採用と内定の違いとは?|意味の違いや通知書の位置づけ、トラブル事例と注意点を解説

更新:2023/10/06

作成:2023/10/06

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

採用と内定の違いとは?|意味の違いや通知書の位置づけ、トラブル事例と注意点を解説

採用活動は「マーケティング」や「営業活動」であるとよく言われますが、そのなかで内定~入社までのフェーズでは、雇用契約に関する基礎的な法律的な知識を身に付けておく必要があります。

 

とくに内定と内々定の違い、内定通知書と労働条件通知書の違い、いつ時点で雇用契約が成立するかといったことは押さえておかないとトラブルの原因にもなりかねません。

 

記事では「内定」という言葉の意味や位置づけや、「採用通知書(内定通知書)」のあり方、内定を出すときの注意点、内定を出す際に発生しがちなトラブルと回避策まで幅広く解説します。

 

 

<目次>

採用と内定の違いとは?

まず「内定」とは何かをきちんと確認しておきましょう。初歩的な話ですが、意外とWeb上の解説記事などが誤っており、誤解されている方もいらっしゃいます。

 

「内定」とは?

「内定」という言葉ですが、2つの意味で使われることがあり、それが誤解の原因となっています。

 

1つめは企業が応募者に内定を出し、それに対して応募者が承諾した、いわゆる「内定承諾」した状態です。

 

企業が応募者に出した内定通知が、雇用契約を締結する上で通知が必要な情報、いわゆる「労働条件通知書」となっている場合には、応募者が内定承諾した時点で雇用契約・労使契約が成立したものと見なされます。

 

雇用契約ですので、法的拘束力も発生しており、企業が内定を取り消すのは、解雇と同じ扱いになりますので注意が必要です。

 

なお、新卒採用の場合には内定承諾から実際の入社まで数カ月単位で期間が空くこともあるため、通常の労働契約と区分する意味で、「始期付解約権留保付労働契約」であると解釈されています。

 

そして、もう1つの内定が「内定を出す」などという場合の内定です。この場合の内定は、内定承諾などの手前段階であり、「応募者がすべての選考に通過して、企業としての正式な採用意思を伝える」という意味で使われます。

 

内定通知の際には待遇なども提示することが一般的ですが、内定通知が「労働条件通知書」を兼ねるものになっているか(承諾によって雇用契約・労使契約が成立するか)は、内定通知書の記載内容によって異なります。

 

ただし、内定通知が労働条件通知書を兼ねるものになっていない場合でも、事前に一定の募集要項を示し、選考を経たうえで企業として採用意思を提示する以上、安易に取り消すことはできず、解雇に準じるような正当で合理的な条件がなければ、内定を取り消すことはできないと解されています。

 

「採用」通知とは?

採用通知は、基本的には内定通知と同じもので、応募者がすべての選考プロセスに通過した時点で企業として採用意思を示すことを指します。

 

採用通知を出す段階は、基本的には企業が応募者に採用意思を示すだけであり、応募者が入社に合意しているわけではありません

 

企業が応募者に対して、一方的に「わが社の採用要件を満たしているからぜひ入社して欲しい」と雇用の意思を伝えた段階であり、「採用通知」は「内定を出す」と同じ意味になります。

 

「内々定」とは?

なお、「内々定」とは、企業が応募者に対して「将来内定を出す予定である」と約束した状態で、内定の前段階、いわば内定を口約束したようなものです。

 

内々定は、おもに新卒採用でのみ使われる言葉であり、現在は政府が主導する採用スケジュールにおける10月1日の内定解禁(2023年時点)というルールを形式上で守るために、10月1日よりも前に伝える実質の内定通知を「内々定」と表現していることが大半です。

 

これは6月1日の選考解禁でも同様のことが行われており、6月1日よりも前の実施の面接を「面談」を言い換えている企業が多く見受けられることと同じです。

 

 

採用通知書と内定通知書は違うもの?

選考結果の連絡は電話やメールでの通知が一般的ですが、最終的に採用を決定した旨を通知する場合、「採用通知書」や「内定通知書」などの書面を発行するケースがあります。では、そもそも採用通知書と内定通知書は違う書類なのでしょうか?

