内定辞退を防止する5つの取り組みとは?成功事例も解説

更新:2023/07/28

作成:2022/09/11

古庄 拓

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

内定辞退を防止する5つの取り組みとは?成功事例も解説

時間をかけて採用活動を実施して、内定や内定承諾に至った応募者が辞退となってしまうと、それまでに費やした時間やリソースは無駄になってしまいます。

 

本記事では内定辞退を防止する基本となる5つの取組みを紹介し、成功事例を紹介します。

<目次>

内定辞退の発生傾向

訝しげに電話をするビジネスマン

 

新卒採用時の内定辞退は大きく2種類に分けられ、「内定承諾前の内定辞退」と「内定承諾後の内定辞退」になります。

 

どちらの内定辞退も採用企業にとってはダメージが大きいのは間違いありません。
とくに新卒採用では、内定辞退のタイミングが採用期間の後ろになればなるほど、内定辞退者分を補填採用することは難しくなってしまいます。

 

後期に補填しようとすれば追加費用が生じがちですし、採用目標人数を確保できなくなったり翌年度の採用活動に出遅れたりすることも有り得ます。

 

内定辞退率は増加傾向

株式会社リクルートの調査によると、2022年7月1日時点での内定辞退率は57.8%となっています。

 

ここでいう内定辞退率は、「内定を取得したことがある就活生を分母、内定を辞退したことがある就活生を分子」にしたもので、内定辞退経験率とでも表現するのが適当です。

 

定義から理解できるとおり、57.8%という数字は内定承諾前の辞退と内定承諾後の辞退、両方の数字が混じった数字になっています。前年同月は55.0%でしたので微増の状況です。

 

また、年間を通した内定辞退率はここ数年6割を超えている状況ですが、2013年卒は45%程度でしたので、ここ10年で内定辞退率は明らかに上昇していることがわかります。

内定辞退を生み出す3つの要因

本章では、内定辞退を生じさせる3つの要因を解説します。

 

社員の態度と魅力付けの不足

候補者にとって採用担当者や面接官は企業の顔であり、採用担当者や面接官の印象=企業に対するイメージです。

 

例えば、面接官のこういった態度は企業へのイメージダウン、内定辞退の原因になります。

  • 候補者からの質問に対して曖昧な回答をする
  • 高圧的な態度をとってしまう
  • 候補者の名前の言い間違いや勘違い

候補者はちょっとしたことで不信感を感じるケースもあるため慎重な対応が必要です。

 

最近ではいわゆるNG質問に関する敏感さなども高まっており、モチベーションダウンだけでなく炎上する事例もあります。担当する面接官などにも周知しましょう。

 

また、魅力付けという意味でも採用担当者や面接官は重要な役割を担います。

 

候補者は、選考過程で出会っていく面接官を「自分自身のロールモデルになるか?」「上司にしたいか?」「一緒に働きたいか?」という目線で見ています。

 

選考で会社が候補者を見極めているのと同じように、候補者も面接官を通じて会社を見極めています。

 

面接官に対してこの点の徹底が必要ですし、魅力付けのやり方に関するトレーニング等をすることも有効です。

 

雇用条件や待遇への不安、条件の不一致

内定をもらったあとに雇用条件や待遇が合わないと判断し、内定を辞退するケースもあります。

 

募集要項の内容と面接の場で聞いた雇用条件の実態が異なっていたり、面接で知った勤務地や職種が自分の希望する条件を満たしていなかったりする場合は内定辞退につながります。

 

残業時間、転勤の有無や頻度などは募集要項に載っていないことが多い一方で、求職者が非常に気にする点です。

 

気になっていても選考中は質問を遠慮してしまい、内定後に思い描いていた理想と現実に大きな乖離があることを理解して、内定辞退してしまう候補者も一定数存在します。

 

最近では最終選考の前後や内定後に口コミサイトなどを調べて、書かれている口コミを信じて意思決定するケースも多くなっています。
主要な口コミサイトで自社に関してどのようなことが書かれているかをチェックして、必要性があれば選考中にケアしておくことが大切です。

