2020年は新型コロナウイルス禍により不要不急の外出が制限された中で、Web面接、オンライン採用に取り組む企業が急増しました。Web面接、オンライン採用には多くのメリットがあり、緊急事態宣言が解除された今後も、多くの企業で継続される見込みです。
一方で、Web面接をどのように実施すべきなのかが手探り状態で、戸惑っている声も多く聞きます。記事では、Web面接のメリットとデメリット、効果的なWeb面接実施手法について解説します。
<目次>
- コロナ禍で急加速したオンライン採用とWeb面接
- Web面接を導入したメリットと得られる効果
- Web面接で懸念される3つのデメリットと対策
- Web面接を成功させるためのポイントと注意点
- オンライン採用、Web面接に使えるツール9選と選び方のポイント
- まとめ
コロナ禍で急加速したオンライン採用とWeb面接
新型コロナウイルスが採用シーズンを直撃することになった21卒の新卒採用では、多くの企業がオンライン採用やWeb面接を取り入れました。まずは、企業のオンライン採用やWeb面接の取り組みについて、基本的なところを押さえておきましょう。
新型コロナ対策としてWeb面接を実施する企業は7割に!
2020年5月25日付の日本経済新聞によると、新型コロナウイルス対策としてWeb面接を導入した企業は全体の約7割に上ると報道されています。さらに、1次選考から最終選考まで、選考の全工程をWebで完結する企業も全体の約4割あるということです。
21卒はコロナ禍に見舞われた特殊なケースではありますが、半分弱の企業が、「オンラインで説明会から最終選考をおこなって、対面での面接を経ずに内定を出す」という状況になっているということです。
Web面接は元々、遠隔地の候補者を採用したり、業務効率化を図ったりするため一部では導入されていましたが、今回の新型コロナウイルス禍によって急速にWeb面接が広がり、また、内定の意思決定もできると判断されていることが良く分かります。
中小企業でのWeb面接対応状況は?
Web面接、オンライン採用の導入は大手企業が先行していましたが、現在では、会社規模に関わらず社会的な流れとなっています。
例えば、今回の調査で、「Web面接を今後もおこなう予定はない」と答えたのは全体の18%であり、82%の企業は、Web面接を既に導入している、今後対応する姿勢を示しています。
企業規模により若干の差異はあり、社員規模1,000名以上の企業で「Web面接を今後もおこなう予定はない」と答えたのは0%。300~999人の中堅企業では10%、100~299人の中小企業では21%、100人未満になると35%になります。
企業規模が小さくなると未対応の比率が増えるとはいえ、100人未満の企業でも3分の2近くはWeb面接に対応済み、もしくは対応する予定という状況です。今後、対面での面接しかできないと、応募者から「変化に対応していない」「古い」と敬遠されることにもなりかねません。
Web面接を導入したメリットと得られる効果
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多くの企業がWeb面接を導入したきっかけは、新型コロナウイルスの影響によるものです。今回、これだけ一気に導入された中で、Web面接、オンライン採用を実行することでのメリットも明確になりました。Web面接やオンライン採用を導入して得られるメリットや効果について確認します。
1.母集団形成
1つ目のメリットは、母集団形成の増加に繋がる点です。
例えば、ゼミや研究室での活動が多い理系学生、1990年代に増えた郊外型のキャンパス、また地方学生等、企業に足を運ぶことの難しい学生にリーチしやすくなることがWeb面接、オンライン採用の最大のメリットです。
Web面接、Web説明会であれば、移動時間を必要とせず説明会や面接に参加ができるため、学生が気軽に応募できるようになります。これによる母集団形成へのプラス効果は非常に大きなものがあります。
2.選考活動の効率化、迅速化
Web面接は移動時間が必要ないため、学生との日程調整が容易になります。移動時間を含めた「前後1時間の移動+面接1時間」の調整よりも「面接1時間」のみという日程調整のほうが圧倒的に容易です。
