「風通しの良い職場」は、組織にとっても従業員にとっても理想の職場です。風通しの良い職場が実現すれば、従業員の満足度や生産性が高まるだけでなく、組織の変革やイノベーションにもプラスの影響が生まれます。その意味で、組織づくりやマネジメントのうえで、経営陣やリーダーがしっかりと向き合わなければならないテーマと言えます。
記事では、風通しの良い職場のメリットとデメリット、実際に作るうえで役立つ5つの施作と注意点を紹介します。
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<目次>
『風通しの良い職場』とは?
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記事では最初に、風通しの良い職場とは何かについて解説します。
風通しの良い職場とは?
風通しの良い職場とは、上下左右のコミュニケーションが活発で、役職や立場に関わらず自分の考えを発信できる職場のことを指します。
具体的には「上司に意見してはいけないのではないか?」「こんなことを言うと周りからバカにされるのではないか?」「組織の計画や方針に疑問を呈したりしたら叩かれるのではないか?」など、発言本来の内容と関係ないところで心理的なブレーキが生じない状態をイメージしてもらうと良いかもしれません。
なお、風通しの良い職場について、本記事の概念としては心理的安全性と同じ意味合いで用いています。HRドクターでは、心理的安全性に関しても分かりやすく解説した記事を用意しているので、こちらも併せて参考にしてみてください。
風通しの良い職場で誤解されやすいポイント
一方で、「風通しが良い職場」と言った時に、勘違いされやすい部分もあります。それは、「何でもかんでも好き勝手に発言できる」、「自由な発言が許容される」といった誤解です。
風通しが良い、心理的なブレーキが生じない職場は、あくまでも、組織のルールや価値観、一定の節度を保ったうえで成立するものです。その上で、信頼関係に基づいて自由にコミュニケーションできる環境こそが「風通しの良い職場」です。
風通しの良い職場、3つの特徴
風通しの良い職場に共通する特徴を、3つお伝えします。
従業員間のコミュニケーションが活発
風通しの良い職場に共通する特徴の1つ目は、従業員同士のコミュニケーションが活発に行われていることです。会議や打ち合わせだけでなく、日常の雑談も豊富で、日ごろから自然と意見交換がされているでしょう。上下関係に捉われず、立場を超えて自由に発言できる風通しの良さが、活発なコミュニケーションを生み出します。
活発なコミュニケーションがあることで、組織全体で情報が行き渡りやすくなりますし、部署をまたいだ情報共有も円滑になります。また、誰かの一言が新しいアイデアを生み出したり課題解決のヒントになったりと、コミュニケーションから多くの付加価値が生まれる可能性もあります。
従業員が意見を言いやすい
特徴の2つ目は、従業員一人ひとりが自由に意見を言える環境が整っていることです。上司の機嫌を伺ったり、立場を気にしたりすることなく、率直に考えを述べることができる職場です。
意見が言いやすい環境であれば、多様な視点が集まり、意思決定の質が高まります。同時に、従業員一人ひとりが自分の意見を尊重されていると感じれば、会社への帰属意識やモチベーションの向上にもつながります。組織全体で建設的な議論を行われることで、計画や意思決定、実行の質が高まっていきます。
上司と部下、チーム内の人間関係が良好
風通しの良い職場の3つ目の特徴は、上司と部下、同僚同士の人間関係が良好で、お互いを尊重し合える風土・文化が築かれていることです。
良好な人間関係があれば、お互いを思いやる気持ちが生まれ、協調性や一体感が高まります。上司もメンバーの意見を受け入れやすくなりチームの生産性も上がり、メンバーはストレスなく働ける環境が整うでしょう。良好な人間関係は、職場の士気を高め、ストレスを軽減し、従業員が長期的に企業に貢献する意識にも大きく影響します。
風通しの良い職場のメリット
風通しの良い職場を作るメリットはいくつかあります。
- 生産性が向上する
- 離職率が低下する
