新人の営業力を高め、成果の出せる営業に育てる3つのポイント

新人の営業力を高め、成果の出せる営業に育てる3つのポイント

新人を採用・育成する際に、初めはインサイドセールスや営業職として配属する、という会社は非常に多いかと思います。

 

その先で、さまざまな部門への異動があるにしても、まずはお客様との接点を経て、お客様のニーズや事業としての原点を経験してもらうという企業もありますし、現実的に収益をつくる営業部門への配属数が最も多くなるということもあるでしょう。

 

記事では、新人の営業力を高めるために、まず始めに教えておきたいポイント、そして、成果の出せる営業を育てるための3ステップについて解説します。

<目次>

新人が営業で成果を出せるようになるために「センス」は必要か?

営業の育成をするうえでは、“センス”という言葉が登場することがしばしばあります。

 

確かに、「人の言わんとすることをつかむ感覚の鋭さ」、「絶妙なタイミングであいづちを打つ感受性」、「相手が望む、受け入れられる言葉ですっと提案する表現力」などの対人スキルは、センスとしか言えない部分もあります。

 

そして、センスは、生まれながらのもの、また、いままでの人生での経験によって培われてくるものであり、一朝一夕に身に付けられるものではありません。

では、センスがないと営業として成果を上げることが出来ないのかといえば、そうではありません。確かにセンスがあることで成長スピードが速くなることはあるでしょうし、一流の壁を越えて“超一流”になるにはセンスが必要な部分もあると思います。

 

しかし、記事で紹介するような営業として成果を上げるための心構えと基本ステップを身に付けることで、センスに関係なく営業としての成果は上げられます。

 

実際に、初めの頃は「どうにも営業センスがない奴だなぁ・・・」と思われていたにも関わらず、営業としての基本を着実に身に付け、自分の強みを活かすことで、確実に成果を上げるようになった新人を過去何十人も見てきました。

 

新人営業の育成をするうえでは、“センス”という言葉に惑わされず、営業としての基本教育をしっかり行なうことで、必ず成果は上がりますので安心してください。

新人の営業力を高めるうえで、最初に教えたいこと

「新人 営業 教育」などのキーワードで検索をすると、じつに多くのサイトが出てきます。“新人営業の教育”に課題や関心をお持ちの人はそれだけ多いのでしょう。

 

そういったサイトを確認すると、「ヒアリング」「商品説明」「クロージング」「ロールプレイング」「OJTとOFF-JT」「同行営業とフィードバック」など、多くのキーワードが出てきます。

 

もちろん、上記のような営業活動の要素やテクニックをしっかり押さえることは大切です。しかし、新人の営業教育をするうえでは、個々のプロセスやテクニックの教育をする前に、新人たちに教えたいことが3つあります。

新人の営業力を高めるうえで、最初に教えたいこと1 「営業の役割」

「営業という仕事に対して、前向きなイメージを持っている若者は少ない」というのが悲しい現実であり、「営業」は、“ノルマに追われる”、“お客さんに売り込む”、“口がうまい人が活躍する”といった誤ったイメージを持っている若者も多くいます。

 

そのため、自ら営業職を志望して入社した人は少ないという会社も多いでしょう。そこで、新人営業の育成をするうえでは、最初に「営業の役割」について正しく理解してもらうことが大切です。

 

営業の仕事は、「価値を提供し、対価をいただくこと」ですが、理解している新人は意外と少ないものです。「価値を提供する」という考え方が、

  • 顧客の課題や実現したいことに興味を持つ
  • 顧客の興味・関心を知る
  • 自社の商品・サービスを価値創出の手段として説明する

といったことの基盤となります。

 

新人の営業力を強化していくうえでは、マインドセットとして営業の仕事がどういう役割を担い、どういう仕事なのかを認識させることを終始意識していくことが大切です。

新人の営業力を高めるうえで、最初に教えたいこと「営業プロセスの全体像」

新人の営業力を“センス”に頼らずに、確実に身に付けるためには、しっかりと論理だった営業活動を教える必要があります。その中でも、まず教えるべきことは「営業プロセスの全体像」です。

 

営業を経験されている人には基礎の基礎だと思いますが、営業(商談)は、「アイスブレイク」→「ヒアリング」→「提案」→「クロージング」の4つのステップに分解できます。新人営業を育てるうえでは、4つのステップの全体像、各ステップで達成すべきゴールを明確に教えることが重要です。

 

4つのステップは繋がっており、扱っている商品や営業スタイルによって、重要性や力を入れるステップは違ってきます。たとえば、「新規開拓中心の個人営業」と「ルートセールス中心の法人営業」でポイントは変わってきますが、「低単価の有形商材」と「高単価の無形サービス」でも変わります。

 

しかし、4つのステップ自体はどんな営業活動でも基本的に変わりません。従って、営業プロセスの全体像と、自社の商品・サービスにおける各ステップでのポイント、達成すべきゴールをしっかりと新人に教えましょう。

