リファラル採用とは?導入メリットや報酬制度等の注意点、成功させるポイントを解説

更新:2024/05/01

作成:2022/12/07

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

リファラル採用の報酬制度|報酬額を決める5つの視点と注意点を解説

リファラル採用は、自社をよく知る社員の人的ネットワークからの紹介で採用する方法です。リファラル採用は、費用対効果に優れ、信頼できる人材を見つけやすい手法として、多数の企業から注目を集めています。

 

リファラル採用を実施する場合、社員からの紹介を促進することが大切です。そのため、リファラル採用を積極的におこなう企業では、社員に「紹介料」として報酬を支払うことも一般的になっています。ただし、リファラル採用で「紹介料(報酬)」を社員に支払う場合、いくつかのポイントを把握しておくことが必要です。

 

本記事では、リファラル採用を導入するにあたってのメリットとデメリット・注意点、報酬額や報酬制度に関する注意点、またリファラル採用を成功させるためのポイントを分かりやすく解説します。リファラル採用の導入を検討する方は、ぜひ参考にしてください。

 

<目次>

リファラル採用とは

リファラル採用とは、社員から知り合いや友人を採用候補として推薦してもらう採用方法です。リファラル採用は、企業文化や仕事内容を理解している既存社員の紹介であるため、マッチング精度や採用後の定着率が高まりやすいなどのメリットがあります。

 
リファラル採用は、従来から行われてきた縁故採用の現代版とも言われます。縁故採用は、経営者や社員の“個人的なつながり”を活用して行われる採用方法であり、その点ではリファラル採用と同じです。ただ、縁故採用は別名「コネ採用/入社」などと言われることもあり、「採用を前提に声がけする」「関係性の質によって採用基準が変動する」といったニュアンスや印象もあります。

 
リファラル採用の場合、あくまで“質の良い母集団形成の手法”であり、採用基準や待遇は他の選考ルートと変わらないことが大前提であり、その点が縁故採用と違う点です。
 

リファラル採用のメリット

リファラル採用のメリット

 

リファラル採用を導入する主なメリットを紹介します。リファラル採用は、従来までの採用手法に比べて非常に効果的な採用手法です。

 

入社後のミスマッチを回避できる

リファラル採用で紹介される人材は、自社でいま働いている社員が「自社に合いそう」と判断した人ですので、職場との親和性が高いことを見込まれ、入社後のミスマッチが生じにくいといえます。

 

紹介される人材は、友人や知人である社員と似た価値観を持っているケースも多く、職場のカルチャーに合う人材を集めやすいでしょう。入社後も“紹介元である社員の○○さん”という共通項もあり、職場になじみやすく、即戦力として働いてもらえる期待も高まります。

 

転職潜在層にリーチできる

社員の友人や知人を紹介してもらうリファラル採用は、転職エージェントや求人サイトを利用しません。そのため、まだ採用市場に出てきていない転職潜在層にリーチできます。これもリファラル採用のメリットです。

 

転職の潜在層は、転職意欲が一定の線を越えないと求人サイトや転職エージェントには登録しません。
しかし、リファラル採用であれば、社員を媒介とすることで、一種のヘッドハンティングに近いようなイメージで転職の潜在層にアプローチすることができます。

 

採用コストを抑えられる

リファラル採用のメリットとして、採用コストを抑えられることも挙げられます。転職エージェントや求人サイトを利用中なら、大きなコスト削減効果を実感できるでしょう。

 

例えば転職エージェントを利用する場合、採用にかかる費用は年収の30~35%が相場です。一方、リファラル採用では紹介してくれた社員に謝礼などを出す場合もありますが、せいぜい数十万円です。
したがって、リファラル採用が増えれば、採用コストを大きく落とすことができるでしょう。

 

