自社で活躍する人材を獲得するには、採用面接を通じて、人材を見極め、魅了することが欠かせません。そんな採用面接を成功させるために、重要なものが「質問」です。
なお、個人の権利やハラスメントに関する意識などが変わるなかで、採用面接におけるいわゆる“NG質問”なども理解しておくことも大切です。
本記事では、採用面接の質問が持つ3つの役割を確認したうえで、採用面接で使える質問例を紹介します。
また、採用面接で注意すべきNG質問と法律的なポイントも解説しておきますので、ぜひご確認ください。
<目次>
採用面接における「質問」の役割3つ
採用面接を効果的なものにするには、まず、質問における3つの役割を知っておく必要があります。
求職者の人柄や能力を見極める
第一の役割は、自社で活躍する人材かどうかを見極めることです。見極めのポイントは、大きく分けて以下の2つになります。
- スキルフィット:自社(募集ポジション)で活躍するのに必要なスキルや特性があるか?
- カルチャーフィット:自社の文化や価値観、企業風土にマッチしているか?
自社への入社可能性を知る
少子化や雇用形態の多様化が進むなかで、日本の採用市場、特に優秀層の採用は慢性的な売り手市場となっています。
したがって、採用活動では、面接で自社への入社可能性、志望度を把握しながら、適切な手を打つことが大切です。
- 就職/転職活動の状況
- 企業選びの基準
- 自社への志望度
自社への入社意欲を上げる
優秀な人材を獲得するには、面接や選考プロセスを通じて、継続的に魅了付けを行ない、自社への入社意欲を高める必要があります。
入社意欲を高めるためには、求職者と信頼関係を築き、求職者が企業や仕事に求めるものを知ることが必要です。
知ったうえで、求職者ニーズ×自社の魅力がマッチするところから、魅了付けをしていくことが大切になります。
採用面接で使える質問集
本章では、採用面接で使える質問集とポイントを解説しましょう。
なお、汎用的に使えるものを選んでいるため、スキルフィット、特定の職能を深掘りするような質問は入れていませんのでご了承ください。
アイスブレイクに使える質問集
面接の冒頭のアイスブレイクは、お互いの緊張をほぐす雑談のようなものです。面接におけるアイスブレイクは、以下のような効果やメリットがあります。
- 求職者が自身の「魅力」を発揮しやすくなる
- 求職者の「素」や「本音」を引き出しやすくなる
- 面接官や企業に好印象を抱いてもらいやすくなる など
アイスブレイクの質問は、以下のように求職者があまり考えず気軽に答えられるものが望ましいです。相手との共通点を見出すような内容もおすすめでしょう。
- ●「会社の前の桜は、昨日一気に咲きました。◯◯さんの地域はどうですか?」
- ●「実は私も○○さんと同じ〇〇大学出身です!○○学部だと、○○キャンパスですか?」
- ●「Zoomは問題なく接続できましたか?」(オンライン面接の場合) など
ただし、家族の話などのプライベートにあまり踏み込むことは、いわゆるNG質問などにも該当してくる可能性もあるため、注意が必要です。
自社への適性を確認できる質問集
面接での質問における適性とは、自社の価値観や風土などのカルチャーフィットのことです。経営層や自社の価値観にマッチすることが望ましいでしょう。
- ●「どのようなチームで働きたいですか?」
- ●「○○のチームで働きたい理由を教えてください?」
- ⇒組織に何を求めているかを知る質問です。また、リーダー以上の場合、自分がどういうチームを作っていきたいかを知る質問でもあります。相手の価値観を把握したうえで、「弊社の営業チームでは……」と魅了付けにつなげることも可能ですし、職場選びの基準を知る質問でもあるでしょう。
- ●「営業ノルマを、どう考えますか?」
- ●「なぜそう思うのですか?」
- ⇒営業ノルマが必要な理由として、企業の成長や存続、売上と自分の賃金を絡めた話ができればOKです。ただし、面接用に用意された回答の可能性もあるため、以下のように少し異なる視点から質問するのもおすすめとなります。
- 「営業ノルマがない企業をどう思いますか?」
- 「あなたが営業リーダーなら、部下に営業ノルマを与えますか?」 など
人間性や性格を知る質問集
自社にマッチするかどうかの判断では、どういう性格の人間かを知ることも大切です。
- ●「営業先でお客様と話すときに、最も大切にしていることは何ですか?」
- ●「大切にしている理由は何ですか?」
- ⇒コミュニケーションで、自分と相手のどちらに重きを置くタイプかを確認する質問です。傾聴や信頼関係、相手に役立つことなどの話が出てくればOKになります。
