HRBPや戦略人事とは?一般的な人事との違いや役割、成功のコツを解説

更新:2023/07/28

作成:2022/07/01

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

HRBPや戦略人事とは?一般的な人事との違いや役割、成功のコツを解説

HRBPは、経営目線で人事制度や組織の改革を担う“戦略人事”とも呼ばれる仕事です。最近になって、国内でも導入する企業が増えています。本記事では、HRBPの役割や従来型の人事職との違い、導入を成功させるためのコツなどを紹介します。

<目次>

HRBPとは?

ミーティングの風景

 

HRBPとはHuman Resource Business Partnerの略称で、“戦略人事”の仕事をさします。HRBPの役割は、経営者や事業責任者のパートナーとして、人事戦略の立案、実行を通じて事業成長をサポートすることです。

 

HRBP(戦略人事)と一般的な人事の違い

一般的な人事の役割は、人事制度の管理や維持、採用活動や人材育成などを行うことです。もちろん、HRBPや戦略人事においても、人事の制度設計や運用は不可欠です。

 

ただ、HRBPや戦略人事は、通常の人事と比べて、経営のパートナーとして「経営戦略や事業戦略と紐づけて、組織や人材戦略を設計していく」という点に、より比重が置かれます。

 

HRBPと労務の違い

労務の役割は、社員の労務管理や職場環境を整えることです。HRBPの業務範囲にも、労務管理が含まれる場合がありますが、HRBPと一般人事との違いと同じく、HRBPはより上位の概念から経営戦略や組織改革の手段として職場環境の設計などに携わることになります。

 

とくに事業戦略として必要な人材や組織特性を考えて、そこから評価制度や勤怠制度に落とし込んでいく・制度を改変していく点は、従来の人事や労務と異なる視点です。

HRBPが求められるようになった背景

HRBPは最近になって注目されるようになったポジションです。HRBPが求められるようになった背景には、次のような採用市場や社会の変化があります。

 

知識労働の普及

HRBPが求められるようになった背景には、IT技術やインターネットの発達にともなって、仕事が肉体労働から知識労働へと圧倒的にシフトしていったことがあります。

 

知識労働においては、組織を構成する人材の質、そして、人材を生かすコミュニケーションや組織風土などが、ビジネスの競争力であり、イノベーションをもたらすものとなります。結果として、今まで以上に「人事」の機能が経営に与える影響が大きくなっています。

 

人材獲得競争の激化

日本国内では、少子高齢化によって慢性的に労働市場は売り手市場化しており、さらに採用がグローバルになるなかで、優秀人材の獲得競争はますます激化しています。

 

そういった採用市場の変化に対応すべく、企業は自社にとって優秀な人材が誰かを定義して、採用して定着させるための取り組みを積極的に行うようになりました。採用難易度が増す中で、小手先の採用ノウハウだけでなく、事業戦略上の必要性と紐づいて給与制度やキャリア制度まで変えていく必要が生まれ、HRBPが注目されるようになっています。

 

社会環境の変化が激化したため

近年は、従来に比べて社会環境の変化が激しくなっています。例えば、新型コロナウイルスの影響は、ビジネスのオンライン化など働き方の急激な変革をもたらしました。今後もDXによる働き方の変革がどんどん進んでいくと考えられ、そうした激しい環境変化に対処していく人事のプロとして、HRBPが注目されるようになっています。

デイビット・ウルリッチが提唱するHRBPの4つの役割

  • 戦略実現のパートナー
  • 管理のエキスパート
  • 変革のエージェント
  • メンバーのチャンピオン

HRBPはアメリカ、ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ氏が提唱した概念です。ウルリッチ氏は、HRBPの役割を上記の4つに整理しました。

 

戦略実現のパートナー

企業の業績向上のための戦略を実現するパートナーとしての役割です。企業戦略・事業戦略を経営のパートナーとして共に作り、策定して事業戦略に基づいて、人事戦略を構築・実行することがHRBPに求められます。

 

管理のエキスパート

人事管理や労務管理のエキスパートとしての役割です。従来までの人事戦略や人事機能に求められていた役割であり、HRBPで策定したものを実務に落とすうえで欠かせない要素です。なお、HRBPは管理の実務作業ではなく、事業戦略実現の視点から効果的な人事制度や管理・運営の方針づくりなどを行うことになります。

 

変革のエージェント

組織改革を推進する役割です。HRBPは、組織に必要な変革を提案し、変革のための施策の設計・運用を進めます。変革の実現のために、必要に応じて経営層や各部署、現場の社員などと連携を取りながら、組織横断的に改革に取り組んでいく重要な役回りを担います。

 

メンバーのチャンピオン

経営層とメンバーの橋渡しの役割です。企業規模が大きくなるとメンバーと経営層の距離が遠くなるため、HRBPが双方の橋渡しの役割を担うことで、相互理解を促進します。

 

