採用面接では、「スキルフィット(保有能力・業績など)」と「カルチャーフィット(人となり・価値観など)」の両立が不可欠です。しかし、カルチャーフィットはスキルフィットと比べると、面接の判断基準として精緻な言語化が難しいものです。また、応募者の人となりや価値観を見抜くうえでも応募者の言葉(言語情報)だけで判断できないことも多く、面接官の直感や経験側に依存する場面が少なくありません。
本記事では、応募者の人となりや価値観といった定性面の本質を見極める3つのポイントを、非言語=ノンバーバルコミュニケーションの観点から整理しました。
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<目次>
- ノンバーバルに注目すれば、採用の“精度”が上がる
- ノンバーバルとは何か?
- 【1】表情と視線──緊張だけではない「視線の意味」
- 【2】姿勢と身体の使い方──信頼のある人は“動き”が違う
- 【3】沈黙と間──回答以外にこそ見える“本音の揺らぎ”
- ノンバーバルを取り入れた面接官トレーニングのすすめ
- 「うまく話す人=誠実な人」とは限らない
- 著者
ノンバーバルに注目すれば、採用の“精度”が上がる
相手の話している言葉の内容だけで、その人のすべてを知ることは難しいものです。言葉は整っていても、そこに自信があるか、実感が伴っているか、嘘がないかは、言葉の「外側」に現れます。
面接における応募者の視線や表情、姿勢、話すスピードや間の取り方等のノンバーバル(非言語)な情報は、無意識のうちに面接官にも伝わり、「なんとなく良い印象」「なんだか違和感がある」といった感覚を生み出します。
今の時代は、応募者も面接対策をして「正解っぽい回答」を準備してくることが当たり前です。だからこそ、言葉の中身だけでなく、“どう”話しているか、話していないときに“何”が出ているかといったノンバーバルに注目することで、より本質的な見極めが可能になります。
ノンバーバルとは何か?
面接で見落とされがちな“もう一つの情報”
ノンバーバルとは、「言葉以外の要素」のことです。視線や表情、ジェスチャー、姿勢、声のトーンや話すスピード、呼吸の深さなど、私たちが無意識に発している“態度”や“空気”を含みます。
たとえば、自信がある人は視線が安定していたり、姿勢が自然だったりします。逆に、何かを隠そうとしていると、声のトーンが不自然になったり、手が落ち着かずに動いたり、必要以上に沈黙が長くなったりしがちです。
面接では「話の内容」に集中しがちですが、言葉以外の“もうひとつの情報”、相手のノンバーバルを意識することで、面接官の観察力はぐっと高まります。次章から、面接で着目するべきノンバーバルを3つの視点を紹介します。
【1】表情と視線──緊張だけではない「視線の意味」
視線は、その人の内面が表れがちなノンバーバルのひとつです。
話の途中で視線をそらすこと自体は珍しくありませんが、その頻度やタイミングには理由があります。たとえば、思い出しながら話すときの一時的な目線の移動と、「この質問には答えたくない」と感じたときの視線の逃げ方は、全く異なります。
例えば、一時的な目線の移動は「記憶を検索している自然な動き」、逃げの視線は「質問を回避したい防御反応」です。
記憶を検索している目線
例)一瞬だけ上や斜め上に視線が移動し、1〜2秒以内に相手の目に戻る。
回避・防御の目線
例)質問を受けた瞬間に視線が下へ落ち、その後もしばらく相手と視線を合わせず左右に泳ぐ/まばたきが急に増える。
また、語る内容と表情が一致しているかも重要なサインです。成功体験を語っているのに表情が沈んでいたり、笑顔のはずなのに目が笑っていなかったりすると、そこに“感情と一致しない”違和感が残ります。そこから発言と本心の間にギャップがある可能性があるということが伺えます。
オンライン面接では、画面越しに表情や目線が読みづらくなります。応募者が意識的にカメラを見るか、表情が固まりすぎていないかなど、対面以上に注意深く観察する必要があります。
オンライン面接でカメラを意識して喋ることは普通ですが、過度に意識的に見ている人は「自己開示意識や誠実さが高い」傾向にあったり、また表情が固まりすぎている人は「強い緊張や発言内容への自信不足がある」傾向にあります。
【2】姿勢と身体の使い方──信頼のある人は“動き”が違う
姿勢や身体の動きも、その人の状態をよく表しています。
