【圧迫面接とは?】企業にとっての圧迫面接のリスクと圧迫面接に代わる手法

更新:2023/03/07

作成:2022/11/06

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

【圧迫面接とは?】企業にとっての圧迫面接のリスクと圧迫面接に代わる手法

 圧迫面接は、もともと1990年代にアメリカ企業で開発された面接の手法で「Stress Interview(ストレスインタビュー)」として世界各国に広まったものです。

 日本における企業の採用活動でも取り入れられた時期がありましたが、近年は社会的なコンプライアンスや権利意識の高まりによって、圧迫面接を行う企業は非常に少なくなっています。

 最近では、就活生が「圧迫面接をされた」とSNSに投稿して炎上するようなことあり、圧迫面接をすることは企業にとってリスクになり得ます。

 記事では、圧迫面接とはどのような手法で何を目的とするのか、今の時代に実施するとどのようなリスクがあるかを確認したうえで、圧迫面接に代わって適性を見る手法、また基本となる面接官の注意ポイントを解説します。

<目次>

圧迫面接とは?

 圧迫面接とは、面接官が応募者を心理的に追い詰めるような対応をして、それに対して応募者がどのように反応するのかを見る面接手法のことです。

 かつては多くの企業の採用面接で実際に行われていましたが、現在では多くのリスクや弊害があることからほとんど行われなくなっています。

圧迫面接を行う理由①ストレス耐性を見る

 ストレスが多い職場では、採用しても早期に離職してしまうことが悩みの種となっており、定着する人材を見極める必要があります。

 社内おけるハラスメントは論外としても、確かにビジネス社会で働く上でストレスを受ける場面に遭遇することは少なくありません。

 特に営業職やサービス職では、顧客との難しい交渉を迫られるケースもあります。

 応募者がそうしたストレスに耐えることができるのか、またストレスがかかった状況でもしっかり対応できるのかを見るために圧迫面接は行われます。

圧迫面接を行う理由②機転が利くかどうかを見る

 厳しい場面に追い込まれても、その場ですぐに適切な反応ができる人材は、頭の回転がいい、機転が利くと判断されます。

 面接の際に、予想外の状況に追い込んだり、今まで考えたこともないような質問をしたりすることで、機転を利かせて適切な対応ができるかどうかを見ることも圧迫面接の目的です。