社員のエンゲージメント向上に役立つ

リファラル採用では、社員が一種のリクルーターとなって候補者を探すことになります。採用活動を行なう社員は、リファラル採用を通して職場の状況や企業の将来を考えたり、また、自社の魅力や自分が働いている理由、やりがいなどを相手に伝えたりすることになります。

 

これらの活動を通じて、社員のエンゲージメント向上を期待できる点は、他の採用方法にはない大きな特徴の一つです。

 

リファラル採用のデメリット・注意点

リファラル採用のデメリットと注意点

 

リファラル採用にはメリットだけでなくデメリットもあります。リファラル採用の導入を検討する際は、リスクや注意点も考慮して、自社に向いているかを判断しましょう。

 

計画的な採用が難しい

リファラル採用では、候補者が見つかるタイミングや候補者の数は、社員の活動次第であり、計画的な採用は難しいです。

 

例えば、“毎月3名ペースで必ず採用していきたい”といった計画がある場合、リファラル採用ですべてをまかなうことは難しいでしょう。また欠員補充や事業計画の都合で、“○月までに必ず入社してもらう必要がある”といった場合も、短期間で人材を補充することは困難です。

 

計画的な採用が難しいリファラル採用は、組織の体制を長期的に強化していきたいケースで効果を発揮しやすくなります。導入を検討する際は、採用活動の方向性や時間軸を社内で確認することが大切です。

 

選考中や採用後の人間関係に配慮が必要

リファラル採用を導入する場合は、選考中や採用後の人間関係に配慮が必要です。「人」同士のつながりをもとに社員と候補者が動いているため、結果次第では関係が悪化してしまう恐れがあります。

 

例えば、候補者が不採用になった場合は、紹介元の社員が候補者に気まずい思いをすることもあるかも知れません。また、入社後に齟齬が生じれば、候補者が「誘われたときと話が違う」と紹介した社員をネガティブに思うこともあるかもしれません。

 

また、候補者が早期退職してしまうと、紹介した社員は職場で気まずい思いをしてしまう場合もあるでしょう。逆に勧誘した社員のほうが職場に不満を抱いて退職した場合、紹介された候補者が困惑してしまい、モチベーションの低下につながることもあります。

 

組織側はこういった点に配慮して選考したり、候補者とのコミュニケーションを取ったりすることが大切です。

 

人材の同質化につながりやすい

リファラル採用の注意点として、人材の同質化につながりやすいリスクもあります。社員の友人や社員と価値観の合う知人が集まりやすくなるため、似たようなタイプの人材に偏ってしまうことがあるのです。

 

人材の同質化が進み過ぎると、思考がマンネリ化して、イノベーションがなかなか創出されないリスクもあります。

 

ただし、現実的にはリファラル採用のみで採用をすべてカバーするいうことはほとんどありませんし、友人だからといって思考パターンが同じとも限りません。したがって、人材の同質化はさほど大きなリスクではないといえるでしょう。

 

リファラル採用における報酬制度

リファラル採用における報酬制度は、企業によって異なります。本章ではリファラル採用に関する報酬制度の目的や報酬相場を解説します。

 

報酬制度を導入する理由

リファラル採用を導入している企業が報酬制度を設けている理由は、社員からの紹介を増やすきっかけを作るためです。

 

リファラル採用は社員からの紹介がなければ、成功しません。ただし、リファラル採用による紹介は、メンバーが「うちの企業は良い職場だ。合う人にはおすすめしたい」と思ってくれていることが大前提となります。

 

したがって、リファラル採用では、金銭報酬だけで社員が動くわけではありません。ただし、報酬の存在は、やはり意欲を高める、行動するきっかけになるでしょう。

 

また、リファラル採用には、人材紹介や求人媒体と比べて採用コストを大きく削減できるメリットがあります。

 

したがって、リファラル採用の報酬制度は、削減できたコストの一部を社員に還元するという企業の姿勢を社員にメッセージすることにもつなげられるでしょう。

 

