マンダラートは、思考の整理やアイデア発想に役立つフレームワークです。マンダラートを利用することで、自分の考えを整理したり、アイデアを出したりすることはもちろん、具体的な施策なども明確になり、目標達成には効果的なワークとして知られています。
また、マンダラートの作成は抜け漏れの防止や知の共有といった効果もあるため、積極的に活用することがおすすめです。記事では、マンダラートの作成方法やテンプレート、具体的な完成イメージを紹介します。
<目次>
マンダラート(マンダラチャート)とは?
マンダラートは仏教の曼荼羅とアートをかけ合わせた造語であり、ビジネスの世界では目標達成のためのフレームワーク、思考展開ツールを指します。
マンダラートは「人間社会のあらゆる問題は、デザインの手法で解決できる」として色々な領域のデザイン化を進めた際にいきついた「思考のデザイン」の領域で生み出されました。
マンダラートという名称は、密教(仏教の一種)で用いられる、仏教の世界観を視覚的に表した「曼荼羅(まんだら)」という絵画に由来します。曼荼羅の多くは主尊を中心におき、周囲に諸仏が配される構図で各仏尊が細かく描かれる様子を表しています。
マンダラートには曼荼羅模様のような81個のマス目があり、中央に達成したい目標を記載して、周囲にアイデアや具体的な行動を書き込んでいきます。最終的には1つの目標に対して64個以上の実行施策がリストアップされる形となり、達成するための行動計画を立てたり、二の手三の手を準備しておいたりする上で非常に有効です。
非常にシンプルな図です。しかし、このように2軸9マスで市場を分類して、各マスに既存サービスや競合を書き込んでいくことで、市場分析や商品開発の視点を得ることが出来ます。
マンダラートとマトリックス法との違い
マンダラートと少し似た概念にマトリックス法があります。マトリックス法とは、変数2つを組合せることで、変数ごとの要素を検討して、現状分析や新しいアイデアを発想するための手法です。
マトリックス法では、縦と横それぞれの変数を決めて、変数ごとのさまざまな要素を洗い出します。新市場の動向分析や既存商品の現状のマップ作りといった現状分析的な使い方と、新分野の開発や新商品の企画といった課題解決的な使い方があります。
マンダラートの効果やメリットは?
マンダラートは、「簡単に使える手法である」「多くのアイデアをアウトプットできる」「アイデアのブラッシュアップができる」「目標達成のノウハウを共有ができる」「その他のメリット」といった5つの効果とメリットがあります。
マンダラートの効果とメリット1.簡単に使える手法
マンダラートは、特性要因図・ポジショニング法など他のフレームワークと比べても、アイデア発想法としてはシンプルで簡単に使えます。
マンダラートを使用することにより、何十個ものアイデアが数十分の間でアウトプットされます。抽象的なアイデアでも、要素が重複していても、まずはマスを埋めてみることで、具体的な行動へのイメージを落とし込むことができるでしょう。
マンダラートの効果とメリット2.アイデアが増える
前述の通り、マンダラートはアイデアを増やすのに効果的です。正方形を均等に区切ったマス目を使って、まずは一番中央に書いた達成したい目標を基に、周辺の8マスに目標達成の取り組み分野を書いて埋めていきます。そこから、外部の8マスの中央に書き出した取り組み分野を転記します。そこから分野ごとに実際の取り組み、行動アイデアを書き出していきます。
初めは81マスを埋めることに苦戦することも多いですが、繰り返していくことで考える力や創造力自体が向上し、今まで思い浮かばなかった意外性のあるアイデアも生み出せるようになります。
マンダラートの効果とメリット3.アイデアをブラッシュアップできる
マンダラートは、アイデアのブラッシュアップにも効果的です。目標達成のためにやるべきことが紐づいた形で細分化され、階層化された状態で具体的なアクションを抽出できます。
