株式会社マーキュリー|内定承諾率61.5%を実現。“推し活面接”に見る評価設計の再構築

更新:2026/03/30

作成:2026/03/20

推し活採用に見る評価設計の再構築

少子高齢化や売り手市場を背景に、新卒採用の難易度は年々高まっています。また面接の定番である「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」や「自己PR」等の質問に対して、いまの学生が生成AI等を用いて“企業に評価されそうな模範解答”を準備するため、学生本人の熱意や人柄が見えづらいという課題も顕在化しています。

 

本記事では、多くの企業が抱える採用課題に向き合い、内定承諾率61.5%の成果を実現した株式会社マーキュリーの「推し活採用」について、具体的な取り組み事例を伺いました。

 

<目次>

『推し活採用』とは?

「推し活採用」は、学生に自身の“推し”について語ってもらう「推し活面接」を取り入れた新卒採用施策です。

 

面接では、従来の「ガクチカ」や「自己PR」といった形式ばった質問はありません。“推し”のジャンルは問わず、アイドル、芸人、アニメ、スポーツ選手、俳優など、学生が本気で応援している対象について、

  • なぜ好きになったのか
  • どのような行動をしてきたのか
  • どんな想いで応援しているのか

などを語ってもらいます。

 

私たちが見ているのは「推しの種類」ではなく、「好きなものにどれだけ本気で向き合い、行動してきたか」といった姿勢です。従来の「ガクチカ」では見えづらい、熱意や人柄にフォーカスをあてています。

 

『推し活採用』を導入した背景

画一化が進む就職活動市場の中で、自社らしい差別化を図りたいという思いがありました。

 

就職活動の面接は、どの企業でもお決まりで「自己PR」や「ガクチカ」が問われます。多くの学生が、“企業に評価されそうなエピソード”を用意し、“正解らしい回答”を選んでしまう現状に、違和感を抱いていました。

 

また私自身が面接担当する中で、従来の形式が、面接への苦手意識やモチベーションの低下につながっている現実も目の当たりにしてきました。

 

「推し活面接」では「ガクチカ」や「自己PR」を用意する必要はなく、自身の「好き」という肯定的な感情を出して臨めるので、面接へのハードルがぐっと下がるのではと考えました。実際に、説明会参加後の選考予約率は通常選考が75.7%だったのに対し、「推し活採用」では92.5%と飛躍的に向上しています。

 

また、若年層のトレンドでもある「推し活」を採用の切り口として取り入れることで、自社らしさを出せると同時に、学生の目に留まりやすくなるだろうという算段もありました。

 

新卒採用では、コロナ禍からの経済回復や少子高齢化による慢性的な人手不足を背景に学生の売り手市場は年々強まっており、他社と同じことをしているだけでは、学生に選んでもらえないと感じていました。

 

『推し活採用』の設計

私たちが本当に知りたいのは、その学生の行動原理や価値観の根幹という本質の部分です。そうした本質をとらえる手がかりの一つが、若年層の間で一般化している「推し活」です。

 

「推し活」は、単なる趣味や娯楽ではありません。限られた時間や資金を自ら配分し、情報を収集・発信し、時にはコミュニティの中で役割を担いながら継続していく、きわめて主体的な行動です。

 

そこには、

  • 情報収集力
  • 発信力
  • コミュニティ形成力
  • 継続力
  • 自己投資力

といった、ビジネスにおいても再現性のある行動特性が表れます。

 

私たちは「何を推しているか」ではなく、「どのように推し続けてきたか」に着目しています。“好き”への向き合い方こそが、その人の行動原理を映し出すと考えているからです。

 

『推し活採用』の設計

 

1.評価観点の言語化

話題性だけの施策にしないため、評価軸を明確に定義しました。

  • 共感力(話の中に自然と共感や「応援したくなる気持ち」が生まれたか)
  • 熱量(“推し”への思いや夢中になっている気持ちが、言葉や態度から伝わったか)
  • 表現力(自分の言葉でわかりやすく、具体的に“好き”を語れていたか)

これらを通常選考の評価項目と接続させています。

 

2.通常選考との接続設計

「推し活採用」は“特別枠”ではなく、通常選考と並行して実施しています。学生自身が「推し活採用」か「通常選考」かを選択できる設計にしました。

 

選択式にした理由は、推し活を無理に語らせるものではなく、自分らしさを最も表現しやすい方法を選んでほしいといった思いからです。なお、最終的な評価基準は通常選考と統一しており、あくまで“入り口”が異なるだけの設計としています。

