メンター制度におけるメンターの役割とは?導入と運用のポイントを解説

更新:2023/07/28

作成:2022/06/26

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

メンター制度におけるメンターの役割とは?導入と運用のポイントを解説

近年、社員の成長を促すとして多くの企業に注目されているのがメンター制度です。メンター制度では、メンター役となるベテランや先輩社員が新人や若手社員の精神的な相談役になって成長をサポートしていきます。

 

メンター制度を効果的に運営するためにはメンターの役割を正しく理解し、適切な人材をアサインすることが非常に重要です。記事では、メンター制度によって得られる効果やメンターの役割、選定方法、導入・運用のポイントを解説するので、ぜひ参考にしてください。

<目次>

メンター制度の概要

話し込むジャケット姿の男性

 

メンター制度とは、新人や若手社員に「相談役」であるメンターを配置する制度のことで、社員の成長をはじめ、早期即戦力化や離職防止、組織社会化の促進といった効果が期待できます。

 

メンター制度とは?

メンター制度とは、先輩社員を後輩社員の相談役として配置し、後輩社員のキャリアや人間関係、職場内の悩みをサポートする制度です。メンター制度は仕事の業務やスキルというよりも、プライベートや人間関係、組織に馴染むといった、精神的なサポートがメインとなります。

 

したがって、本音で相談しやすいよう、実務で関わることのない他部署の先輩社員や、悩みを解決できる上級者などをメンターに選定するのが一般的です。

 

もともとメンターは、正解がない意思決定と重い責任を担う経営層や政治家などが、精神的なよりどころとして思想家や哲学者、宗教家や先達などに相談を求めたものがはじまりです。

 

ただし、現在のビジネス社会におけるメンター制度はより気軽に実施するものとして、新人や若手、中堅層などを対象とすることが増えています。本記事もそれに倣っていますが、企業によっては管理職を対象としてメンター制度、また、上級管理職や幹部層を対象として社外メンター制度などを取り入れている会社もあります。

期待できる効果

メンター制度では、企業、メンター役の先輩社員、メンティー役の後輩社員それぞれに、以下のような効果が期待できます。

<企業>
  • 社員の定着、離職防止
  • 社員の組織社会化の促進
  • 社員の早期戦力化
  • 社員の成長
  • 部署間の相互理解や組織活性化 など
<先輩社員>
  • 責任感から生じるモチベーションの向上
  • コミュニケーション能力の向上
  • マネジメントスキルの向上
  • 後輩社員の成長による自信獲得 など
<後輩社員>
  • 安心して仕事に取り組むことができる
  • 上司には訊きにくいテーマに対してアドバイスが得られる
  • 不安や悩みを相談できる
  • 先輩たちの経験や仕事に対する姿勢を知ることができる
  • 今後のキャリアやライフワークバランスなどのテーマを相談できる など

メンターとメンティーの関係

メンター制度では、メンター役となる社員を「メンター」、サポートを受ける社員を「メンティー」と呼びます。メンターは、メンティーに対して支援・助言をする役割を担っています。

 

メンターは直接の上司や部下ではなく、普段あまり関わりのない他部署の先輩社員が選任されることが一般的です。同じ目線・立場でコミュニケーションが取れる、メンティーの心情を理解しやすいといった点から、メンティーと年齢がそこまで離れていない社員が選ばれる傾向があります。

 

なお、メンターは上司ではありませんので、メンティーに仕事を与えたり、業務を指導したりすることはありません。メンティーが抱えている仕事上や私生活での悩み・相談を聞き、助言やヒントを与えるといった、相談役のような関係性になります。したがって、メンターとメンティーの相性も重要です。

<メンターをマッチングする際の留意点>

  • メンティーのキャリア志向と、メンターの経歴が合っているか?
  • メンティーの期待とメンターの特性が合っているか?
  • 業務での関わりがないか?
  • メンティーの能力開発をサポートできるか?

メンターの役割とは?

肩を組むビジネスマン

 

メンターはメンティーの相談役であり、メンティーが組織の一員として定着・活躍できるようにサポートすることが役割です。

 

メンティーの悩みや問題解決のサポート

メンターは実務面のサポートを行なうのではなく、精神的な悩みや人間関係の問題への助言、サポートなどを行ないます。

 

したがって、業務上の上司ではありませんので、直接的にアドバイスするのではなく、メンティーに話をさせることで思考や心を整理したり、コーチング的なアプローチでメンティーの考えを引き出したりすることが大切です。

 

メンティー自身の考えを引き出して整理させたり、自分で答えを決めさせたりし、そのうえで、時にはアドバイスするようなイメージです。

組織への定着サポート

本来のメンター制度は、メンティーの精神面の悩み、問題解決などへのサポートが目的ですが、新人などを対象にしたメンター制度の場合は、組織に馴染んで定着をサポートすることがおもな目的となります。

 

