従来まで日本では「ポテンシャル採用」といえば「新卒採用」のことを指していましたが、この数十年で転職が一般的になったことで、既卒層や第二新卒層、業界や職種未経験者を対象とした「中途採用におけるポテンシャル採用」も定着してきました。
ポテンシャル採用は、採用の自由度が上がり、将来の幹部候補となるような“原石”の採用が可能です。また知名度が低い中小企業やベンチャー企業でも、優秀人材を採用できる可能性が高まります。
一方で、“ポテンシャル”を評価するからこそ、見極めの難易度が高く、入社後のミスマッチが起こったり、教育しても思うように育たなかったりする可能性もあります。記事では、ポテンシャル採用のメリットや留意点、成功のポイントを解説します。
<目次>
ポテンシャル採用とは?
ポテンシャル採用とは、求職者の潜在能力(ポテンシャル)を見極め、入社後の活躍を期待して未経験者やスキル的に未熟・不足な人を採用することをいいます。
日本においては、1990年代頃まで新卒採用=ポテンシャル採用、中途採用=即戦力採用というイメージが強くありました。
今でも新卒採用=ポテンシャル採用である比重は強いですが、中途採用においても「既卒採用」「第二新卒採用」など、経験不問のポテンシャル採用が一般化しました。なお、一般的にはポテンシャル採用の対象は20代までとなり、30代以降はキャリア採用(即戦力採用)の対象になりがちです。
中途採用におけるポテンシャル採用が普及したきっかけはいくつかありますが、1990年代~2004年ごろまでの不景気に新卒採用を抑えた企業が、その後の経済成長に対応するためにポテンシャル採用を始めたことが一つの要因です。
また、2008~2010年頃のリーマンショックによる採用低迷期などには、政府がポテンシャル採用を後押しする動きもありました。こうした企業側の動きに足を合わせるように、若年層の転職が一般化して、いまでは中途のポテンシャル採用は一般化しました。
成長フェーズの企業にとっては、採用したらすぐ入社してくれる既卒や第二新卒層のポテンシャル採用が、事業スピードを担保するうえでも非常に有用です。
また、今後は少子化にともなう新卒学生の減少が本格化するなかで、中小企業の新卒採用は難易度が上昇していくことが予測されており、ポテンシャル採用の注目度がより高まることも想定されます。
記事では、中途採用における「既卒採用」や「第二新卒採用」などのポテンシャル採用についてのメリットやポイントを解説します。
ポテンシャル採用のメリットと留意点(デメリット)
ポテンシャル採用にはさまざまなメリットがある反面、留意点(デメリット)もあります。留意点(デメリット)をしっかりと理解したうえで実施することが大切です。実施のポイント等を解説する前に、メリット・デメリットを確認しておきましょう。
メリット
リーマンショック以降、新卒採用をストップしていた中堅中小企業などは20代の人材が不足して、社内の年齢バランスが偏っているケースもあります。年齢バランスの偏りは、5年後10年後の経営に問題が出てくるケースもあります。
20代が主な対象となるポテンシャル採用は、若手人材が不足している企業にとって年齢構成のバランスを整える解決策になります。特に人材獲得競争で苦戦している中小企業等では、技術の継承といった問題の解消にもつながります。
ポテンシャル採用の対象となる人材は、多少の社会人経験を身に付けているケースも多く、新卒のように1~10まで教える必要はありません。そのため、教育コストが低く済むというメリットがあります。
同時に、ポテンシャル採用の人材は固有の企業カラーに染まっていないケースが多いです。前職の影響が強く、価値観や仕事スタイルの育成をしにくいキャリア採用に比べて教育しやすい、自社の色に馴染みやすいといえます。
即全力の募集であるキャリア採用においては、優秀人材はそもそも市場に出てきにくいという状況があります。かつ、転職市場に出てくる優秀人材はキャリアアップを望んでいることが多く、年収レンジも高くなるため、中堅中小企業が優秀な即戦力人材を採用することは困難です。
一方で、ポテンシャル採用は業界や職種経験がない未経験者層ですので、年収レンジも高くなく、また、未経験者のなかに才能を持った優秀人材が眠っている可能性もあります。即戦力層の中途採用と比べて、大手企業との競合も少なく、中堅中小企業でも優秀人材を採用しやすいといえます。
留意点(デメリット)
ポテンシャル採用は応募の間口を広げて、ポテンシャル(成長可能性)を評価しますので、入社後のミスマッチが起こりやすい側面もあります。また、若手の転職者は、「辞め癖」がついてしまっていたり、前職の企業カラーが中途半端に染みついて周囲に悪影響をおよぼしたりする人材もいます。
こういった人材を採用してしまうと、組織全体の生産性を悪化させてしまう可能性があります。
