「面談」と「面接」の違いとは?採用効果を左右する上手な使い分けの秘訣

「面談」と「面接」の違いとは?採用効果を左右する上手な使い分けの秘訣

最近は、採用活動のプロセスに「面談」を組み込む企業が増えています。面接と面談、似たような言葉ですが、違いや使い分けのポイントなどを把握されているでしょうか。

 

記事では、面談と面接の違い、使い分けのポイント、面談・面接をそれぞれ実施する際のコツや具体的な手順を紹介します。

<目次>

「面談」と「面接」の違いとは?

どちらも企業の採用プロセス内で実施されるものですが、主に3つの違いがあります。

 

「立場」の違い

面談は、企業側と応募者側が相互理解を深める話し合いの場であり、立場は対等です。もちろん面接も立場は対等です。

 

しかし、面接は合否を判定する選考の一環として位置付けられているため、応募者側の心理として「選ぶ側」と「選ばれる側」という立場の違いを意識してしまいがちです。面談は合否に関係がないからこそ、応募者が対等な意識を持って参加しやすくなります。

 

「目的」の違い

面談は、フランクな情報交換により「ミスマッチを減らす」こと、また、企業側からすると「応募者の志望度を高める」ことが主な目的です。応募者に対して自社の魅力をアピールして志望度を高めるとともに、より詳しい実情や社員との接点を通じて、ミスマッチを減らします。

 

面接は、志望度を高めることも大切ですが、同時に、自社が求める人物像に合致するかどうかを見極めて「合否を決める」ことも最も大きな目的となります。

 

「内容」の違い

面談は、企業と候補者が相互理解を深めることが主眼となるため、双方向のフランクなコミュニケーションの場として設定されます。

 

対して面接は、前述したように「選ぶ」「選ばれる」という応募者の心理なども反映して、企業が主導権を握って場をリードする展開が基本的な形です。結果として、企業からの質問に応募者が答えるというコミュニケーションになることがほとんどです。

面談と面接が使い分けられるようになった理由

過去の採用活動では、ほとんど面接だけが行われてきましたが、近年では採用プロセスに面談を組み込む企業も増えてきました。面談を実施する企業が増えてきた背景には、以下のようなものがあります。

 

人材獲得競争の激化

この数十年で終身雇用は完全に崩壊して転職・中途採用が完全に一般化しました。一昔前は、転職にはネガティブなイメージもありましたが、最近はキャリアアップを目的とした転職も増え、ある意味で気軽なものとなっています。

 

ツールとしても、ネット媒体やキャリアSNS、またオンライン採用が普及して、在職中に気軽に始められるものになっています。結果として、自分の「市場価値」を意識するビジネスパーソンは増えていますし、優秀層はこれまで以上に引く手あまたの状況で、応募者が企業を選ぶ時代になっています。

 

こうした社会情勢の下、これまでのように候補者を一方的に見定めようとする企業姿勢では、優秀な人材の関心を引くことは難しくなっています。激しい人材獲得競争の中でめぼしい候補者と出会えた際は、「面談」で自社の魅力をアピールして応募を促したり、志望度を高めたりする姿勢が必要になっています。

 

「攻め」の採用における母集団形成

前述の通り、転職市場において、優秀な人材は常に「売り手市場」となっています。求人広告を出して応募者を募る「待ち」の採用だけでは、優秀層はなかなか集まりにくいのが実情になっています。

 

結果として、ダイレクトリクルーティングやキャリアSNSなどのサービスが広がり、スカウトメールなどを送付する「攻め」の採用活動を実施する企業が増えています。ダイレクトリクルーティングなどでは、スカウトメールに返信してもらうために、いきなり選考に応募してもらうのではなく、まずは「カジュアル面談」を提案することが一般的です。

 

このようにダイレクトリクルーティングに代表される「攻め」の採用活動を行う上で、面談は母集団形成の役割を持っています。カジュアル面談で自社の魅力を伝えて選考に応募してもらうというステップです。

