ここからは企業で起こりうるハラスメントをパターン別に解説します。まず、職場で起こるハラスメントはおもに3つのジャンルに区分されます。
- 仕事に関するハラスメント
- 性差に関するハラスメント
- その他のハラスメント
仕事に関するハラスメント
仕事に関するハラスメントには8つの種類があります。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- モラルハラスメント(モラハラ)
- リストラハラスメント
- ケアハラスメント(ケアハラ)
- テクノロジーハラスメント(テクハラ)
- リモートハラスメント(リモハラ)
- ロジカルハラスメント(ロジハラ)
- 時短ハラスメント(ジタハラ)
パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメント、いわゆるパワハラとは職場内の地位の優位性を利用して精神的・肉体的苦痛を与えるハラスメントです。よく上司が部下にする言動が「パワハラだ」とされますが、パワハラの対象は部下だけとは限りません。
正社員から非正規社員へ、購入先から仕入れ先へ、ときにはベテラン部下から新任の上司へなど、そこに「地位の優位性」があれば、パワハラとなりえます。
昨今、パワハラが原因で退職に追い込まれてしまうようなケースも多く、訴訟の数も増加傾向にあります。2020年6月に施行されたパワハラ防止法の対象は、2022年4月から中小企業にも拡大されており、すべての企業でパワハラの防止措置を実施することは必須となっています。
モラルハラスメント(モラハラ)
続いて、モラルハラスメントとは舌打ちや噂話、悪口などの相手を傷つける言動を行なうハラスメントです。パワハラほど目立たない行為なだけに継続的にストレスを受けて精神的ダメージを受ける人が多い、ひとつの行為を取り上げて静止しにくくいつの間にかメンタルヘルス等に追い込まれることもあるといった特徴があります。
リストラハラスメント
リストラハラスメントとは、社内上層部がリストラ候補者に対して配置転換や雑務の押しつけを行ない、退職するよう仕向けるハラスメントです。権限等を背景にするという意味では、パワハラの一種ともいえます。
ケアハラスメント(ケアハラ)
ケアハラスメントとは、育児や介護を行う従業員に対するハラスメントのことです。具体的には、残業を強要したり、昇進・昇格の機会を払底したり、差別的な発言をすることなどが該当します。とくに育児や介護のための制度を利用したことに伴って上司や同僚から嫌がらせを受けるケースが多くみられます。
育児や介護をしながら働くことは大きなストレスとなり、会社から十分な理解が得られないと、仕事を続けることが難しくなる可能性もあります。このようなハラスメントにさらされると、離職を余儀なくされてしまう恐れがあり、企業として大きなリスクとなります。また育児や介護は誰にでも生じる問題だからこそ、ケアハラスメントが発生して報道したりSNSで拡散されたりすると、大きなブランド毀損や批判につながります。
テクノロジーハラスメント(テクハラ)
テクノロジーハラスメントとは、ITスキルが低い従業員に対するいじめや嫌がらせを指します。具体的には、デジタル機器の操作が苦手な人を侮辱したり、ITリテラシーの高い人が低い人に対して不当な業務を割り振ったりする行為などが含まれます。
テクハラは、上司から部下などだけでなく、逆に若手から年配者や上司に対して行われることもありますので注意が必要です。
リモートハラスメント(リモハラ)
リモートハラスメントとは、在宅勤務やテレワークといったリモートワークの環境下で生じるハラスメントです。ウェブカメラを通じてのプライベート事項への不適切な指摘、必要以上の干渉などの行為が該当します。
リモートワークが普及した当初に比べると、最近は仮想背景の技術も発展してリモートワークで後ろに映っているものに言及されるような問題はなくなりました。ただ、リモートワークでは対面せずにコミュニケーションを取るため、意識的ばルール作りも必要です。
また、最近ではコロナ禍の終息に伴って、出社勤務が増えて会議などでもオンラインとリモートワークの人が混在するようになり、出社している人がリモートワークの人を排除したり阻害したりするようなリモハラも生じています。この辺りにも注意が必要でしょう。
ロジカルハラスメント(ロジハラ)