報酬内容

リファラル採用の報酬制度では、紹介した人材が入社した場合に、紹介者に対して報酬を支給します。

 

支給されるものは金銭であることが多いですが、企業によっては、休暇や旅行、ディナーなどのプレゼントを提供しているケースもあります。

 

原則は金銭がベースとなりますが、こうした企業では、会社としてのメッセージや風土形成も鑑み、工夫した報酬を提供しているイメージでしょう。

 

また、報酬ではありませんが、リファラル採用の過程で生じる紹介する人材との飲食代、交通費などの実費は経費として処理できる形にしている企業も多いです。

 

報酬額の相場

リファラル採用の設定報酬は企業によって異なります。

 

以下は2018年4月~10月にMyRefer社が実施した「リファラル採用の実施状況に関する統計レポート」による報酬額のデータです。

<リファラル採用の報酬相場>

  • なし:21社(14.3%)
  • 1~9万円のインセンティブ:69社(46.9%)
  • 10~29万円のインセンティブ:46社(31.3%)
  • 30万円以上のインセンティブ:10社(6.8%)

上記を見てわかるとおり、1~29万円の幅で設定している企業が全体の78.2%とほとんどになっています。

 

ただし、14.3%の企業は報酬設定をしていません。また、30万円以上の報酬設定している企業も、6.8%存在します。

 

なかには、紹介した実績が一定人数を上回った場合に上乗せする制度を設けています。

 

*出典:MyRefer「リファラル採用の実施状況に関する統計レポート」

 

リファラル採用の報酬額を決める5つの視点

リファラル採用の報酬額は以下5つの視点で決めるとよいでしょう。それぞれを解説していきます。

 

  1. 採用単価
  2. 採用課題
  3. 雇用形態・勤務期間
  4. 採用者の経験・スキル
  5. 紹介人数

 

1.採用単価

報酬額を考えるうえで重要なことは、まずは自社の採用単価を把握することです。

 

たとえば、人材紹介会社や転職エージェント経由での採用が多い場合、採用単価は100万円を超えていることが多いでしょう。

 

こうした場合、リファラル採用の報酬額を高めに設定しても、採用コストを大きく下げられるはずです。

 

逆に、転職サイトや自社ホームページのように採用単価が低い方法がメインの場合、あまりに高額の報酬を設定すると、採用コストダウンという意味での効果性は低くなるでしょう。

 

リファラル採用の報酬額を考えるうえで、採用単価だけが大切なわけではありません。ただ、採用が費用を使う活動である以上、採用単価は最初に押さえておくべき情報になります。

 

2.採用課題

自社の採用課題から報酬額を検討する視点もあります。

 

採用課題を解決する手段がリファラル採用になるようであれば、報酬額を高めに設定しても進める余地は十分にあるでしょう。

 

たとえば、採用課題から考えると……

  • ・高スキル人材を獲得できない
  • ⇒一定の条件を満たす人材に対しては、報酬額を上乗せする
  • ・応募者が集まらない
  • ⇒応募があった時点で報酬が発生する仕組みにする

といった設定の仕方もあり得ます。ただし、制度を複雑にすると運用されづらくなりますので、その点は注意しましょう。

 

3.雇用形態や勤務期間

リファラル採用の対象は正社員とは限りません。対象者に正社員以外も含まれる場合は、雇用形態に応じて報酬額を設定するとよいでしょう。

 

たとえば、アルバイトや契約社員などの非正規雇用は、現状の採用単価も正社員より安い傾向があるため、採用単価と連動してリファラル採用の報酬も低めに設定することになります。

 

また、非正規雇用者をリファラル採用する場合は、決定した勤務期間や稼働日数などに比例させて報酬を設定する方法もあります。

 

なお、アルバイトやパート社員は、正社員よりも離職率が高い傾向にあります。

 

報酬を渡した直後に退職してしまったといったことを防ぐために、「勤務を始めて3ヵ月経過後」といった形にすることもひとつです。

 

