コンプライアンス違反の事例5選|発生原因や企業が取るべき対処法を解説

更新:2023/07/28

作成:2022/08/25

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

コンプライアンス違反とは?|5つの具体事例から発生原因、対処法を学ぶ

コンプライアンスとは、法令遵守とも呼ばれ、企業が法律や社会的規範に従って行動することを意味します。コンプライアンス違反は、企業の信用や評判を失わせるだけでなく、罰金や損害賠償、営業停止などの法的制裁を受ける可能性もあります。近年、コンプライアンス違反に対する社会の目は今まで以上に厳しいものとなっており、企業にとっての大きなリスクとなっています。

 

記事では、コンプライアンス違反となった実際の企業事例を紹介するとともに、違反が生じる原因やコンプライアンス違反を起こさないため対処法を解説します。

<目次>

コンプライアンスとは?重要な要素3つ

コンプライアンスとは?重要な要素3つ

 

コンプライアンス(compliance)とは法令遵守を意味する言葉ですが、最近では法令以外にも、社会的な倫理観などを遵守することも企業に強く求められています。企業のコンプライアンスを考えるうえで重要な要素は以下の3つです。

  • 法令など
  • 社内規則
  • 社会倫理

 

法令など

法令とは国会によって制定された法律や、行政機関で制定された政令・省令等の総称で、地方公共団体の条例や規則を含んで用いる場合もあります。

 

業界団体による規則等、厳密には法令という言葉には含まれないものも含めて、「外部で定められた自分たちが守らなければいけないルール」として捉えるとよいでしょう。

 

社内規則

外部で定められた法令などに対して、自分たちで決めたものが社内規則です。

 

就業規則をはじめ、社内でのルールやマニュアル等の”従業員が遵守しなければならない取り決め”のことを指します。
就業規則は、常時10人以上の従業員を雇用している場合に作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないと労働基準法第89条の規定により定められています。

 

社会倫理

社会倫理とは、企業が社会から求められている倫理観や公序良俗の意識を指します。

 

法令に定められているわけではありませんが、自社の信頼を得るためには重要な要素であるといえるでしょう。明確に言語化されているわけではなく、時代によって価値観もそれぞれ異なります。

 

例えば、適切であったかどうかは別の話として、ひと世代前の勤怠管理やハラスメントは現代ほど厳しい社会倫理ではありませんでした。
しかし、時代とともに価値観が変化したことで、勤怠管理やハラスメントは法令違反以上に社会倫理に強く反するものとして、発生した場合には強く糾弾されることが増えました。

 

企業の社会的責任としてサプライチェーンまで含めた環境保護や人権保護が取り上げられたり、ジェンダーの多様性等が重視されたりするのも、この十数年で変わってきた社会倫理の一つだといえるでしょう。

いまコンプライアンスが注目されている理由

最近コンプライアンスが注目されている理由として、以下が挙げられます。

  • 企業による不祥事件数の増加
  • 企業の社会的責任に対する注目
  • 法律の改正
  • SNSの発達により、情報拡散が盛んになった

 

企業による不祥事件数の増加

1990年代から2000年代にかけ、企業の不祥事が次々に起こりました。発生件数が増えたというよりは社会倫理が変わったことで内部告発が増えたり、報道で大きく取り上げられたりしたという側面も強いでしょう。

 

のちほど詳しく紹介しますが、ベネッセホールディングスの顧客情報流出や東芝の粉飾決算などの不祥事はご存じの方も多いのではないでしょうか。こうした影響もあり、企業におけるコンプライアンスが重視されるようになっています。

 

企業の社会的責任に対する注目

前述したとおり、社会倫理が変化した背景は、時価総額何兆円というグローバル企業が誕生し、社会や生活に与える影響が大きくなったからです。
企業の持つ力が強くなったからこそ、企業が持つ社会的責任というものが改めて注目されるようになったといえます。

 

法律の改正

2000年の行政改革大綱の方針では、各企業にコンプライアンス体制の確立を促す法改正が盛んに盛り込まれています。例えば、公益通信者保護法、改正独占禁止法における課徴金減免制度の導入などです。

 

SNSの発達により、情報拡散が盛んになった

SNSの普及により、企業の不祥事やコンプライアンス違反が発覚しやすくなったことも理由の一つです。
企業のSNSアカウントで不適切な発言があると、すぐ炎上してしまうことからもわかるように、SNSには拡散力があり、一気に情報が広がります。

 

SNSの普及により、内部告発は一層手軽なものとなり、同時に、コンプライアンス違反が発覚した際に企業が受けるダメージも大きくなっています。これにより企業側でもコンプライアンスをより強く意識するようになっています。

なぜコンプライアンスを違反してしまうのか?