 

選考ステップ内における面接と面談の使い分け

上述のような、応募者が選考に応募する前に実施する面談だけでなく、選考ステップ内で面談を実施する場合もあります。応募者の企業理解を深めたり、現場の社員と会わせることで魅力付けをしたりするのが主な目的です。

 

また、採用内定を通知するタイミングで面談を実施する場合もあります(オファー面談)。オファー面談は、内定者の不安や懸念等を払しょくしてスムーズな内定承諾につなげることが主な目的です。

 

実施NGな「面談という名の面接」

なお、企業によっては新卒採用の活動期間などの関係で、実態は選考(面接)である場を、面談という名で実施しているケースもあります。

 

いまの時代、SNSなどですぐに情報が共有・公開されますので、「面談という名の面接」は企業イメージを損ねるリスクがあります。選考を実施するにも関わらず、「面談」という名で実施するようなグレーな行為は避けたほうが無難でしょう。

面談を行う際のポイントと具体的な手順

本章では、面談を行う際のポイントと具体的な実施手順を紹介します。

 

面談のポイント①質問ではなく対話を大事にする

前述の通り、面談は対等な立場で相手に自社の魅力を伝えたり、相互理解を通じて採用のミスマッチを防いだりするためのものです。従って、一方的に応募者への質問を投げかけるような進行はNGです。

 

面談を担当する社員にも、事前に位置づけや目的を十分に説明して、面談の効果を最大限発揮できるように配慮することが大切です。ざっくばらんなコミュニケーションの場であることを常に意識し、フランクな対話を通じて自社を紹介すると共に、応募者からも情報を引き出すようにしましょう。

 

面談のポイント②リラックスできる雰囲気を作る

フランクに対話するためには、応募者が話しやすい雰囲気を作ることもポイントになります。面談の場が堅苦しくなると応募者が身構えてしまい、対話を通じて理解を深めるという、面談の目的が果たせなくなってしまいます。

 

はじめに、選考ではなく対等に対話するという“場の設定”を伝えたり、冒頭はお互いに話しやすいテーマなどで気軽な雑談やアイスブレイクを丁寧に実施したりするなどが有効です。

 

また、対面での実施であれば、お菓子や飲み物を出して面接と違う雰囲気を演出する、ビジネスカジュアルで実施する、ランチMTGの形で実施するなど、形としてもリラックスしやすい雰囲気を作るように心がけるとよいでしょう。

 

面談のポイント③現場の社員と話せる機会を作る

中途採用で、とくに優秀層になると、採用先での具体的な業務内容や仕事の進め方、自分に期待される成果、体験できる仕事や入社後のキャリアプランなど、かなりしっかりと中身を知りたいというニーズを持って面談に参加することも多くなります。

 

また、専門職種の応募者に対して仕事内容や得られる経験を具体的に伝えるには、人事担当者では知識不足な点があることも多いでしょう。

 

応募者に対して自社の隠れた魅力や仕事のやりがいを余すところなく伝え、突っ込んだ質問にも満足のいく回答を出せるようにするためには、業務を理解している部門の幹部やマネージャー層、また現場の社員と話してもらう機会を作ることも大切です。

 

面談の手順①アイスブレイク

前述の通り、本題に入る前に話しやすい話題を用意して、応募者の緊張を和らげて双方が話しやすい雰囲気を作るアイスブレイクをすることが大切です。気候や時事情報、食べ物など当たり障りのない会話、また、業界や会社のニュース、お互いの共通項や共通の話題など、初対面でもあまり深く考えずに会話できるテーマを選ぶと良いでしょう。

 

面談の手順②自己紹介・自社紹介

アイスブレイクで空気が和んだところで、面談担当者の自己紹介と自社の紹介からスタートします。面談担当者の方から自分のことを進んで開示すると、相手も同程度の深さで自己開示してくれることが多いでしょう。

 

応募者に安心感を与え、フランクな会話ができるようにするためにも、企業側から積極的に相手に歩み寄って、話しやすい雰囲気を作るようにしましょう。

 

