メンター制度とは?導入ステップと3つの成功事例を解説

メンター制度とは?導入ステップと3つの成功事例を解説

メンター制度は多くの企業で取り入れられているオンボーディングや人材育成の仕組みです。

 

メンター制度を導入することで、若手社員をスピーディーに育成したり早期離職を防いだりする効果が期待できます。

 

本記事ではメンター制度の概要や効果、また、導入ステップと3つの成功事例を紹介します。

<目次>

メンター制度とは?

ビル群のイメージ

 

メンター制度は、若手や中堅社員、管理職等に対して先輩やベテラン社員を相談役として設定して定期面談などを実施する制度です。

 

新入社員や若年層を対象にして気軽な相談をできるようにしたものは、ブラザーシスター制度などと呼ばれることもあります。

 

メンター制度には、社員の成長促進や悩みの解消によるパフォーマンス向上、また、新人向けであれば、即戦力化の促進や離職防止、組織社会化の促進といった効果が期待できます。

 

メンターという言葉自体は、古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』の登場人物、メントールという賢人の名前からとられています。
メントールが息子に助言を行なったシーンから、誰かをサポートすることを”メンタリング”、サポートする人を”メンター”などと呼ぶようになったとされています。

 

上記を踏まえて、メンター制度ではアドバイスする側をメンター、される側をメンティと呼びます。
メンティは定期面談(メンタリング)を通じて、悩みやなどを相談して、メンターからアドバイスを受けることができます。

 

メンター制度は、一種のコーチにも近いものであり、日本では難しい意思決定などを迫られる経営者や経営幹部、また政治家などが精神的な支え、相談役としてメンターを持つことが多くありました。

 

それを転じて、より気軽な形で社内相談できる仕組みにしたのがメンター制度です。

メンター制度に類似・関連する制度

ここではメンター制度に類似・関連する3つの制度について、共通点や相違点を確認しておきます。

  • OJT
  • エルダー制度
  • ブラザーシスター制度

 

OJTとメンター制度

OJTはOn the Job Trainingの略で、実際の業務を通じて新入社員に仕事を身につけさせていく研修手法を指します。

 

直属の上司や同じ部署の先輩がOJT指導者となり、実務を一緒に行ないながら新入社員を指導します。

 

メンター制度はOJTと違って実務上のレポートラインとして業務を教えたり上下関係を持ったりするものではありません。

 

権限的な上下関係がない緩い人間関係のなかで、精神的な悩みや仕事の相談相手となることがメンター制度の特徴です。

 

また従って「OJTをやっているからメンター制度はいらない」といったものではなく、OJTで実務面を指導して、メンター制度で精神面などをフォローするような役割分担となるイメージです。

 

エルダー制度とメンター制度の違い

エルダー制度は一般的に年次の近い同部署の先輩が教育係として実務を指導する制度です。

 

一方、上述の通り、メンター制度は他部署の先輩などがメンタル面をサポートする制度です。

 

エルダー制度はどちらかというとOJTに近い制度といえるでしょう。

 

ブラザーシスター制度とメンター制度の違い

上述のとおり、ブラザーシスター制度は新入社員や若年層を対象としたメンター制度ともいえます。

 

企業によってはエルダー制度のように実務指導、OJT的な側面を持つ場合もありますが、一般的にはOJTと区分されてメンター制度と共通する意味合いで精神的なフォローや企業に馴染むサポート的な役割であることが多いです。

メンター制度を導入する5ステップ

メンター制度を導入する際には、以下5つのステップを踏んで実践していくとよいでしょう。

 

ステップ1目的と対象層を明確化する
ステップ2実施計画・運用ルールを立案する
ステップ3メンターとメンティの組み合わせを決める
ステップ4事前研修を実施する
ステップ5成果を分析する

 

ステップ1:目的と対象層を明確化する

まず、何を目的としてメンター制度を導入するのか明確にしましょう。例えば、次のようなゴールが考えられます。

  • 若手社員の定着と戦力化の促進
  • 社内のコミュニケーション強化
  • 女性社員のライフイベント前後のサポート
  • 新任管理職のフォロー
  • 管理職層の人材育成

目的は経営や組織課題の解決からくるものです。

 

したがって、メンター制度における目的と対象層はセットになることが多く、「対象層がいて目的を設定する」「組織課題があって目的を決めて対象層の詳細を決める」、どちらの順番でも問題ありません。

 

実施計画・運用ルールを立案する

目的と対象層が決まったら、実施計画と運用ルールを策定しましょう。特に策定しておくべきルールが以下の3つです。

  • メンタリングの実施期間
  • 守秘義務
  • 相談窓口

下2つはメンティにとって安全な場をつくるために大切です。

 