圧迫面接を行う理由③素の反応を見る

 想定していなかった状況や、追い詰められた場面では素の人間性が現れます。

 圧迫面接をすることで、面接用に用意してきた受け答えではなく、日ごろの姿勢や態度を見ることができます。

典型的な圧迫面接のやり方

 圧迫面接は具体的にはどのような形で行われるものでしょうか。典型的な4つの手法を紹介します。

1.無関心な態度

 応募者が質問に対して真剣に答えているにもかかわらず、聞こうとする姿勢を見せず、つまらなそうな態度を取ります。

 応募者は、自分の回答がダメなのではないか、自分はもう見込みがないと思われているのではないかと不安に襲われます。

2.威圧的な言動

 面接官が腕組みをして応募者を睨みつけたり、大声で強い言葉を発したりするような態度は、応募者にとって威圧的と感じられます。

 精神的な圧迫感を受けるなかで、応募者がどのような対応を取れるかを見るものです。

3.否定的な言動

 自分をアピールする場である面接の席で、応募者の回答に対して、面接官がことごとく否定的な反応をするようなものです。

 自分の経験や考えを否定され続けていると、次第に自信がなくなり、発言しにくくなります。応募者によっては、人格を否定されたと感じる人もいるかもしれません。

4.「なぜ」を繰り返す

 質問の回答に対して、「なぜ」「どうして」を繰り返し問い続けることがあります。

 深掘りするような意図がある場合もありますが、執拗に「なぜ」「どうして」を繰り返されると、返答に詰まってしまいます。

企業が圧迫面接をするべきでない理由

 近年では圧迫面接をする企業は非常に少なくなってきています。いまの時代に圧迫面接をするべきでない理由を確認しておきます。

1.企業のイメージダウン

 いまの就活生世代はSNSで情報発信することが当たり前になっています。

 圧迫面接されたことや、面接の席でひどい扱いをされたという情報がSNSで投稿されれば、あっという間に多くの人に広まっていきます。

 SNSで会社名を公開されれば企業のイメージダウンになり、採用活動での苦戦だけでなく、顧客離れなどにもつながります。

2.内定辞退

 就活生にとって、圧迫面接は嫌なイメージとして残ります。

 圧迫面接をした結果として、企業側が候補者に内定を出したとしても、「圧迫面接するような企業には行きたくない」と内定を辞退されることは容易に想像できます。

 日本全体として少子化が進む中で、景気の変動はあっても、全体としては確実に売り手市場に向かいつつあります。

 圧迫面接をする企業は人材からは選ばれず、内定を出しても採用できない事態に陥るでしょう。

3.母集団形成への悪影響

 前述の通り、圧迫面接をしている企業の情報は、SNSやWebサービスを通じて就活生の間であっという間に広まります。

 とくに就活に関する口コミサイトや就活掲示板の利用率は非常に高くなっています。

 「今どき圧迫面接をしている=ブラック企業」とレッテルを貼られ、今後の母集団形成に大きなマイナスを及ぼします

4.訴訟のリスク

 行き過ぎた態度や人格否定にとられるような言動は、ハラスメント行為として損害賠償を求められる可能性もあります。

 現在ではスマートフォンやボイスレコーダーで簡単に面接の様子を録音できますので、証拠の音声が提出、公開されるようなことも有り得ます。

 万が一、訴訟になれば、損害賠償で支払う経済的な損失以上に、企業イメージの大幅な低下につながることは避けられないでしょう。

圧迫面接をせずに適性を見る手法は?

 ここまで圧迫面接の手法とそのリスクについて説明してきました。

 では、圧迫面接をせずに応募者の適性やストレス耐性を見るには、どうすればいいでしょうか。具体的な手法を4つご紹介します。

ケーススタディー

 面接で実施される一般的な質問は、ある程度パターン化されています。

 例えば、新卒であれば、「学生時代に力を入れたこと」「今までの達成・失敗経験」「ハードルにぶつかった経験」「就職活動の軸」「志望動機」などです。

 こうした質問には多くの就活生が事前に想定して、準備しています。

 その中で、就活生の適性や機転などを見たいのであれば、ケーススタディーを用意しておくと良いでしょう。

 とくに、ストレス適性や対応力などを見るうえでは、正解がない質問や答えが厳しい質問をしてみるのはひとつのやり方です。

 例えば「自分のミスでお客さんに数千万円の損害を出したとしたらどのように対応しますか?」といった質問をすることで、難しい状況に追い込まれたとき、自分の頭で冷静に考えて対応できるかどうかを見ることができます。