抽象的なイメージや取り組み分野から広げていくことで、アイデアがブラッシュアップされて、具体的な行動アクションとして落とし込んでいけるのが特徴です。
マンダラートの効果とメリット4.アイデアの共有や組み合わせが可能
組織的にマンダラートを導入すると、トップクラスの実績を上げる優秀層や豊富な経験を持つベテランの知恵を組織に共有することができます。実績を上げているトップ層やベテラン層は、新人や若手が考えていない施策分野を書き出したり、同じ分野でも違う具体施策を書き出したりもできるでしょう。
優秀層やベテラン陣は64個といわず、マンダラートのマスに収まりきらない具体施策を思いつくでしょう。書き出される施策分野や具体施策の違いや量の差が、新人や若手と優秀層やベテラン層の目標達成力の違いです。
優秀層やベテラン層の目標達成に関する知恵を可視化して、組織で共有することで、組織全体の目標達成力を底上げすることができるでしょう。
マンダラートの効果とメリット5.その他のメリット
マンダラートはマインドマップと併せて使用することで、更なる効果が期待できます。マインドマップとは、メインテーマを中心に、テーマから連想されるワードやアイデアを線で分岐するように繋げながらアイデアをブレストする思考法です。
マインドマップで情報の分岐やアイデアのベースを作った後に、マンダラートに当てはめていくことで、マインドマップで展開したアイデアをより具体的な目標達成施策として具体的なアクションに落とし込めるでしょう。
マンダラートの書き方
マンダラートの作成は、手書きで作ることはもちろん、ExcelやNumbers、Googleスプレッドシートなどで作ることも可能です。極端には9×9の81マスを作成して、マスに文字を書き込むことができれば、何を使っても大丈夫です。
ただし、手書きで書くことは脳を刺激してアイデアを出しやすくするため、慣れないうちは手書きで作ることをおすすめします。一方で、ExcelやGoogleスプレッドシートの方が保存や振り返りに便利な側面もあるため、慣れや好みに応じて利用してください。
<マンダラートの作成ツール>
- 紙
- Excel
- Numbers
- Googleスプレッドシート
- 専用アプリ
など
マンダラートの書き方1.達成したい目標をマンダラートの中央のマスに記入
まず、中央にある3マス×3マスの枠中心マスに達成したい目標を記入します。
マンダラートの書き方2.目標を達成するために必要な活動や要素を大テーマ(基礎思考)として8マスに記入
次に、達成したい目標の周りに達成に必要な施策分野を大テーマ(基礎思考)として8個書きます。
例えば、「来店数の増加」という達成したい目標であれば、
- ポスティング
- 店頭での呼び込み
- ネット広告
- 新聞折り込み
- 新規入会キャンペーン
- 来店済みの未契約顧客へのメール
- 来店済みの未契約顧客へハガキDMの送付
- タウン誌への掲載
といった形です。上記のような始めに展開する大テーマのことを基礎思考とも呼びます。
マンダラートの書き方3.各分野の具体施策を8個ずつ記入
次に、達成目標と大テーマを書いた中央の9マスを囲む9マス×8個のマスを埋めていきます。まずは9マス×8個の中央マスには、先ほど記載した8個の大テーマを転記します。
そして、各大テーマに対して、実際に実行できる具体施策(実践思考)を8個以上書き出します。8個以上思いついた場合はマスの枠外に書き出すと良いでしょう。
例えば、「ポスティング」という大テーマに対して、
- ポスティング用チラシのコピー制作
- ポスティング用チラシのデザイン作成依頼
- ポスティング先エリアの割り出しと選定
- ポスティング予算の算出
- ポスティング業者の選定
- ポスティングの効果測定
- クレーム時の対応方法を決定
- 来店数と費用対効果をシミュレーション
といったものが具体施策になります。
8個の大テーマに対する具体施策の洗い出しを順番に実施していき、81個すべてのマスが埋まればマンダラートの完成です。