企業によっては、環境に早く適応してもらうオンボーディングの一環としてメンター制度を実施する企業もあります。

 

この場合には、メンティーの成長をサポートするというよりも、組織への定着を支援することがメンターの大きな役割となります。通常のメンター制度よりも、積極的に情報提供したり、アドバイスしたりしてもよいでしょう。

企業におけるメンター選定のポイント

メンター制度が成功するかどうかは、メンター次第といっても過言ではありません。メンター制度を導入して、メンターを選定・マッチングする際には、以下のようなポイントを意識するとよいでしょう。

 

メンティーを支援できる知識・経験がある

メンターは、メンティーの悩みや相談に対して適切なアドバイスを行なう必要があるため、新人や若手よりも、ある程度経験がある中堅や管理職層が望ましいでしょう。

 

また知識や経験があるだけでなく、セルフマネジメントやセルフリーダーシップが十分にできており、メンティーを支援できるだけの余裕があることも重要になります。

人材育成への意欲・関心がある

メンターには、メンティーと比較的年齢の近い社員を選定するのが一般的です。しかし年齢の近いことは、メンティーの心情を理解しやすい反面、メンティーをライバル視して的確な支援ができない、適切なアドバイスができないといった恐れもあります。

 

したがってメンターには、メンター制度の目的をしっかりと理解でき、後進の人材を育てる意欲・関心がある人材を選ぶことが大切です。また、メンターに必要なコーチングスキルなどに対しても学習・吸収意欲がある人材だと望ましいでしょう。

 

組織へのエンゲージメントが高い

組織へのエンゲージメントが高い人材がメンターを担当すれば、メンティーのモチベーションやエンゲージメントにも良い影響を与えることができます。主観的な判断だけでなく、サーベイツールなども活用して客観的にエンゲージメントを測ることが有効です。

メンター制度を成功させるポイント

メンター制度を成功させるためには、優秀なメンターを選定するだけでなく、事前準備や実施ごとの振り返り・改善がとても重要になります。

 

メンター・メンティーへの研修実施

メンター制度を実施する前には、メンターとメンティーの両者に研修を実施することが効果的です。事前に研修を行なうことで、メンター制度やメンタリングを正しく理解してもらえるとともに、メンター制度に対する誤解や混乱を防ぎ、メンター・メンティーの不安を解消することができます。

<事前研修の項目と内容例>
  • メンター制度を実施する目的や意義
  • メンター制度とは何か
  • メンターとしての自覚、メンティーとしての心構え
  • メンター制度の運用ルール、進め方
  • メンタリングの基本スキル
  • メンタリングで話し合う内容
  • トラブル時の対応方法
  • 傾聴やコーチングなどのスキル習得(メンター向け)など

人事部などからの運用支援

メンター制度の設計や運用は、現場に丸投げするのではなく、人事部が中心となって運用支援を行なうことが重要です。経営幹部や推進チームなどを含めて体制を構築し、具体的な計画を策定していきましょう。

 

また、必要に応じて推進チームなどを設置すれば、メンター制度をより円滑に進めることができるでしょう。

<経営幹部>
  • 経営トップのメッセージとして、メンター制度のことを定期的に発信する
  • 経営会議や管理職ミーティングのテーマとしてメンター制度を取り上げる
  • メンター、メンティーとの意見交換
  • 社内報やCSRレポートなどでメンター制度を紹介する など
<人事部>
  • メンター制度の企画をはじめ、資料作成、研修の実施、メンタリングの実施、制度改善など、一連のプログラムを管理・調整
  • 経営幹部への情報提供
  • メンティーの上司へのサポート依頼 など
<推進チーム>
  • 人事部門との連携
  • 現場に適した実施計画の構築
  • 人事部門と各部門・部署の調整・支援 など

振り返り・改善

メンター制度は実施して終わりではありません。実施後は、メンター・メンティーへヒアリングやアンケートを実施したり、サーベイツールでメンティーのモチベーションやエンゲージメントを可視化したりして、振り返り・改善を行ないましょう。

 

振り返りや改善の内容は、合同報告会などで共有することで次回のメンタリングに役立ちます。

 

また、経営幹部やメンター・メンティーの上司に対しても必ず報告を行ない、メンタリングの成果や経営的なメリットを理解してもらうとともに、次期以降のメンタリングでも支援が得られるよう配慮しておくとよいでしょう。

まとめ

メンター制度は、新入社員や若手社員の悩み・問題解決のサポートおよび、組織への早期定着を目的とした教育制度の一つです。うまく機能させるには、メンティーを導けるだけの知識、経験があり、人格的にもメンティーのロールモデルとなれる人材をアサインする必要があります。

 

また、経営幹部や人事部からのサポートなども大切です。メンター制度を推進する体制を構築し、組織全体で支援していくとともに、実施後は振り返り・改善を行ない、メンター制度の質を上げていきましょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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