どのような企業でも、事業活動を進める中では顧客からのクレームが生じてしまうことも有ります。
クレームが発生しないよう事前に対策を考えることも大切ですが、万が一起きたときにどうやって対応するか準備しておくことも必要です。
記事ではクレームの種類と対応手順の基本、また対応する担当者が知っておくべき心構えも紹介します。
<目次>
クレーム対応の重要性
まず、クレーム対応が重要性を確認しておきましょう。3つの視点で、きちんとしたクレーム対応を実現できるようにすることが大切です。
- 顧客の困りごとを解決する
- 商品・サービスの改善と質向上
- 企業のファンを増やす
顧客の困りごとを解決する
当たり前の話ですが、多くの場合、クレームの裏側には「顧客の困りごと」が存在します。顧客がクレームを入れる理由の多くは”困っている問題を解決したいから”です。
クレーム対応する際には、まず顧客の困り事に真摯に向き合って解決する姿勢が大事です。
商品・サービスの改善と質向上
きちんとクレーム対応を実施することで、商品やサービスの改善と質の向上につなげられます。
クレームが生じるのは顧客の期待と現実の商品・サービスにギャップがあったり、期待外れだったりすることも大きな要因です。
クレームを集計・分析し、指摘された箇所を改善することで商品・サービスの質が向上し、売上の増加などが目指せるでしょう。
企業のファンを増やす
クレーム対応によって企業のファンを獲得できる可能性もあります。
クレーム対応の世界では、「クレームを入れて企業や店舗のクレーム対応に満足した人は、クレームを入れずに店を立ち去った人と比べてその後のリピート率が圧倒的に高い」というグッドマンの法則がよく知られています。
このように、クレーム対応は自社のファン、ロイヤルユーザーを獲得するチャンスになり得ます。単なる問題処理として終わらせるのではなく、顧客に満足してもらえるようなクレーム対応を目指しましょう。
クレームをつける顧客の心情
次にそもそもなぜクレームが生じるのか、といった顧客の心情を解説します。上述した「困っている」「期待と現実にギャップがあった」という要因の他にもさまざまな理由があります。
主要な5つのクレーム要因について紹介します。
- 困っている=解決したい
- 不快だった=謝罪がほしい
- 損したくない=不平等さへの不満
- 良くしてあげたい=親切心
- 機嫌が悪い=ストレス発散
困っている=解決したい
まず顧客が困っている際にクレームが多く発生します。例えば「注文したのに商品がまだ届かない」や「説明書の内容がわからない」「初期不良を起こした」「注文内容と違う商品が届いた」などです。
このケースでは、困っている顧客の心情に適切に共感しつつ、問題の解決と謝罪を行なうことが何より大切です。
不快だった=謝罪がほしい
顧客は「困っていることを解決したい」という論理的な理由とともに「不快であり謝罪が欲しい」という、ある種感情的な理由でもクレームをつけます。
企業側の責任が明らかな場合には、誠実に謝罪することが必要です。
ただし、何でもいいから謝罪するということではなく、事実確認が取れていない場合などは、あとあと自社の不利益にならないように冷静に対処することが大切です。
損したくない=不平等さへの不満
「先に注文したのに後から来た人の方が早く料理が届いた」などのサービスに対しての不公平、不平等さを感じた際にもクレームが発生します。これも上述した一種の不快によるクレームです。
例えば同じ料金を支払ったのに待遇に差がある、対応が平等でないなどと感じたときなどに生じます。丁寧に対応して、同じクレームが生じないように改善を行なう必要があります。
良くしてあげたい=親切心
「この商品をこう直した方が良い」という親切心からクレームしてくる場合があります。顧客からの貴重なフィードバックととらえて、伝えてくれたことに感謝する、また、改善策を対応することが大切です。
機嫌が悪い=ストレス発散
一番対応が難しいクレームが一種のストレス発散としてのクレームです。元からイライラした機嫌の悪い状態で電話や来店し、ある種のストレス発散としてクレームをつけてくるようなケースです。
このケースは顧客側の機嫌に左右されるため、対応する際はより不機嫌にしてしまわないよう言葉遣いなどに注意しましょう。
場合によっては「対応が気に入らなかった」などの二重クレームを起こす可能性も考えられます。
最近では、カスタマーハラスメントなどの問題もあります。自社のミスはきちんと謝罪すると同時に、理不尽なクレームには断固たる姿勢を示すことも大切です。
クレームの種類
クレームの種類を3つに分類しました。それぞれを解説します。
- 商品・サービスへのクレーム
- 顧客対応へのクレーム
- 顧客の勘違い
商品・サービスへのクレーム
商品・サービスへのクレームは、配送した商品の欠品や破損など顧客の期待を損ねることが原因で起こります。
また、クレーム対応が遅れたりすることも「サービスの質が低い」と認識される可能性があるので注意してください。
顧客対応へのクレーム
スタッフの態度や失礼な言葉遣いなど、雑な対応が原因で起こります。本質的には「軽んじられた」という思いがクレームの要因になります。
クレーム対応するうえでは、顧客の自尊心を傷つけず、重要感を満たすことが大切です。
顧客の勘違い
顧客側によるイメージ、認識違いが原因でクレームが起きることもあります。
顧客の勘違いだったとしても、誤りやすい表示などがあれば、その点に関してはきちんと謝罪と指摘を感謝することが大切です。
相手にもよりますが、顧客の勘違い等によるクレームに対応する際は、上述のとおり顧客の自尊心を傷つけない対応が大切です。