話すときに軽く前傾する状態は、話している内容に関心や共感の姿勢があることが多く、逆に深く前に傾きすぎていたり、極端に後ろに引いていたりする場合は、防御的だったり、相手との距離を取りたい気持ちが出ているかもしれません。
手の位置も同様です。テーブルの上や胸の下あたりで落ち着いていれば安心感がありますが、手を隠したり、頻繁に動かしたりする様子があれば、緊張や不安、もしくは「言いにくさ」を抱えている可能性があるでしょう。
ジェスチャーも「量」ではなく「自然さ」が大切です。大きく手を振りすぎていないか、逆にまったく動かずに固まっていないかを見てみましょう。
ジェスチャーが大きすぎる場合に読み取れるサイン(例)
- 高揚や興奮による交感神経の活性化で、動きが必要以上に拡大している
- 自己アピール・主導権を取りたい気持ちが強く、相手に「注目してほしい」という無意識のシグナルを送っている
- 緊張をエネルギーとして外に逃がす代償行動(hand-fidgetingやfoot-tappingと同じカテゴリー)
ジェスチャーがほとんど無い/固まっている場合に読み取れるサイン(例)
- 不安や防御姿勢から身体を「小さくまとめる」ことで、相手からの視線を減らそうとしている
- 認知的負荷(質問内容が難しい・嘘を考えている等)で身体を動かす余裕がなく、筋緊張が高まっている
- 支配-被支配の構図で「受け身」になり、自発的なジェスチャーが抑制されている
【3】沈黙と間──回答以外にこそ見える“本音の揺らぎ”
面接の中で生まれる沈黙や「間(ま)」にも、多くの意味が詰まっています。
質問に対してすぐに答えが出る場合、経験豊富だったり準備していたりした内容かも知れませんが、表面的にまとめただけの答えである可能性もあります。逆に、沈黙が長い人は、「どう言えば誠実に伝わるか」を丁寧に考えている可能性もあります。
大切なのは、沈黙の長さだけを見ないことです。
質問がどれくらい答えやすい・答えにくい内容か、回答がこれまでの会話の流れと一貫しているか、沈黙中の表情や姿勢が落ち着いているかどうか、そうした“文脈”と組み合わせて判断することが大切です。
オンライン面接では、回線のラグと混同されがちですが、面接官は意識的に「2〜3秒の静けさ」をつくってみると、応募者の目線や口元、呼吸の変化に気づきやすくなります。
ノンバーバルを取り入れた面接官トレーニングのすすめ
言語情報だけでなく、応募者のノンバーバルな反応も意識するようになると、面接の観察精度は確実に上がります。そのためには、ノンバーバルにおける評価基準を面接官同士で共有し、チェックリストとして明文化していくことが効果的です。
たとえば、「視線が安定しているか」「姿勢が崩れていないか」「間が自然かどうか」といったポイントを面接の振り返りで確認するだけでも、感覚的な評価が少しずつ構造的になります。
さらに、録画を活用したロールプレイや、AIによる視線トラッキング・表情解析などのツールも、観察の補助として役立ちます。最終判断は人間が行うにしても、人となり等の判断に関してチェックリストでの明文化やツール等の視点を加えていくと、面接が“個人の主観”から“組織としての観察”へと進化していくのです。
「うまく話す人=誠実な人」とは限らない
応募者が語る言葉の奥には、ノンバーバルに宿る“本音”が潜んでいます。
表情・姿勢・沈黙などの非言語シグナルには、言葉だけでは汲み取れないリアルな情報がにじみ出るものです。面接官がこうしたサインを理解し、言葉と合わせて読み解けば、「この人はどんな人物か」「自社のカルチャーと本当にフィットするか」をより的確に判断できます。
さらに、ノンバーバルを意識して観察する姿勢は、「あなたを総合的に理解したい」という誠実なメッセージとして応募者にも伝わります。結果、応募者は安心して等身大の自分を示しやすくなり、面接官は偏りの少ない情報を得られる――双方にとって無駄のない、相互理解が進む面接時間が実現するのです。
*参考:
type女性の転職ー「カルチャーフィットとは?面接での見極め方や質問例を解説!」
somalicoー「言葉だけじゃない!面接官を惹きつける非言語コミュニケーションのテクニック」
バイトルマガジンー「Web面接で目線は面接官の顔とカメラ、どっちに向ける?」
0円就活ー「身振りで差をつける!非言語コミュニケーションで面接成功へ」
note/道川龍澤|キャリア相談×転職支援ー「【面接の沈黙】どう乗り切る?焦らず落ち着いて答えるための思考法」