- ●「人間関係のトラブルで悩んだことはありますか?」
- ●「どういう人間関係のトラブルですか?」
- ●「人間関係のトラブルをどのように解決しましたか?」
- ⇒人間関係トラブルは職場で発生しやすい悩みの筆頭です。どういうポイントで悩むか、どう対処してきたかを確認します。トラブルの解決法として、自己主張ばかりせず相手の意見に耳を傾けられるかどうかも、チェックポイントの一つです。
- ●「欠点はありますか?」
- ●「今挙げた欠点はどういうことですか?」
- ●「なぜそう思うのでしょうか?」
- ⇒自分の欠点を客観的に認識しているか、正直に話せるかどうかを判断する質問です。成長する、成果をあげるには、自分の欠点を謙虚に認めることも大切になります。
ただ、面接用の回答の場合もあるため、「なぜ〇〇は欠点になるのですか?○○は長所でもありますよね?」や「欠点を直すために何か努力をしていますか?」などの質問で掘り下げるのもおすすめでしょう。
入社後長続きするかを見極める質問集
近年では、終身雇用の崩壊や人材の流動化などの影響で、転職への価値観も変わっています。
もちろん、転職自体は悪いことではありません。しかし採用側からすると、採用コストや育成コストをかけることになるため、一定期間は定着・活躍して欲しいと考えるのが自然です。
よって、採用面接では、ストレス耐性や壁への向き合い方、退職理由や志望理由の一貫性などを確認していくことも大切になります。
- ●「今までの仕事で最も大きな壁や困難を教えてください」
- ●「困難とはどのような出来事ですか?」
- ●「壁や困難をどのように乗り越えましたか?」
- ⇒「どのような困難なら乗り越えられるか?」「ストレスへの対応ノウハウがあるか?」といったストレス耐性をチェックする質問です。乗り越えた方法を論理的に説明できれば、自社で厳しい状況に直面しても、再び同じように解決できる可能性が高いでしょう。
- ●「前職の退職理由は何ですか?」
- ●「そう感じるきっかけとなった出来事を教えてください」
- ⇒退職理由は、多くの求職者が回答を用意しています。したがって「なぜ?なぜ?」の掘り下げが特に必要です。なお、「レベルの高い環境で働きたかった」のように高い向上心による理由の場合、自社でキャリアの行き詰まりを感じた場合、次の成長できる場を求めて転職する可能性もあるでしょう。
志望度を知る質問集
自社への志望度を知ることで、今後の魅了付けや内定者フォローなどを行ないやすくなります。
- ●「弊社のどのようなところに魅力を感じていますか?」
- ●「そう思う理由は何ですか?」
- ⇒自社への志望度が高ければ、競合との差別化ができていて、本人にとっての魅力を具体的に答えられる可能性が高いです。一方で「大手のIT企業だから」「面白そうなアプリを開発しているから」などの一般的な話の場合、自社への志望度はさほど高くないと判断できます。
- ●「弊社への志望度は、100点満点でいうと何点ですか?」
- ⇒なぜ現状の点数か、100点ではないのは何が理由か、競合企業への志望度は何点かなどを確認していくことで、相手自身も思考が整理されます。
ただし、信頼関係を作れていなかったり、“志望度が高い人を採用する”といった雰囲気が見えたりすると、本音は返ってこないでしょう。したがって、事前に信頼関係を構築することも大切になります。
- ●「何か質問はありますか?」
- ⇒いわゆる逆質問です。自社への志望度が高ければ、気になること・知りたいことも多いでしょう。逆質問の内容を通じて、相手の興味や関心を知ることができます。
自社の印象をアップさせる質問集
いわゆる魅了付けの質問です。自社への志望度をアップさせるうえで必要な質問となります。
- ●「1年後の自分は、どのような仕事をしていると思いますか?」
- ⇒入社後のポジティブなイメージを膨らませてもらう質問です。また、回答によっては、志望度を知ることも可能になります。「企画チームに入り、Aシリーズに次ぐヒット商品を生み出したい」などの回答に対して、「〇〇さんの企画経験があれば、きっと良いヒット商品が生まれますよ」とあと押しすることが大切でしょう。
- ●「弊社に入社するうえで、不安や悩みはありますか?」
- ⇒不安や迷いを抱えた求職者に寄り添う姿勢を見せるための質問です。なかには、面接官が即答や解決できないこともありますが、解決できなくても「困ったことがあれば、いつでも相談してくださいね」などの姿勢を見せることで、入社への決断をあと押しできます。
採用面接で注意すべき“NG質問”とは?
