マトリックス組織とは?メリット・デメリット、企業事例【組織図を用いて解説】

更新:2023/07/28

作成:2023/04/10

マトリックス組織とは?メリット・デメリット、企業事例【組織図を用いて解説】

グローバル化や国内企業の海外展開により注目される「マトリックス組織」とは、どのようなものなのか、組織図を用いてわかりやすく解説します。

 

さらに、メリット・デメリット、導入時のポイントや事例もご紹介。導入前の基礎知識としてご覧ください。

<目次>

マトリックス組織とは

A事業部B事業部C事業部
エリア1
エリア2
エリア3

マトリックス組織とはマトリックス組織とは、単一縦型の指示系統ではなく、事業、職種、エリア、商品など複数の属性を組み合わせ、複数の指示系統で進められる組織です。

 

事業部とエリアを組み合わせた場合(図参照)、社員はそれら2つの部門(指示系統)に属します。多事業・多拠点の展開をする企業での導入が多いです。

マトリックス組織のメリット

企業の対応能力が増す

新規事業や案件のために新たな人材を採用する必要がなく、すでにいる人材で対応(チーム化)できます。顧客からのさまざまな要望への対応の柔軟性も向上するでしょう。

 

それぞれの事業やプロジェクト遂行に必要な要素(人材)を確保できる形態だからです。スピーディーに質の高いアウトプットを出す体制が整うため、顧客からも高い評価を得られるでしょう。

意思決定スピードが上がる

マトリックス組織の多くが、意思決定を事業ごと、プロジェクトごとに委ねられます。そのため、ピラミッド型組織などのように上の意識決定を待つプロセスが発生しません。

 

判断を待っている間に拡大や参入のチャンスを逃すということも少なくなります。

 

また、即座の撤退の必要性や問題解決に対しても、スピーディーに対処できるでしょう。

部署・部門を超えた強固な協力体制

事業、案件、商品ごとに他部署・他部門の社員間の協働が発生します。

 

たとえば、先に挙げた図でいうと、営業部に属する社員は、同時にいずれかのエリアにも属しているため、同じエリアに属する営業部以外の社員とも協力して仕事を進めていくのです。

 

これにより、各部門で個々に成長を目指すのではなく、部門間が協力し合って成長する体制を築くことができます。

人材の有効活用

マトリックス組織では、人材を複数の属性に配置するため人材の経験の幅が広がります。たとえば、営業と〇〇エリアのプロフェッショナルが育つのです。

 

言い換えると、新商品リリースのような場面でも、有効な人材がすでにいて、販売やプロモーションに必要な人材で体制を組むことができます。

 

人材が持つ知見たスキルを有効に活用できる仕組みなのです。

マトリックス組織のデメリット

指示系統が複雑化する可能性

複数の指示系統に属する社員は、端的にいえば複数の上司を持つことになります。どのようなことが起こる可能性があるかというと、それぞれに報告やレポートが必要になるでしょう。

 

または、エリアからの指示と職種部門からの指示が異なっていたり、時期が被ったりすることも考えられます。指示が複雑になることで部下に戸惑いが生じる可能性があるのです。

問題の発覚が遅れる可能性

意思決定がそれぞれの事業部やプロジェクトごとに任されるため、上層部や他の部署に報告や情報共有が遅れることがあります。

 

順調に進んでいれば、結果だけの把握でも問題ないかもしれません。そして、それがマトリックス組織でのメリットともいえます。

 

しかし、報告や情報共有の遅れは何らかの問題が発生するときにも生じやすいのです。各属性で抱えきれなくなってから顕在化するという可能性もあります。

マトリックス組織の導入方法

  • 1.自社に最適なマトリックススタイルの導入
  • 2.強固な情報共有の仕組みづくり
  • 3.定期的なヒアリングを行う

 