面談の手順③質疑応答

自社についての紹介が終われば、応募者からの質問や相談などに答える時間へと移ります。面接のようにかしこまった一問一答にならないように注意するとよいでしょう。

 

応募者からの質問や相談には、誠意をもって対応する姿勢をアピールすることが大切です。即答できないような質問は曖昧に答えず、「後日詳細を調べてメールで資料を送ります」などと回答して忘れずにフォローすると良いでしょう。また、まだできていないこと・整っていないことなども嘘をつかず誠実に回答しましょう。

 

質疑応答を通じて、相手の興味関心や経歴などが見えてきたら、興味関心にマッチするような情報を提供したり、相手の経験や強みが生かせる環境があることなどを伝えたりして、応募意欲を高めていくことを心がけましょう。

 

面談が設定された状況にもよりますが、応募前のカジュアル面談では、相手が転職する前提や応募する前提などで質問してしまうと、会話がズレてしまうこともあるので、注意が必要です。

 

面談の手順④次回への誘導

面談が順調に進行したようであれば、面談の最後に今後の流れについてしっかりと確認しましょう。応募前のカジュアル面談であれば、選考に進んでもらうようにクロージングする流れになるでしょう。

 

相手の意欲が応募するまで高まっていないように感じられる場合は、セミナーや社内見学会、別の社員との面談へ誘うなど、つながりを残す終わり方にするのが有効です。

 

なお、面談終了後には面談に参加してくれたことへのお礼、また、次ステップを決めて終了した場合は次に会わせたい社員のプロフィールや資料、誘ったイベントの詳細などの情報を面談終了後すぐに連絡しましょう。

面接を行う際のポイントと具体的な手順

本章では面談と面接の違い、面談のポイントをより明確にイメージ頂くために、面接を行うポイントと具体的な実施手順を簡単に紹介します。

 

面接のポイント①自社に適した人材を見極める

面接の第一目的は、限られた時間内に適切な質問を投げかけることで、応募者の合否を判断するための材料をできる限り多く集めること、いわゆる“見極める”ことです。

 

履歴書や職務経歴書から見えるスキルや経験などを基礎情報としながらも、質問を通じて仕事観や価値観、行動傾向などの「情報収集」を行い、情報を採用基準に従照らし合わせて「評価と合否判定」を行うことになります。

 

見極めが難しいのは、行動傾向や価値観、仕事観などの内面部分を踏まえて、自社での活躍可能性です。エピソードなどを深掘りして、意思決定の仕方や行動傾向、周囲とのかかわり方などを確認していきましょう。

 

資格や職歴の有無、筆記試験の結果などと違って、内面部分は抽象的・定性的になりがちです。採用基準をしっかりと言語化すると共に、決まった方でエピソード等を深掘りしていくような「構造化面接」を取り入れて、経験に関わらず一定品質で面接ができるようにすることも有効な方法です。

 

面接のキーポイント②自社の魅力づけを行う

質疑と対話の中で自社の魅力を伝えて、応募者の志望度を高めることも面接の重要な目的の一つです。

 

会社としての特長や大切にしている考え方などが分かる事例、活躍している社員(応募者に近い人)のエピソード、面接担当者自身が入社を決めた理由など、具体的なエピソードで語ると魅力づけにつながりやすくなります。

 

説明会などのように一対多で一方的に伝えるのではなく、一対一で対話しながら伝えられるからこそ、応募者の価値観や回答を踏まえて、情報提供していくことが面接で魅力付けする際のポイントです。

 

また、応募者自身が納得感を持って入社意思を固められるよう、自社の長所だけでなく課題や弱みも正直に伝えて信頼関係を築きながら、入社動機を形成していくことを意識しましょう。

 

なお、面接における面接官の対応は自社の印象を大きく左右します。応募者を圧迫するような進行や高圧的な態度、上から目線の言動にはくれぐれも注意しましょう。最近はSNSなどで簡単に情報が拡散されてしまうリスクもありますので、採用可否に関わらず丁寧に対応することが大切です。

