採用証明書とは、失業保険受給中の失業者がハローワーク経由で再就職が決まったことを証明する書類です。企業が採用活動をしていると、内定を承諾した求職者から採用証明書を求められることがあります。
本記事では、採用証明書の概要、また、採用証明書の書き方を解説します。よくある質問と答えも紹介しますので、参考になれば幸いです。
<目次>
採用証明書とは?なぜ必要?
採用証明書とは、失業保険受給中の失業者がハローワーク経由で再就職が決まったことを証明する書類です。
採用証明書を発行する理由とは?
内定承諾した内定者は、以下2つの目的で、企業に採用証明書の発行を依頼します。
- 失業手当の受給を停止するため
- 再就職手当を受給するため
失業手当の受給を停止する
まず、失業手当は、以下2つの目的で給付されるものです。
- 失業中、安定した生活を送れるようにするため
- 再就職までの期間を短縮させるため
失業手当は、失業中の人が再就職するまでの期間をサポートするための制度です。
再就職の決まった内定者は、再就職先の企業に採用証明書を発行してもらい、ハローワークに再就職の報告をすることになります。
なお、失業手当の支給は、採用証明書をハローワークに提出したらすぐに止まるわけではありません。失業手当は、雇用契約が開始する前日までもらえます。
内定者はハローワークに採用証明書を提出しないまま再就職してしまうと、失業手当が停止されず、失業手当の不正受給になってしまいますので注意が必要です。
再就職手当を受給するため
再就職手当は、就職先が決まったときに支給されるお祝い金のようなものです。
失業手当の受給中に内定をもらった場合、失業手当が停止する代わりに再就職手当がもらえます。
再就職手当には、早期の再就職を促すために支給されるもので、早期に再就職するほど大きな金額をもらえるようになります。
再就職手当の金額は、失業手当の所定給付日数と支給残日数で以下のように変わってきます。
採用証明書の書き方【記入例】
ハローワークでは、失業保険の申請時に配布する「受給資格者のしおり」のなかに、採用証明書の用紙を入れています。
内定者が採用証明書を企業に持参した場合は、用紙に記入をして返却する流れです。
遠方の内定者が採用証明書を持参できなかったり、紛失したりしたなどの場合は、ハローワークのホームページから用紙をダウンロードすることも可能です。
なお、採用証明書の様式は自治体によって異なる場合があるため、採用証明書のフォーマットをダウンロードするときには、相手が登録している管轄のハローワークを確認してダウンロードしましょう。
採用証明書には、内定者と企業がそれぞれ記入する箇所があります。
本章では、東京ハローワークの雛形をもとに、採用証明書の記入項目と、記入時のポイントなどを解説します。
出典:雇用保険の給付を受けている皆様へ(東京ハローワーク・採用証明書のダウンロードページ)
出典:採用証明書(東京ハローワーク)
内定者が記入する箇所
内定者本人が記入するのは、基本的に「支給番号」のみです(支給番号は本人しか把握できない情報)。
まず内定者は、雇用保険受給資格者証を見て支給番号を記入し、次に就職先の企業にほかの項目の記入を依頼することになります。
企業が記入する箇所
企業は、以下の項目を記入します(詳しい項目は、地域によって異なりますが、大きく異なることはありません)。
- 氏名
- 生年月日(年齢)
- 住所
- 電話番号
- 雇入年月日(一週間の所定労働時間)
- 従業員数
- 職種
- 雇入年月日前の就労の有無
- 採用経路
- 雇用形態
- 雇用期間の定めの有無
- 企業の所在地や名称、代表者氏名など
- 押印
項目の中で最も注意すべきなのは、「雇用年月日」の考え方です。
雇用年月日には、事業主と本人の間で契約した雇用期間の初日を記入します。ただし、初日には以下の期間も含まれます。
- 臨時職員
- パートタイマー
- アルバイト
- 研修期間
- 試用期間 など
以下のケースに該当する場合は、特に注意が必要です。
雇入日が休祝日の場合:1月1日付で雇入、仕事初めの4日から出勤 ⇒雇入日は「1月1日」になる
出勤すべき初日に欠勤した場合:雇入日の1月20日に欠勤をして21日から出勤 ⇒雇入日は「1月20日」になる
臨時や試用期間、アルバイトなどの期間がある場合:1月20日~31日まで試用期間、2月1日付で正社員の場合 ⇒雇入日は「1月20日」になる
また、「従業員数」の項目には、支社・支店・営業所などを含む企業全体の人数を記入します。
詳しい記入方法がわからないときには、ハローワークに問い合わせてみてください。
採用通知書に関するQ&A
最後に、採用通知書に関するよくある質問と答えを紹介します。
提出期限に間に合わない場合は?
採用証明書の提出期限は、就職日から1ヵ月以内です。
なお、再就職手当を受給するには、採用通知書のほかに、再就職手当支給申請書・雇用保険受給資格者証もハローワークに提出する必要があります。
例外として、内定者が勤務する事業所ではなく本社で採用証明書の記載をする形になっており、社内の手続等の書類のやりとりに1ヵ月以上かかる場合などは、内定者からハローワークに電話をして、提出期限に間に合わない旨を伝えてもらう必要があります。
ハローワークへの提出は企業or個人?
採用証明書をハローワークに提出するのは、個人(内定者本人)であり、企業は採用証明書の手続きにおいて、先述の内容を記入・押印するだけになります。
なお、失業給付の受給者は、内定承諾をしたあと以下の流れで失業給付の停止と、再就職手当の受給手続きを進める必要があります。
- 1.ハローワークに就職が決まったことを報告する
- 2.採用証明書を準備し、就職先に記入してもらう
- 3.採用証明書をハローワークに提出する
- 4.雇入日の前日に、ハローワークで最後の失業認定を受ける
- 5.就職後、就職先の企業に再就職手当支給申請書を記入してもらう
- 6.雇入日から1ヵ月以内に、再就職手当支給申請書・雇用保険受給資格者証をハローワークに提出する(3の段階で採用証明書を提出できない場合、ほかの2書類と一緒に提出する)
内定者から依頼がなければ何もしなくて良い?
たとえば、たくさんの中途社員を一度に採用した場合、企業は誰が失業保険の受給者か不明なため、基本的には内定者から依頼がない限り、企業が自ら採用証明書をつくる必要はありません。
また、内定者が失業給付の停止や再就職手当のことを知らなくても、4週間に1回は失業の認定日があるため、ハローワークの相談員と話すことで、採用証明書などの必要性に気付くでしょう。
ただし、各種事務手続きや今後のスケジュールを伝える書類やメール内に、「採用証明書が必要な方は、◯月◯日までに△△までご連絡ください」などの記載をしておくと親切でしょう。
まとめ
採用証明書は、失業給付の受給者が内定承諾したときに、以下2つの目的でハローワークに提出する書類のことです。
- 失業手当の受給を停止する
- 再就職手当を受給する
採用証明書は、原則として就職日から1ヵ月以内に、内定者本人がハローワークに提出する必要があります。
企業側は基本的に内定者の誰が失業給付の受給者かは把握できません。したがって、基本的に内定者側から依頼された場合に対応すれば大丈夫です。
しかし、内定から入社までの案内書類などの中に「必要であれば採用証明書の作成を依頼してください」など、採用証明書に関する一文を入れておくと親切でしょう。