 

営業の実務的なスキルを教えるうえで、ロールプレイングや営業同行とフィードバックは定番の手法であり、効果的なやり方です。しかし、全体像の理解がないままに、次々にフィードバックやアドバイスだけをしても新人は混乱してしまいます。

 

営業プロセスと各ステップのゴールと実施のポイントという共通のフレームワークに沿って、その中で優先順位を付けながらフィードバックしていくことで、新人もフィードバックの理解や消化が促進されます。従って、新人営業を教えるうえでは、「営業のフレームワーク」「セールスステップ」といった営業プロセスの全体像と各プロセスのポイントをしっかりと提示することが重要です。

新人の営業力を高めるうえで、最初に教えたいこと3 「自社製品・サービスの価値」

新人の営業力を高めるうえでは、自社製品・サービスへの認識は非常に重要です。商品・サービスへの認識というと、製品紹介のトークスクリプト、スペック、利用手順、金額…といったものを思い浮かべるかも知れません。もちろん、これらの知識も営業活動を行なううえで必要です。

 

ただ、それ以上に新人営業を育てるうえで最初に重要なのは、自社商品・サービスの価値やストーリーを伝えることです。

  • 自社の商品・サービスがどのような顧客に対してどう貢献しているか
  • 顧客にどんな価値を提供しているのか
  • どんな沿革や経緯があって商品・サービスが生まれたのか
  • どんな気持ちでビジネスを展開しているのか

上記のような価値やストーリーをしっかりと伝えることで、新人は自社の商品・サービスに誇りや自信を持つことが出来ます。別の例えとして、カレーを例に挙げてみます。

  1. こだわりのスパイスを使用したカツカレー
  2. 「インドで出会った衝撃のおいしさを味わってほしい!」とシェフが20年かけて生み出した絶妙なスパイスのブレンド、そして、シェフの出身である鹿児島産のサツマイモ豚を使用した、リピート率95%のカツカレー

1と2は同じ“カレー”についての説明です。ただ、どちらのカレーを食べたいと思うか、そして、どちらのカレーのほうが自信を持って販売できるか、というと、多くの方が2ではないかと思います。

 

上記は少し強引な例かもしれませんが、単なる「機能」や「スペック」ではなく、「商品・サービスの提供したい価値」や「ストーリー」を新人営業には伝えることが大切です。

新人の営業力を高める3つのポイント

新人の営業スキルを高めるうえでは、具体的な営業スキルの指導に入る前に、前述した「営業の役割」「営業プロセスの全体像」「商品・サービスの正しい認識」をしっかりと伝えることが大切です。

 

また、3つの要素は営業スキルを指導したり、営業同行やフィードバックしたりするうえでも、常に意識しておくべきポイントです。

 

さて、続いては、営業スキルや商品知識の座学が終わり、先輩や上司の営業に同行するのではなく、少しずつ自分が営業するところに先輩や上司に同行してもらう、また、独りでの商談もやり始めた段階で大切な、新人の営業力を高める3つのポイントをご紹介します。

新人の営業力を高めるポイント1 「準備力を高める」

新人営業で経験が少ない場合、商談に際してどんな準備をすればいいか分かっていないことも多々あります。「ホームページを調べる」「商品を説明できるようにしておく」と言われても、

「WEB上で何を調べればいいか?」
「顧客ホームページのどこを見てどんな仮説が立てられるか?」
「商品・サービス説明に際してどんな準備をしておければいいか?」

が、まだ分からないのです。

 

従って、商談準備ぐらいはしているだと思っていても、じつは適切な準備が出来ていないまま商談に臨んでいることが意外と多いものです。従って、新人の営業力を高めるうえでは、「準備力」を高めることがじつは非常に重要です。

 

新人の営業力を高めるには、じつは「商談」の本番に対するアドバイスやフィードバックと同じぐらい、「商談の準備」に対するチェックやアドバイス、フィードバックが重要です。

  • 顧客ホームページでどんな項目をチェックすればいいのか?
  • 自社のデータベースはどう見ればいいのか?
  • 取引や提案履歴に応じて商品案内は何を準備しておくべきか?