 

面接担当者には「自分が会社の代表である」という意識を持って面接に臨んでもらうよう働きかけましょう。

 

面接の手順①アイスブレイク

応募者の緊張を和らげ双方が話しやすい雰囲気を作るため、最初は面談と同じように話しやすい話題から入ると良いでしょう。面接は応募者を“見極める”場ですが、応募者が自分のことを伝えやすい場をつくる、相手が持っているものを引き出すのは面接官の大事な仕事です。

 

ただ、面接は選考プロセスとしての位置づけになりますので、面談の場合ほどカジュアルな雰囲気作りを意識する必要はありません。なお、アイスブレイクの中で、面接の進行や大まかな時間配分などに関しても応募者に共有するとスムーズに進むでしょう。

 

面接の手順②応募者への質問

応募者の適性や希望を理解して、合否を見極めるために質問を投げかけていきます。過去の経験やエピソードを深掘りして自社での活躍可能性があるかどうか。また、描いているキャリアプラン、具体的にどんな仕事を希望し、どのような働き方を望んでいるのか等が自社のポジションと一致するかどうかなどを確認していきます。

 

応募者が合格基準に達しているようであれば、質問への回答に重ねて「あなたのその経験が自社だと生かせる」「そういう仕事への姿勢であれば自社でも活躍できる」「そういったキャリアを築きたいのであれば自社で叶えられる」など、魅力づけの情報提供をしていくことも大切です。

 

なお、面接は応募者の欠点を見つけて落とすための場ではなく、自社にとって有用な人材を採用するのが目的です。減点主義ではその人の良さを見出せません。「この人にこんな仕事を任せたら良いかも…」と前向きにイメージしながら、質問を投げかけていくことも肝要です。

 

面接の手順③質疑応答

一般的に面接後半では、応募者からの質問に答えて双方の意思疎通を図ります。相手の知りたいこと、気になっていることを忌憚なく聞いてもらって真摯に答えることで、次の選考に進んでもらえる可能性も高くなるでしょう。

 

質疑応答は相手の価値観、興味関心、志望度などが現れる部分でもあります。相手の質問意図などにも気を配りながら、しっかりと集中して情報提供していきましょう。「採用したい」と思う相手であれば、現時点での他社との併願状況や、自社に対する志望度などを確認しておくことも大切です。

 

面接の手順④締めくくり

面接に参加してもらったことへの感謝と労いの言葉を述べ、合否の連絡を含めた今後の採用の流れを伝えます。

採用力の向上におススメな「面談」の実施

転職が当たり前のものとなり、また、ダイレクトリクルーティングやSNS経由のソーシャルリクルーティングなどの「攻めの採用」も増えている中で、採用プロセスに「面談」を組み込む企業が増えています。

 

たとえば、ダイレクトリクルーティングやソーシャルリクルーティングでは、応募前にカジュアル面談の場を設けることで、返信のハードルを下げて、母集団形成に役立てる、また潜在的な応募者と接点を取ることが一般的です。

 

また、採用プロセス内に選考(面接)ではない面談の場を設けることで、相互理解を深めて応募者の志望度アップにつなげたり、ミスマッチを避けるような取り組みをしたりする企業も増えています。

 

自社の選考プロセスが面接だけで構成されている場合には、ぜひ記事を参考に、面談をうまく活用して必要な人材の採用につなげてください。

著者情報

知見寺 直樹

株式会社ジェイック 取締役|上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 副董事長

知見寺 直樹

東北大学を卒業後、大手コンサルティング会社へ入社。その後、株式会社エフアンドエム副本部長、チャレンジャー・グレイ・クリスマス常務取締役等を経て、2009年ジェイック常務取締役に就任。総経理として上海法人(上海杰意可邁伊茲企業管理咨詢有限公司 )の立ち上げ等を経て、現在はHumanResourceおよび事業開発を担当する。

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