「あの人はポテンシャルが高そうだ」「あなたのポテンシャルに期待しているよ」「来年はポテンシャル採用で行くぞ」などなど、”ポテンシャル”という用語はビジネスのさまざまなシーンで耳にします。
一般に「ポテンシャルが高い」というとプラスのイメージを持つ人が多いですが、具体的には“ポテンシャル”とは何を意味するでしょうか。
そして、人材育成などの視点で考えたとき、どうすれば“ポテンシャル”を“パフォーマンス”へと変えられるでしょうか。
記事では、ポテンシャルという言葉の意味や、ポテンシャルが高い人/低い人の特徴、また、ポテンシャルを発揮できるようになる人材育成のポイントを紹介します。
<目次>
ポテンシャルとは?
記事では最初に、「ポテンシャル」という言葉の意味を解説していきます。
ポテンシャルとは?
ポテンシャル(potential)は、ビジネスシーンでは「潜在能力」や「将来の可能性」などの意味で使われます。
今はまだ表に出てきていないが、将来的に発揮が期待される能力やスキルと言って良いでしょう。
したがってポテンシャルが高い人=将来活躍する期待が大きい人でもあります。
ちなみに、ポテンシャルと対になるのが「パフォーマンス(顕在能力)」です。
こちらは、現在はっきりと現れている能力、自分が意識して使える能力であり、発揮して成果に結びつけている能力です。
ポテンシャルと似た使われ方をする言葉
以下はポテンシャルと似たような意味で使われることが多い言葉です。
可能性は、実現できる見込みや将来的な発展性を意味する言葉です。
一般的には「ポテンシャル」と同義であると考えて良いでしょう。
素質とは、先天的に備わっている、将来発揮されうる特性や能力のことを言います。
現状では発揮されていなくても、将来的に開花する可能性があるという意味で、やはり「ポテンシャル」と同様の意味合いで使われることが多い言葉です。
採用場面でよく聞く「ポテンシャル採用」とは?
新卒の採用場面などでしばしば耳にする、「ポテンシャル採用」という言葉があります。
ポテンシャル採用とは、現時点での経験やスキルではなく、求職者の潜在能力や成長可能性を重視して採用することを指します。
ポテンシャル採用のメリットは、幅広い求職者からの応募が見込める点、今後の成長を見込める優秀な若手の採用が期待できる点です。
かつて1990年代頃までは、ポテンシャル採用はイコール新卒採用を指す言葉として使われていました。
しかし、近年では、近年では転職が一般化したことを背景に、中途採用でも、既卒や第二新卒を対象にしたポテンシャル採用が実施されることは珍しくなくなりました。
また、学生の二極化も進む中で、ベンチャー企業や一部の大手企業では、システム開発やAI活用、起業などを経験している優秀学生を、ジョブ型雇用や幹部候補枠として採用するようなことも増えており、新卒=ポテンシャル採用、中途=即戦力重視という区分は薄れてきています。
HRドクターでは、ポテンシャル採用のメリットやデメリット、採用面接で見極めるポイントなどを解説した記事を用意しています。
ポテンシャル採用に力を入れたい場合は、ぜひご覧ください。
ポテンシャルが高い人に共通する5つの特徴
本章では、「ポテンシャルが高い」と言われる人に共通する特徴を5つ紹介します。
これからポテンシャル採用に力を入れていきたいと考えている人事担当者の方などは、選考基準を考えるうえで参考になれば幸いです。
素直である
ポテンシャルが高いと言われる人は、総じて素直であり、周囲の意見やフィードバックに熱心に耳を傾けます。
自分にとって不都合、耳が痛い指摘であっても素直に受け入れ、言動を改めようとします。
素直にアドバイスを吸収できる人は、周囲からも好感を持たれるため、人間関係においても大きな恩恵を得ることができます。
失敗を恐れず、チャレンジ精神が旺盛
失敗を恐れず、チャレンジに積極的なのもポテンシャルの高い人に多い特徴です。