コンプライアンス違反が起こるおもな理由を説明します。

  • コンプライアンスに関する知識の不足
  • 組織風土に問題がある
  • 社内に違反を防ぐ仕組みがない

 

コンプライアンスに関する知識の不足

コンプライアンスに関する知識がないため、無意識に違反してしまうということがあります。企業の上層部や管理職がコンプライアンスに関する正しい知識を身につけていなければ、メンバーへの浸透も難しくなってしまうでしょう。

 

また、現場のメンバーに適切な知識がなく、さらにチェック体制も整っていないことが重なった結果、コンプライアンス違反が起こる場合もあります。
たとえば、著作権に関する正しい知識がないために、従業員がweb上の素材を勝手に引用してしまい、社内でのチェックを得ないまま外部に公開されてしまったなどのケースなどです。

 

組織風土に問題がある

組織としてコンプライアンス違反を見逃したり、目をつぶったりする場合もあります。
例えば厳しすぎるノルマ設定により、違反だと知っていながらもメンバーが不正を行なってしまったというケースです。

 

従業員個人だけの責任ではなく、目標設定や評価に関するマネジメント等の組織風土に問題があるといえるでしょう。

 

社内に違反を防ぐ仕組みがない

コンプライアンス違反を防ぐ仕組みがなければ、知識不足や甘い考えによる違反が行なわれやすくなってしまいます。コンプライアンス違反を防ぐシステムおよび管理体制の構築等も重要です。

コンプライアンス違反で生じるリスク

コンプライアンス違反で生じるリスクを、組織としてのリスクと違反した従業員個人としてのリスクに分けてそれぞれ紹介します。

 

組織としてのリスク

企業がコンプライアンス違反をした場合に生じるリスクには下記のものがあります。

 

 □行政処分や刑事罰
 □損害賠償
 □企業イメージの棄損
 □メンバーの離職
 □投資者・出資者離れ

 

行政処分とは業務改善命令や業務停止処分のことです。最悪の場合、すべての業務が行なえなくなり、メディアでも行政処分を受けた企業として報道されます。

 

また、脱税や粉飾決算等が発覚すれば刑事事件に発展し、経営者や従業員が逮捕されることもあり、罰金や懲役といった刑事罰を受ける可能性も十分にあります。

 

コンプライアンス違反で消費者に被害が及んでしまった場合、損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。
また、経営陣は、コンプライアンス違反で株価が下がった、業績に悪影響が生じたなどの理由で株主代表訴訟等を起されることもあります。

 

企業の社会的責任を追及する風潮が強まりを見せるなか、コンプライアンス違反は大きく報道されることが多く、SNSでの拡散等も相まって企業イメージは大きく棄損されるでしょう。

 

特に“製造業における品質検査に関するコンプライアンス違反”といった本業に直結する違反は、企業の信頼性に対するダメージは大きく、売上にも深刻な影響を与えかねません。

 

また、コンプライアンス違反は従業員のエンゲージメント低下やモチベーションダウンを生み、離職にもつながります。
企業イメージが棄損されると、既存メンバーの離職が増えるだけでなく、SNSでの拡散等の影響もあり、今後の採用活動も難しくなってしまいます。

 

投資者や出資者は、企業のコンプライアンス違反を特に敏感にチェックしています。大きな問題にならなかったとしても、リスクを回避するために株を手放し、離れてしまう可能性があるのです。
また、出資契約にコンプライアンス違反等に関する条項が盛り込まれている場合もあります。

 

違反した従業員個人としてのリスク

個人が違反した場合のリスクには下記のとおりです。

  • 謹慎
  • 減給
  • 懲戒解雇
  • 刑事罰

謹慎・減給は社内処分です。謹慎とは就労を一定期間禁止する処分で、謹慎期間中は無給となります。期間は1週間〜1か月程度で、謹慎期間は勤続年数にも含まれないのが一般的です。また、給与から一定額を差し引くのが減給です。

 

懲戒解雇は社内における最も重い処分で、企業側が労働契約を一方的に解約する処分です。退職金等も支給されない場合があります。

 

また、コンプライアンス違反でも、法令違反で重い過失や故意があれば、法人だけでなく個人が刑事罰に問われるケースもあります。

コンプライアンス違反の具体事例

実際に起きたコンプライアンス違反の具体例を解説します。

 

不正会計:東芝での粉飾決算

証券取引監視委員会への内部通報により、東芝の不適切会計が発覚した事件です。株主から経営陣に対して損害賠償を求める訴訟が起こされ、原告数は約450人、請求額は総額約19億円にのぼりました。