- イノベーションや新規事業を生み出しやすくなる
メリット① 生産性が向上する
風通しのよさ、すなわち心理的安全性がチームの生産性に大きな影響を与えることは、米Google社のプロジェクト・アリストテレス と呼ばれるプロジェクトで実証されて、非常に有名となりました。
同プロジェクトは、チームメンバーの年齢や性別、メンバー同士の関係性、能力の高低などがチームの生産性にどのように影響するのかを大規模に調査・分析したものです。
そして、プロジェクトの最終的な結果として、「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームメンバーがどのように協力し合っているか」が重要である、特に心理的安全性、つまり風通しの良さが、チームの生産性を左右する最も重要な要素だと結論付けました。
自分の意見を述べたり提案したり、企業のビジョンや部門の目標・計画に対して疑問点などがあった場合きちんと質問して解消したりできる、また、仕事に関するやり方の確認や不安の相談・ヘルプの依頼などを不安なく実施することができる環境は個人とチームの生産性を高めます。
メリット② 離職率が低下する
厚生労働省『令和3年上半期雇用動向調査結果の概況』によると、20〜24歳・40代の最も多い退職理由は”人間関係”です。
組織内の風通しが良くないと「言いたいことが言えない」「働きづらい」などといった不満が募り、メンバーにストレスやフラストレーションが溜まっていきます。
また、ストレスの蓄積は自分自身の問題だけでなく、他人に悪影響を与えることも知られています。カリフォルニア大学リバーサイド校の研究によれば、非言語で不安を強く表現している人が視界に入ると自分も同じ感情を抱きやすくなり、脳に悪影響を与えることがわかっています。
つまり、職場の風通しが悪いとメンバーにストレスが溜まり、周りにいる人にもストレスが広がっていく、さらにそれが連鎖的に他の人達にもストレスを与えるという悪循環に陥るのです。結果としてメンバーの心身に支障をきたしたり、離職につながったりする危険性も高まってしまいます。
メリット③ イノベーションや新規事業を生み出しやすくなる
社内の風通しが良い状態はコミュニケーションが活性化した状態です。メンバーは現状への異論や常識を否定したりするような意見も遠慮なく述べることができます。素朴な疑問や突拍子もないアイディアこそ、イノベーションを生み出す材料です。
また、風通しが良い職場は協力関係があり実行力が強いため、アイディアを形に移す過程もパワフルに進めていくことができるでしょう。風通しの良さはイノベーションの実現や新規事業にもつながるのです。
風通しの良い職場のデメリット
風通しの良い職場が実現することは、必ずしもメリットばかりではありません。本章では、デメリットについてもお伝えします。
- ストレスを感じる人も生じる
- 緊張感が損なわれる恐れがある
- 機密事項などが噂で広まりやすい
デメリット① ストレスを感じる人も生じる
ディスカッションが苦手であったり、自分のプライベートな話をするのに抵抗があったりする人もいるでしょう。こうした人にとっては、風通しの良い職場が一定のストレスとなる可能性があります。つまり、端的にいえば、「風通しの良い職場が合わない人もいる」ということです。
従って、組織を変革する過程で離脱する人が生じることは想定しておく、また、エントリーマネジメント(採用基準)で考慮する必要があります。
デメリット② 緊張感が損なわれる恐れがある
風通しの良い職場では、上司や部下、同僚などとの関係も良好に保たれやすいでしょう。
しかし、このことで、仕事とプライベートの境界が曖昧になったり、仕事に対する緊張感が損なわれたりする懸念にもつながります。例えば、上司と部下が親しくなりすぎて、指示や評価が適切に行えなくなる、また、同僚と仲良くなりすぎるあまり、仕事の優先順位や責任分担に支障が出るといった可能性もあります。
組織としての規範やルール、また、目標やゴール設定といったものと、風通しのよさをきちんと両立させるようにアプローチすることが大切です。
デメリット③ 機密事項などが噂で広まりやすい