ポテンシャル採用は、社会人経験があるとはいえ未経験層の採用です。したがって、入社後に教育を実施していく必要があります。さらに新卒の場合と違って、「入社してくるタイミングがバラバラ」「保有知識やスキルの個人差が大きい」という理由もあり、育成は個別のOJT中心になることが大半です。
組織や現場に受け入れノウハウや教育スキルがないと、人材育成の負荷が大きくなったり、早期離職を生んでしまったりする可能性もあります。
ポテンシャル採用は、キャリア採用のように経験や実績、スキルなどではなく、成長可能性(ポテンシャル)を評価します。具体的な経験や実績、スキルではなく、行動特性やコンピテンシーなどの抽象的で目に見えない部分を評価する必要がありますので、選考での見極め難易度は高くなります。
ポテンシャル採用を成功させるための見極めポイント
ポテンシャル採用を成功させるためには、留意点をしっかりカバーする選考や受け入れの実施が重要です。ポテンシャル採用を成功させるためのポイント4つを解説します。
自社でパフォーマンスするための必要要素を特定する
ポテンシャル採用を成功させるためには、採用職種や仕事でパフォーマンスするためにどのような要素が必要となるのかをしっかり特定する必要があります。
「こういう素養がある人であれば、知識やスキルを身に付ければ活躍できる」という基準がしっかりしていないと、面接での表面的な要素や面接官の嗜好に選考が左右されてしまいます。
パフォーマンスするための必要要素は、自社のハイパフォーマー(好成績者)とローパフォーマー(低成績者)を比較分析して特定していきましょう。また、見出したものを「入社後の教育等で成長できる要素」「先天的なウェイトが強く変わりづらい要素」に区分して、後者に重きをおいて選考することが大切です。
社風とのカルチャーマッチング
ポテンシャル採用においては、パフォーマンスするための素養と併せて、カルチャーマッチングも大切です。
カルチャーマッチングとは、自社の社風や理念、考え方、価値観と求職者の考え方・価値観が一致しているかの見極めです。価値観は幼少期に決定するものであり、入社後に変化することはありません。したがって、価値観等が社風とずれていると、早期離職につながったり、育成に苦労したりします。
“金太郎飴”のように同じタイプを採用する必要はありませんが、自社の理念や価値観等と照らし合わせて、「ここの考え方・価値観がズレていると、入社後に合わない」という部分はしっかり見極めましょう。
カルチャーフィットに関しては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
求職者にも求めるものを開示する
前述した求める素養や社風については、求職者に対しても明確に開示することが大切です。事前に開示することで、求職者も期待されていることをイメージできるようになり、入社後のミスマッチ防止につながります。
ポテンシャル採用の場合、求職者も自己理解が浅い場合があります。そのため開示によるセルフスクリーニングだけでは足りませんが、求人票や面接内で組織が求めているものをしっかりと伝えて、本人にも「自分が合っているのか?」を考えてもらいましょう。
構造面接と適性検査の組み合わせなどによるポテンシャルの見極め
ポテンシャル採用では、求職者の潜在能力をしっかりと見極めるために構造面接と適性検査を組み合わせるのがおススメです。
構造面接とは、あらかじめ評価基準と質問項目を決めておき、マニュアルに沿って行なう面接のことで、誰が面接しても一定の基準でポテンシャルを見極めることができます。
逆に、相手に合わせて質問内容を変えていくような面接を非構造面接と呼びますが、研究を通じて「非構造面接は入社後の活躍可能性を予測できる可能性がかなり低い」ことがわかっています。
また、日本では適性検査が「足切り」や「面接の補足材料」程度に使われがちですが、適性検査は面接では見抜きづらい性格特性や価値観、動機等の見極めに有効です。そのため、構造面接と適性検査を組み合わせることで、採用後のミスマッチを大幅に防ぐことができます。
代表的な構造面接の手法である「STAR面接」について、以下の記事で詳しく解説していますので、ご興味あればご覧ください。
まとめ
ポテンシャル採用は、従来まではおもに「新卒採用」を指す言葉でしたが、この数十年で中途採用においても、既卒や第二新卒層を主対象としたポテンシャル採用が一般化しています。
ポテンシャル採用は若手を効率的に採用できる手法であるとともに、採用の裾野を広げ、組織を活性化させることにつながります。一方で、経験や実績ではないポテンシャル(活躍可能性・潜在能力)を評価するために、採用時の見極めは難しいといえます。
ポテンシャル採用を成功させるためにも、まずは自社が求めるポテンシャルを明確にすることが大切です。そのうえで、カルチャーフィットの視点、求める素養や価値観の開示、また、構造面接と適性検査の組合せ等によって、マッチング精度(見極め精度)を高めていきましょう。
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