ロジカルハラスメントは、論破することで相手に精神的圧迫を加えたり、正論を振りかざして相手を追い込んだりする行為を指します。正論を述べること自体が問題ではなく、正論を使って相手を精神的に苦しめることがハラスメントに該当します。
ロジカルハラスメントの場合、形式的・論理的には筋が通っているように見えるため、問題として認識されづらい部分もあります。しかし放置すれば、周囲のメンタルヘルスやモチベーションに深刻な影響を及ぼしかねません。健全な職場環境を維持するためには、このようなロジハラを行っている人がいれば、きちんと実態を把握して、注意を実施する等が不可欠です。
時短ハラスメント(ジタハラ)
時短ハラスメントは、育児や介護などの理由で時短勤務を利用する従業員に対する差別や偏見、不当な扱いを指します。具体的には時短勤務の権利を行使することに対する周囲の否定的な態度や、時短勤務者への業務量の不公平な配分などが該当します。
ワークライフバランスを重視する社会的要請が高まり、また女性の産休復帰率も向上、介護問題を抱える労働者も増える中で時短勤務を希望する労働者は増加しています。こうした時短勤務する人をハラスメントで阻害することは大きな問題と言えます。
同時に、時短ハラスメントは「社内にサービス残業する文化が根付いている」「時短勤務者の時短分の負荷が、通常勤務をしている人に転嫁されている」といった状況で起こりやすいものです。従って、マネジメント全体をきちんと見直していくことが大切です。
日本の労働環境では、企業が社員を解雇することが非常に難しくなっています。社員の就業環境が守られていること自体は素晴らしいのですが、結果としてリストラハラスメントのように陰湿な形で、自主退職するように仕向ける事象が発生しているわけです。
性差に関するハラスメント
性差に関するハラスメントはセクハラを筆頭に大きく4つあります。
- セクシュアルハラスメント(セクハラ)
- ジェンダーハラスメント
- マタニティハラスメント(マタハラ)
- パタニティハラスメント(パタハラ)
セクシュアルハラスメント、いわゆるセクハラは性的な言動を通して相手に苦痛を与えるハラスメントです。性的な要求を拒むと、その後に社内で不遇な処罰を受けるケースも発生しています。
セクハラの大半は、男性が女性に対して行なうケースです。また、上司から部下、正規雇用の社員から派遣やパート社員など、パワハラと同様に優越的な地位を利用して実施されるケースも非常に多くなっています。
続く、ジェンダーハラスメントは「男らしい」や「女らしい」といった偏った価値基準で、相手に指摘したり、業務を押し付けたりするハラスメントです。たとえば、「女性だから来客者にはお茶を出すべき」「男性だから多少の精神的苦痛は耐えるべき」などはジェンダーハラスメントといえるでしょう。
3つ目のマタニティハラスメントとは妊娠中や産前産後の女性に対して、難しい業務や育休を取得させないなどの不当に扱うハラスメントです。女性の社会進出が進み、女性の管理職比率等も注目されるようになった中で、減少しているとは言えるでしょう。一方で、産休や育休の制度はあるのに、実際に使いづらい雰囲気があるといったことは、マタニティハラスメントの一種ですので注意が必要です。
最後に、パタニティハラスメントです。これは、男性の子育て支援が推奨される中で、男性の育休に際して取得を妨げるような言動をしたり、取得後に不利な配属や異動をしたりするものです。SNS等で大きく炎上したり、訴えられたりするケースも出てきています。近年は育休に関する世間の認識も変わっており、注意が必要なハラスメントの一つです。
その他のハラスメント
その他の種類のハラスメントはおもに8つあります。
- アルコールハラスメント
- スメルハラスメント
- レイシャスハラスメント
- エイジハラスメント(エイハラ)
- ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
- スモークハラスメント(スモハラ)
- パーソナルハラスメント(パーハラ)
- ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
アルコールハラスメント
アルコールハラスメントとは、飲み会の際の飲酒や一気飲みを強要するハラスメントです。一昔前の時代はある程度”お酒の付き合い”として容認されていたような側面もあるため、本人の自覚なしでアルハラを行なってしまう可能性もあります。
