現地採用とは?海外駐在との違いや企業のメリット・デメリットを解説

更新:2023/02/22

作成:2023/02/17

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

現地採用とは?海外駐在との違いや企業のメリット・デメリットを解説

「海外で働く」といえば、代表的なイメージが海外駐在。
 
海外駐在は、待遇が良く、華やかなイメージもあることから、昔も今も花形キャリアとして個人からの人気が高くなっています。
 
一方、採用企業の視点で考えると、駐在員の維持コストが高いことに頭を悩ませているケースも少なくないでしょう。
 
さらに新型コロナウイルスや紛争といった世界情勢の不安定化による為替リスクも考えると、拡大には慎重にならざるを得ない部分もあります。
 
結果として、海外展開の拡大フェーズで、海外駐在ではなく、現地で日本人を現地採用する企業なども増えてきています。
 
本記事では、現地採用と海外駐在の違い、企業にとっての現地採用のメリット・デメリット、現地採用の進め方を紹介します。

<目次>

現地採用とは?

現地採用とは、海外進出した企業が進出先の現地で直接雇用することを指します。
 
日本企業の場合には、日本本社の海外支社、また、日本本社の現地法人/現地での合弁会社などが雇用主になります。
 
現地採用という文字通り「進出先で採用すること」を指して雇用形態や区分を問わない場合もあれば、本社で雇用されて駐在や派遣、出向している人と対比させて「現地法人での雇用」という意味で現地採用ということもあります。
 
今回の記事では、「現地法人(もしくは本社とは異なる待遇や給与体系)で採用する」というケースを念頭に解説していきます。
 
なお言葉の意味から考えれば、日本に進出した外資系が日本国内で採用する場合も“現地採用”です。
 
また、多国籍企業も増えているなかで、国籍での区分は適切ではなくなってきている部分もあるでしょう。
 
ただ、今回の記事ではイメージしやすいように「海外進出した日本企業が、本社の日本人を現地に派遣する(海外駐在)or現地で採用する(現地採用)」という状況を想定して記載しますのでご了承ください。

現地採用と海外駐在の違い

ここでは、現地採用に似た雇用方法である海外駐在との違いについて、「スキル・能力」「雇用主」「待遇」「給与」の4つの切り口で解説します。

スキル・能力

現地採用の対象は、進出した現地に住む現地の人(在外日本人も含む)です。したがって、現地の言葉を話せることが前提となることが多いでしょう。
 
また、現地のカルチャーなどにも精通している可能性が高いです。
 
また、日本企業が日本人を現地採用する場合には、日本語と現地の言語を話せる、また、日本の文化やビジネス慣習と現地の風習、双方を理解し、日本側と現地側の懸け橋になることが期待できます。
 
一方、海外駐在で対象となるのは基本的に日本人です。
 
英語は話せるが現地の言語は話せない方、また現地が英語圏だったとしても国内で勉強して何とか英語力を高めた方も多いでしょう。
 
当然、現地の価値観や文化に詳しくなかったり、また、海外駐在が初めてで、現地独自の商習慣やマナーへの対応力を持っていなかったりすることもあり得ます。

雇用主

日本企業が現地採用する場合、日本企業の海外支社やグループ会社、または日本本社の現地法人、現地での合弁会社などが雇用主になります。
 
海外駐在の場合は、日本本社で雇用された人が海外に派遣される形となります。

待遇

海外駐在では、日本(本社)の給与体系が適用されるだけでなく、海外駐在の負担や現地での生活などを考慮し、「単身赴任手当」や「帯同家族手当」、住宅費用の一部または全額を支給する「住宅手当」などが付くことが多いでしょう。
 
また、安全性なども配慮して運転手付きの社用車を付けたり、危険のリスクが伴うエリアへの赴任では「ハードシップ手当(危険手当)」を支給したりすることもあります。
 
一方、現地採用は、現地の給与水準等に合わせた給与体系となります。
 
また、現地で生活している人を採用するため、海外駐在のような単身赴任手当やハードシップ手当(危険手当)などはありません。

給与

上述のとおり、現地採用の場合、給与水準は現地の物価を反映したものとなり、海外駐在よりも安いコストで雇用できる可能性が高いといえます。
 
ただし、欧米諸国などでは、現地の物価水準や給与体系の方が日本よりも高くなってきているケースも少なくありません。

現地採用海外駐在
スキル・能力ネイティブレベルの語学力、現地のカルチャーや商習慣を把握している日常会話〜ビジネスレベルまでの語学力であることが多い
雇用主・日本企業の海外支社
・日本企業の現地法人(子会社)
・日本企業と現地企業の合弁会社
日本企業の日本本社
待遇海外駐在のような各種手当はなし介在駐在に伴う各種手当、危険のリスクが伴うエリアへの赴任の場合はハードシップ手当(危険手当)などを支給。安全性などを配慮し、運転手付きの社用車が付くなどもある。
給与給与水準は現地の物価に比例日本(本社)の給与体系が適用される。さらに上述の通り、海外駐在手当や単身赴任手当、帯同家族手当、住宅手当などがつき、給与は国内勤務よりも高くなることが一般的。