また、報酬が低い分、“紹介した人と紹介された人の双方に支払う”といったやり方にすることも可能でしょう。

 

4.採用者の経験・スキル

採用したい人材のスペックが高く、なかなか通常の採用手法では応募を獲得できない、採用できない場合も高額な報酬を設定するとよいでしょう。

 

ただし、前述のとおり、ポジションによって報酬額を変えると、制度が複雑化します。そのため、多くの企業では、一律に設定しています。

 

“採用者の経験・スキルに応じて報酬額を変える”などの差別化は、運用に支障のない範囲で行なったほうがよいでしょう。

 

5.紹介人数

紹介人数に応じて報酬額を変える方法もあります。

 

リファラル採用などで人材を紹介してくる社員は「紹介特性」を持っており、多くの人が万遍なく紹介するのではなく、少数の人が複数の紹介をするケースが多くなります。

 

したがって、そういった社員のモチベーションを高めるためには、「3人目以降は報酬額に◯◯円を上乗せする」といった設定をしておくことも一つです。

 

また、「年間で最も紹介した社員に××円を支給」といった形で報酬設定している企業もあります。

 

報酬額を決める上で注意すべき4つのポイント

法律では、報酬に関するルールが決められています。リファラル採用に関する報酬の支払いで違法とみなされないためには、ポイントを理解して法律に沿った設定にしておくことが大切です。

 

この章では、リファラル採用の報酬を決める際に注意したいポイントを4つ解説します。

 

職業安定法による規制

リファラル採用で報酬を設定する際、職業安定法で「有料での職業紹介」が規制されていることを知っておく必要があります。職業安定法でいう「有料での職業紹介」とは、いわゆる人材紹介サービス、エージェントの仕事のことです。

 

職業安定法の第30条では、「有料での職業紹介」について以下ルールを定めています。

 

<職業安定法30条における「有料での職業紹介」の規制>

第三十条 有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
② 前項の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を厚生労働大臣に提出しなければならない。
 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
 二 法人にあつては、その役員の氏名及び住所
 三 有料の職業紹介事業を行う事業所の名称及び所在地
 四 第三十二条の十四の規定により選任する職業紹介責任者の氏名及び住所
 五 その他厚生労働省令で定める事項
③ 前項の申請書には、有料の職業紹介事業を行う事業所ごとの当該事業に係る事業計画書その他厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない。
④ 前項の事業計画書には、厚生労働省令で定めるところにより、有料の職業紹介事業を行う事業所ごとの当該事業に係る求職者の見込数その他職業紹介に関する事項を記載しなければならない。
⑤ 厚生労働大臣は、第一項の許可をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならない。
⑥ 第一項の許可を受けようとする者は、実費を勘案して厚生労働省令で定める額の手数料を納付しなければならない。
引用:e-Gov法令検索

リファラル採用で報酬の報酬が「職業紹介」とみなされた場合、職業安定法に抵触することで1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金が課せられます。

 

企業が職業安定法に抵触しないためには、大きく2点「賃金・給与としての支払い」「妥当な報酬額」を押さえておくことが必要です。それぞれの詳細は、後述しましょう。

 

なお、2021年4月1日に職業安定法に基づく指針が一部改正されたことで、募集広告における「就職お祝い金」などの名目の金銭提供が禁止になりました。具体的には、求職者に金銭を提供し、求職の申し込みを勧奨することが禁止された形です。

 

リファラル採用では、たとえば、紹介される側の人材に対して「就職のお祝い金がもらえる」のような勧誘を大々的に行なった場合、職業安定法に抵触する恐れがあります。注意しましょう。

 

出典:「就職お祝い金」などの名目で求職者に金銭等を提供して求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました(厚生労働省)

 

賃金・給与としての支払い

リファラル採用の報酬が、職業紹介における報酬とみなされないためには、賃金・給与として支払うことが必要です。

 

