多くの組織に組織における一番小さな構成単位がチームです。多くの場合、課やグループの一つ下の単位となり、係やチームなどの名称で呼ばれる数人の構成です。組織内の各チーム内で個人が活躍・連携してチーム目標を達成していくことが、部課や組織の目標が達成されます。
記事では、組織にとって重要なチームをしっかりと機能させるためのチームマネジメントについて解説します。チームマネジメントの意味や重要性、チームマネジメントを担うリーダーに必要な能力を解説します。チームマネジメントを成功させるためのポイントも合わせて紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
<目次>
チームマネジメントとは?
チームマネジメントとは、チームの目標達成に向けて計画立案したり、メンバーおよびタスクのマネジメントをしたり、メンバーの育成やチームの生産性向上に取り組んだりすることを意味します。
チームとしての目標達成に向けてどのように課題を解決するのか、リーダーが率先垂範しながらも、メンバー全員で考え実行していくことが大切です。
メンバーのマネジメントという観点でも、メンバーがリーダーの指示を待ったり、言われたことだけをしていたりするのではなく、一人ひとりが主体的に物事をとらえ、自ら考えて実行する状態を目指すことが理想です。
チームマネジメントの重要性
組織のさまざまな業務は、多くの場合、3~8人程度のチーム(小集団)で運用されています。従って、組織全体の目標達成や生産性は、組織内の各チームがどれほど生産性を高め、かつチームビルディングされた状態で仕事に取り組めているかによって左右されます。
また、経営計画や事業方針を現場で実行するのもチーム単位であり、チームが有効に機能していなければ、組織の実行力は格段に弱いものとなってしまうでしょう。
チームマネジメントに必要な5つの能力
チームマネジメントを担うリーダーには主に5つの能力が求められます。
- 目標設定能力
- チームビルディング能力
- 統率力(プロジェクトマネジメント力)
- コミュニケーション力
- 業務遂行能力
目標設定能力
まずは自分たちが目指すべきチームのゴールをしっかりと把握・設定して、メンバーと共有する必要があります。事業計画から落とし込まれたものを把握、同時に前年度の実績やメンバー構成等も踏まえながら、組織の上層部と調整して、チーム全体の目標数値を設定することはチームマネジメントの重要な業務です。
チームの目標を設定したら、次にメンバー個人毎の目標を設定します。目標を設定する際に重要なのが、メンバー一人ひとりの個性や能力、スキル、意欲などを十分に考慮するということです。
個人の目標設定は、単に数字を分解して与えるような形ではなく、一人ひとりがしっかりと目標達成の意欲を持てるように、対話して個人にとっての達成意味を見出し、動機付けすることが大切です。
チームビルディング能力
チームビルディングには大きく分けて2つの要素があります。
1つ目の要素は目標の上位概念となるチームのミッションやビジョンです。チーム単位ではミッションやビジョンを設けない場合も多いですが、チーム全員がミッションやビジョンのレベルまで意識できていれば、自ずと強いチームができるでしょう。
もう1つの要素は、チーム内の心理的安全性です。心理的安全性とは、チーム内でメンバーが自分の意見や質問を述べたり、チーム方針や誰かの意見に異論や懸念を示したりことに心理的なハードルがない状態を示します。
心理的安全性を確立するためには、ベースとなる個人間の信頼関係を築くことが何より重要です。その上で、目標達成に向けてチームメンバーがお互いに遠慮せず、発言・提案できる場をつくっていくことが大切です。
統率力(プロジェクトマネジメント力)
チームマネジメントは、いわば一種のプロジェクトマネジメントだといえるでしょう。目標に対して達成するための計画を立て、スケジュールを作成し、タスクの進捗を管理しながら必要な手を打っていきます。
目標を達成するためには、長期的・短期的なスケジューリングだけでなく、メンバーの個性や能力を活かした仕事の割り振りも大切です。また、メンバーがタスクを効率的に進められるよう、優先順位を示し、仕事しやすい環境をつくります。
上記のような実務面のマネジメントにとどまらず、精神面でもチームメンバーの声に耳を傾け、コーチングなどのスキルを織り交ぜながら適切に指導・モチベートする能力も求められます。
コミュニケーション力
コミュニケーション力は、チームマネジメントの基本ともいえる能力です。ここまで紹介した目標設定、チームビルディング、プロジェクトマネジメント、いずれにも実行する上では、コミュニケーション力が必要です。