パワハラやセクハラも同様ですが、「自分もそういう教育を受けてきた」「過去には冗談として通用していた範囲」といった感覚で実施してしまってトラブルになるケースも少なくありません。パワハラ・セクハラの大半はお酒が入る場で起こっているという話もあり、職場の飲み会等は非常に注意すべき場といえるでしょう。
スメルハラスメント
続く、スメルハラスメントとは、臭いが原因で周囲に不快な思いを与えるハラスメントです。体臭などは本人が気付いていないケースも珍しくありません。なかなか難しい問題ですが、最近ではこうしたことも職場におけるハラスメントとしてトラブルになるケースがあります。
レイシャルハラスメント
レイシャルハラスメントとは人種、国籍、地域などの生まれつきの括りで嫌がらせを行なうハラスメントです。グローバル化に伴ってハーフやクオーターの方が増えていたり、外国人労働者の方が増えていたりしますので、今後注意が必要かもしれません。
エイジハラスメント(エイハラ)
エイジハラスメントとは、年齢を理由に嫌がらせをしたり差別的な言動をしたりすることを指します。若年者に対して「若造のくせに」といった発言をしたり、中高年者に対して年齢を揶揄したりすることが典型例です。
職場においては、年齢を理由に昇進・昇格の機会を制限したり、同年代より若い人を理不尽に可愛がったりするなどの言動も、エイジハラスメントに該当する可能性があります。年齢に関係なく能力を公正に評価し、適材適所で活躍の機会を与えることが大切です。
ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
ソーシャルハラスメントとは、人間関係から切り離すような嫌がらせや集団による無視などの行為を言います。会議や懇親会から意図的に外す、職場の連絡網的なグループに入れない、SNS上でのいじめ等が該当します。
ソーシャルハラスメントは、個人だけでなく集団で行われることが多く、被害者を職場の人間関係から切り離そうとする点が大きな特徴です。また、他のハラスメントも同様ですが、誰かがソーシャルハラスメントをやり始めた時に周囲が傍観者となって止めないことがハラスメントになってしまう大きな要因です。人間関係が希薄化する現代社会で顕在化しがちなハラスメントだといえるでしょう。
スモークハラスメント(スモハラ)
スモークハラスメントは、喫煙者と非喫煙者の間で生じるハラスメントです。喫煙者の煙から非喫煙者を守るための取り組みが不十分なために、職場環境で受動喫煙を強いられる状況を指します。また、最近では喫煙者同士が喫煙所での雑談で物事を決めてしまう、喫煙者だけが“タバコ休憩”を頻繁に取ることを黙認されているといったこともスモハラとして取り上げられることがあります。
スモークハラスメントを生じさせないためには、まず建物内の全面禁煙や喫煙室の適切な設置など、喫煙者と非喫煙者の両者が気を遣わずに過ごせる職場環境を整備することは重要です。受動喫煙の防止は法令でも定められていることですので必須の対応です。また、いわゆる“タバコ部屋トーク”で意思決定する、喫煙者だけの“タバコ休憩”などにも注意しましょう。
パーソナルハラスメント(パーハラ)
パーソナルハラスメントとは、個人の身体的特徴や人格を攻撃したり、無視したりする行為を指します。体型や性的指向など、個人の特性に関わる嫌がらせが典型例です。
パーソナルハラスメントを防ぐためには、人権を尊重し、多様性を認め合う職場づくりが求められます。相手の人格や尊厳を傷つける発言や行動は断固として許容しないといった企業としてのポリシーを示すことも不可欠でしょう。とくに「冗談半分で相手の個性をいじることがアイスブレイクになる」と思っているような人にはしっかりと注意することが必要です。
ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
相手に対して「ハラスメントだ!」と過剰な反応や指摘を繰り返すことが、逆にハラスメントとなるケースをいいます。客観的にハラスメントではない事象に対して「ハラスメントです!」「訴えます!」などと相手を威圧するような言動をとることが該当します。
また、ハラスメント被害を受けた人に対して二次的な嫌がらせを行ったり、被害を訴えた人に対する報復的な発言や行為をしたりすることもハラスメントハラスメントに当たります。