 

労働環境:電通での従業員の自殺

電通は2015年10月から12月の間、従業員4人に対して労使間協定(36協定)で定めた1か月の残業時間の上限を約19時間超えて労働させたとして、東京簡裁に略式起訴されました。
この件は、もともと新入社員の女性が過労自殺したことが発端となったものです。

 

略式起訴では、異例ともいえる形で通常の公判手続が行なわれ、被告人である株式会社電通の社長が出廷しました。
裁判の冒頭陳述では、2014年度に全社で毎月1,400人前後にものぼる従業員が、労使協定の上限を超える違法残業をしていたことが指摘されました。

 

衛生管理:不二家での賞味期限切れ原料の使用

不二家では社内規程の賞味期限を過ぎた牛乳を使用してシュークリームを製造していたことが内部告発され、大きく報道されました。
食品衛生管理の不備も判明し、製造販売の休止を余儀なくされ、大阪府所在の工場は、保健所から食品衛生法に基づく業務改善命令を受けました。

 

著作権侵害:東京リーガルマインドでのソフト不正コピー

東京リーガルマインドでは、組織的にソフトウェアの不正コピーを行なっていたことが発覚しました。
この件では、アップルコンピューター、アドビシステム、マイクロソフトに対する著作権侵害を理由として、8,400万円もの損害賠償を命じられました。最終的には社内コンプライアンスを徹底することなどを内容として、当事者間での損害賠償と和解が成立しています。

 

情報漏洩:ベネッセホールディングスでの顧客情報漏洩

ベネッセホールディングスがシステムの保守を委託した会社の派遣従業員がデータを売却し、約2,000万人を超える顧客情報の漏洩が発覚しました。ベネッセは被害者でもあり、犯人は逮捕されましたが、企業としての信頼を失い、深刻な顧客離れに発展しました。

コンプライアンス違反を防ぐ対策方法

コンプライアンス違反を防ぐ対策方法

 

コンプライアンス違反を減らす対策として、以下の方法が考えられます。

  • 自社が抱えるリスクの把握
  • 必要知識のインプット
  • 社内規定の策定と対策の仕組み化
  • 相談窓口の開設

 

自社が抱えるリスクの把握

他社のコンプライアンス違反の事例を参考に、自社で生じる可能性があるものをピックアップし、リスクを把握しておきましょう。事業内容などを基準に、起こる可能性の高いもの、発生時の損失が大きいものから優先的に対策を講じることが大切です。

 

必要知識のインプット

コンプライアンス違反を防ぐためには、社内全体でコンプライアンスに注意する必要があります。
従業員のコンプライアンス違反は、目先の小さな利益にとらわれてしまうなど、すこしの気の緩みで生じてしまうものです。

 

法令等の知識や違反時のリスクをきちんとインプットすることも重要であり、外部研修や定期的な注意喚起を通じて、従業員の意識を高めることが大切です。

 

社内規定の策定と対策の仕組み化

コンプライアンス意識を高めるためには、社内規定を策定してメンバーに周知することも有効です。規定は適宜修正しながらコンプライアンス違反を防げるように、ルールや仕組みをブラッシュアップしていくとよいでしょう。

 

なお、コンプライアンス違反を防ぐことが非常に重要ですが、違反を防ぐことだけを考えすぎて現場の業務に支障が出てしまうのも本末転倒です。業務効率等にも配慮しながら、仕組みでコンプライアンス違反を社内で防げるようにする必要があります。

 

相談窓口の開設

コンプライアンス違反の芽を早めに摘み取るためには、違反の可能性が発覚した際に報告できる相談窓口を開設することも重要です。

 

窓口があることで、問題が上層部に報告されずに埋もれてしまうリスクを回避できます。コンプライアンス違反を起さないと同時に、重大な倫理違反として社会に拡散される前に、社内で自浄できる環境を整えましょう。

まとめ

本記事では、コンプライアンス違反となった実際の企業事例の他、違反が生じる原因やコンプライアンス違反を起こさないための対処法を解説しました。

 

一度でもコンプライアンス違反を起こしてしまうと、築いてきた取引先や顧客、社会からの信頼をあっという間に失い、経営に大きな影響が出ます。

 

コンプライアンス違反を防ぐためには、正しい意味と自社の抱えるリスクをしっかり把握し、従業員に正しい知識を周知することが大切です。

 

また、人は弱い生き物である側面もありますから、気の緩みや目先の誘惑に流されそうな時、コンプライアンス違反できない社内の仕組みを整備することも大切です。

 

記事で紹介した対策法なども参考に、コンプライアンス違反によるトラブルを未然に防ぐ環境を整えてください。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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