チームマネジメントには「発信力」と「傾聴力」、2種類のコミュニケーション力が大切です。
チームリーダーに求められる発信力としては、目標達成の先にある喜びを共有したり、ビジョン実現のための計画に納得感をもってもらえるように伝えたりする力です。一方、傾聴力としては、チームメンバーが何に喜びを感じ、何にモチベーションが上がるのか、どのような能力を伸ばしたいのかなどを聴き出し、今のメンバーの状態や意見に関して、内なる意識に目を向けながら本音を引き出す力です。
発信と傾聴、2つのコミュニケーションをうまく使い分けることで、トップダウンでしっかりと計画を実行すると同時に、メンバーの意欲や主体性を引き出したりボトムアップで現場の状況を踏まえて計画を修正したりすることができます。
業務遂行能力
最後に紹介するのはテクニカルスキルともいわれる、業務を遂行するうえで必要となる専門知識やスキルです。求められる知識やスキルは職種によって少しずつ異なりますが、チームとして目標を達成するためには欠かせない能力です。
チームの規模では、チームリーダー自身もプレイヤーであるケースが珍しくありません。目標達成に向けては、リーダー自らが他のメンバーがカバーできない仕事を率先して取り組んだり、達成への意欲や姿勢を背中で見せたりすることが大事です。
また、トラブルが起きた際のカバーや解決策の実行といった臨機応変な対応もチームマネジメントでは重要です。さらに「やって見せて、言って聞かせて、やらせて見て、ほめてやらねば、人は動かず」という山本五十六の言葉にも示されているように、人材育成するうえでもチームリーダーには業務遂行力が必要となります。
チームマネジメントを成功させる3つのポイント
チームマネジメントを成功させるために、チームリーダーが心がけたいポイントを3つ紹介します。
□ | チームの目的と目標を明確化する |
---|---|
□ | チーム全体で情報を共有する |
□ | 意見を出しやすい環境づくりを心がける |
チームの目的と目標を明確化する
チームマネジメントを成功させるためには、チーム全体に対して、ミッションや目標を明確に共有し、メンバー全員が達成すべきゴールを明確に認識していることが大切です。「達成するべきゴールはどこか」、そして「なぜそのゴールを目指す必要があるのか」を明確にすること、メンバーの意欲が引き出されます。
メンバー一人ひとりがチームのミッションやゴール、達成の意味をしっかり理解できているかどうかを気にかけ、できていないようであれば理解を促す必要もあります。チームの目標を達成するためには、個人個人が役割を果たせればそれで良いというわけではなく、組織の一員として共通目標をもたせることが重要です。
チーム全体で情報を共有する
チームとして円滑に動いていくためには、目的やゴールの共有だけでなく、細かい情報もしっかり共有することが大切です。ゴールの達成に向けた計画とそれぞれの進捗状況、課題をあぶりだしてチーム全体で共有します。
誰か一人、とくにリーダーが情報を抱え込んでしまうのは良くありません。メンバー間での情報共有を促進し、チーム全員で課題を解決しましょう。
意見を出しやすい環境づくりを心がける
アイデアや意見を出しやすいチームをつくるためには、メンバーが安心して発言できる環境が必要不可欠です。
上述したように、チームマネジメントでは「心理的安全性を高める」ことが重要な要素となります。なぜなら、心理的安定性が低いと、発言や提案を怖がって控えてしまうため、メンバーがストレスを溜めたり大事な情報を伝えなかったりする恐れがあるからです。
心理的安全性の高いチームであれば、メンバー全員が積極的に発言し、計画の精度も上がりますし、アイデアやイノベーションが生まれやすいといえるでしょう。
組織の目標達成や生産性の向上に不可欠なチームマネジメント
組織全体の目標を達成するためには、組織を構成する最小単位であるチームのマネジメントが肝になります。チームマネジメントが成功し、一つひとつのチームが有効に機能することで組織全体の実行力が高まり、企業としての大きな成長を実現できます。
チームマネジメントを担うリーダーは、チームや個人の目標を明確化したり、具体的な達成計画を作成して実行をコントロールすると共に、メンバーの意欲を引き出したり、チームを心理的安全性の高い状態にしたりといったことが求められます。
記事で紹介したチームマネジメントを成功させるためのポイントも参考に、高い実行力と生産性を備えた強いチーム、チームを機能させられるチームリーダーの育成に取り組んでみてください。なお、HRドクターを運営する研修会社ジェイックでは、若手チームリーダーの育成などを得意としていますので、ご興味あればぜひお問い合わせください。