 

採用通知書(内定通知書)とは?

採用通知書と内定通知書は基本的に同じもので、最終選考に合格した応募者に「選考に合格した」という結果と、「企業として採用の意思がある」ことを知らせるために発行する通知です。あくまでも合否結果と採用意思を知らせることが目的であり、法的に義務付けられた記載項目などはありません。

 

なお、採用活動では合否を迅速に知らせることが重要であり、最終面接から1週間以内には合否通知をすることが望ましいでしょう。基本的には口頭で内定を通知して、内定面談の場で手渡す、または後日にメールや郵送等で採用通知書(内定通知書)を郵送する、といった流れが一般的です。

 

書類作成時の注意点

前述の通り、採用通知書(内定通知書)には、発行義務もありませんし、記載項目について法律による決まりはありません。ただ、応募者も押印された書面を見ることで安心できるという心理がありますので、発行することが一般的です。

 

内定通知書の一般的な項目や作成時の注意点を詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

 

労働条件通知書とは?

前章で、「採用通知書(内定通知書)が労働条件通知書を兼ねており、これに対して内定承諾書が提出されると雇用契約が成立したものと見なされる」と紹介しました。労働条件通知書とは何かを確認しておきましょう。

 

意外と知られていないのですが、労働契約(雇用契約、労使契約なども基本的には同じ意味です)が成立するには、特に書面での契約は必要ありません。その他の契約と同じく、口頭でも成立します。

 

しかし、労働契約の場合には、後から内容に関するお互いの齟齬を防ぐために、企業側が労働条件(業務内容や労働場所、基本的な待遇など)を明記した通知を発行することが法律で義務付けられています。これが労働条件通知書です。

 

労働条件通知書の必要項目は法律で規定されており、逆に言うと、労働条件通知書を発行せずに、書面や口頭で「雇用契約を締結した」といっても、その労働契約は不備があると見なされます。

 

もともと労働条件通知書は紙での発行が義務付けられていましたが、現在では労働者側の希望があれば電子ベースでの発行も有効とされています。

 

労働条件通知書作成時の注意点

内定通知書と異なり、労働条件通知書は労働基準法第15条で義務付けられた書類であり、記載すべき項目も法律で定められています。労働条件通知書には、以下項目の記載が必須となります。

①契約期間に関すること

②期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること

③就業場所、従事する業務に関すること

④始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること

⑤賃金の決定方法、支払時期などに関すること

⑥退職に関すること(解雇の事由を含む)

⑦昇給に関すること

 

出典:労働基準法の基礎知識 ポイント1 労働条件の明示(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/150312-1.pdf

 

 

内定を出す際に注意すべきポイント

企業が応募者に対して内定を出す際には、内定辞退を防ぐためにもいくつか気を付けておきたいポイントがあります。基本的なポイントだけ紹介しますので、もし実施していなければ、実施してみてはいかがでしょうか。

 

口頭だけの通知にしない

内定通知(採用通知)は、上述したように特に書面でする必要はありません。ただし応募者側の気持ちを考えると、口頭だけでの通知は非常に不安なものです。従って、内定通知は紙なり電子形式で必ず書面として発行した方がよいでしょう。

 

また、後日のトラブルを防ぐためには:

  • 労働条件に関して記載して労働条件通知書の要件を満たす状態にする
  • 内定取り消しの条件に付いても記載する

形にして、その上で、内定通知の条件を確認して入社を承諾するという旨の内定承諾書を回収しておくことがお互いの安心につながります。

 

決定後の連絡は迅速かつ丁寧に

応募者は、最終面接の結果を心待ちにしているものです。自社への志望度が高いほど、結果が通知されるまでの期間を長く感じるでしょう。

 

少子化に伴って、優秀層の採用活動は慢性的な売り手市場となっており、自社で内定を出す人材は他社でも内定を獲得すると考えた方が良いでしょう。従って、合格通知が遅くなると内定辞退される可能性も高まります。採用を成功させるためにも、採用通知(内定通知)は迅速に行いましょう。

 

内定者フォローは確実に

内定承諾後の辞退を防ぐためには、内定通知、内定承諾書の回収からスムーズに内定者フォローのプロセスを始めていくことが大切です。特に近年の新卒採用は早期化が進み、場合によっては内定承諾から実際の入社まで1年間以上あることも稀ではありません。