従って、学生との面接もスピーディーに日程調整ができ、対面面接で組んでいく場合よりも、スケジュールを前倒して選考を進めることができます。
また、Web面接では、面接1回あたりの所要時間も、対面の面接よりも短縮化される傾向があります。
日程調整の手間が減って前倒しで選考を進められる、また面接の所要時間が減る分、採りたい応募者との面接(面談)回数を増やしたりする等の施策もおこないやすくなるでしょう。
3.コスト削減
Web面接、オンライン採用では、面接官の交通費や宿泊費、候補者の交通費(企業側で負担する場合)、面接会場のレンタル費用(外部会場を利用する場合)等の費用が節約できます。
とくに、コスト削減の効果は会社説明会においては顕著です。例えば、「地方に出張して外部会場を借りて説明会をする」と、会場代や出張旅費だけで1回数万円の費用と人事担当者の時間が取られます。
しかし、オンライン面説明会であれば、自社の会議室で説明会をおこなうのと同じで、移動時間も費用も必要ありません。むしろ、資料準備等をしなくて良い分だけ、オンライン説明会のほうがより効率的です。
4.現場マネージャー等の面接アテンドの効率化
採用では、選考において現場とズレを生じさせない、また、リアルな仕事のやりがいやロールモデルを見せることによる魅了付け等、現場との連携は欠かせません。現場のマネージャーや部門長等に面接官をしてもらうケースも多いでしょう。
その場合にも、Web面接は非常に有効です。例えば、本社と離れた研究所や工場、拠点にいるマネージャーや部門長に、面接官として参加してもらうこともWeb面接であれば容易です。
また、これまでは採用活動に参加してもらいにくかった地方拠点やサテライトオフィスの管理職等にも参加してもらうことも可能です。面接官が増えることによる選考スピードのUP、採用活動への参画感を作るうえでも、全社を巻き込むことは有効です。
Web面接の導入は、現場マネージャーのスケジュール調整が難しく選考スケジュールが長期化してしまったり、現場マネージャーが選考に参加できずミスマッチが起こってしまったりするリスクも、Web面接であれば軽減できます。
5.社員との面談、座談会がやりやすくなる
Web面接、オンライン採用を進めるうえでは、これまで以上に社員との座談会といった会社や職場の雰囲気、社員の人柄、仕事のやりがい等の定性的な魅力をしっかりと発信することが重要です。
対面での採用活動でも、社員との面談や座談会をおこなっている企業は多いですが、Web面接では益々大切になります。
こういった面談や座談会をおこなううえでも、オンラインツールを利用すれば、スケジュール調整が容易に進みます。また、会場確保等を考えずに、50人100人を対象とした座談会を開催することも可能です。
Web面接で懸念される3つのデメリットと対策
Web面接にメリットが存在する一方で、懸念されるデメリットやリスクもあります。きちんと把握して対策をおこなっておきましょう。
1.ネット環境によっては会話が途切れる
Web面接は、インターネットの技術、仕組みを利用したツールですので、安定したインターネット接続が不可欠です。インターネットの安定接続を確保するためには、次の点に注意しましょう。
- 必ず面接場所で通信テストをおこない、面接官側の安定した接続環境を準備する
- 使用するツールやブラウザの制限、必要なアプリのインストール等、学生側に事前準備のアナウンスをしつこいぐらいにおこなう(学生側にも事前にツールへの接続テストをおこなうように依頼しておきましょう)
また、お互いがきちんと準備しても、ネットワークの状況で接続が不安定になることもあります。従って、必ずバックアップ方法を準備しておきます。
- インターネットに繋がらない場合の対応(人事の連絡先)、面接中に接続が切れてしまった場合の対応(面接の冒頭で面接官の連絡先を共有して指示)を行います。
- 学生の声が聞き取りづらかったときには、お詫びをしたうえで丁寧に聞き返すように意識しましょう。対面での面接のように何気なく質問してしまうと、「対応が怖い」と候補者を怖がらせてしまう危険性があります。
2.対面に比べると応募者の表情や雰囲気が分かりづらい
通信環境とソフトウェアの発達により、最近は「匂い以外のものは全て分かる」というぐらいWeb面接の質は改善されています。
とはいえ、カメラの性能、通信状況等にもよって、対面と比べると、応募者の表情や雰囲気が若干分かりづらい部分があるのも事実です。