失敗を恐れ新しい挑戦をしなければ成長はできませんし、たとえ短期的には失敗しても、失敗経験から学び次に生かすことはできます。
ポジティブ思考
十分な根拠や上手く行く見込みがないと、なかなか新しいことに踏み出せない人も多いものです。
これに対しポテンシャルの高い人は、「やればなんとかなる」と楽観的に考えて新しいことにも躊躇せず挑戦する傾向にあります。
ポテンシャルが高い人が、失敗を恐れずにチャレンジできるのは、ポジティブなものの考え方を備えていることも大きく影響しています。
向上心、成長意欲がある
ポテンシャルが高い人は、常に上を目指しています。自分を高め、今より少しでも成長しようという貪欲な成長意欲をもっています。
成長意欲はアンテナであり、エンジンです。同じ経験をしても成長意欲が高い人の方が多くを学び吸収しますし、新しいことや成長の機会にも積極的に飛びつきます。
自己肯定感が高い
自己肯定感とは、ありのままの自分を素直に肯定する感情を指します。どんな人も強みもあれば弱みもあります。
また、心の中には成長意欲や立派な人格もあれば、ネガティブな感情が生じることもあるでしょう。
自己肯定感はこうした完ぺきではないところも含めて、自分自身を肯定する感情です。
自己肯定感がある人は、自分の長所や強みにフォーカスして考えたり、相手の優れた点を素直に認めることができたりなど、成功につながる行動を取ることができます。
自責思考
自責思考とは、起こった問題の原因が自分にもある(自分は結果に影響を与えることが出来た)と捉える考え方です。
ポテンシャルの高い人は、問題が生じたとき、自分にも原因があると考え、自分が出来ることを考えて実行していける人です。
ポテンシャルの低い人に見られる特徴
上記とは逆に、ポテンシャルの低い人にはどのような特徴があるでしょうか。以下では、ポテンシャルが低いと言われる人によく見られる3つの特徴を紹介します。
受け身
ポテンシャルが低い人は、仕事でもプライベートでも、自分から積極的に動こうとしない傾向があります。
人から促されてようやく動くのが、ポテンシャルが低い人に共通する性格的特徴と言えます。
人に行動を合わせ、選択を委ねることは、自分の人生を他人に預けているのと変わりありません。ポテンシャルが低い人は、このことになかなか気付けないのです。
悲観的、保守的なものの考え方
ポテンシャルが低い人は、常に最悪の事態を想定し、最悪の事態を何としても避けようと安全な道を探そうとします。
リスクを考えることは大切です。しかし、リスク回避を重視しすぎると、無難な行動、当たり障りのない発言ばかりになります。
ポテンシャルが低い人が受け身なのは、自分から危ない橋を渡らないように、常日頃から気を付けていることも要因かも知れません。
他責である
前述したように、ポテンシャルが高い人は総じて自責で物事を考えます。
これに対して、ポテンシャルの低い人は、「上司のマネジメントが悪い」「商品が悪い」「会社のシステムが古い」といったように、責任を自分の外に押し付けて考えます。
物事を他責で考えれば、精神的なダメージを受けることは少なく、ストレスも溜めにくいかもしれません。
しかし、周囲からは「愚痴ばかりの人」と煙たがられ、成長機会を逃してしまうことになります。
ポテンシャルを発揮してもらう人材育成のポイント
本章では、組織開発においてメンバーが持つポテンシャルを発揮してもらう人材育成のポイントを4つ紹介します。
組織単位、またマネジメント、さらには個人で、紹介するポイントも取り入れることで、各自が持っているポテンシャルを発揮しやすい環境が生まれてくるでしょう。
失敗を恐れずに挑戦できる風土・仕組みを作る
ポテンシャルを発揮できるようになるための第一歩は、失敗を恐れず新しい事に挑戦する風土・仕組みを作ることです。
挑戦して失敗する度に厳しく責任を追及されるようでは、誰も新しいことにチャレンジせず、今まで通りのやり方を続けるでしょう。