 

3.面接フローの構造化

単なる「推しの雑談」で終わらせないため、面接時間の使い方を明確に区切りました。具体的には、前半5分を「推し語りタイム」、中盤10分を「推し活の深掘り」としたうえで、後半15分で「就業への接続(就活ヒアリング)」へと切り替える構成にしています。

 

「推しへの向き合い方」を「仕事への向き合い方」にリンクさせることで、スムーズにビジネス適性の見極めができるように工夫しました。

 

4.学生に届けるための情報発信

どんなに良い企画でも学生に伝わらなければ意味がありません。そのため、特設サイトを開設したほか、社員が実際に『推し活面接』に臨んでいるデモ動画を制作しYouTubeにアップするなど、広報チームとも連携して「どんな面接なのか」が可視化しわかりやすく伝わるよう工夫しました。

 

学生に届けるための情報発信

 

『推し活採用』で苦労した点

社内理解の醸成と「話題作りでは?」の懸念払拭

特に苦労したのは、社内への説明です。

 

「推し活」というテーマはアイスブレイクとしては馴染みがあるものの、選考となると「それをどうやって評価に結びつけるのかイメージが湧かない」「単なる雑談や話題作りで終わるのでは?」といった懸念の声も多く挙がりました。

 

しかし私自身は、「自分の好きなものを熱量を持って語るエネルギー」は、当社のメインである営業職や、相手に何かを提案する仕事に必ず活かせると確信していました。そのため、単なるユニークな採用手法といった位置づけではなく、「本質を見るための入り口設計」であることを、採用部門や現場の面接官に何度も共有しました。

 

評価の定量化と面接官トレーニング

評価の定量化と面接官トレーニング

 

面接官から「自分の全く知らないジャンル(例えばマイナーなアニメや生き物など)の話が出た時に、どう評価し深掘りすればいいのか」「推し活と選考を結びつけるのが難しい」といった不安の声もありました。

 

「推し活」というテーマ自体はアイスブレイクとしては馴染みがあるものの、それをどのように評価へ接続するのかという具体的なイメージが社内で共有されていなかったことが、最初の壁でした。単なる雑談で終わらせるのではなく、学生のどこを見て何を評価するのか。この共通認識がなければ、選考として成立しません。

 

そこで面接官向けの研修を実施し、「熱量・表現力・共感力」といった具体的な評価基準を設けるとともに、

  • 自分が知らないジャンルの「推し」に出会う前提を持つこと
  • 話の内容ではなく、行動やプロセスに目を向けること
  • いかなるテーマであっても絶対に否定せず、興味をもって前向きに聞く姿勢

を繰り返し共有しました。特に強調したのは、「テーマ理解ではなく姿勢評価に軸足をおくことを徹底する」というスタンスです。

 

学生との期待値調整(ミスマッチ防止)

「推し活採用」というキャッチーなネーミングゆえの苦労もありました。学生から「採用のハードルが低そう」「面接で本当に真面目に評価してもらえるのか」と不安に思われてしまったり、「推し活を応援してくれる会社=土日休みが多く、いつでもライブに行ける」と就業条件を誤解されてしまうリスクです。

 

そのため、面接の後半では必ず通常の就活ヒアリングの時間を設け、「推しへの向き合い方」を「仕事への向き合い方」にリンクさせて話すことや、実際の働き方(シフト制など)についても包み隠さず丁寧に説明し、入社後のギャップを防ぐよう努めました。

 

『推し活採用』に対する学生の反応

学生からは、

  • 「初めて本音で話せた選考だった」
  • 「リラックスした雰囲気で、自分の強みをアピールすることができた」
  • 「楽しく面接に臨めた」

といった声が多く寄せられました。

 

また、通常選考と比較して、面接時の表情や言葉の熱量が明らかに違うと感じています。印象的だったのは、“評価される場”だった就活が、“自分を肯定してもらえる場”に変わったという反応です。

 
「マーキュリーのことは知らなかったが、『推し活採用』というキーワードに惹かれて応募した」という学生も一定数見られました。従来の母集団形成とは異なる層との接点を生み出せている点は、本施策の一つの成果だと捉えています。

 

面接官の反応

導入後に実施した面接官向けアンケートでは、「学生が自分らしさを出せる場になっていた」「自社らしさを伝えられた」に100%が肯定的に回答し、非常に高い評価を得ました。

