比類なき人類の悲劇
皆様
いつも大変お世話になっております。
株式会社ジェイックの梶田です。
教育事業部様は、ソマリアという国はご存知ですか?
アフリカの東海岸部に位置する人口1500万人程の国ですが、
慢性的な飢餓や干ばつに加え、1991年以降内戦が続いています。
頻発するテロと虐殺の様子は「比類なき人類の悲劇」とも
形容されているほどです。
1993年、国際世論の高まりを受けて、アメリカは内戦終結へ向け、
精鋭部隊を現地へ派兵しますが、ゲリラ民兵の激しい抵抗に遭い、
多数の犠牲者を出し、翌年には撤兵を余儀なくされてます。
映画好きな私は、これらの事実を『ブラックホーク・ダウン』
(2001年製作/アメリカ/東宝東和配給)という映画で知りました。
そんな、世界で一番危険な国と呼ばれるソマリアの若者たちの
社会的自立支援をしようという団体が日本にあります。
NPO法人アクセプト・インターナショナル、という団体です。
https://accept-int.org/
ソマリアの内戦やテロに加担する民兵の多くは現地の若者です。
貧困によって満足な教育も受けられず、職にも就けず、
ギャングなどに身を寄せてそのままテロに加担するようになる…
そのような負の連鎖を断ち切るためにも、若者たちの脱過激化、
社会復帰支援をしようというのです。
しかも、驚くことに、そこでは日本人の同世代の若者が中心となり、
そのような活動の中心になっているのです。
具体的には、刑務所に収監されている現地の若者たちと対話し、
社会復帰の為のセミナーやワークショップなどを行っておられます。
価値観や文化の対極に位置するそんな彼らソマリアの若者に、
どのような対話で、自立的な社会復帰を支援するのか…
その手法は、ビジネスの様々な交渉の場面で参考になる筈だと、
団体の代表と幹部の方に、先日、お話をお聞かせ頂いたのです。
代表の永井陽右(ながい ようすけ)さんは、
大学1年生の時に「日本ソマリア青年機構」という団体を設立し、
何の後ろ盾もないままに現地での活動を始めています。
テロ組織の若者へ、投降や脱過激化を呼びかける活動ですから、
当然、命の危険だってある中での活動です。
各国の政府や紛争解決のプロですら介入に躊躇するような場所に
踏み込んでいける勇気と実行力には、本当に頭が下がります。
永井さんの著書やインタビュー記事なども読ませて頂きましたが、
彼の行動原理は、
“使命感”に他ならないと感じました。
“比類なき人類の悲劇”がそこにあるのなら、その問題を解決する。
“いちばん痛みを感じている人”がいるのなら、その痛みを解決する。
誰よりも何よりも、純粋で真摯な理由であり崇高な理想にも思えます。
様々な危険や不便にも耐え、決して将来が約束されているわけでもなく、
自分の時間と身体を、異国の地の若者たちの支援の為に費やす…
永井さんは私よりも20歳近くもお若いのですが、
比較にならないくらい濃密な時間を過ごして来られていると感じます。
私は、永井さんに聞きました。
「同世代とは言え、文化も価値観も違う、ましてや犯罪者、
そんな若者たち、彼らを自立に導くには何が必要ですか?」
永井さんは、こう教えてくださいました。
「“理解”です。
彼らはテロリストやギャングである前に、同世代の若者です。
交渉や説得を目的とするのでなく、彼らが必要としていること、
“自分たちを理解してもらうこと”に応えることが大切なのです。」
…
10年に渡って、世界一危険な国で濃密な時間を過ごして来られた、
永井さんのその言葉には、私などが企業研修で伝える言葉よりも、
ずっとずっと重みと深みを感じました…。
「マネジメントとは“他者の理解”である」
いちばん痛みを感じている人の痛みを解決する為には、
その人の痛みを、まず理解しなければなりません。
それでも分かり合えないことだってあるでしょう。
しかし、それは本質的な原則であり欠くべからざることです。
コロナ禍で様々なことが変わりましたし、今後も変わります。
しかし、変えてはならない人間同士の原則的営み。
私たちは、そのことをもっと真剣に考えるべきだと教えられました。
そして、私は一人暮らしをしている大学1年生の息子に、
永井さんの著書を送りました。
これからの人生の何かのヒントになればと。