 

また、この2,3年で「内定承諾後も辞退できる」といった話が就活生には浸透しており、内定者フォローで接触頻度を保ち、入社意欲を維持することが肝要です。内定者面談や内定者研修、内定者懇談会などのイベントを用意している企業は、これらの施策に関する案内を忘れずに行いましょう。採用人数が少ない場合には、内定者アルバイト(有償)などで接点を維持することも有効です。

 

 

採用・内定に関するトラブルと回避策

内定や採用、また入社後に、企業と応募者との間でトラブルが生じるケースもあります。基本として知っておくべき代表的なトラブル事例3つと、それぞれの対策方法を紹介します。

 

労働条件の認識相違

まず挙げられるのが「労働条件」の認識相違によるトラブルです。 たとえば、口頭で賃金の条件などを聞いて承諾をしたが、入社したら条件が違っていたというケースです。こうしたトラブルを回避するためにも、企業は内定通知(採用通知)を労働条件通知書の項目を網羅する形で実施することが大切です。

 

また、当たり前のことですが、求人票などに記載されている待遇面、特に給与や賞与・手当などの賃金面、また、休日休暇に関しては、誤りや入社後の齟齬がないように注意しましょう。

 

給与と残業、休日休暇などの待遇面、非常に分かりやすく、入社後に齟齬が生じるとトラブルになりやすい。また、トラブルまでいかないとしても、入社した人材から会社への信頼が一気に失われ、それ以降の会社からのメッセージも信用されなくなってしまいます。

 

内定取り消し

新卒採用における「内定取り消し」に関するトラブルもたまに耳にします。内定を出したにもかかわらず、「まだ正式な雇用をしているわけではない」「雇用契約をしたわけではない」と、企業側が安易に内定の取り消しを行ってしまうケースです。

 

基本的に形式の如何に関わらず、内定を出した後の取り消しは「解雇」と同じ、若しくは準じるものとしてとらえておく必要があります。つまり、「内定者が社風に合っていない」「定員以上を採用してしまった」などを理由に内定を取り消すことは認められません。正当で合理的な理由がない限り、安易な内定取り消しはできないので注意が必要です。

 

一般的に内定取り消しが認められる事由としては、以下の5点が挙げられます。

①内定者が入社予定日までに学校を卒業できなくなった

②内定者の健康状態が悪化し、就労が困難となった

③内定者の経歴詐称が発覚した

④内定者が違法行為により逮捕・起訴された

⑤会社が内定取り消しをしないと存続できない状況に陥った(≒解雇の必要要件)

 

内定辞退

内定辞退とは、内定者側の都合で内定を辞退する行為です。採用担当者にとって、内定辞退は非常に頭が痛い問題であり、何とか食い止めたいところです。

 

ただし、大原則として労働者には「職業選択の自由」があり、また、民法によって「退職の自由」が認められています。従って、仮に労働条件通知書を兼ねる内定通知をして内定承諾を回収した状態(つまり「始期付解約権留保付労働契約」が成立した状態)だとしても、法律上は入社予定日の2週間以上前に申し出れば内定辞退が可能です。

 

労働契約が成立していない状態での辞退もこれに準じると考えられます。従って内定辞退を拘束したり、条件を付けたりするような行為は基本的には認められません。

 

最近はこの事実は就活生にもよく知られていますので、「君の後輩たちの採用が不利になってもいいのか?」「既に備品なども準備しているんだ。損害賠償金を支払わないと辞退は認められない」といった圧力をかけるようなことをすると、SNSなどで暴露されて会社の評判を傷つけることもありますので、注意が必要です。

 

 

まとめ

採用活動において、内定~入社までのプロセスは雇用契約が絡んでくるため、トラブルが起こりやすい領域です。採用活動に携わる人は、雇用に関する基本的な法的知識は身に付けておいたほうがいいでしょう。

 

内定と内定承諾の違い、また内定と内々定の違い、内定通知と労働条件通知の違いなど、トラブルの原因になりやすいポイントをいくつか紹介しましたので、ぜひご確認ください。

 

 

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック執行役員

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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