
ストーリーテリングはさまざまな効果を発揮します。その中でも代表的な効果は、下記の4つです。
イメージを伝えやすくなる
事実を淡々と伝えるだけでは、商品やサービスのイメージを十分に伝えることはできません。例えば、少し複雑な機能を持ったITサービスの営業を受けることを想像してみてください。サービスの機能や数値だけを羅列されても、「導入するとどんな効果や成果を得られるのか」「競合と比べてどんな特徴があるのか」をイメージすることはなかなか難しいものです。
しかし、「昨年、サービスを導入いただいたA社という会社があります。A社は御社と同じ機械メーカーで、こんな課題に困っていました。社長もどうにかしたいと悩まれる中で、こんな手やあんな手を打ってこられたんです。ただ、なかなか改善できない…どうしようと考える中で、当社にお声がけをいただきました……導入を検討する中では……実際に導入されて…」と顧客の事例を交えながら、機能や効果を紹介されたらどうでしょうか。自社にサービスを導入して、成果が上がるイメージが湧くのではないでしょうか。
商品やサービスを使うことで解決できる課題や利用できる機能、成果をより多くの顧客にイメージしてもらえれば、受注率の向上や売上アップが期待できるでしょう。
聞き手の記憶に残りやすくなる
歴史等を勉強する際に、一つひとつの事実をただ暗記するよりも、一連のストーリーの中でそれぞれの事項を覚えたほうがよく頭に残ったという記憶はありませんか。これもストーリーテリングの効果の一つです。
上記の効果はビジネスでも期待できます。先ほどの顧客事例と同様に、プレゼンテーションの際に機能や効果だけをひたすらアピールするよりも、ストーリーの中に事実や数値を織り交ぜて語るほうが聞き手の記憶に残るでしょう。「物語(ストーリー)」というのは、人の記憶にそれだけ残りやすいのです。
共感を得やすくなる
営業で商品・サービスを紹介したり、採用活動や社内向けにミッションやビジョンを語ったりするときには、「いかに聞き手の共感を得られるか」も重要です。いくら素晴らしい商品・サービスであったり、崇高なミッションやビジョンを紹介したりしたとしても、聞き手の「感情」が動かないと、共感は得られません。
ここでも有効なのがストーリーテリングです。人は物語を語られると自然と頭の中に情景を描き、感情移入しやすくなります。
例えば、商品・サービス、ミッションやビジョンを紹介するときには、「なぜこの商品を開発したのか?」「なぜこのミッションを掲げるに至ったのか」という物語を紹介すると、聞き手の共感が得られ、商品やサービス、自社のミッションやビジョンに共感を抱いてもらいやすくなります。とくに開発や創業経緯は、ストーリーテリングの効果を得やすい分野です。
商品やサービスへの好感度が上がる
NHKの一大ヒット番組であった『プロジェクトX ~挑戦者たち~』をご覧になったことがあるビジネスパーソンの方は多いと思います。『プロジェクトX』は、日本におけるビジネスのストーリーテリングで最もイメージしやすい事例だといえます。
『プロジェクトX ~挑戦者たち~』は、NHKが制作しており、特定商品や企業のブランディング等を目的とした番組ではありません。しかし、番組で語られる熱くて生々しいストーリーを聞くうちに胸が熱くなり、終わったときには、番組内に登場した商品やサービスを使ってみたくなったという方も少なくないでしょう。また、後々で紹介されたプロジェクト、建築物や製品等を見ると、「これがあの…」と感情移入してしまった経験がある方もいらっしゃるかと思いますが、それこそがストーリーテリングの効果です。
ストーリーテリングの効果を示す事例
イメージが湧く、記憶に残る、共感を得られる、好感度が上がるというストーリーテリングが持つ4つの効果をご紹介しました。実際にストーリーテリングの形式で、一つ事例をご紹介します。
世界的な製薬会社であるアメリカのイーライ・リリー社はご存じでしょうか。
社名の通り、アメリカの退役軍人であったイーライ・リリー氏が創業した会社です。リリー氏は、軍隊を退役後、インディアナ州で薬局の店主をしていました。薬局の創業から間もないあるとき、薬局を訪れた小さな女の子がいました。彼女は、リリー氏に、『おじちゃん、ミラクル(奇跡)をちょうだい』と頼んできたといいます。
どうしたのかと思って、リリー氏が話を聞くと、じつは女の子の母親は末期癌で、いつ死んでもおかしくないぐらいの状態だと分かりました。前日、医者の診断を受けているとき、お母さんが心配でたまらない女の子がドア越しに聞き耳を立てていたところ、『もう助からない…彼女を助けられるとしたらミラクル(奇跡)だけだ』という医者の話しが聞こえたのです。
『ミラクルがあれば、お母さんは助かるんだ』と思った女の子は、翌朝、なけなしの小遣いを握りしめて、リリー氏の薬局にきて『ミラクルをちょうだい』といったのです。『今は薬局で薬を売っているけれども、いつか本当にミラクル(奇跡)を起こせるような薬をつくりたい』と考えたリリー氏が、その後、創業したのがイーライ・リリー社です。
従業員2人で始めたイーライ・リリー社は、1876年の創業から150年以上が経過した現在では4万人近い従業員が働き、売上高2兆7,000億円(2018年実績)という世界トップ10に入るグローバルな製薬会社となっています。
今でも創業の想いを引き継いで研究開発を重視しており、売上高の20%超を新薬の開発に投じるのはアメリカの製薬会社の中でもトップクラスです。そして、これまでに世界初の新薬、例えば、糖尿病の治療で使われることで有名な“インスリン”等を数多くつくり出してきたのがイーライ・リリー社です。
どうでしょうか。規模や数字だけを伝えられた場合と比べて、聞き手の感情や印象にはどんな変化がありそうでしょうか。ストーリーテリングには、聞き手にイメージを湧かせ、感情を動かし、記憶に留める効果があるのです。