なお、賃金・給与として支払う場合、労働基準法の定めに基づいて、就業規則にリファラル採用を業務として記載しておく必要があります。

 

労働基準法15条で、賃金や給料に関する事項は就業規則に明示することが求められています。整備を怠ると法律違反になります。注意しましょう。

 

労働基準法 第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
引用:e-Gov法令検索

 

金額の妥当性

報酬額をあまりに高く設定してしまうと「職業紹介の報酬」とみなされるリスクが生じます。適切な金額に設定することも大切です。

 

リファラル採用の報酬額の妥当性を考える目安のひとつが、有料職業紹介の報酬相場です。

 

有料職業紹介の報酬相場は、採用者の理論年収の30~35%程度となっています。例えば、理論年収500万円の人であれば150万~175万円が報酬相場です。

 

リファラル採用の報酬額を有料職業紹介よりも明らかに低い金額で設定しておくことで、職業紹介とみなされるリスクを下げやすくなるでしょう。

 

なお、リファラル採用の報酬は、先述のとおり賃金・給与として支払うことになります。そのため、月額給与と比較して「妥当性のある金額か?」という視点で考えておくことも必要です。

 

採用状況による見直し

リファラル採用の報酬は、採用状況に応じて内容を変えることも大切です。

 

条件の見直しを行なわずにリファラル採用を続けた場合、集まる人材に偏りができるなどのように、企業の成長を妨げるデメリットが発生する可能性があります。

 

リファラル採用で報酬を支払うときには、採用状況や不足する人材を踏まえて、定期的に報酬制度を見直すことも大切でしょう。

 

リファラル採用を成功させるポイント6つ

リファラル採用に報酬を設定することで社員が積極的に動いてくれる可能性が高まるものの、成功させるポイントは他にもあります。リファラル採用を成功させるポイントは、以下の6つです。できることから取り入れてみてください。

 

  1. 紹介したくなる職場をつくる
  2. 求人状況を共有する
  3. 社内規定などを整備する
  4. 社員に定期的に声がけする
  5. カジュアル面談を実施する
  6. 他の採用方法と併用する

 

1.紹介したくなる職場をつくる

繰り返しになりますが、リファラル採用の大前提は、自社の社員に「うちの企業は良い職場だ。合う人には紹介したい」と思ってもらうことです。

 

報酬はあくまで紹介するきっかけの一つであり、「紹介したい」と思える職場でなければ、リファラル採用の応募者は増やせません。報酬だけで動かそうとするのではなく、社員が心から自身の友人・知人を呼びたいと思える職場づくりに取り組む必要があるでしょう。

 

2.求人状況を共有する

採用の対象となる求人情報を社内に共有することも、リファラル採用を成功させるポイントです。

 

求人が社内公開されていないと、社員は「どのような人を紹介すれば良いのだろう?」と混乱してしまい、リファラル採用への姿勢が消極的になります。

 

リファラル採用を実施するのであれば、社内掲示板などで求人を共有し、社員が紹介すべき人をイメージできるようにしておきましょう。求人を共有・更新することが、リファラル採用のことを思い出すきっかけにもなります。また、社内公募やキャリア自律を促進するきっかけにもなるでしょう。

 

3.社内規定などを整備する

繰り返しますが、リファラル採用に報酬制度を採り入れるうえでは、前述のとおり、就業規則や賃金規定に明記しておくことが必要です。

 

オペレーション・コンプライアンス的な視点での整備を怠ると、採用者の入社後にトラブルが起きたり、職業安定法に抵触してしまったりする恐れがあります。

 

リファラル採用の場合、準備に大きな手間がかかるわけではありません。はじめのうちに、きちんと対応しておきましょう。

 

4.社員に定期的に声がけする

リファラル採用を成功させるには、定期的に発信することが非常に大切です。

 

