目的や目標を達成できない要因として、適切な目標設定が出来ていなかったり、目的・目標達成のノウハウについて理解が浅かったりすることがあります。
目的・目標の設定や達成手法は非常に重要なノウハウです。本章では基本的な設定・達成のポイントをいくつか紹介します。
1)企業理念や事業ドメインをもとに考える
組織における目的を考えるうえでは、企業理念やどういった市場でビジネスを展開していくのかという事業ドメインやコンセプトが反映されている必要があります。
例えば、セブンイレブンの事業コンセプトは「近くて便利」です。
コンビニというと、お弁当や日用雑貨といった「物」のイメージがありますが、セブンイレブンが提供しているのは「便利さ」であるということが分かります。
この「近くて便利」を提供するというドメインから生まれたもののひとつが、セブン銀行です。現金を下ろすのに遠くの銀行やATMまで行くのが面倒だと感じる人も多いはずです。
また、コンビニ内のATMであれば、昼食や夕食を買ったついでに現金を下ろせるというメリットもあります。
つまり、セブン銀行は、業態としては今までのコンビニエンスストアにおける物販とは全く違う事業のように見えますが、「近くて便利」という価値提供を実現させる事例のひとつと言えます。
コンビニという事業の枠にとらわれずに価値提供できるのは、企業理念や事業ドメインが明確に定められているからです。
一もし、「儲かりそうだから…」という理由で様々なことに手を出してしまうと、事業の統一感を保つことができなくなり、方向性を見失ってしまうということにもなりかねません。
ブレることなく業種や業界の壁を超えた競争に生き残るためには、「どんな価値を提供するのか?」ということを強く意識しておく必要があります。
2)「なぜ」を繰り返す
顧客に価値を提供するためには、「なぜ」を繰り返すことで、顧客の目的をよく考えることも重要です。
マーケティングの世界で有名な話として、「ホームセンターにドリルを買いに来た人が本当に欲しいのは、ドリルではなく穴である」というものがあります。
顧客にとって真のニーズは穴であり、ドリルは手段です。
たとえば、もしドリルよりも安くて簡単に穴をあける方法があれば、顧客はそちらを選ぶ可能性が高いはずです。
顧客の真のニーズを知ることなく商品やサービスを売ろうとしてしまうと、断られてしまったり、ミスマッチを起こしてクレームにつながったりといったことにもなりかねません。
「なぜ」を繰り返して顧客の真のニーズを探り、そのニーズに対してどのように応えていくのかを考える必要があります。
3)目標設定におけるSMARTの法則
目標を設定する上で意識しておきたいのが、「SMARTの法則」と呼ばれるものです。
SMARTの法則は、適切な目標設定の要素をまとめたもので、具体的には以下5つの要素を満たすように目標を表現することの重要性を示しています。
<SMARTの法則>

目標設定で最も重要なのは、具体性があることです。
当たり前の話ですが、何を達成したいのかが不明瞭であれば、達成するための計画も立てようがありません(具体性)
また、その意味で、どういった項目を評価の指標とするのかの設定も重要です。具体性と紐づきますが、客観的にどういう状態になれば達成できたか?を明確にしておく必要があります(測定可能性)
マストではありませんが、評価項目は可能な限り数値化して測定可能なものにする(定性的なものに関しても達成可否が明確になるようにする)ことで、どれくらい前に進めたのか、何がどれだけ足りなかったのかといった分析がしやすくなります。
「達成可能性」については、ドラッカーの言葉でもご紹介したとおりであり、あまりに無理のあるものは望ましくありません。
4つ目の「関連性」というのは、目標は目的、また上位の目標と関連したものである必要があります。
また、目標には「明確な期限」も必要になってきます。期限がなければ、どんどん先延ばしになってしまい、なかなか前に進めにくいでしょう。
達成目標とする時期が決まっているからこそ、納期を区切って達成計画を組めるのです。
以上5つの要素を目標設定に織り込むことで、的確な目標設定ができるようになります。
4)マンダラチャートで目標達成の計画をつくる
目標達成のための計画作りで役に立つのが、「マンダラチャート」です。
