ポテンシャル採用というと新卒採用のイメージが強かったですが、近年では中途採用でもポテンシャル採用に取り組む企業が増えています。
ポテンシャル採用は即戦力性に欠けるものの、優秀な人材を採用しやすい、母集団形成が容易になるなどのメリットがあり、特に優秀人材の採用が難しい中小企業には中途のポテンシャル採用が有効な施策となる可能性があります。
記事では、ポテンシャル採用の定義をはじめ、中途のポテンシャル採用を実践するメリット・デメリット、選考時の見極めポイントなどを解説します。
<目次>
- ポテンシャル採用とは? 中途にも向いている?
- 中途におけるポテンシャル採用のメリット
- ポテンシャル採用のデメリット・注意点
- 中途採用で見極めるべきポテンシャルとは?
- 中途のポテンシャル採用を成功させるポイント
- まとめ
ポテンシャル採用とは? 中途にも向いている?
ポテンシャル採用とは、経験や実績、スキルよりも、求職者の潜在能力(ポテンシャル)を重視した採用を指します。
いままでポテンシャル採用といえば、新卒採用で導入されるのが一般的でしたが、転職が一般化した中で、新卒採用に限らず中途採用でもポテンシャル採用を導入する企業が増えています。
中途採用におけるポテンシャル採用は、一般的には「既卒採用」や「第二新卒採用」などが当てはまるほか、業務に関する知識やスキルの有無を問わない「職種未経験者の採用」を一種のポテンシャル採用として実施しているケースもあります。
なお、中途採用におけるポテンシャル採用は20代~30代の若手採用で実施されることが大半です。
中途におけるポテンシャル採用のメリット
ポテンシャル採用にはさまざまなメリットがあり、大きく分けると以下3つのメリットが挙げられます。
優秀人材を採用しやすい
中途のキャリア採用の場合、優秀人材を採用するには非常に難易度が高くなります。
まず優秀な即戦力人材は現職でも高く評価されていますし、人的ネットワークを通じて転職することも多いため、転職市場に出てきにくいという現状があります。さらに、優秀な即戦力人材は待遇も能力に相応したものを用意する必要があるので、中小企業には厳しい面があるでしょう。
逆に、ポテンシャル採用は未経験者の採用なので年収面もさほど高くありません。また、大手企業などの採用競合とバッティングすることが少なくなり、中小企業やベンチャー企業も優秀人材を獲得できる可能性が高まります。
母集団形成が容易になる
ポテンシャル採用は、未経験者を募ることで業種や職種経験を求めるキャリア採用よりも応募の間口が広がり、母集団形成しやすい傾向にあります。採用ターゲットのニーズに合ったメッセージを構築して発信すれば、中小企業でも十分な数の母集団を形成することが可能になるでしょう。
短期間での大量採用が可能になる
母集団形成が容易で、なおかつ新卒採用とは違って採用から入社までのリードタイムも短くなりますので、中途採用にポテンシャル採用を導入することで、短期間での大量採用が可能になります。
企業経営では、人を一気に増やして事業を拡大すべきタイミングが訪れたり、事業計画を達成するためには短期間で採用人数を確保したりする必要があるときがあります。そんなときに中途でのポテンシャル採用は有効です。
ポテンシャル採用のデメリット・注意点
ポテンシャル採用にはメリットがある半面、デメリットや注意点もあります。ポテンシャル採用はデメリットや注意点も理解したうえで実施することが大切です。
見極めが難しい
ポテンシャル採用はスキルや経験、実績などではなく、相手の潜在意識や能力を見極めて採用することになります。
潜在意識や能力は目に見えない内面部分(行動特性や思考特性、価値観などのコンピテンシー)から判断するウェイトが増し、見極めの難易度は高いといえるでしょう。なんとなくのフィーリングや第一印象などで判断してしまうと、ミスマッチを起こしやすくなるので注意が必要です。
十分な受け入れ態勢が必要
ポテンシャル採用は未経験者を採用することになるので、入社後の育成が重要になります。Off-JTやOJTなどの人材育成の仕組み・体制、ノウハウがない、新人を手厚く教育する文化がない、といった場合、スムーズに戦力化を進められないだけでなく、早期離職のリスクを高めてしまう可能性もあるので注意しましょう。
また、組織としての受け入れ態勢がないと、「OJT」という名で受け入れと教育を丸投げされた現場社員の負担も大きくなってしまいます。
中途採用で見極めるべきポテンシャルとは?