例えば、現場のメンバーが経営層に対して不満を持っているといった場合、HRBPがメンバーの意見や悩み、要望などをヒアリングし、経営層に適切な形でフィードバックや改善案の提案を行います。逆に、経営方針に基づく人事制度を設計して、経営のメッセージと共に浸透させていくことも大切な役割です。

 

HRBPが橋渡し役となり、経営層と現場双方の課題を解決することで、組織改革や経営戦略を実現していきます。

HRBPに求められるスキル

  • 経営者視点のビジネス感覚
  • 人事としての専門スキルと経験
  • 組織に関する知見や知識
  • 課題設定・解決能力
  • コミュニケーション能力

HRBPには、人事としての専門スキルはもちろん、それ以外にも複数の能力が求められます。

 

経営者視点のビジネス感覚

HRBPには、まず経営者視点のビジネス感覚が求められます。HRBPの役割は、経営戦略実現のための、人事戦略を構築・実行することです。そのため、企業の経営戦略を深く理解し、時には経営者と対等に議論することが求められます。経営戦略を実現するために必要な採用計画や組織改革なども経営者視点で考える必要があります。

 

人事としての専門スキルと経験

HRBPは人事のプロフェッショナルです。組織戦略を実際の人事へと落とし込んでいくために、当然、人事としての専門スキルと経験は必要不可欠です。すべての分野に精通する必要はありませんが、各分野の専門家・実務家と議論していけるだけの知識や経験は必要です。

 

組織に関する知見や知識

HRBPは組織に関する経営者や事業責任者のパートナーです。採用や評価といった専門スキルのもう一つ上位レイヤーとなる組織づくりやマネジメントに関する知見や知識を十分なレベルで身に付けている必要があります。

 

高度な課題設定・解決能力

HRBPは、経営戦略に基づき必要な人事戦略を考えます。その過程では、あるべき姿と、現状とのギャップである組織の課題を的確にあぶりだして、解決していくことが求められます。高度な課題設定能力、課題解決能力はHRBPが持つべき重要なスキルです。

 

コミュニケーション能力

HRBPは、経営層とメンバー、双方と密接にコミュニケーションを取る立場です。経営者とのコミュニケーションでは、経営層のビジョンや考えを人事戦略に落とし込むための高度なヒアリング力や提案力が求められます。また、現場のメンバーと信頼を構築して本音を引き出したり、組織横断的に組織改革を推進したりするのにもコミュニケーション能力は必要不可欠です。

HRBP導入を成功させるためのコツ

 

HRBPの役割を明確にして体制を整える
HRBPを経営層の対等なパートナーと位置付ける
他部署と連携する
部分的に取り入れる

 
HRBPの導入を成功させるためには、上記のポイントを押さえておきましょう。

 

HRBPの役割を明確にする

HRBPの導入を成功させるためには、役割を明確にしておくことが重要です。HRBPの役割は経営者や事業責任者のビジネスパートナーとして人事の側面から戦略を立案し、事業の成長を支援することです。

 

一方で、HRBPは、日本ではまだ馴染みの薄いポジションです。HRBPが通常のオペレーションを担う今までの人事責任者と実質的にはほとんど変わらないといった状況にならないために、HRBPに求める役割を明確にして体制を整える必要があります。

 

HRBPを経営層の対等なパートナーと位置付ける

HRBPは、経営層とメンバーの橋渡し役として、現場の声を経営層に届ける役割も担っています。HRBPが常に経営層の言いなりになっている状況では、前述の「メンバーのチャンピオン」としての役割は果たせていないことになります。

 

HRBPは、経営層の対等なパートナー、経営陣の1人として、現場の声を反映して意見や提案をすることが求められます。また、現場の声以外にも組織や人材という視点から経営戦略の立案にしっかりと携わっていくことが必要です。

 

他部署と連携する

HRBPにはこれまで以上に事業戦略と紐づいて、人事戦略を構築していくことが求められます。そのため、HRBPと人事部だけで人事戦略を構築・実行するのではなく、他部署と連携して組織横断的に進めることが重要です。特に各部門の幹部とは、事業戦略や組織の現状を高いレベルで討議・連携していく必要があります。

 

部分的に取り入れる

外部の人材をHRBPとして招聘した場合、既存の社員や人事部と足並みがそろえられない可能性があるため、注意が必要です。混乱を招かないように、いきなりすべての役割を任せるのではなく、一部を切り出して担ってもらうことが有効でしょう。

HRBPは人事の側面から企業の成長をサポートする重要な役割!

HRBPは、経営者や事業責任者のパートナーとして、人事戦略の側面から経営目標の達成や経営課題の解決をサポートする重要な役割を担います。

 

HRBPが注目されるようになった背景にある人材獲得競争や社会環境の変化は今後ますます進むでしょう。そのため、HRBPの重要性もますます高まると予想されます。現状の組織や人事制度などに課題を持っている企業は、HRBPの概念導入を検討してみることもおすすめです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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