人的資本経営とキャリア自律の関係
まずは人的資本経営とキャリア自律がどういった関係にあるかを確認します。
人的資本経営とは?
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげる経営のあり方です。
これまでの「正解」があった時代の経営においては、人材は「資源」と捉えられ、いかに人材を効率よく活用しながら正解にたどり着けるようにするかが重視されてきました。仕事の多くは標準化・定型化され、定められた手順に従ってやれば誰でも同じような成果を出せました。
ところが、生成AIも登場する中では、こうした機械的に実行可能、定型の知識労働はAIへの置き換えが進んでいます。人材を資源として捉えて効率よく仕事を処理させようとする考え方では、AIとの競争にはついていけません。
今後、人間はAIにはできない創造的な仕事、高度な知識労働や感情に寄り添うような仕事が求められます。また、企業も激しい競争を生き残っていくためには、いかにイノベーションを生み出していくのか、ファンを作るのかが重要になっています。
これからの時代に、企業にとって従業員は新たな価値を生み出す「資本」であり、そのような「高い付加価値を生み出していける人材がどれだけ多くいるか?」が企業の将来を左右します。企業が継続して価値を高めていくためには、人を資本として捉えて高付加価値型の経営を実現していく「人的資本経営」の考え方が大切になってきます。
人的資本経営を実現させるためには、従来の上からの指示・監督を中心とした指示命令型のマネジメント手法から、メンバーの個性や能力を尊重して主体的な行動を促していく価値共創型のマネジメント手法への切り替えが必要となってきます。
価値共創型のマネジメントを実現する上では、上からの指示命令で従業員を動かすマネジメントでは上手くいかず、従業員一人ひとりに寄り添い、その成長と成功をサポートすることが大事になってきます。
そのような一人ひとりの可能性を引き出すマネジメント手法として注目されているのが、ピープルマネジメントです。人材を資本としてその価値を最大限に引き出すためには、一人ひとりと向き合いエンゲージメントを高めるピープルマネジメントの手法も重要になってきます。
キャリア自律とは?
キャリア自律とは、個人が主体となって自身のキャリアビジョンを描き、キャリアビジョンの実現に向けて継続的に学習、行動していくことです。
日本における終身雇用と年功序列の人事慣習は、ほぼ完全に崩壊したと言えるでしょう。キャリア形成の中で転職することは当たり間となりました。また、IT化やAI普及に伴って、仕事は分業化し、より高度な知識や専門的スキルを求められるようになりました。そして、成果主義とジョブ型雇用を導入する企業が増えています。
こうした時代変化の中で、労働者ひとりひとりが自分のキャリア形成と向き合って行動していかなければ、キャリアの安全性が保てません。
個人のキャリア形成やキャリア安全性への関心が高まる中で、企業にとっても従業員のキャリア自律を支援することは、ワークエンゲージメントを向上させ、優秀な人材を引き留めておくためには必要な不可欠なものとなりました。
キャリア自律は人的資本経営に必須
人材を資本と捉え、人の価値を最大限に引き出していくためには、従業員一人ひとりが主体性を持って自ら考え行動することが大切になります。
従業員の主体性を引き出すためには、「この会社で今の仕事をしている」意味を従業員一人ひとりが自覚することが大切です。自らのキャリアにとって、今の仕事に取り組むことが意味あると思うからこそ、仕事と向き合い、自ら考え行動するようになります。
とくに今後、労働者に求められる高い創造力、ソリューション提案、感情労働などにおいては、これまで以上にワークエンゲージメントやモチベーションが仕事のパフォーマンスに直結してきます。そうしたエンゲージメントの高い状態を実現させるためにも、従業員一人ひとりが自分の意思を持って仕事に取り組めるようにすることが大事です。
会社のミッションやビジョン・バリュー浸透も大切ですが、自分のキャリアビジョンと今の仕事がどうつながっているかという個人にとっての納得感が大切です。これを生み出すために、キャリア自律が必要不可欠となります。
従業員のキャリア自律を促すことがワークエンゲージメントの向上に役立ち、さらに主体性や創造力が発揮できるようになっていくことで人的資本経営の実現につながります。