マンダラチャートとは、達成したい目標に対して、目標達成するための施策や行動、アイディアを具体的なレベルまで掘り下げていくものです。
3×3のマス目を9つ用意し、まずマス目の中央に達成したい目標を記入し、その周囲8マスに目標を達成するために取り組みテーマを書き込んでいきます。
次に、周囲のマス目8個の中央マスに書き込んだ取り組みテーマ8つを転記します。そして、各取り組みテーマに対して、8つの具体的な行動レベルの施策や取り組みを転記します。
マンダラチャートが完成すると、目標達成に繋がる行動レベルの施策やアイディアが64個出てくることになります。
このように目標達成に必要な取り組みを分割して可視化していくことで、やるべきことが明確になり、精度の高い計画を作成できるようになります。
5)目的・目標達成に向けてプロセスを管理する
目的と目標が定まって、達成計画を作成する、また進行する上では、プロセスを管理することも大事です。
プロセスを管理する手法としては、
- KPIマネジメント(Key Performance Indicator)
- MBO(目標管理制度)
- OKR(Objectives and Key Results)
があります。
まずKPIマネジメントは、プロセス管理の基本となる考え方で、目標を達成するために重要なプロセス指標(Key Performance Indicator)を設定して管理するという考え方です。
KPIがプロセスだとすると、ゴールになる指標をKGI(Key Goal Indicator)、KPIを達成するための行動指標をKAI(Key Action Indicator)と呼びます。
たとえば、KGIがKGIだとすれば、KPIは提案金額や商談数、KAIは既存顧客と新規顧客、それぞれへのアプローチ件数といった形です。
最終的に達成したいゴール指標は「結果」であり、結果だけを追い求めても仕事はなかなかうまく行きません。
だからこそ、結果を出すために大切な「先行指標」を追いかけ、先行指標を達成するための「行動」をやり切るという考え方です。
こうしたKPIマネジメントを踏まえつつ、目標管理に役立つのがMBOとOKRです。MBOとOKRはいずれも組織でよく取り入れられている目標管理の手法です。
MBOは、ドラッカーによって生み出された手法であり、組織と個人が合意してSMARTな目標設定することで、①組織メンバー個々の努力・達成が組織の達成につながる状態になる。
そして、②合意した目標を設定するからこそ、個人に権限移譲してセルフマネジメントを推進できるという考え方です。
MBOは、②で紹介したようにメンバーの自発性を促し、モチベーションの向上につながるメリットがあります。
一方で、人事評価制度を連動させることが一般的であり、結果的に各個人が自分の評価を上げるために達成しやすい目標設定ばかりになりやすいというデメリットもあります。
こうしたMBOのメリット・デメリットに対応した新たな目標管理制度として注目されるのがOKRです。OKRは一般的に個人単位では設定されず、組織全体の目標達成のために設定されます。
OKRは、組織全体として達成したい大目標O(Objectives)とそのためのKPIとなるKR(Key Results)を設定します。
OKRの特徴は、メンバーの方向性や意識を統一するために普通にやったら達成率60~70%ぐらいになるような野心的でワクワクする目標を掲げる点にあります。
OKRには、全社員で高い目標を共有することで、一体感やモチベーションを引き出せるというメリットがある一方で、MBOの感覚で考えると達成率が低い状態が続いてしまいがちなので、人事評価と連動させるとうまく行きにくい、達成率の低さがモチベーション低下を招くリスクがあるといった欠点もあります。
6)PDCAサイクルを回す
目的・目標が定まり、達成計画を立てても、その通りに進められるとは限りません。むしろ、100%計画通りに進むことなど殆どないといってもいいでしょう。
従って、取り組んでみて計画と実績がズレてしまった時には、原因をはっきりさせ、次につなげていくことが大切です。これがPDCAサイクルです。
PDCAサイクルは、Plan(計画)⇒Do(実行)⇒CA(振り返りと改善)を繰り返すことで、計画精度や達成率をどんどん高めていく手法です。