると、面接官の主観が入りがちになります。
また、先ほどご紹介した類似バイアスなども働きがちです。
たとえば、積極性がある面接官が「主体性とは積極性である」ととらえた場合、積極性がある人を必要以上に高く評価してしまい、正常な評価ができなくなります。
この問題を防ぐには、採用基準における「主体性」などをもう一段具体的な表現に落とし込むことが大切です。たとえば、以下のような形です。
- 「主体性とは、責任をもって自ら意思決定する姿勢を指す。進学やサークル、アルバイトなどをはじめとする人生における“選択の局面”でどのように選択してきたかをヒアリングして判断する」
面接を実施する目的②「志望度の向上」
優秀な人材は、いくつかの企業からスカウトメールや内定をもらっている可能性もあります。
こうした人材を獲得するには、面接をする第二の目的である「志望度の向上」を大事にする必要があります。
志望度の向上
志望度の向上とは、自社が第1志望となり、内定が出たら承諾するという状態をつくることです。
そのためには、面接官は求職者に以下のようなポジティブなイメージを伝える必要があります。
- チームに馴染み、楽しく働いているイメージ
- 自分のスキルが役立ち、仕事にやりがいを感じているイメージ
- 仕事と子育てを両立できているイメージ など
面接は双方向のコミュニケーションですので、求職者の声を聞きながら、相手に合わせて魅力付けしていくことが大切です。
魅力付けに必要な要素
面接における魅力付けは、企業が自社の魅力を一方的にアピールするものではありません。
先述のとおり、面接官が求職者のニーズや価値観を確認して、ニーズ・価値観を踏まえた情報提供をすることで高い効果が得られます。
そのため、効果的な魅力付けをするには、まず、求職者の価値観・働き方・企業選び・キャリアプランなどの要素に関する質問を行ない、その回答を以下のようなイメージでフォローし、不安や悩みを解消していく必要があります。
- 面接官「どのようなキャリアプランを考えていますか?」
- 求職者「働くママエンジニアを目指しているのですが、仕事と子育ての両立ができるか少し不安です」
- 面接官「弊社では時短勤務やテレワークなどの制度もありますので、柔軟な働き方が可能ですよ。IT部門でも子育て中のママ管理職が2人、ママエンジニアも数人います。ロールモデルとなる人がいますので、相談などもしながら仕事やキャリアと子育ての両立を実現していけますよ。」
誰がいつ何を訊くかも重要
本音を引き出したり、魅力付けをしたりするうえでは、誰がいつ何を訊くかも非常に重要です。
求職者は、面接官に対して「この人は合否を握っている人」ととらえて身構えています。
そのため、面接官が「他にどのような企業を受けているか?」「志望度はどうですか?」といった質問をしても、本音を話しづらいのが一般的です。
求職者から率直な考えや就職活動の状況を聞き出すには、面接の最中ではなく面接が終わったあとの雑談、また、面接前後で人事が入ってヒアリングするようなことが良いかもしれません。
採用CXの視点も大切
求職者を内定承諾までつなげるには、採用活動の一連のプロセスのなかで、採用CXの考え方に基づくコンテンツの設置や仕組みづくりも非常に大切になります。
採用CXとは、Candidate Experienceの省略で、日本語に直すと“求職者体験”です。
つまり自社を知ってから内定承諾するまでのプロセスを、求職者の視点で体験と捉える考え方です。
体験内における “戸惑い”“不明点”“不安”“不快”などをなくし、“嬉しい(驚き)”“心地よい”“歓迎されている”などの体験をコンテンツやコミュニケーションを通じて生み出していくことが大切です。
採用CXの視点を持って選考プロセスをブラッシュアップしていくと、求職者から好印象を持ってもらいやすくなり、内定承諾率などもアップするでしょう。
面接偏重のリスク
面接は、限られた時間のなかで口頭での質疑のみで合否を判断するという選考です。
経験を積んだ面接官をアサインしたり構造化面接の手法を採用したりすることで、面接での見極め精度を上げることはできますが、それでも、前述したように人は心理バイアスから100%逃れることはできません。
また、求職者も面接対策をして臨んでいることが一般的であり、極端にいえば面接の場は「口だけなら何とでも言える」状況です。
したがって、面接を実施するうえでは、面接で見抜ける部分と見抜きにくい部分が生じるという前提に立つべきです。
そして、面接での見極めが難しい内面的な部分や論理的思考などの地頭を見抜くためには、適性検査や能力検査を併用するのがおすすめです。
また、状況や職種によっては、ワークサンプリングなどを実施することも有効です。
まとめ
面接を実施する主な目的は、「見極め」と「志望度アップ」です。
面接による見極めの精度を高めるためには、人にはさまざまな心理バイアスが生じることを知ったうえで、構造化面接のフレームワークなどを取り入れ、可能な限り面接官の主観を排除する必要があります。
ただそれでも、面接だけですべてを見極めることは難しいです。
選考における見極め精度を高めるには、面接偏重にならないよう、適性検査や能力検査を併用することをおすすめします。
また、志望度をアップさせるには、求職者の価値観やニーズを把握したうえで、ニーズ・価値観を踏まえた情報提供やフォローも重要です。
その点では、面接官トレーニングなどを実施することもおススメです。