従って、Web面接では音声によるコミュニケーションが非常に重要です。構造面接によって相手の実力をちゃんと把握したり、フィードバックを通じて相手の反応や性格を見たりする工夫が必要になります。
また、情報が少ない分だけ、ハロー効果等に影響されないように面接で生じやすい心理的なバイアスについても知っておくと良いでしょう。
3.会社の雰囲気が伝わりづらい
採用企業側が“応募者の表情や雰囲気が分かりづらい”と考えてしまうのと同じように、応募者側も“会社の雰囲気や社員の人柄が分かりづらい”と感じてしまう傾向があります。
採用側の見極めができない感覚と同じで、実際にはそうかはさておき、“応募者がそう考えている状態”になると、内定後の意思決定がされづらくなります。
また、無意識に、待遇や条件、見栄え等の外見で会社選びをするウェイトが大きくなります。従って、ここへの対策は必須です。
具体的には、面接前に職場や社員の画像または動画をスライドショーで流しておく、面接内で画面共有を使って雰囲気や社員のエピソードを伝える、また、社員面談や座談会等を設定するといったやり方が有効です。
応募者に、少しでも身近に会社を感じてもらう、入社した自分の姿が想像できるように工夫しましょう。
Web面接を成功させるためのポイントと注意点
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Web面接を実施したことのない企業にとっては、オンラインの面接と従来の面接がどのように異なるのか気にしている方も多いのではないでしょうか?この章では、Web面接を成功させるためのポイントと注意点について解説します。
1.事前にオンライン面接についての説明を候補者におこなう
企業側にとってもオンライン面接について不慣れな部分や不安に感じることはあるかと思いますが、応募者も勝手が分からずに不安に思っている可能性があります。
また、「Web面接よりも対面のほうが有利になる」と思っている候補者もいたりしますので、Web面接についての不安を解消できるように以下の項目を説明しておくと、面接の入りがスムーズになります。
- Web面接を実施すること
- 合否で不利になったりすることはない
- Web面接の際に使用するツール
- 使用するツールの使用方法や事前準備
- Web面接のポイント
事前にメール等で上記を送付しましょう。また、ツールの使用方法と併せて事前の接続テストを依頼しておくと、万全の状態でWeb面接の場をセッティングできます。
2.カメラの位置を目線に合わせる
カメラの位置を目線に合わせることは、候補者からの「面接官の印象」に直結します。通常通り、机の上に置いたノートパソコンにあるカメラの位置だと、面接官がカメラを見下ろしているような目線になってしまいます。
そうすると、面接官の意図に反して圧迫面接のような雰囲気になり、面接が盛り上がりづらい、応募者を緊張させてしまうことになりますし、会社への印象としても決して良くありません。
厚みのある箱等にノートパソコンを乗せて、目線と同じ高さになるように調整することで、簡単に対策できます。
3.リアクションを強調すること
Web面接は、画面越しになるため、面接官の反応が候補者からは分かりづらくなります。また、声での相づちを多用すると、応募者側の発言を邪魔してしまい、声が聞き取れなくなります。
従って、少しオーバーだと思うぐらいに、頷く、首を振る、笑顔を出す、ジェスチャーを使って、「聴いています」というメッセージを発信しましょう。候補者が安心して話せる環境を作りましょう。
4.構造面接を意識する
Web面接においては、候補者の実力や行動、特性を見極めるために構造面接をおこなうことがおすすめです。決まった流れで質問していく構造面接をおこなうことで、音声による質疑で、見極めするのに十分な情報量を得ることができます。
初めて構造面接に取り組むうえで有効なのがです。STAR面接とは、1つのエピソードについて、以下の4つを確認していく面接手法です。
- Situatione:状況 ⇒ 置かれていた環境や状況、生じた課題について、事実と主観、慮法の側面でしっかりと情報を確認する
- Task:課題 ⇒ 状況における役割やゴールについて、確認する