風通しの良い職場では、社内外の情報などもオープンに交換されることが増えるでしょう。協働やイノベーションを生み出すうえで活発なコミュニケーションは大切です。
しかし、勘違いしてしまうと、機密事項や個人情報などまでも噂で広まってしまうようなリスクもあります。
たとえば、経営方針や人事異動などの情報、またインサイダー情報、個人情報・顧客情報、また社員のプライベートの話など、注意・配慮して扱わないといけない情報に関する教育をきちんと実施することが必要です。
風通しの良い職場を作る5つの施策
最後に風通しの良い職場を作るための施策を5つ紹介します。
- 社内イベントの実施
- チームビルディングや意図的なアイスブレイク
- 物理的にオープンな職場環境
- 社内アンケートの実施
- ダイバーシティーやコミュニケーション研修
社内イベントの実施
社員同士のコミュニケーションを促進するために、部活制度を設けたり親睦会を開催したりするのも風通しの良い職場をつくる手段のひとつです。
業務内のやり取り、部門内等の閉じた関係ではなく、部活動を通じてプライベートの人間的な側面に触れたり、普段の業務とは離れた斜めの関係が生まれたりすることが風通しの良さにつながります。
例えば、心理的安全性の概念を打ち出したGoogleでも各種社内イベントを実施しており、社員同士のコミュニケーションと健康増進を兼ねたスポーツ大会や、板前が寿司を握る寿司デイなどを開催しています。
また、楽天株式会社では3ヶ月を一つのスパンとして誕生日の近い社員同士が集められ、豪華な食事やゲームなどのイベントを開催しています。このイベントには社長の三木谷浩史氏をはじめ上層部の役員も参加して、社員一人ひとりに激励の言葉をかけているそうです。
こういった企業内でのサークルやクラブ活動なども社員同士のコミュニケーションの促進につながります。
チームビルディングや意図的なアイスブレイク
上記のような大がかりなイベント以外にも、コミュニケーションの機会を増やすために効果的なの施策があります。
- 1.チームビルディングの機会を持つ
- 2.普段のMTG内で相互理解につながるようなアイスブレイク(チェックイン)などを実施する
特に、テレワーク環境ではどうしても雑談が減りがちになりますので、意図的に雑談する時間や場を設けることも重要です。
前述の通り、仕事の側面だけでなく、プライベートの側面などを相互理解することで、お互いを一人の人間として尊重する信頼関係の土台が構築できます。
物理的にオープンな職場環境
社長や経営陣、管理職が個室にこもっていたり、チームや部門毎にパーティションで区切られていたりすると、社員同士がコミュニケーションを取る頻度は必然的に減少します。
機密保持や業務への集中力などの配慮も必要ですが、コミュニケーションを活性化して、風通しを良くするためには職場の物理的なオープンさも大切です。
例えば、フリーアドレスなどもオープンな職場環境をつくる施策のひとつです。固定の席を定めず、日によってデスクや場所を変えながら仕事を行なうフリーアドレスは社員同士の偶発的な出会いや個別の接触を生み出す効果があります。
社内アンケートの実施
風通しの良さを実現するためには、実際にメンバーから意見を吸い上げて、要望や提案を実現したり問題に対応したりしていくことも大切です。メンバーの不満やチームの課題を把握したり、意見を吸い上げたりするためには社内アンケートの実施も有効です。
ダイバーシティーやコミュニケーション研修
イベントやフリーアドレス、アンケートのような取り組みを行なったとしても、経営陣や管理職がメンバーを拒絶するようなコミュニケーションを取ったら意味がありません。
経営陣や管理職は異なる価値観や意見を受け入れるダイバーシティー、また人の意見を引き出すようなコミュニケーション、そして異なる意見をかけ合わせて相乗効果を生み出すようなファシリテーションなどの姿勢やスキルが求められます。
こういったマインドやスキルを身につけるために、経営陣や管理職への研修や教育も大きな効果をもたらします。
なお、異なる価値観や意見を受け入れるダイバーシティーや、異なる意見をかけ合わせて相乗効果を生み出すような考え方は、経営陣や管理職だけでなく、メンバーにも身に付けて欲しい姿勢です。