 

内定ブルー

上述した2つの理由はかなり原因が明確なものですが、逆に、内定承諾後に生じる内定辞退の理由は“漠然とした不安”であることも多いものです。

 

最近は就職活動を継続する前提で内定承諾するような悪質なケースも増えています。

 

しかし、そうでない場合には「本当にこの会社に決めてよいのだろうか」という不安、いわゆる”内定ブルー”に陥った結果として就職活動を再開し他社に流れてしまうパターンが多くなります。

 

内定ブルーの理由は「選択肢がなくなる」ことへの不安です。内定者フォローを徹底し、内定者のモチベーション、承諾したときの気持ちを維持させることが重要です。

内定辞退を防止する5つの方法

内定辞退を防止するには、おもに5つの方法があります。必殺の対策があるというよりは、ひとつひとつの施策をしっかりと実行する、そして、磨き上げることが大切です。

  • 説明会や面接で候補者をしっかりと惹き付ける
  • 内定や選考を工夫する
  • リアリスティックジョブプレビューを意識する
  • 定期的にコミュニケーションをとって接触頻度を増やす
  • 社員や役員陣との接点を増やす

 

説明会や面接で候補者をしっかりと惹き付ける

当たり前の話ですが、説明会や面接で候補者をしっかりと惹き付け、実際に働く姿をイメージできるように働きかけることが内定辞退を防止する基本です。

 

例えば、説明会や選考過程の中で、社員に企業の魅力を伝えてもらったり、年の近い社員、タイプが近い社員との面談機会を設けたりするなども有効です。

 

面接ではホームページや会社説明会だけでは伝えきれない企業の魅力を話すとよいでしょう。面接は1対1で相手の志向性を踏まえて魅力を伝える機会です。
有効に活用していきましょう。

 

内定や選考を工夫する

内定の出し方にはさまざまなスタイルがあります。

 

候補者によって最終面接時のモチベーションは異なりますので、最終選考の前段階でいまの就活状況、意思決定に必要な情報は何か、何に不安を持っているのかを丁寧にヒアリングして、相手の性格や価値観に合わせて内定を出すことが大切です。

 

また、選考自体を工夫するのもよいでしょう。選考のストーリー設計を行ない、納得感と達成感を演出することも内定辞退の防止につながります。

 

たとえば、2次面接では「なぜ自社なのか」と志望動機を深掘りし、3次面接では「自社で何を成し遂げたいのか」とキャリアプランを深掘りするなど、適度な難易度を演出しながらも、徐々に自社への関心を高めていけるようなストーリー設計を意識しましょう。

 

そうすることで、候補者が内定に対する納得感と達成感を抱きやすくなります。

 

リアリスティックジョブプレビューを意識する

魅力付けするのと同時に、自社の実態に関してきちんと情報提供することも大切です。

 

魅力付けしようとするあまり、実態と異なるきれいな面ばかり出していると内定承諾後などに不安が生じやすくなります。
また、口コミサイトなどの情報と乖離が生まれると企業への不信感にもつながります。

 

選考の早期で仕事の大変な部分や組織の未成熟な部分も魅力付けと並行して少しずつ伝えていき、実態や口コミとずれが生じないようにしましょう。

 

求職者が「十分に理解できている」と思える状況を作ることが大切です。

 

定期的にコミュニケーションをとって接触頻度を増やす

内定承諾後の辞退を防ぐうえで最も基本となるのは定期的なコミュニケーションです。

 

「内定承諾前までは頻繁に連絡をしていたのに内定承諾後はがくんと接触頻度が落ちてしまう」といったことがないように注意が必要です。

 

コミュニケーションが少ないと内定者は不安を抱きやすくなります。
反対に、接触頻度を増やすことでザイアンス効果と呼ばれる心理学的効果がはたらき、内定者から企業への好印象や親近感を強化することもできます。

 

新卒採用の場合は電話やメールで連絡を取り合うだけではなく、オンラインやSNSなどをうまく使うことも有効です。

 