採用面接を通じて求職者と信頼関係を築き、自社への志望度を高めてもらうには、いわゆる“NG質問”への配慮も大切です。
“NG質問”とは何か
“NG質問”とは、厚生労働省のガイドラインで「採用選考時に配慮すべき事項」を含んだ質問の総称です。
質問自体が完全にNGというわけではありませんが、就職差別につながる可能性がある、また、就職差別をしていると思われてしまうため、取り扱いに注意が必要です。
不要であれば「しないほうが良い質問」といえるでしょう。
なお、就職差別とは、家族状況や生活環境といった、求職者の適性・能力とは関係ない事柄から、採用・不採用を決定することを意味します。
海外における「公平な選考」のトレンド
多国籍国家であり、人種差別などの問題もあるアメリカなどでは、特に「選考の公平性」に関する意識が日本よりも進んでいます。
たとえば、履歴書などでも年齢や性別、人種などは記載しませんし、年齢などがわかってしまうプロフィール写真を貼り付けないことも当たり前となっています。
一方で日本では、男女雇用機会均等法などがあるものの、性別欄がある履歴書なども、まだ普通にあったりします。
ただ、個人の権利に関する意識なども進むなかで、今後はさらに欧米型に寄っていく可能性もあるでしょう。
よって、NG質問はもちろんのこと、採用に関する規制や配慮すべき事項などは押さえておく必要があります。
NG質問で生じるリスクとは?
NG質問をすることで、以下のリスクやデメリットがあります。
- 公正な選考がしづらくなる
- 求職者へ不快感や誤解を与えてしまう
- 拡散による自社のイメージダウンにつながる
NG質問をすると、たとえば、仕事とは関係のない家族や生活環境などの情報を知ることで、求職者へのイメージが変わってしまい、公正な選考ができなくなることもあります。
また、NG質問の存在が広がっているなかで、求職者に「なぜ家族のことなんて聞くのだろう?」などの不快感や誤解が生じれば、優秀な人材の獲得ができなくなることもあるでしょう。
近年では、就職/転職活動をする求職者が、活動状況や企業の印象をSNSなどに投稿することも珍しくなくなっています。
こうしたなかで「面接で失礼なことを聞かれた!」「これってNG質問ですよね?」などの情報が拡散されると、自社のイメージ低下につながり、ほかの採用活動にも支障をきたすでしょう。
NG質問に関する厚生労働省のガイドライン
採用面接を行なう際には、いわゆる“NG質問”に関する以下のガイドラインをひと通り理解しておくことが必要です。
採用面接で聞くべきでない質問例
具体的には、以下のような質問がNG質問の事例です。
【本人に責任のない事項の質問】
- 「ご家族は皆さん健康ですか?病気の方はいらっしゃらないですか?」
- 「どのような家にお住まいですか?」
- 「お父さんはどこにお勤めですか?」 など
【本来自由であるべきことへの質問】
- 「信仰はありますか?」
- 「〇〇教をどう思いますか?」
- 「労働運動の経験はありますか?」
- 「政治思想を教えてください」
- 「購読雑誌は何ですか?」 など
たとえば「愛読書は何ですか?」といった質問も、思想の確認をしているととらえられる側面がありますので注意が必要です。
まとめ
今回は、採用面接における質問の役割を確認したうえで、以下6カテゴリの質問例とNG質問のポイントを解説しました。
- アイスブレイクに使える質問
- 自社への適性を確認できる質問
- 人間性や性格を知る質問
- 入社後長続きするかを見極める質問
- 志望度を知る質問
- 自社の印象をアップさせる質問
自社で活躍する人材を獲得するには、面接を通じて、人材の見極め、魅了付けをする必要があります。
面接官のレベルアップに向けてトレーニングなどを行なう際には、以下の記事や資料もぜひ参考にしてください。