リーダーシップは、組織を率いて結果を出すために欠かせないスキルです。一方でリーダーシップの重要性は理解していても、どのようにリーダーシップを発揮すればよいかわからないという方も少なくないでしょう。
組織の状況や自身のスキルセットに合わせた適切なリーダーシップを発揮するためには、リーダーシップの種類などを理解することも重要です。本記事では、リーダーシップを発揮するうえで参考となるリーダーシップの種類や代表的なリーダーシップ理論を紹介します。
<目次>
- そもそもリーダーシップとは?
- PM理論に基づくリーダーシップの考え方
- ダニエル・ゴールマンによる6種類のリーダーシップスタイル
- クルト・レヴィンの3種類のリーダーシップ型
- 取り入れるリーダーシップの種類を選ぶには
- 自身のスキルセットやチームの状況に合わせた適切な種類のリーダーシップを発揮しましょう!
そもそもリーダーシップとは?
リーダーシップとは、リーダーとして周囲や組織を牽引する能力を指します。リーダーシップでは、目標達成のためのビジョンをメンバーに示し、自らが模範となりつつ、メンバーが自立的に行動していけるように導くことが重要です。
なお、ここでの周囲や組織、そしてメンバーには、“自分”も含まれます。リーダーシップとは決して管理職などにだけ求められるスキルではありません。自分自身に対してリーダーシップを発揮できなければ、周囲に対してリーダーシップを発揮することは難しいでしょう。
リーダーシップの意味や定義は、これまで多くの有識者によって提唱されてきました。“マネジメントの父”とも呼ばれる経営学者ピーター・ドラッカーは、リーダーシップは資質ではなく仕事である、地位や特権ではなく責任であると定義しています。
ドラッガーのリーダーシップ論以外にも、本記事ではさまざまな種類のリーダーシップ論と意味を取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとよく混同されるのがマネジメントです。リーダーシップとマネジメントは「組織の成果を上げる」という点では同じですが、それぞれに求められる行動が違います。
リーダーシップに求められる行動は、ビジョンやゴールを定め、メンバーを鼓舞して、組織を導くことです。一方で、マネジメントに求められる行動は、ビジョンやゴールの実現に向けて目標を設定して計画を立て実行することと、組織を維持・管理することです。
ただし、現実的なビジネスシーンでは、リーダーシップとマネジメント、リーダーとマネージャーは区別されるわけではなく、マネジメント職(管理職)に求められる役割のなかにリーダーシップが含まれるイメージです。
PM理論に基づくリーダーシップの考え方
PM理論に基づくリーダーシップの状態 | |
---|---|
PM型 | P(目標達成機能)もM(集団維持機能)も強い、理想的なリーダーシップ |
Pm型 | P(目標達成機能)は強いが、M(集団維持機能)は弱いリーダーシップ |
pM型 | P(目標達成機能)は弱いが、M(集団維持機能)は強いリーダーシップ |
pm型 | P(目標達成機能)もM(集団維持機能)も弱い(リーダーシップが機能していない) |
PM理論とは、1966年に心理学者、三隅二不二によって提唱された、リーダーが取るべき行動に着目した行動理論です。ここでのリーダーは「管理職」に近いイメージで、組織をまとめるリーダーに求められる役割がよく分かります。
PM理論では、リーダーに求められる機能は以下2つであるとして、2軸に基づくリーダーシップ発揮状態に応じて、リーダーシップの状態を4つに分類します。
- P機能:目標達成機能(Performance)
- M機能:集団維持機能(Maintenance)
P機能(目標達成機能)は目標達成に向けて行動やモノを管理して推進する能力を指し、M機能(集団維持機能)はコミュニケーションを通じて組織のエンゲージメント向上、人材育成などを実施する能力を指します。
2つの軸の発揮状態が強い/弱いの掛け合わせで、リーダーシップの状態を4つに分るしたものが下記になります。
PM型
PM型は、成果を上げる力も、集団をまとめる力も強い、理想のリーダーシップです。PM型のリーダーが率いる組織は、目標達成力が高く、組織としての一体感も強くなります。
Pm型
Pm型は、成果を上げる力は強いが、集団をまとめる力は弱いリーダーシップです。Pm型のリーダーが率いる組織は結果を出すことはできますが、組織の一体感が弱く、中長期的には離職率が高くなったり、人材育成がうまくできなかったりするリスクがあります。
pM型
pM型は成果を上げる力は弱いが、集団をまとめる力は強いリーダーシップです。pM型のリーダーが率いる組織は、現状維持には強みを発揮しますが、リーダーがメンバーの意見を尊重し過ぎて成果を上げるための的確な指示ができないなど、仲良し集団になってしまうというリスクもあります。
pm型
pm型は、成果を上げる力も集団をまとめる力も弱い状態で、リーダーシップを発揮しているとはいえない状態です。なってはいけない、リーダー失格の状態です。pm型のリーダーが率いる組織は成果が出せず、さらに組織としての一体感もない状態です。
ダニエル・ゴールマンによる6種類のリーダーシップスタイル
- ビジョン型リーダーシップ
- コーチ型リーダーシップ
- 関係重視型リーダーシップ
- 民主型リーダーシップ
- 実力型リーダーシップ
- 強制型リーダーシップ
アメリカの心理学者、ダニエル・ゴールマンが提唱した6種類のリーダーシップスタイルも、組織の状況に適したリーダーシップ、自身の強みを生かすリーダーシップタイプを考えるうえで役立ちます。
ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップは、ブレない信念や価値観を持ち、人を巻き込む力があるリーダーシップスタイルです。リーダーが掲げるビジョンをチームメンバーが一体となって追うことで、メンバーの組織への帰属意識も高まります。強力な牽引力を持つため、組織の改革期や急成長期に特に有効です。
コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーシップは、メンバーのやり方を尊重し、相手の特徴や性格を活かしたやり方を見出すリーダーシップスタイルです。メンバーをコーチングして、個々の成長を促すことで組織を成功へと導きます。
能力的にプロフェッショナル、かつ主体性もあるようなメンバーがそろっている状態では、コーチ型のリーダーシップがうまく機能しますし、メンバーの主体性を引き出して人材育成するうえでも有効です。
関係重視型リーダーシップ
関係重視型リーダーシップは、メンバーや関係者と強い信頼関係を築き、調整力に長けたリーダーシップスタイルです。チームの人間関係を良好に保つことを重要視し、メンバーの仕事を進めやすくします。利害関係を整理して協調して物事を進めていくような場面に有効です。ただし、前述のpM型のリーダーシップ状態に近いものがあり、成果に向けて組織を動かす能力に不足しがちな点に注意が必要です。
民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップは、メンバーと同じ目線にたち、友好的な関係を保つリーダーシップスタイルです。意思決定にメンバーの意見を反映させ、メンバーと合意形成をしながら仕事を進めます。メンバーが有能で高い自律性を備えている組織で有効です。
実力型リーダーシップ
実力型リーダーシップは、プレイヤーとして高いパフォーマンスを出し、組織を引っ張っていくリーダーシップスタイルです。リーダーが手本となって高い基準を示し、メンバーにパフォーマンスの向上を促します。実力主義で単一職種の組織で有効です。
強制型リーダーシップ
強制型リーダーシップは、強制的に指示命令する厳格なリーダーシップスタイルです。業務効率が高くなり成果が出やすい一方で、部下の判断力が育たなかったり、離職率が高くなったりすることがあります。迅速な意思決定や対応が求められる緊急事態やインシデントへの対応などでは有効です。前述したPm型のリーダーシップをさらに推し進めたイメージです。
クルト・レヴィンの3種類のリーダーシップ型
- 専制型リーダーシップ
- 民主型リーダーシップ
- 放任型リーダーシップ
社会心理学の父として評価される、アメリカの心理学者クルト・レヴィンもリーダーシップを3種類に分類しています。ダニエル・ゴールマンの6類型と重複する部分もありますが、それぞれの型を紹介します。
専制型リーダーシップ
専制型リーダーシップでは、リーダーがすべての意思決定や状況判断を行ないます。組織の急成長期、緊急事態への対応、納期が迫ったプロジェクト進行などには有効です。一方で、メンバーの自律性や思考力の育成がしづらいというデメリットもあります。ダニエル・ゴールドマンの強制型リーダーシップと類似します。
民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップでは、リーダーとメンバーが共同で意思決定と状況判断を行ないます。メンバーの自律性や帰属意識を高めるのに有効です。ダニエル・ゴールドマンの民主型リーダーシップと同じであり、また、コーチ型リーダーシップや関係重視型リーダーシップに派生する原型ともいえるでしょう。
民主型リーダーシップは、専制型リーダーシップに比べると意思決定に時間がかかるため、切迫したスケジュールのプロジェクトや強いリーダーシップが求められる組織変革には適していません。
放任型リーダーシップ
放任型リーダーシップでは、リーダーはメンバーの意思決定や状況判断にあまり関与しません。チームメンバーが有能で、かつ積極性がある場合には有効です。その反面、チームのまとまりがなくなり、リーダーシップとして機能しなくなるリスクもあります。
取り入れるリーダーシップの種類を選ぶには
さまざまなリーダーシップの種類を紹介しましたが、これらから取り入れるリーダーシップを選ぶにはどうすればよいのでしょうか。その場合、次の2つの観点から考えてみることが有効です。
自身と組織の性質に合うリーダーシップタイプを取り入れる
自身と組織の性質に合うリーダーシップタイプを選ぶことが重要です。自分と組織にマッチしたリーダーシップタイプを模索するために、まずはいろいろと取り入れて試してみるのもよいでしょう。また適していないリーダータイプを見極めるためにも周囲のフィードバックには積極的に耳を傾けることが大切です。
変化に対応し、状況に適したリーダーシップタイプを取り入れる
現在では、リーダーシップ理論の主流は“シチュエーショナルリーダーシップ”という考え方になっています。シチュエーショナルリーダーシップとは、絶対的に正しいリーダーシップがあるわけではなく、状況や相手に応じて適切なリーダーシップは異なるという考え方です。
例えば、テレワーク化やDXが急速に普及した昨今では、カリスマ性のあるリーダーが現場で強力なリーダーシップを発揮してチームを引っ張るという従来のチーム運営では対応できない場合もあるでしょう。
また、経験や能力が浅い新人や若手組織を引っ張っていく場合と、経験を積んだプロフェッショナルが集まったプロジェクトを進める場合でも適切なリーダーシップは異なるでしょう。
場面を適切にとらえて、状況に応じたリーダーシップスタイルが発揮できるのがベストです。
自身のスキルセットやチームの状況に合わせた適切な種類のリーダーシップを発揮しましょう!
さまざまな種類のリーダーシップを紹介しましたが、絶対的にこれが正しいというリーダーシップスタイルはありません。求められるリーダーシップの種類は、メンバーの性質や組織の状況によって異なります。自身のスキルセットやチームの状況に合わせた適切な種類のリーダーシップを発揮することで、チームのパフォーマンスを向上させましょう!