もちろん短期的な評価として結果責任を問うことは必要かもしれませんが、過度に追及するようなことはNGです。
トップや経営陣から「失敗を恐れて新しいことに挑戦しないのは会社にとってマイナスだ。主体的に挑戦した結果の失敗なら歓迎するから新しいことにどんどんチャレンジしなさい!」といったポリシーを発信し、社内に雰囲気を作ることから始めていきましょう。
結果だけではなくチャレンジした姿勢を評価することで、今までになかった新しいアプローチや取り組みが生まれ、その中からポテンシャルを発揮する人も出てくるでしょう。
人材配置や業務のローテーションを活発に行う
ポテンシャルはまだ発揮されていない潜在的な能力です。
現時点で期待する成果が出ていないメンバーも、役割や仕事内容を変えれば、新たなポテンシャルが開花して、活躍するようになるかもしれません。
人材配置や業務ローテーションを通じて、新しい業務・役割を割り振り、様々なスキルを学ばせながら、今まで眠っていたポテンシャルを発揮できる機会を作ることが大切です。
HRドクターでは、各業務で求められるスキルの洗い出し・可視化をするツールであるスキルマップについて分かりやすく解説した記事を用意しています。
人材育成を検討するヒントとして参考になれば幸いです。
強みに着目して強みを生かす
各自が持っているポテンシャルを発揮できるようになるためには、自己分析の機会を設けることも効果的です。
自己分析を通じて、自分の強みや成功パターンを認識することが、ポテンシャルを発揮することにつながります。
会社全体として、強みに着目する、強みを生かすマネジメントをしていくと、個々のメンバーも前向きになりますし、能力を開花させやすくなるでしょう。
強みを生かすうえでは、強み診断であるストレングス・ファインダー®を使うことも有効です。
下記の記事でストレングス・ファインダー®について紹介していますので、ぜひご覧ください。
学んだことを業務で実践させる機会を作る
企業の人材育成では、知識やスキルの体得や能力向上を目的として研修やトレーニングが一般的に行われています。
こうした研修やトレーニングで学んだことを、どう業務で実践し成果に繋げるかは、各自の持つポテンシャルを発揮できるようになってもらう上でも重要となるテーマです。
研修を受講すれば、体系的な知識のインプットや成果につながるスキルやテクニックを得ることができます。
しかし、どんなに良い学びや気づきがあっても、実際の業務で活用されなければ意味がありません。
「学んだことを業務で実践し、期待通りの効果が出たのか?そうでなかったのか?」「自分なりに何か新しい手ごたえがつかめたのか?」などの実体験と振り返りを通じて社員達は自分の新たな可能性に気づき、ポテンシャルを発揮できるようになります。
人は「変わる」ことを嫌う心理を持っています。時には強制的にでも、業務の中で学びの実践を促す仕組みを作ることも検討してみましょう。
その結果、研修で学んだやり方・アプローチに手ごたえを発見し、新たなポテンシャルの発揮へと繋げていくメンバーも生まれることでしょう。
まとめ
記事では、ポテンシャルという言葉の意味や、ポテンシャルが高い人・低い人の特徴、そして、メンバーにポテンシャルを発揮してもらうための人材育成ポイントについて紹介しました。
組織開発においては、挑戦を促す風土、新たな仕事や役割、強みへの着目と活用、学びの実践といったポイントを押さえていくことで、メンバーが持つポテンシャルが発揮されやすくなります。
誰しも、「あなたは自分が持っているポテンシャルをすべて発揮できているか?」と聞かれて、「発揮できている」とは答えられないのではないでしょうか。
逆に言えば、組織全体でいえば、発揮できていないポテンシャル、パフォーマンスに変えられていないポテンシャルが非常に多く埋蔵されているわけです。
これを発揮能力へと変えられれば、個人、チーム、組織の生産性は飛躍的に向上していくでしょう。本記事がその参考になれば幸いです。