現地採用のメリット

現地採用をするメリットは、大きく以下の3つになります。

人件費の削減

海外駐在では、本社の給与体系が適用され、さらに「単身赴任手当」や「帯同家族手当」、場合によっては「ハードシップ手当(危険手当)」や住宅手当、社用車の支給など、負担する費用が多くなります。
 
一方で、現地採用は、現地の給与水準に合わせた給与となるため、海外駐在特有の手当や待遇等も不要になります。
 
給与に付随して生じる雇用保険や年金などの社会保険も現地の法律に基づくことになり、日本国内よりも安く済むことも多いでしょう。

国固有のルールや文化を理解している

現地に暮らす日本人であれば、国固有のルールや文化を理解しているため、スムーズに事業を進めることができるでしょう。
 
また、現地と、現地採用をする日本企業をつなぐ架け橋的な役割も期待できます。

言語の壁を突破できる

英語や中国語といったメジャー言語であれば、社内にその言語を話せる人がいる可能性もあります。
 
また、通訳の依頼も比較的容易でしょう。一方で、極めて話者が少ないマイナー言語では、学習コストが高く、通訳の料金も必然的に高くなります。
 
一方、現地採用ではネイティブレベルの語学力をもつ人材を採用できる可能性も高く、言語の壁を越えることができます。

現地採用のデメリットや注意点

一方、現地採用では、人材育成が難しい、マッチする人材が見つからない、転職や離職が生じやすいといったデメリットも存在します。

人材育成が難しい

現地採用する際にも、採用選考は本社が関わって意思決定することが大半です。しかし、内定決定後の受け入れや人事研修などは現地での実施になります。
 
人事機能を持ち、豊富な受け入れ経験もある本社での人材育成と比較すると、現地での受け入れ・育成は負担が大きくなります。
 
密に連携・サポートしながら進めないと、人材が定着しなかったり、育たなかったりするリスクがあるでしょう。

マッチする人材が見つからない

新興国や人口の少ない地方都市だと、専門的なスキルや要件を保有する人材、当然現地に暮らす日本人は限りなく少なくなり、採用要件に見合う人材が見つからない可能性は高まります。

転職や離職が生じやすい

本社で採用・育成し、駐在などで現地に来た従業員と比較すると、現地採用された従業員は、会社へのエンゲージメントが上がりづらい傾向にあります。
 
駐在スタッフとの待遇格差に不満を感じることもあるでしょうし、また、本社から派遣されてくるメンバーが組織の上位を占めることになると、キャリア的にも行き詰まりを感じやすくなるでしょう。
 
結果的に、一定の経験を積んだあとに、他社に転職してしまうケースも少なくありません。
 
また、転職が当たり前になったとはいえ、日本国内では、組織に対する責任感、競合転籍に対する感覚などがある程度共通しています。
 
しかし、現地採用組の感覚は現地の文化に基づいており、日本国内とは大きく異なる感覚を持っていることもあります。

現地採用のプロセス

最後に、現地採用のプロセスについて解説します。

採用計画の立案

どのようなスキルや能力を持った人を、いつまでにどの部署で何人採用するのか、具体的な採用計画を立案します。
 
また、募集方法や募集媒体などもあわせて決定します。現地採用では、その国のルールや法律に基づいた採用計画を行う必要があるため、事前の情報収集が肝心です。

人材の募集活動

採用計画が固まったら、募集活動を開始します。求人広告、人材紹介、自社サイトなど、さまざまな手段で行いましょう。
 
現地採用では、その国の採用市場や採用手法に対する知識や募集方法のノウハウが必要になります。
 
現地で信頼できるパートナーを見つけ、連携して進めていくことが重要になるでしょう。

選考

あらかじめ定めた選考フローで、自社にふさわしい人材かどうかをチェックします。日本と同じ採用基準で考えていると、うまく採用できないこともあります。
 
現地のパートナー会社にアドバイスをもらう、すでに現地に進出している日系企業に相談するなどがよいでしょう。

内定〜入社前研修

入社前に必要な研修を実施します。基本的には現地法人に主導してもらうため、本社では研修に必要なノウハウの提供など支援を実施します。

社会保険などの手続き

現地法人で採用する場合は、現地の労働法規に従って、社会保険などに加入することになります。国によって、社会保険などの制度や手続き方法は異なります。
 
自社だけで実施するのには限界があるため、初めのうちは現地のエージェントに依頼して手続きを代行することが得策でしょう。

まとめ

海外展開するに際して、はじめは海外駐在を実施して拠点を立ち上げることになりますが、拡大フェーズでは現地採用を進めることが不可欠になります。
 
海外駐在と比べると、現地の言語や慣習への理解、また、コスト的な面でも現地採用を実施できると有効です。
 
ただし、現地採用は、まさに「郷に入っては郷に従え」であり、現地の法律や商習慣に基づき、採用を進める必要があります。
 
日本本社が現地法人の採用活動のバックアップをすること、そして現地でパートナー会社を探し、三社で密に連携しながら、採用を進めることが肝心です。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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