マトリックス組織を正しく導入するには、上記の3ステップを踏みましょう。1工程ずつ詳しく解説します。

1.自社に最適なマトリックススタイルの導入

マトリックス組織には主に3つのスタイルがあります。「バランス型」「ストロング型」「ウィーク型」です。自社事業の特性に合う最適なスタイルを採用しましょう。

 

バランス型【プロジェクトの責任者をそれぞれの部署から選ぶ形態】
実際にプロジェクトに関わる人材を選出するため、業務状況が迅速にキャッチできるのがメリットです。通常業務との兼任となるため、責任者の負担過多になる可能性もあります。
ストロング型【プロジェクトのマネジメントに特化した部署を別に設ける形態】
マネジメントだけを行う責任者を別に設けるため、バランス型のような責任者に負担が偏ることは防げます。このスタイルはどちらかというと規模が大きく、プロジェクトが複雑化した企業に向いています。
ウィーク型【プロジェクトの責任者を置かず、社員判断で進める形態】
所属や関係性が曖昧になり、スタイルが機能するかどうかは社員の能力や関係性に左右されます。一方で、社員の自由度は高まるでしょう。さまざまなアプローチ(プロジェクト)で同じ目標を目指す企業に向いています。

2. 強固な情報共有の仕組みづくり

社員にとって属する指示系統が複数になるため、メンバーに対する指示に矛盾やズレが生じやすいです。

 

対策として、上層間の情報交換を密にして、それぞれの意見の把握や認識の一致を図れる仕組みをつくりましょう。

 

また、問題発覚や解決の遅れも防ぐためにも、組織にある個々の事業部やプロジェクトで何をしているのか、何が起こっているのかの情報網を確立しておくことが大切です。

3.定期的なヒアリングを行う

マトリックス組織は変化やニーズに合わせた変更や調整が容易な点がメリットです。いつ変えるべきか、何をどう変えるべきかは現場の見解や体感が有力なヒントとなるでしょう。

 

定期的なヒアリングを行い、現状を見直していきましょう。同時に、個々の社員の負担状況や思いを吸い上げていくことも大切です。

マトリックス組織運用時の注意点

マトリックス組織を運用する際にとくに注意しておくべき点は2つです。良好な状態を保つために、しっかりと対策を取りながら進めていきましょう。

指示系統の明確化

マトリックス組織は、複数の指示系統が存在するため、社員に混乱や戸惑いや起こりやすいです。指示系統が複数になれば、複数の指示や情報が複雑になることは、必然的なことでしょう。

 

そこで。整備しておきたいのは、複雑化した際の優先順位の立て方やどのように対応するのかといったルールです。

 

また、指示を出すリーダー同士、(たとえばプロジェクトマネージャー同士)が密な情報交換を行い、意思疎通を図れる仕組みも欠かせません。

業務負担の偏り

複数の指示系統が存在することで、業務負担が大きくなることも懸念要素の一つです。

 

この点は、指示をするリーダー層にも、指示を受ける社員側にも起こり得るでしょう。

 

各社員のフォローをしっかりと行い、業務分担に偏りが出ないようにする必要があります。

マトリックス組織の企業事例

マトリックス組織の企業事例

 

電子部品メーカーとして世界有数の企業となった村田製作所もマトリックス組織を取り入れた経営を行っています。

 

各拠点・事業で独立採算制を取るだけでなく、本社から各拠点への人材サポート機能をプラスする三次元マトリックス組織です。

 

意思決定のスピードを有効活用し、現在も売上の40%を新しい技術や製品に入れ替えながら、現在でも業界のリーディングカンパニーとして君臨しています。

おわりに

一つの指示系統で運営するピラミッド型組織が多い中、マトリックス組織を採用するには大きな転換が伴うことが多いでしょう。体制の変化は、良くも悪くも従業員の負担を大きくします。

 

マトリックス組織で進めることがなぜ必要なのか、自社の何の解決に有効なのかなどを明確に伝えておくことも大切です。

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