メンバーにも研修を実施して、価値観や意見の違いを相乗効果に変えていくような姿勢が組織内に浸透すると、必然的に異論や疑問は歓迎されるものとなり、心理的安全性の醸成、風通しの良い職場づくりにつながります。
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風通しの良い職場を作る上で注意すべきポイント
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風通しの良い職場を作る上で注意すべきポイントは以下の4つです。
| □ | メンバーの性格に配慮する |
|---|---|
| □ | 仕事に対する緊張感を保つ |
| □ | コミュニケーションの質を保つ |
| □ | 多様性を尊重する |
メンバーの性格に配慮する
社員同士のコミュニケーションで組織がオープンになりすぎると、内気の人にとってはかえって居心地の悪い職場に感じてしまう可能性があります。風通しの良い職場を作る際の施策は強制参加にするのではなく、個人の性格も重視・尊重しましょう。
仕事に対する緊張感を保つ
職場の雰囲気がオープンかつフラットになりすぎると、企業としての緊張感が損なわれてしまう危険性もあります。
生理心理学の基本法則「ヤーキーズドットソン曲線」では次の3つの事実が示唆されています。
- 1.ストレスレベルが低すぎると、パフォーマンスが低下する
- 2.ストレスレベルが一定を越えてしまうと、パフォーマンスが低下する
- 3.ストレスレベルが適度にあると、良いパフォーマンスを発揮できる
上記から分かるようにストレスは高すぎず低すぎず、適度なストレス、つまり適度な緊張感がある状態が良いパフォーマンスを発揮することにつながります。
ビジネスにおける風通しの良さは、心理的安全性が確保された職場を作り、個人や組織のパフォーマンスを高めることが目的です。心理的安全性はチームのゴールを達成するために遠慮せずに何でも言えるという状態です。仲の良さが目的になってしまうと、本来の目的からずれて悪影響も出てしまうので注意が必要です。
コミュニケーションの質を保つ
風通しの良い職場には、自由に意見を交わせる環境が重要です。とはいえ、批判や不満が無秩序に飛び交っていれば、職場の雰囲気は悪化し優秀な社員が離れていく原因になります。つまり、職場で交わされるコミュニケーションの質を保つことが大切になるのです。
チームの共通目的や目標に対して前向きで、建設的なコミュニケーションを醸成する環境づくりが大切です。
多様性を尊重する
自由に意見が言いあえる風通しの良さを確保するうえでは、多様性を尊重することが大切です。
しかし、人は自分と異なる価値観に対しては無意識のうちに拒否反応を示すものです。こうした無意識の拒否反応を乗り越えるためには、多様性を受け入れる心構えと相手の考え方を理解しようとする姿勢、そしてトレーニングが求められます。組織として多様性を受け入れ活用する方針を打ち出し、従業員と共有・トレーニングすることが大切です。
一方で、多様性を尊重するとは「何でもあり」とは違います。組織の核となる価値観(バリュー)を明確にし、組織として遵守されるべきルールや価値観を設けることも大切です。
まとめ
上下関係やおかしな慣習、自分が悪く思われることへの懸念などを抜きにして、自分の意見や素朴な疑問などをできる風通しの良い職場は、個人と組織の生産性を高めます。
組織内の心理的安全性、風通しの良さは経営陣や管理職、リーダーが中心となって、意図して作り出す必要があります。
記事で紹介した風通しのよい職場を作るポイント等も参考に、風通しがよく生産性の高い職場をつくりあげてください。
なお、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、風通しの良い職場をつくり、また、価値観の違いや異論から相乗効果を生み出す術を学ぶ7つの習慣🄬研修を提供しています。ご興味あれば、ぜひ資料をダウンロードしてご覧ください。
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