 ただし、今の時代、面接で聞かれた質問などもすぐに就活掲示板に公開されます。

 ケーススタディーを実施する場合は、10パターン程度を準備しておき、就活生が準備できないようにしておくなどの工夫も必要かもしれません。

適性検査

 応募者のストレス耐性は、適性検査の結果からも見ることができます。一般的な適性検査の結果にもストレス耐性の度合いは現れています。

 ストレス耐性に特化した適性検査が開発されています。

 ただし、性格特性的にストレス耐性が高い=一種の“鈍感力”です。

 自社でしてもらう業務内容によっては、必ずしもストレス耐性が高い=活躍するとは限りません。この点は注意が必要です。

体験の深掘り

 応募者のこれまでの体験について、目標の達成に障害があったとき、プレッシャーがかかる場面、大きな挫折をしたときにどのように対応したかを深掘りして質問してみます。

 自社の業務で発生するストレスやプレッシャーに合わせて、それに似たような状況や体験があるか、あればどのように乗り越えたのかを詳しく聞いていきます。

レジリエンスやストレス対処法の確認

 どんな人でもストレスを感じることはあります。

 どんなことに対してストレスを感じるのか、また、それに対してどのように対処しているかは、人それぞれ違いがあります。

 小さなことでもストレスに感じる人、多少のことではストレスに感じない人がいます。

 また、ストレスを受けても自分なりの対処法があってすぐに解消できる人は、厳しい状況に陥ったとしてもすぐに立ち直ることができるでしょう。

 レジリエンスといわれる、ストレスからの立ち直りの早さや、ストレスへの対処法を確認することで、後天的なストレス耐性、ストレス対応スキルを知ることができます。

面接官に求められる面接の心構え

 前述の通り、SNSへの投稿が当たり前となり、音声の録音も容易にできるようになった中で、面接官の不勉強や意識の低さから、応募者に不快な思いをさせ、企業悪い評判が立つことがあります。

 面接の席では、面接官のスキル・能力や姿勢も問われています。面接官にはどのようなことが求められているのか、基本的な注意点を確認しておきます。

対等な姿勢

 面接官の中には、自分は応募者よりも上の立場だと勘違いし、見下したような態度をとる人がいます。

 確かに「面接結果の合否を決める」ということはありますが、面接は応募者が「企業を見極めて選考を進むかを決める」場でもあります。

 面接官(企業)と応募者は対等です。本質的にも、同じ人間同士としても対等な立場であり、どちらが上、どちらが下ということはありません。

 フラットな姿勢で面接の席に望むことが大前提です。

傾聴の姿勢

 採用面接の席は、応募者にとっては、自分の将来がかかった大切な機会であり、採用する企業にとっても、自社の戦力となる人材かどうかを見極める重要な場です。

 面接官は傾聴の姿勢で臨み、相手の言葉を積極的に聞く姿勢が基本となります。

 傾聴することで、相手の印象が良くなると同時に、相手がしゃべりやすくなる中で、“素の姿”“考え方”も見えてくるでしょう。

会社の魅力を伝える

 自社が採用したいと思う人は他社でも採用したいと思う、内定が出る人です。

 従って、繰り返しですが、企業は選ぶ立場であると同時に、応募者から選ばれる立場でもあります。

 採用したいと思うような人材には、面接を通じてしっかりと自社の魅力を伝え、入社したいと思わせる必要があります。

 特に、優秀な人材を採用したいということであれば、選ばれるためのアピールが大切になってきます。

面接の基礎的なスキルと知識

 面接官の中には、ふだんは別業務をしており、採用のときにだけ面接官を担当する方も少なくないでしょう。

 日頃、採用に関わってこなかったとしても、面接官となる人は基礎的なスキルと知識を身につけたうえで、面接に臨むことが望まれます。

 面接官に生じる心理的なバイアスにはどのようなものがあるか、近年注目されている構造化面接とはどういった面接手法なのか、といった基本的な知識を知っておき、面接のやりとりに必要なスキルを身につけておくことは、人材を見極める能力の向上と同時にトラブルの防止に役立ちます。

採用・雇用に関する法的な知識

 例えば、就職差別になる質問、また男女雇用機会均等法などの労働法規に触れる質問をすることは当然NGです。

 しかし、面接官をする人が十分に理解せずに質問しているケースも考えられます。

 10年前と比べても、個人の権利に関する意識は大きく変わっています。

 法律や規制に触れるような質問を迂闊にすることは、圧迫面接と同じようにトラブルにつながりかねません。

 リスクをなくすためにも、基礎的な知識はしっかりと把握しておくことが必要です。

まとめ

 圧迫面接は、ストレス耐性を見る手法として、かつては多くの企業で行われていました。

 しかし、現在では多くのリスクがあることから、行っている企業は少なくなっています。

 ストレス耐性や適性を見るうえでは圧迫面接の代わりに、ケーススタディーや適性検査を利用する、また、レジリエンスの技術を質問する、過去の体験を深掘りするといったことが有効です。

 日本全体の少子化が進む中で、景気の変動はあれば、売り手市場の状況は加速していきます。自社が採用したい人は他社でも内定が出る人です。

 その中で自社が求める人材を確保するために、応募者にどんな体験をしてもらうことが大切か、しっかりと考えて対応していく必要があるでしょう。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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