クレームの対応手順
ここでは一般的なクレームの対応手順を紹介します。
- 1.挨拶、お詫び
- 2.現状の把握
- 3.共感
- 4.解決策の提案
- 5.謝罪と感謝
挨拶、お詫び
クレーム対応の際には、まずは顧客の不満を和らげるために挨拶と謝罪から入りましょう。ただ、状況も分からないのに何でもかんでも非を認めて謝るということではありません。
顧客に手間取らせたことや不安にさせてしまったことに対してお詫びすることが大事です。クレーム内容によっては「わざわざ指摘してくれたことへのお礼」から入ることも有効です。
現状の把握
次に顧客の話や要望を丁寧に聞いて状況を把握しましょう。現状を把握していく中で「企業側に責任があるのかどうか」なども明らかにする必要があります。
なお、カスタマーハラスメント対策などの意味でも、顧客の話や対話は、録音やメモなどの記録に残すことを習慣化するのが有効です。
共感
顧客のクレーム内容を聞く際は、親身に話を聞いて共感することが大切です。口先だけの返答や相槌はさらにストレスを与えて、相手を怒らせてしまいかねません。
また、ヒアリング途中で「本当ですか?」「そんなはずはありません」といった相手の言い分を疑ったり否定したりするようなコメントを差しはさむことも厳禁です。
丁寧なヒアリングと共感は、顧客のストレスを軽減させるためにも大切なプロセスです。
解決策の提案
状況を把握出来たら、クレーム内容や原因を踏まえて、解決策を提案しましょう。解決策は顧客の不満を解消することが大切ですが、一方で良識の範囲内に収めることも大切です。
親切さの度を超えた対応を行ってしまうと、別の顧客が不満を感じてクレームにつながる可能性があります。
謝罪と感謝
クレーム対応がひと段落したら、最後に再度謝罪と指摘してくれたことへの感謝を伝えましょう。
クレーム対応が上手な人の7つの心構え
クレーム対応をストレスも生じる仕事ですが、一方でうまく実施することでファンを獲得できる可能性にもつながります。最後に上手にクレーム対応するための心構えを7つ紹介します。
□ | 日頃から商品の知識を身につけておく |
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□ | 傾聴する |
□ | NGワードに触れない |
□ | 顧客が求めている対応をする |
□ | 平常心を保つ |
□ | 「自分が怒られているのではない」と自覚する |
□ | 対応しきれない場合は無理せず上司に相談する |
日頃から商品の知識を身につけておく
日頃から商品・サービスの知識を身につけておきましょう。商品・サービスの十分な知識を持っていないと、顧客からの問い合わせに対して満足のいく対応ができません。
クレーム対応が上手な人は日頃から商品に対しての情報を収集しており、質問が来た際に適切に回答しています。
担当分野ではない商品・サービスを隅々まで把握することは難しいかもしれません。それでも、概略程度は把握して、初期対応したうえで担当者につなげるとよいでしょう。
まったく理解していないと、それ自体が二次クレームを生んでしまうことにも繋がります。
傾聴する
クレーム対応では傾聴を心がけましょう。問題解決を急ぐあまり顧客の言葉を遮ってしまうことは絶対にNGです。
しかし、顧客からすると「面倒だから早く済ませたい」「自分が言うことを疑っている」という印象を持たれて余計不快にさせてしまいます。
まずは相手の話をすべて聞き入れてから謝罪や解決を行なうことが上手なクレーム対応といえます。
NGワードに触れない
クレーム対応では相手を不快にさせてしまうNGワードが存在します。
例えば、「そんなことは絶対ありません」と決めつけてしまう表現や「○○ではないかと思います」といった根拠のない憶測での発言は、顧客に不快感や不信感を与えてしまいかねません。
顧客が求めている対応をする
クレーム対応では、問題解決や謝罪など顧客が求めている対応をする必要があります。顧客の声を聴きながら「何を求めているのか?」を理解しようとすることが重要です。
平常心を保つ
クレーム対応する際は平常心を保つのが大事です。クレームを入れる顧客のなかには、怒っていたり興奮していたりする人も少なくありません。
顧客の大声や罵声に対して、対応する側もヒートアップしてしまったり委縮してしまったりすると、さらに事態が悪化してしまうことが多くなります。
余計な罵詈雑言等は聞き流し、平常心を保ちながら対応しましょう。
「自分が怒られているのではない」と自覚する
「自分が怒られているのではない」と自覚することもクレーム対応するうえでは大事です。クレームを受けると自分が怒られている感覚になり、萎縮して対応する側もストレスを溜めてしまいます。
あくまでも商品・サービスに対しての意見ととらえて冷静に対応しましょう。
対応しきれない場合は無理せず上司に相談する
対応しきれない場合は、無理せず上司に相談することが大切です。担当者ひとりで抱え込む必要は一切ありません。組織として、きちんとしたクレーム対応を実現することが何より大切です。
クレームの種類を把握して適切に対処する
クレームにはさまざまな種類がありますが、対応を間違わないことが大事です。対応を誤ると二次クレームを起こしたり、場合によっては企業のブランドイメージを損ねてしまったりする恐れもあります。
反対に、上手にクレーム対応できれば、ファンを獲得できる可能性があります。
記事で紹介したクレームが発生する5つの主要因やクレーム対応の心がけを押さえた対応を組織的にできるように整えましょう。