 

具体的には、

  • 学生が活き活き話すため、個性や人柄が立体的に見える
  • 従来の面接に苦手意識を持っている学生でもアピールしやすく、緊張がほぐれやすい
  • 「何かを追求し、他者に魅力を伝える熱量」は、当社の営業(セールス)職との親和性が高いと感じる

といった声が上がっています。特に、「入社後にどう活躍するか」のイメージが持ちやすくなった点は大きな変化でした。

 

「推し活採用」の効果

説明会参加後の選考予約率は、通常選考では75.7%だったのに対し、「推し活採用」では92.5%を記録しました(推し活選考希望者40名のうち37名が選考予約)。

 

これは、説明会の段階で企業理解や選考への納得感が高まり、「とりあえず受けてみる」ではなく、「ぜひ進みたい」という前向きな意思を持った学生が増えた結果だと考えられます。推し活面接で説明会から次のアクションまでの心理的ハードルが下がり、スムーズに選考へ進む動きが生まれました。

 

さらに、内定承諾率にも大きな変化が見られました。通常選考では15.8%だったのに対し、推し活面接を経た学生の内定承諾率は61.5%(内定者13名のうち8名が承諾)へと向上しました。

 

推し活というテーマを通じて自身の価値観や原体験を言語化しながら選考を進めたことで、企業との相互理解が深まり、「なんとなく内定をもらった」ではなく「ここで働きたい」と納得して意思決定をする学生が増えた傾向が見られました。

 

主要指数のグラフ

 

『推し活採用』を通して得られた手応え

推し活採用を通して強く感じたのは、学生は一方的な「評価」よりも、自分の個性や価値観への「理解」を求めているということです。 面接の場で好きなものを本音で話せる設計にしたことで、学生の緊張がほぐれ、面接官との心理的距離がぐっと縮まるのを感じました。

 

また、採用側の大きな手応えとして、「自分の好きなものを熱量を持って語るエネルギー」は、当社のメイン業務である営業(セールス)や、誰かに何かを提案する仕事にそのまま活かせるという発見がありました。 「何かに夢中になり、その魅力を他者に伝える力」は立派なビジネススキルです。

 

それを従来の「ガクチカ」中心の面接とは違う、学生が最も輝く角度から引き出せたことは大きな収穫でした。本音で語り合えるからこそ、結果として企業理解も深まり、それが「内定承諾率61.5%」という非常に高いマッチングの成果にも繋がっているのだと思います。

 

「推し活」というキャッチーな入り口ではありますが、本質は変わりません。採用は企業による「選抜」ではなく、対等な「相互理解のプロセス」であるという確信を得ることができました。

 

今後の新卒採用の展望、課題

『推し活採用』は、確かな手応えを得られたため、2027年新卒でも本選考がオープンする3月のタイミングから継続して実施する予定です。2026新卒と同様に、まずは共通の会社説明会に参加していただき、その後に「推し活面接」か「通常選考」かを選択できるフローを想定しています。(2026年2月インタビュー時点)

 

一方で、今後の明確な課題も見えてきました。それは、学生との「期待値調整」と「業務理解の促進」です。 現場の採用担当者からも懸念点として挙がったように、「推し活採用を実施している会社=土日休みが多い、いつでもライブに行ける」といった条件面での認識のズレや、「採用のハードルが低そう」というイメージを持たれてしまうリスクです。

 

真面目に評価されるのかという学生の不安を払拭しつつ、入社後の「思っていたのと違う」というギャップを防ぐためには、評価基準をより丁寧に説明し、当社の実際の働き方や業務内容への落とし込みをこれまで以上にしっかり行っていく必要があります。

 

また、『推し活採用』を単なる“面白い採用手法”で終わらせるつもりはありません。 入社してくれた社員が、入社後も自分の「好き」を大切にし続けられるよう、推し活を応援する社内制度作りも少しずつ形にしていきたいと考えています。

 

今後は、推し活採用経由で入社した社員の活躍データの蓄積や、面接時の評価と入社後のパフォーマンスの相関分析を進め、施策の再現性とスケール設計を強化していきます。

 

一人ひとりを型にはめずに捉え、学生が持つ可能性を最大限に引き出す。当社の「社会と人をつなぎ『すべての人』の可能性を広げる」というミッションを体現する思想として、この取り組みを定着させることが私たちの次のテーマです。

 

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