双方向でのコミュニケーションだけでなく、SNS等をうまくつかって、自社の情報に高頻度で触れてもらえるようにしましょう。

 

また、懇親会やランチ会などのフランクな場を定期的に企画し、接触回数を増やすのも一つの選択肢です。ただし、内定者の負担にならないように配慮もしましょう。

 

社員や役員陣との接点を増やす

社員や役員と会わせることで、内定者が企業で働くビジョンを明確にしやすくなります。

 

年の近い社員と話をする機会を設ければ入社後の不安を解消するきっかけとなります。

 

また、役員から直接歓迎している姿勢を示したり、内定になった理由、ミッションやビジョン、事業の成長性などを改めて伝えたりすることで、モチベーションをアップさせることも可能です。

 

内定承諾後は不安を解消するとともに、“自分が内定承諾した理由”を思い出すような働きかけが大切です。

承諾後の辞退防止に関する企業の取り組み事例

握手をするビジネスマン

 

続いては、承諾後の事態防止に関する企業の取り組み事例を3社紹介します。

 

株式会社ジェイック

HRドクターを運営する株式会社ジェイックでは内定承諾後の辞退はほとんどありません。

 

なぜそんなことが可能なのかというと、心配事や疑問があればすぐに相談できる体制を整えているからです。電話やメール、社内報、SNSなどで内定者と適切な接触頻度を保っています。

 

また、懇親会、内定式、内定者研修などの各イベントでは社員が多く参加し、内定者の歓迎を伝える工夫をしています。
各イベントでビジネス意識を持ってもらえるプログラムを実施したり、内定者研修終了後に経営計画発表会に参加してもらったりすることで、ジェイックの一員であるという意識を高める工夫をしています。

 

クックパッド株式会社

クックパッド株式会社では、内定者のフォローにトランプ型自己分析ツール”ワークスタイルトランプ”を活用したワークショップを実施しています。

 

52枚のトランプにはさまざまな”働き方”に関するキーワードが書かれており、全員が納得できる、最も大事だと思う10枚を選んでいきます。
トランプを選んでいく過程で、同期との相互理解を促進する、会社の魅力を再確認する、“入社後”を意識させるといった仕掛けになっています。

 

マルホ株式会社

マルホ株式会社では内定者向けの専用サイトでMRの免許取得サポートなどの情報を発信しています。
内定者が疑問や不安に感じたことをすぐに相談できる状況を作り、入社前に疑問や不安を払拭するように心がけているのです。

 

内々定の時期に採用時の評価をフィードバックし、面接時の印象や個人の強み、克服して欲しいところなどを伝える工夫をしています。

 

さらに、1泊2日の懇親会を実施し「社会人としてどう成長したいか」をテーマとしてグループワークを行なうことで、入社後のイメージをより明確に描いてもらえるようにしています。

内定者フォローを徹底して内定辞退を防止しよう

内定辞退の防止は人事がしっかり実施すべき採用プロセスのひとつです。最近では、内定辞退率の確率は上がっていますし、内定承諾後の辞退も増えています。

 

内定辞退を防止するためには選考中にしっかりと魅力付けしていくプロセスを組み込むこと、また内定承諾後は接触頻度の維持を基本としたうえで、不安を払しょくしたり入社後をイメージさせたりする機会をつくることが有効です。

 

記事で紹介した方法や事例が辞退防止の参考になれば幸いです。

著者情報

古庄 拓

株式会社ジェイック取締役

古庄 拓

WEB業界・経営コンサルティング業界の採用支援からキャリアを開始。その後、マーケティング、自社採用、経営企画、社員研修の商品企画、採用後のオンボーディング支援、大学キャリアセンターとの連携、リーダー研修事業、新卒採用事業など、複数のサービスや事業の立上げを担当し、現在に至る。専門は新卒および中途採用、マーケティング、学習理論

著書、登壇セミナー

・Inside Sales Conference「オンライン時代に売上を伸ばす。新規開拓を加速する体制づくり」など

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