マルチタスクとは、おもに仕事において、複数種類の仕事を並行して進める状態を指します。マルチタスクをうまく実践するには、一定のコツを押さえることが有効です。
本記事では、マルチタスクの概要とメリット・デメリットを確認します。確認したうえで、マルチタスクを得意とする筆者が、マルチタスクを実践するコツを紹介します。仕事の効率化に取り組みたい人は、参考にしてみてください。
<目次>
マルチタスクとは?
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マルチタスクとは、同じ人が同時に複数の業務や仕事を担当することです。
営業の仕事でたとえると、以下のような業務を同時並行で進めるイメージになります。
- 新規顧客へのテレアポ営業
- 既存顧客の訪問営業
- 見積書作成などの営業事務
- 新人のOJT指導
- 顧客からの問い合わせ対応
- 展示会の資料作成 など
上記の場合、同時並行で、といっても1日、また1週間のスケジュール内で切り替えながら並行させるイメージです。
一方で、“議事録を書きながら電話をする”なども一種のマルチタスクになります。こちらマルチタスクの場合、時間的にも本当に“同時に”実施している状態です。
シングルタスクとの違い
シングルタスクとは、一つの仕事に集中して作業を進めることです。
たとえば、先述の営業マンの例であれば、「今日は集中して、来週プレゼンの企画書を作成する」や「今日の午前中は、既存顧客への電話に集中する」といったイメージになります。
マルチタスクの場合、効率よく進めるために作業の組み合わせや優先順位を考えたりする“工夫”が必要です。対して、シングルタスクは、やるべき作業が一つだけのため、そういった“工夫”なしで集中しやすく、効率・スピード・品質などが上がりやすくなります。
マルチタスクは女性が得意?
「女性は男性よりマルチタスクが得意である」という通説があります。
女性は、太古の時代から、マルチタスクを必然的に求められる家事や育児を担当してきました。そのため、進化の過程で、マルチタスクに必要となる脳の機能が発展してきたとされています。
たしかに女性は一定のマルチタスクが得意な傾向はありますが、あくまで一般論です。なかには、女性であっても、マルチタスクが苦手な人は存在します。一方で、男性でもマルチタスクをうまく行なえる人もいるでしょう。
マルチタスクが得意不得意は、性差より個人差が大きいでしょう。また、得意不得意はあっても、マルチタスクに必要なスキルは後天的に鍛えることが可能です。
マルチタスクのメリット
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マルチタスクで作業を進めることには、以下の効果・メリットがあります。
複数の仕事を同時進行できる
たとえば、先述の営業が、営業事務と訪問営業の2業務を自分で担当すれば、営業事務の担当者に見積書の発行依頼などをしなくても、必要なときに自分で書類をつくり、作った書類を持ってすぐ営業に出かけられます。
また、訪問営業のアポイントメントがない日を利用して、来月の展示会に向けて資料を作成する……といったように、業務の業務を進行できることで、個人、また組織の生産性が上がるかもしれません。
仕事の効率が上がることも
マルチタスクをうまく組み合わせられると、時間のロスや仕事の停滞がなくなり、結果として業務効率化につながることもあります。
従来、製造分野では、複数の工程や作業を実施する“多能工”を育成することで、工場の生産性を高めるという考え方があります。多能工を育成することで、手持無沙汰な状態の人が生まれにくくなりますし、業務の繁閑差などにも対応しやすくなります。
マルチタスクのデメリット
マルチタスクはメリットもある一方で、効果性を高めるコツをうまく実践できないと、以下のデメリットや失敗が発生しやすくなります。
生産性が低下する
組み合わせる仕事やスキルによって変わる部分もありますが、ホワイトカラーの場合、マルチタスクをすると集中力の低下などから、結果として生産性も下がってしまうことも多くなります。
特に、いわゆる“兼務”と呼ばれる複数のポジションをかけ持つような状態は、どちらにも集中し切れなくなり、集中できない結果、パフォーマンスが上がらないことが多くなります。
最近では、営業プロセスなどでも、“THE MODEL”と呼ばれるような営業とインサイドセールス、カスタマーサクセスを分業することで生産性を上げる取り組みが普及するようになっています。
キャパシティを超えやすい
担当業務が多ければ、各業務の時間管理やコントロールも難しくなります。そのため、たとえば、マルチタスクでただでさえ忙しい人に想定外のクレーム対応が入った場合、あっという間にキャパシティを超えてしまうこともあるでしょう。
心の余裕がなくなりがち
ビジネスにおけるタスクは、大半に締め切りなどがあります。また、締め切りを前提にして、後工程の人がスケジュールを調整していたりもします。そうした仕事をマルチタスクで進めるなかで先述のような“想定外”が多発すると、「いまの調子で締め切りまでに間に合うのだろうか?」などの時間の焦りが強くなります。
また、たとえば、緊急性の高いトラブル対応などで他の仕事に納期遅れが生じた場合、自己効力感(自信)も低下し、心の余裕がどんどんなくなっていく可能性もあるでしょう。
マルチタスクを実践するコツ
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マルチタスクの例として、前章では営業の事例をあげましたが、「あれぐらいのマルチタスクは自分もやっている」と思う方も多いのではないでしょうか。仕事において一定のマルチタスクは誰にでも生じるものです。マルチタスク状態で生産性を高めるためには、以下のコツを押さえることがおすすめです。