大テーマの書き出しに5分、大テーマから具体施策への書き出しに各5分、といった形で時間を区切って進行していくと集中力を保ちやすいためおすすめです。
マンダラートを作る際のポイント
まず、マンダラートを作る上で「目的」と「目標」の違いを理解しておきましょう。「目的」とは最終的に到達したいゴールであり、「目標」とは、目的を達成するために必要な目印、指標です。
マンダラートを作成する際に設定すべきものは「目標」です。ただし、目標を設定する際に目的と目標の違いを理解して、目標の向こう側にある「目的」を意識しておかないと「何のための目標なのか」「本当に達成したいのか」とゴールを見失ってしまったり、モチベーションを失ったりしてしまうため注意が必要です。
また、目標設定後、実際にマンダラートを作る際のポイントとしては81マスすべてを埋めきることです。無理やりにでも何か書き出すために考えることで、アイデアが広がっていきます。
大量に書き出すには、アイデアを書き出すとき、各アイデアの効果性や実現する可能性をあまり判断しない方が良い場合もあります。まずは大量にアイデアを出してみて、出し切った後にジャッジすると量を書き出しやすくなるでしょう。
また、どうしても81マスを埋められない場合は、そもそも設定した目標を達成するための方法に関して知識が足りない可能性があります。そのため、設定した目標達成に対して経験やノウハウを持っている人に相談すると良いでしょう。
反対に、アイデアが64個より増える分には問題ありません。マンダラートを完成させた後に絞り込めば良いからです。どんどんマスの外に書き出していきましょう。
また、アイデアが重複することも問題ありません。マンダラートが完成したら、その中から似たアイデアを探してみましょう。似ているアイデアが多いということは、そのアイデアの優先順位が高いという可能性もあります。
マンダラートのテンプレートと完成例
マンダラートの枠は自分で作っても良いですが、無料でダウンロードできるテンプレートもプレゼントしています。
テンプレートはExcelファイルで、1シート目が完成サンプル、2シート目がテンプレートとなっています。また、施策の大テーマを入力すると、外側の9マス×8個の中央に自動で反映されるようになっています。
テンプレートサンプル
マンダラートの作成サンプルとして、テンプレートを使ったマンダラートを実際に作成してみます。
メイン目標の入力
「来店数の増加」という目標を達成するために、どんな取り組み分野があるか、8つの大テーマ(基礎思考)を入力しましょう。基礎思考を書く際には、抽象的な表現で問題ありません。また、来店数の増加に直接つながる取り組み分野以外にも、「モチベーションの維持」といったものが入る場合もあるでしょう。
大テーマを実行するための具体施策(実践思考)を8個書き出す
次に、大テーマを実行するための具体施策(実践思考)を8つずつ書き込んでいきます。例えば、「ポスティング」という大テーマ(基礎思考)に関して、以下のような具体施策が挙げられます。
- ポスティング用チラシのコピー制作
- ポスティング用チラシのデザイン作成依頼
- ポスティング先エリアの割り出しと選定
- ポスティング予算の算出
- ポスティング業者の選定
- ポスティングの効果測定
- クレーム時の対応方法を決定
- 来店数のシミュレーション
完成
基礎思考から実践思考を洗い出すことを8回繰り返して、81マスすべてを埋めれば完成です。マンダラートが完成すると、64個の具体施策が洗い出されています。
書き出した施策すべてを実行することは難しいため、各施策の効果性や必要なリソースを踏まえて優先順位を付けて、行動計画に落とし込んでいきましょう。行動計画に落とし込むときには、「書き出した施策をやり切れば達成できるか?」という視点で考えることが大切です。
まとめ
記事で紹介した「マンダラート」は、抽象的・潜在的なアイデアを具体的に落とし込んで、目標達成のアイデアを可視化する効果があります。シンプルで簡単な手法でありながら、新たなアイデアの創出や視座の共有にも繋がるため、ぜひ活用してみてください。