採用のことをいつも考えているのは専任の「採用担当者」だけであり、それ以外の社員は自分の仕事で忙しく行なっています。したがって、リファラル採用を成功させるには、「思い出してもらう」ための定期的な声がけが何より大切です。

 

以下のような情報を定期的に発信することで、社員に「該当する人、興味を持ちそうな人はいるかな?」とイメージしてもらうとよいでしょう。

  • 採用しているポジション
  • 友人・知人への声のかけ方
  • リファラル採用成功事例

 

5.カジュアル面談を実施する

リファラル採用の場合、いきなり採用選考をするのではなく、まずはカジュアル面談から入ることがおすすめです。

 

リファラル採用は、求人媒体などのからの応募とは異なり、応募者の志望意志が低い、場合によっては転職意欲も低い状態から始まることが多くなります。そのため、いきなり“採用選考”となるとハードルが上がってしまいます。

 

リファラル採用を成功につなげるには、まず、人事や部門長クラスとのカジュアル面談を挟み、自社について知ってもらうことから始めるのがよいでしょう。

 

カジュアル面談以外にも、ミートアップやカンファレンスなどもおすすめです。たとえば、クラウド会計ソフトを提供する株式会社freeeでは、社員が呼び込みやすくする目的で自社に友人・知人を招待するイベントを行なっています。

 

6.他の採用方法と併用する

リファラル採用に取り組む上では、他の方法とも併用して採用活動を進めるようにしましょう。

 

リファラル採用は、採用コストが安い、ミスマッチングが少ない、優秀層に出会えるなど、メリットだらけの採用手法です。ただ、“自社社員に紹介してもらう”という仕組み上、リファラル採用には、応募者数や採用数を計画することが難しい側面があります。

 

そのため、リファラル採用での実績が安定するまでは、安定かつ計画的に応募者を確保できる他の方法と併用することが大切です。

 

リファラル採用でトラブルを避けるポイント

リファラル採用はトラブルが起こる可能性がある採用方法ですが、事前に把握しておけば問題なく対策を取れます。リファラル採用のトラブルを防ぐために、以下のポイントを押さえておきましょう。

 

  1. 採用基準を変えない
  2. 紹介者報酬をきちんと設定する
  3. 選考プロセスに配慮する
  4. 不採用時に紹介者・候補者をフォローする

1つずつ解説します。

 

1.採用基準を変えない

大前提として、リファラル採用を実施する際には、他の採用方法と同一の選考基準で実施することが大切です。選考プロセスを変えることは問題ありませんが、「社員の紹介だから」と採用基準を緩めてしまうと、他社員からの不満に繋がってしまいます。

 

また、採用基準が同一である旨を社員に周知することも重要です。きちんと周知しておくことで、他の社員が「私たちは厳しい選考をくぐり抜けたのに、あの人はコネ入社でしょ…」とおかしな不満を持つことを予防できます。

 

2.紹介者報酬をきちんと設定する

リファラル採用では、紹介を促進するために報酬を設定することも一般的です。

 

前述した通り、報酬を導入する際は、職業安定法に抵触しないようにポイントを押さえておきましょう。

 

抵触するとみられるリスクを避けるためには、

 

  • 1)賃金・給与として支払う(支払えるように就業規則に反映する)
  • 2)月次給与などと比較して妥当な金額に収める(高額にし過ぎない)

ことが必要です。

 

3.選考プロセスに配慮する

リファラル採用の場合、候補者ははじめから高い志望動機で応募してくるわけではありません。「知人に紹介されたから行ってみようか」ぐらいの気持ちであることも多いでしょう。

 

その中で、選考でNGになる、早期離職になるといったことがあると、人間関係のトラブルが生じる可能性もあります。そのため、選考前にカジュアル面談やミートアップなどを通して、企業のことを知ってもらう機会を設けることが有効です。

 

