
この章では、前章で紹介した3つのリーダー像に加えて、5つのリーダーシップスタイルを紹介します。古くから研究されてきたリーダーシップには、長い歴史の中で変遷したさまざまな理論があります。ここでは、その中でも代表的な5つのリーダーシップスタイルを紹介します。
1.カリスマ型リーダーシップ
「どのようにすれば、リーダーはフォロワーとなるメンバーからカリスマとして認めてもらえるか?」に着目したリーダーシップスタイルです。カリスマ型リーダーシップを成功させるには、地に足のついた現実的かつロジカルな戦略設計と、企業が目指すビジョンを明確に提示し、リスクも一手に引き受ける「背中で語る」模範姿勢が求められます。
いわば、前章で紹介したビジョン提示型リーダー像+ペースセッター型リーダー像を1人で兼ね備えたようなリーダーシップです。このリーダーシップは、メンバーや市場ニーズをつかむことに長けている特徴があります。カリスマ型リーダーシップがうまく機能した場合、組織における大きな実績や挑戦的なプロジェクトが成功しやすくなります。
ただし、問題点は、リーダーの影響力が強すぎた場合、メンバーがリーダーに依存しすぎたり、後継者の育成がなかなか進まなかったりする場合があることです。
2.変革型リーダーシップ
組織内の危機の把握や、進むべきビジョンの構築に長けたリーダーの理論です。不確実な環境下でメンバーにマインド面から影響を与え、価値観や信念等の根本から行動を変えようとするリーダーシップとなります。
このタイプには、メンバーに対して向かうべき到達点を明確に提示することが求められます。変革型リーダーシップ理論の具体例では、経営者の交代によるV字回復や倒産危機を脱するといったケースがよくあげられます。これは、ビジョン提示型リーダーの類型といえるでしょう。
3.EQ型リーダーシップ
「心の知能指数」と呼ばれるEQに着目したリーダーシップです。EQ型リーダーシップの特徴は、人間の感情が、行動や組織に大きな影響を与えることを前提にした理論であるということです。
「頭では分かっているけど、気持ちが付いてこない」とか、「論理と感情が結びつくと、爆発的なパワーに繋がる」等、感情が行動に与える影響が非常に強いことはイメージできるでしょう。
従って、EQ型リーダーシップには、組織や実務の改革よりも、メンバーの感情への働きかけを重視する特徴があります。EQ型リーダーシップでは、以下の4点を重視したコミュニケーションを図ることで、メンバーの感情を動かし、組織の方向づけをしていきます。
- リーダー自身の感情を認識する
- リーダー自身の感情をコントロールする
- メンバーの気持ちを認識する
- 人間関係を適切に管理する
この理論によるリーダーシップが発揮された組織では、メンバーがリーダーに対して忠誠心を持ち、職務に対して意欲的に取り組む傾向があります。デメリットは、人の感情を無視しにくいため、急激な変化対応等には弱いという点です。
4.ファシリテーション型リーダーシップ
リーダーが組織内において上下関係のない中立的な立場をとり、メンバーの意見を傾聴することで意見を最大限に引き出せるように働きかける理論です。このリーダーシップを発揮するためには、組織の目的やゴール、意思決定プロセス等をあらかじめ明確にしておく必要があります。また、このタイプのリーダーには、議論の舵取りスキルも欠かせません。
ファシリテーション型リーダーシップは、メンバーそれぞれを尊重しながら関係性の構築をおこない、1つの目的に向かって協働を促します。従って、決まった意思決定に対するオーナーシップを発揮しやすくなるという利点があります。
一方で、多くの意見に耳を傾けることで意思決定のスピードが遅くなったり、血を流すような大きな組織変革がおこないにくかったりする点になります。EQ型リーダーシップと併せて民主的リーダー像の類型といえるでしょう。
5.サーバント型リーダーシップ
リーダーがメンバーを支える逆ピラミッド構造の支援形式です。「サーバント(Servant)=使用人」という語がつくサーバント型リーダーシップでは、リーダーの役割は「メンバーが個々の力を最大限に発揮できる環境を整える」ことになります。
サーバント型リーダーシップにおけるメリットは、メンバーがリーダーから理解され、尊重される、また自分が成果を上げることを支援してくれる感覚を持ちますので、メンバーのモチベーションが高まります。また、フラットな関係を築けるため、リーダーとメンバー間、メンバー間でのディスカッションが進み、アイディアも出やすくなります。
一方で、組織変革やトップダウンによる対応は困難です。専門分野を持ったプロフェッショナルが集まった一時的なプロジェクト型組織等には適したリーダーシップかも知れません。
ここまで3つのリーダー像と5つのリーダーシップスタイルを紹介してきました。繰り返しになりますが、現在のリーダー論においては、1つの理想的なリーダー像があるのではなく、組織の外部環境や内部環境に応じて最適なリーダーシップは変わってくるというのが主流です。
状況と自分の適性に合わせて、
- 「共通の目的地やゴールを示す」ビジョン型
- 「メンバーの意見を取り入れる」民主型
- 「自らの背中で示す」ペースセッター型
をうまく混ぜていきましょう。
なお、リーダーシップはさまざまな方法がありますが、その中で変わらない基本機能が「意思決定」であることは忘れてはなりません。ときに、リーダーシップとは「衆議独裁」であるともいわれます。“組織メンバーの意見を聞いて議論を尽くしたうえで、最終的にはリーダーの責任において独断する”ことがリーダーシップなのです。