他にも「メンターからメンティへの声掛けの頻度やタイミングはどうするか」など、コミュニケーションを軌道にのせるための運用ルールもあるとよいでしょう。

 

大きくは「メンター制度がうまく機能するためのルール」と「トラブルを防ぐためのルール」という2軸で考えるとよいでしょう。

 

メンターとメンティの組み合わせを決める

メンターとメンティを選定する方法は2つあります。優劣があるわけではありませんので、自社の状況や対象層などに合わせて選択するとよいでしょう。

  • アサインメント方式:事務局側がメンターとメンティのバックグラウンドや年齢などの要素から指定する方法
  • ドラフト方式:メンティ側が事務局の提示した候補から希望者を挙げ、事務局側が最終決定する方法

大切なのはメンターの候補者選定です。メンターに適しているのは、聞く力(傾聴力・質問力)や受容力の高い人です。

 

メンターはメンティの気持ちを理解し、寄り添った対話ができるかどうかが必要とされるため、傾聴系のコミュニケーションスキルは必須であるといえるでしょう。

 

同時に、対象層に対して適切なアドバイスができる考え方や姿勢を持っている人、偏った意見などにならず客観的なアドバイスをできる人が望ましいでしょう。

 

事前研修を実施する

メンター制度を導入する際には、短時間でもよいので、メンター、メンティそれぞれに対して、制度の意義やルール、実施する上での心構えを伝える研修を行なうことがおすすめです。

 

研修内容は、メンターとメンティそれぞれの基本的なガイドラインを整備したうえで設計しましょう。

 

基本的には、ガイドラインを浸透させる場という程度で大丈夫です。メンターとメンティ合同で研修を実施し、研修の場を顔合わせと関係構築に利用するのもおすすめです。

 

運用をフォローする

メンター制度を運用するうえでは、メンターが負荷を感じないようにするフォローも大切です。

 

人事担当者が声をかけ、うまくいっているか、問題はないかなどをヒアリングしましょう。人間同士の相性もありますので、やってみてメンターとメンティの相性が悪ければ、他の人に交代させることも選択肢のひとつです。

 

成果を分析する

メンターの実施期間が終わったら、メンターとメンティの双方からアンケートやレポート、面談などでレスポンスを受けましょう。

 

実施したなかでよかったこと、うまくいかなかったこと、今後の課題などを聞き出しましょう。メンター制度で改善するための資料になります。

 

なお、メンター制度の効果を考えるうえで、業績やパフォーマンスなどの数値的な効果は短期間で表れるものではありませんし、メンタリング以外の要素にも大きく影響されやすいことに注意してください。

 

短期間では、メンター制度そのものに対する満足度(アンケート結果など)、中長期的には、離職率やエンゲージメント率、その他目的に照らした数値指標の推移を確認することが大事です。

メンター制度の成功事例

PC画面に向かう男女のビジネスマン

 

ここではメンター制度を取り入れた企業の事例を3つ紹介します。

  • 株式会社メルカリ
  • 株式会社資生堂
  • 株式会社髙島屋

 

株式会社メルカリ

株式会社メルカリでは、Exective Mentoring Programと呼ばれるメンター制度が実施されています。

 

経営陣とHRBP(HR Business Partner)が企画したプログラムで、メンバーは経営陣と月1時間程度/半年間のメンタリングを受けられます。
普段、接点を持ちにくい経営陣からメンタリングしてもらえるのがポイントで、参加アンケートでの満足度は4.68点(5点満点)と非常に高い点数を叩き出したそうです。

 

株式会社資生堂

株式会社資生堂では、リバースメンター制度を導入しています。これは通常のメンター制度とは逆で、経営陣がメンティとなり、若手社員がメンターとなる制度です。

 

若手社員が経営陣に対してITやコンピュータ関係の知識を共有したり、若手社員ならではの視点を新商品開発に役立てたりしています。
当初は、希望した経営陣20人ほどが受講していましたが、数年後には対象を広げて準幹部層まで含めた200人前後が受講するプログラムへと拡大しています。

 

株式会社髙島屋

髙島屋のメンター制度は入社4年目の主任となる社員をメンティ、入社10年前後の課長がメンターとして実施されています。

 

月に1回、1時間を目安に計6回のメンタリングを通して、メンティのキャリアビジョンを明確にさせたり、視野が広がるような気付きを与えたりしています。
メンターの63%、メンティの73%が「有意義であった」と感じ、特にメンティは「中長期的な視点でキャリアを考えられるようになった」と答えています。

メンター制度を取り入れよう

メンター制度は、上手に活用することで人材育成やパフォーマンス向上に効果をもたらす制度です。

 

成功事例にもあったとおり、メンバーの満足度やキャリアプランの検討につながる可能性もあります。

 

本記事で紹介したステップを参考にして、メンター制度を取り入れてみてください。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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