カジュアル面談などでお互いにある程度すり合わせた上で「ほかの採用方法と同じ基準で選考に入らせてもらう」旨を、きちんと告知して選考に進んでいくと上記のようなリスクを低減できます。

 

4.不採用時に紹介者・候補者をフォローする

仮に候補者を不採用とした場合、当人はもちろん紹介者へのフォローをしっかり行いましょう。紹介者と候補者、もしくは紹介者と会社の関係性が悪化しないように配慮が必要です。

 

不採用によるトラブルを未然に防ぐために、選考前の時点で「選考基準は明確に決められているから不採用になることはある」旨を伝えましょう。その上で、不採用にした際には不採用理由を明確に伝えるなどして、本人が納得、また悪印象を持たないように注意しましょう。企業によっては不採用になった候補者をフォローするために、会食の場を設けているケースもあります。

 

紹介者と候補者の双方が不満にならないように、会社側が施策を用意しておくと、社員もリファラル採用に協力しやすいでしょう。

 

リファラル採用を導入した企業事例

リファラル採用の成功事例

 

リファラル採用の導入に成功した企業事例を紹介します。具体的な施策や成果を知り、導入を検討する際の参考にしましょう。

 

富士通

2018年からリファラル採用を導入している富士通は、採用システムを大きく変えることが困難な大手企業でありながら、採用チャネルの一つとしてリファラル採用を確立している企業です。

 

約3万2000人の社員を巻き込み、研修や認知促進活動などに努めた結果、2021年までに約90名の採用を実現しました。90名の採用は、費用に換算すると、約1億2,000万円のコストカットにもつながるとしています。

 

技術交流を行なっている教授や海外のメンバーなどと信頼関係を構築し、採用が困難な職種でリファラル採用を実現していることが特徴です。

 

串カツ田中ホールディングス

2008年に1号店をオープンした串カツ田中ホールディングスは、現在では全国に多数の直営店・FC店を展開しています。成長過程で採用人数が増加する中で、採用コストの高騰や離職率の上昇といった課題も発生したため、リファラル採用で課題の解消を図っています。

 

リファラル採用の導入後は、30%を超えていた離職率を大幅に下げることに成功しました。1人100万円程度発生していた採用コストの削減にも実現しています。

 

串カツ田中ホールディングスでは、リファラル採用のツールを導入することで大規模運用しています。アナログでリファラル採用を行なっていた時期に比べ、人事の負担が大幅に軽減することができているといいます。

 

NTTデータ

NTTデータでは新卒採用をメインとする採用活動から、経験者の積極採用にシフトしています。そのなかで、経験者採用を活性化させるにあたって導入したのが、金銭報酬なしのリファラル採用です。

 

リファラル採用では、初年度から10名以上の即戦力採用に成功し、経験者採用の1割を越える比率になっています。リファラル採用の応募からの決定率は、他の採用手法に比べて2倍以上になっており、採用効率という意味でも大きな効果が出ています。

 

紹介のルールをしっかりと設計したこと、採用分野(職種)別の人事と連携して全社にリファラル採用を促進する働きかけをしたことが、リファラル採用に成功したポイントです。金銭による報酬を設定せずに一定の結果を出した事例です。

 

まとめ

リファラル採用で社員に積極的に動いてもらう方法の一つが、報酬制度を取り入れることです。リファラル採用に報酬制度を組み込んでいる企業への調査では、1~29万円という金額が全体の約80%と最多になっています。

 

なお、リファラル採用で報酬制度を取り入れる際には、「職業紹介」における報酬とみなされることを防ぐために、報酬に関する規定を就業規則に記載し、賃金・給与として支払う必要があります。報酬額の設定では、月額給与と比較して妥当な金額に収めることも大切でしょう。

 

リファラル採用は、企業にとって実施のメリットが高い採用方法です。

 

ただし、リファラル採用を強化するには、大前提として社員が知人・友人に紹介したいと思えるような「良い職場」を作ることが大切になります。

 

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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