“いま”取り組んでいる業務に集中する
たとえば、資料作成の合間に問い合わせメールへの返信を書き、気がついたときに新人のOJT指導をして、再び資料作成に戻る……のような進め方をしていると、それぞれの仕事の集中力やスピードが低下してしまいます。
マルチタスクのなかで仕事の質やスピードを上げていくには、「シングルタスクを切り替えていく」イメージで進めるのがおすすめです。
- 13時~15時 :展示会の資料作成
- 15時~16時 :問い合わせメールへの返信を一気にやる
- 16時~ :新人のOJT指導をする など
大切なのは、“いまこの瞬間”の業務に集中すること、集中できる状態を作ることになります。
適度な休憩をとる
マルチタスクをしていると、あれこれ考えることが多すぎて、いわゆる“脳疲労”の状態に陥り、集中力や注意力などが低下しがちです。
なお、人間の集中力は90分が限界であり、また、集中力の波は15分周期ともいわれています。そのため、マルチタスクの効果を最大化するには、いまの90分周期を意識しながら、適度な休憩をとることも大切です。
休憩をとる時間的余裕がないときには、デスクから離れて少し身体を動かすだけでも、脳疲労などから回復しやすくなるでしょう。
- 自動販売機まで歩く
- 別部署に書類を持っていく など
集中力の傾向などを把握して生かす
マルチタスクの効果を高めるには、自分の集中力の傾向を知り、時間帯によってやる仕事を変えるのも一つです。たとえば、朝型であれば、朝~午前に思考系の業務、日中はミーティングや作業を入れるなどもよいでしょう。
なお、時間帯の傾向には、個人差があります。たとえば、低血圧の人の場合、「朝はどうしても思考が回らない」ということもあるでしょう。まずは、いろいろことを試しながら振り返りを行ない、「作業Aは朝に向いている」など、自分なりの法則や最適なやり方を見つけていくとよいでしょう。
関連する業務はまとめて対応する
マルチタスクを効率よく進めるには、関連する業務をグループ化したうえで、それぞれをまとめて対応するのがおすすめです。
たとえば、客先に持っていく請求書・見積書などの書類も、“気がついたときに都度発行”よりも、“一日分をまとめて発行する”のほうが効率的なことが多いでしょう。
また、メールの確認・返信も、大事な資料作成中に都度チェックするのではなく、お客様などに迷惑がかからない範囲内で“1時間に1回”や“30分に1回”などのルールをつくったほうが、業務効率化につながりやすくなります。
タスク管理力を高める
マルチタスクに対応していくためには、まず、「自分がどのようなタスクを抱えているか?」をきちんと管理することが大切です。
タスク管理の最も基本となることは、タスクの一元管理です。繰り返しですが、1ヵ所ですべてのタスクを管理して、自分のタスクを一覧できる状態にしましょう。
抜け漏れを防ぐためには、会議やメール、電話などを通じてタスクが発生したら、必ずタスク管理の場所に書き込むことも大切です。
書き込んだうえで、タスク一覧に対して優先順位をつけて、前述したようなスケジュールへの効率的な入れ方を考えたうえで、スケジュールに当てはめて実行していきましょう。
最近は、デジタルのタスク管理ツールも増えています。
タスク管理ツールのなかには、タスクの可視化や優先順位付けが可能になるほかに、メンバーとの情報共有に使えるものもあります。一方で、紙のタスク管理にも、いくつかの良さがあります。自分に適したやり方を見つけて、うまく運用していきましょう。
適切な優先順位を付ける
マルチタスクを効果的に実施していくためには、タスクに適切な優先順位をつけていくことが求められます。
タスクの優先順位は、「時間管理のマトリックス」の考え方に基づいて、“緊急性”と“重要度”の2軸で考えることが効果的です。そして、タスクの優先順位を見極めたうえで、各タスクの所要時間などをかけ合わせて、具体的なスケジュールに落とし込んでいきます。
兼任を減らす
マルチタスクはある程度は必然的に生じるものですが、マルチタスクの範囲が広くなりすぎると、どうしても集中力が分散して、生産性が落ちてしまいがちです。
マルチタスクのデメリットやリスクを考えると、組織においては、なるべく兼務などが生じないようにするべきでしょう。
ただし、組織の成長過程などでは、どうしても兼務が必要になることもあります。しかし、マルチタスクの難しさを考えると、成長過程での兼務は一時的になるようにきちんと手を打っていくことが大切です。
まとめ
マルチタスクは、同じ人が同時に複数の業務を担当することを指します。
マルチタスクには、複数の仕事を同時進行できたり、場合によっては仕事の効率が上がったりするメリットもあります。ただ、適切に取り組まないと、逆に生産性が低下したり、キャパオーバーになってしまったりすることもよくあります。
そのため、マルチタスクを実践する際には、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。
- “いま”取り組んでいる業務に集中する
- 適度な休憩をとる
- 集中力の傾向などを把握して生かす
- 関連する業務はまとめて対応する
- タスク管理力を高める
- 業務に適切な優先順位を付ける
- 兼任を減らす
ある程度のマルチタスクは、多くの仕事で生じるものです。得意・不得意はありますが、タスク管理力などを高めて、適切に仕事をこなせるようにしていきましょう。
なお、タスクの優先順位を適切に決めるには、以下のページでダウンロードできる「時間管理のマトリックス」が参考になります。ぜひチェックしてみてください。
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