など、ヒアリングする上での仮説や想定されるニーズ、相手の理解度等を想定した準備のやり方をレクチャーしたうえで、営業に行く前に、どういう準備をどのような意図で行ったのか、必ず確認してフィードバックすることで、新人の営業力は高めることが出来ます。

新人の営業力を高めるポイント2 「商談の流れを想定させる」

ポイント1での「準備」に続いて、もう1つ営業に行く前に「商談の流れ」を想定させることも大切です。

 

経験が浅いうちは、準備や取引履歴に基づいて、商談はどんな流れで行なうのか、どこでどういう話をするのか、何をヒアリングするのか、どういう提案をするのか、一通りの流れを漏れなくイメージさせることが大切です。

 

経験が浅いうちは「即興で対応する」ことは難易度が高いです。これも事前に準備することが大切です。また、計画を立てて想定するからこそ、「実際にやったときのズレ」を振り返って成長に繋げやすくなります。

 

営業スキルがまだ低いうちは、“今日の商談では何を実践するか”を決めておくことも大切です。アイスブレイク、ヒアリング、提案、クロージング…経験がなければ、すべての営業スキルを発揮することは不可能です。

 

営業同行する際にも、「今日はヒアリングに集中してやる」と合意しておくことで、ヒアリングのパートは新人に任せる、ヒアリングのパートに対して重点的にフィードバックするといったことが出来ます(もちろん、独りで訪問振り返る場合も同様です)。

 

ポイント1の「準備力を高める」とポイント2の「商談の流れを想定させる」ですが、“商談の前”に行なう指導がじつは新人の営業力を高める、また新人が営業で成果を上げるうえで重要です。

 

しかし、「営業同行後のフィードバック」はしっかり実施していても、「準備へのレビュー」をしっかり実施している会社は意外と少ないものです。ぜひ意識されてみてください。

新人の営業力を高めるポイント3 「フィードバック」

ここまでお伝えした通り、新人が営業で成果を上げるためには、準備が大切です。そして、準備を行なったうえで商談を行なうからこそ、訪問・商談後の「フィードバック」もより大きな効果を持ってきます。

 

経験が浅い新人は自分自身での振り返りに限界がある部分もありますので、初めのうちはここまでお伝えしたような「営業の役割」「営業プロセスの全体像」「自社商品・サービスの価値」、そして、「事前準備」を踏まえながら、先輩や上司がフィードバックしてあげることが良いでしょう。

 

フィードバックは、たくさんフィードバックし過ぎても一度に改善することは出来ません。優先順位が高いもの、2つか3つに絞るのがポイントです。また、ネガティブなフィードバック(ダメ出し)ばかりになると気持ちは落ち込んでしまいます。

 

前回の商談から進歩したところ、出来たところへのポジティブなフィードバックも併せて行ないましょう。

なお、少し経験を積んできたら、質問を通じて、新人自身に自分の営業を振り返ってもらうことも重要です。やはり他人から教えられたことよりも自分自身で考えた、見出したことのほうが納得感もあり、記憶にも残りやすくなります。質問する際には、下記のようなコルブの経験学習モデルも意識して行なうといいでしょう。

経験学習モデルとは、

  1. いまの商談はどんな流れだったか?(具体的な経験)
  2. 何がうまくいったか? 何がうまくいかなかったか?(振り返り)
  3. そこから何を学べるか? 今後にどう活かるか?(学びに昇華する)
  4. 次の商談で何をどう試すか?(学んだことを試す)

という4つのステップを踏むことで、「経験」を「成長」に繋げる考え方です。質問を通じてスムーズに考えられるところまで成長したら、今度は質問をフォーマット等に落として、自分自身で振り返る形にするのも1つです。

おわりに

新人営業を育成するうえでは、持っているコミュニケーション力のセンスで成長スピードが左右される部分が出てくるものです。そうすると、営業はセンスが大切だ、という話にもなりやすい側面があります。

 

しかし、ちゃんと新人の営業力を高める基本ポイントを押さえて育成していけば、成長スピードの差はあっても必ず成果はついてきます。

 

新人の営業力を高めるうえでは、細かな営業スキル等の前に、「営業の役割」「営業プロセスの全体像」「自社商品・サービスの価値」という3つの要素をちゃんと教えることが大切です。

 

また、具体的なOJTに入るうえでは、「準備力を高める」「商談の流れを想定する」という事前準備の指導が新人の営業力を伸ばすポイントになります。

 

事後のフィードバックはしていても、事前準備のレビューはあまりやっていないという会社も多いですので、実施していないようであれば、ぜひご実施ください。

 

営業は会社の業績を支える最前線です。個々のセンスや指導者の力量に左右されずに、営業の育成が出来るようになると、会社の成長も計画しやすくなるでしょう。

著者情報

近藤 浩充

株式会社ジェイック|常務取締役

近藤 浩充

大学卒業後、情報システム系の会社を経て、ジェイックに入社。執行役員としてIT技術者の派遣を行う「IT戦略事業部」の創設、全社のマーケティング機能を担う「経営戦略室」室長を歴任。取締役/教育事業部長として、社内の人材育成、マネジメントで手腕を磨く。2013年には中小企業向け原田メソッド研修の立ち上げを企画推進し、自部門および全社の業績を向上させた貢献により、常務取締役に就任。カレッジ事業本部長、マーケティング本部長、教育事業本部長等を歴任。

著書、登壇セミナー

・社長の右腕 ~上場企業 現役ナンバー2の告白~
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