- Action:行動 ⇒ おこなった行動を確認する。何をしたかだけでなく、何故したか、どのように決めたか、どのように進めたか、周囲とどう関わったか等を質問することで応募者の行動パターンや価値観、特性が見えてきます。
- Result:結果 ⇒ 結果自体の成否も参考材料ですが、同時に、結果をどう捉えているか、体験から何を学んだか、もう一度やるならどうするか等を聞くと、経験から学ぶ吸収力や内省力が見て取れます。
STAR面接を実施することにより、候補者の行動時の価値基準や結果の再現性をしっかりと判断することができます。また、話し方や印象に過度に左右されず、候補者の能力や特性を見極めることができます。
紹介したWeb面接を成功させるためのポイントは以下の資料でより詳しく紹介しています。
オンライン採用、Web面接に使えるツール9選と選び方のポイント
オンライン採用や面接に使用できる主要なツール9選ぶと選び方のポイントを解説します。
1.オンラインツール9選
オンライン採用やWeb面接に使用できるおすすめツール9選をご案内します。カッコ内は価格の情報です。
- Zoom(無料~)
- Cocripro(無料~)
- CiscoWebex(無料~)
- skype(無料~)
- Googleハングアウト(無料~)
- Meetin(30,000円~/月)
- HireVue(150,000円~/月)
- インタビューメーカー(29,800円~/月)
- HARUATAKA(50,000円~/月)
オンラインツールは大きく分けると、「オンライン面接専用のツール」と、「Web会議ツールをオンライン面接に流用するもの」と2つに分けられます。上記でご紹介した1~5までがWeb会議ツール、6~9まではオンライン面接専用ツールです。
- 価格が安い(制限はあるが無料版も多く、有料版も数千円程度)
- オプション等と組み合わせると、Web説明会も実施できることが多い
- 「映像と音声を繋いで面接できる+画面共有できる」機能だけであることが大半
- 使えるブラウザの制限やモバイル利用にはアプリが必要等の制限も多い
- 録画面接やステータス管理、所感メモ、ファイル添付等の機能があり、これ1つで採用管理ができる
- ブラウザの制限やアプリ利用等の制限がなく、URLをクリックしてもらうだけで使えるものが大半
- 価格的にはWeb会議ツールよりも高い
というのが大まかな特徴です。また、それぞれのツールによって特徴や違いもあります。自社が採用管理をどのようにおこなっているか、何を実現したいかによって最適なツールは異なります。
以下にツール9選の特徴を簡単にまとめて紹介しているので、興味のある方はぜひチェックしてください。
2.ツール選びのポイント
ツールを選ぶ際、まず考えるべき点は、「候補者に負担をかけないこと」です。そのような観点からツールを選ぶ場合には、以下の点に注目すると良いでしょう。
- スマホからでも利用可能
- 会員登録やアプリのダウンロードが不要
- 使い勝手がシンプルで迷わない
現在シェアを伸ばしているZoomは、モバイルでの利用にはアプリが必要ですが、大学キャリアセンターでの導入率も高く、導入企業も多いことから、あまりアプリのダウンロードがハードルになりづらいと言えるでしょう。
このように、ツールの普及度によっても、会員登録やアプリのダウンロードの負担は変わります。
また、ツールを選ぶ際、「多機能なほうが良いのではないか?」と考えがちですが、Web面接ツールの場合には、多機能であることは費用に跳ね返ります。また、自社の採用管理のやり方によっては必要ない機能もあるでしょう。
自社の採用管理をどのようにおこなっていて、導入するツールで何をおこないたいか整理し、機能が必要最小限のツールを導入することをおすすめします。
なお、現在トップクラスの導入率となっているZoomを使ってweb面接/web説明会をおこなうための基礎知識を以下の資料で紹介していますので、ご興味あればご覧ください。
まとめ
新型コロナウイルス禍の影響で、非常に多くの企業でWeb面接、オンライン採用が導入されました。今回導入されたWeb面接は利便性が高く、2020年だけでなく、今後も利用される可能性が高いでしょう。
今回の事態を1つのきっかけとして、Web面接を効果的に活用できるようにすることで、採用の競争力を高めましょう。