ポテンシャル採用では、求職者の特性と仕事で必要な資質の一致度でポテンシャルを測ることがポイントになります。
中途でのポテンシャル採用の場合、現時点のスキルや能力をまったく見ないわけではありませんが、業務経験や知識などは採用の判断材料とはせず、内面的要素をポテンシャルとして重視することが重要です。
求職者の価値観や特性からくる行動パターンなどを深堀する手法としては、STAR面接がおすすめです。STAR面接は「Situation」「Task」「Action」「Result」の頭文字を合わせた構造化面接の一種で、一定の内容を順番通りに質問していくことで、安定したヒアリングを通じて、求職者の価値観を考察することができます。
- Situation(状況):時期、環境や組織の状況、背景、関わり方など
- Task(課題):課題、生じていた自称、目標、目標設定の経緯など
- Action(行動):意思決定のプロセス、具体的な進め方など
- Result(結果):結果、プロセスへの振り替え、反省、学びなど
また、組織の社風・文化との一致度を見ることも大切です。自社の文化や価値観へのフィット度が高い人材は育成しやすく、定着もしやすいでしょう。
こうしたカルチャーフィットを判断するには、面接で以下のような質問をすることも効果的です。ただし、面接対策などで企業理念に合った答えを用意している場合もあるので、行動やエピソードをできるだけ具体的に聞きだすことがポイントとなります。
- 仕事をするうえで何を大切にしていますか?
- 大切にしているものは、職場でのどのような行動や考え方につながっていますか?
中途のポテンシャル採用を成功させるポイント
内面的要素であるポテンシャルの見極めは難易度が高く、面接官が自由に質問を投げかけていく面接(非構造化面接)では見極め精度が落ちてしまいます。
また、面接でのコミュニケーション能力が、必ずしも自社での活躍可能性に直結しているとは限りません。したがって、ポテンシャル採用を成功させるには以下のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。
採用ポジションで活躍するために必要な要素を整理する
ポテンシャルを見極めるうえでは、あとから身に付けられるスキル・知識と、教育では変わりにくい特性やコンピテンシーを区別することが大事です。
ポテンシャルを見極める際には、入社後に教育で習得させられるスキル・知識の有無は、選考時にさほど重視する必要はなく、入社後の教育では習得できない、変化しにくい特性やコンピテンシーを重点的に見極めます。
活躍するために必要な要素を整理する際には、自社におけるハイパフォーマーとローパフォーマーをピックアップし、両者を比較することで、「自社で成果をあげるためにはどのような特性が必要なのか?」を考察することが大切です。
特性やコンピテンシーを見極められる面接を設計する(構造化面接)
採用ポジションで活躍するために必要な要素を特定できたら、必要な要素を見極めるための質問集を作っていき、面接では作った質問項目に沿って質問していきましょう。
面接は、会話を通じて相手の内面を見極めていける一方で、面接官に心理的なバイアスが生じたり、面接慣れしていないと求職者によって質問内容が変わってしまったりすることも少なくありません。
こうした面接では、求職者の特性やコンピテンシーを正確に見極めることができません。前述したSTAR面接のような構造化面接の手法を取り入れたり、評価基準を言語化して、かつ「どういう質問をして見極めるのか?」「どういう回答であれば資質があると判断できるのか?」も共有したりしていくと、面接の精度を向上できます。
適性検査を併用する
構造化面接に加えて適性検査を併用すると、見極めの精度をより高められます。適性検査には「一定基準に満たない応募者の除外」や「面接の補足材料」として使われるイメージがありますが、面接では見抜けない性格特性や価値観、動機パターンの見極めには非常に効果的です。
新たな適性検査を導入する際には、自社の社員に求職者に対して使うものと同じ適性検査を受けてもらうとよいでしょう。ハイパフォーマーとローパフォーマーでどこが違うのかが明確になり、採用後のミスマッチを防ぐことが可能です。
また、診断結果と自社の社員を照らし合わせることで、どういう診断結果がどんな性格や行動特性になるのかも理解しやすくなるでしょう。
まとめ
ポテンシャル採用は中途採用にも効果的で、優秀人材の獲得や母集団形成の容易さ、短期間での大量採用が可能になるといった効果が期待できます。ただし、未経験者を採用するからこそ見極めが難しくなる部分もあります。
自社が求める素養を明確にしたうえで、構造化面接や適性検査を導入して、求職者のポテンシャルを見極める仕組みを構築していきましょう。